この指とまれ |
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歩道橋挽歌
「おはよう、おばあちゃんは…」
「今日はいい天気だからって、散歩にいったわ」
「大丈夫かなぁ…」
「なにが?」
「昨日の雨で道が凍っているだろうし」
「大丈夫よ、もう歩道橋を渡らなくても済むし、元気に出ていったわ」
「ああ、そうか…」
かつて駅前には歩道橋がありました。出来た当時、誰もが目を見張ったものです。「立派だ」「この町も大都会の仲間入りしたんだ」「これで駅前の交通事故はきっとなくなるだろう」
しかし、いつの間にか、この歩道橋を渡る人もまれになってきました。車の合間をぬって、サラリーマンが道を横切る、通学途中の学生が走り抜ける、買い物に行く主婦も、お年寄りさえも、歩道橋の下をこわごわと渡っている、という状態です。
そんなに利用されていない−−果たして、この歩道橋は必要なのでしょうか。そう思った主婦たちが集まって、町行く人に尋ねました。
「なぜ、歩道橋を渡らないんですか」−−「だって、そんなに車も通らないじゃないですか」「あなたは、この歩道橋を利用しますか」−−「いいえ、悪いと思うけれど、面倒だし…」「おばあちゃん、この歩道橋をどう思いますか」−−「年寄りには、地獄ですよ。この上の北風は、身にこたえますよ。冬の階段は、凍りついていて、もう年寄りは外に出るなっていってるみたいですよ」
「運転手さん、歩道橋のことですが…」−−「ああ、これね、ない方がいいんじゃないですか。あまり利用されていないし、横断歩道のないところを通る人がいるので、かえって危険ですよ」
警察署に行きました。市役所にも行って話しました。そして、女性の仲間と警察署と市役所の人たちと話し合ったとき、ひとつの結論が生まれました。ここの歩道橋をはずして、横断歩道を設けようという考えです。
駅前から空をさえぎる歩道橋がなくなって、誰もが町が明るくなったといいます。道を渡りやすくなって、町に活気が生まれたという人もいます。お年寄りがいつでも町に出られるようになった、と喜ぶ声も聞かれます。
波紋は大きく広がりました。歩道橋をなくしてどんな影響があるか、視察に来る自治体もあったほどです。
町を明るく、住み良くしたのは、この町のごく普通の女性たちの集まり、生活学校の活躍です。
プラスチックトレイのささやき
“夕飯のおかずは、まぐろのお刺身ですよ”−−よちよち歩きの娘に語りかけながら、私はきれいな絵柄のついたプラスチックトレーから刺身を大きな皿に移しました。そして、トレーはごみ入れに捨てました。
そのときです。かすかに溜め息まじりの声が聞こえました。私はそっとその声が聞こえるほうに耳をすませると、かすかな声はごみ入れから聞こえてきます。
“こんなにきれいなのに、私はやはり食卓までは行けないのね”
その声の主は、トレーでした。
“魚屋さんは、必ず食卓まで載せてくれるといっていたのに…”
私は、トレーに語りかけました。
“あなたはきれいだけど、焼き物のお皿とはひと味違うのよ。やっぱり、わが家ではお台所までね”と。
翌日、買い物から帰って、食卓の支度をしていると、やはりトレーの嘆きが聞こえてきます。
それから幾日かが過ぎて、私は魚屋によったとき、尋ねてみました。
「お刺身に使うきれいなトレーは、いくらするんですか」
「ああ、あれね、あれは、確か一枚40円だったと思いますよ」
「そう、もったいないわね。家じゃ食卓では使わないのよ」
「でもねぇ、奥さん、あれに入れるとよく売れるんですよね」
秋になって、公民館で文化祭が開かれることになりました。私たちの生活学校も文化祭に参加することにしました。いつもトレーが気になっていたので、みんなでトレーを集めてみることにしました。トレーの値段についても、いっしょに調べてみました。
文化祭の日、各家庭で集めたトレーを展示し、その隣にトレーの値段の一覧表を張り出しました。
「へぇ、こんなにいろいろあるの」
「うそ、トレーなんてただじゃなかったの」
展示を見て、ごみになるトレーの量に、改めて驚く主婦も多く見受けられました。トレーの値段を知って、その場で、不必要なトレーをなくせないかと、尋ねる人もいます。
文化祭で高まった関心をもとに、絵柄のついたトレーについて、スーパーマーケットに“話し合いをしませんか”と持ちかけてみました。“お客様のご意見なら伺います”と、喜んで参加してくれることになりました。
文化祭に展示した色とりどりの絵柄のついたトレーや、その時に住民から聞いた意見をまとめての話は、誰にとっても説得力のあるものでした。
「普通より高い絵柄のついたトレーを、まずやめてください」「その分値下げできませんか」
「絵柄のついたトレーはやめます」
「プラスチックトレーは、公害のもとになります。絵柄のつかないトレーもなくせませんか」
「トレーをすべてなくすわけにはいきませんが、できるだけ少なくするよう努力します」
「これからも消費者の意見を聞かせて下さい」−−スーパーマーケットの支店長が約束してくれました。
集まりが終わって、誰もが話し合って良かった、という感想を持ちました。
魚屋さんもスーパーマーケットも、この町にはいっぱいあります。少しずつでも話し合いをすすめていけば、絵柄のついたトレーの溜め息が聞こえなくなる日がきっと来ると、私は思いながら家路につきました。
自動販売機の独り言
“じつは私も困っているんです。なぜって、私だって夜中になれば少しは休みたいんですよ。そんなにお客さんが来るわけでもないし、あくびをしているところなんですよ”
“子どもたちがお酒を買いに来たからって、ダメよって声も出しませんし、親御さんは知っているんだろうかとやきもきするばかりなんですよ、正直言って…”
“ああ、私ですか、私は自動販売機と申します”
“でもね、私の気持ちを分かってくれる女性たちに逢いましたよ。嬉しかったですねえ、ほんとうに”
自動販売機は、問わず語りに話し始めました。
ある夜のこと、二人の女性が私のところにやってきて、じっと時計を見ていましたね。11時にってもやすまない私を見て、なにやらメモをとっていました。次の日も、また次の日もやってきて、同じように調べて帰っていきました。
聞くところによると、いつか私のところへ来られたのは、生活学校に参加している女性の皆さんだそうで、私たちが深夜までお酒を売っているのは、教育上好ましくない、ということらしいんです。
なんでもこの町では、いつでもお酒を売っているところがかなりあるそうで、なんとか夜中だけは止めさせたいと考えていたらしいですよ。
それで先月、私たちの主人が呼ばれて行って、話し合いをしたそうです。
生活学校の皆さんは、なんせ町の中のわれわれのところを順番に回って調べ上げているでしょう、私たちの主人も生活学校の皆さんに説得されてしまったそうです。
でも考えてみて下さい。未成年者だって、大人が酒を飲んでいい気分になっていれば、飲みたくもなりますよね。これが人情ってものでしょう。誰も見ていなければ、買ってみようという気にもなります。誰も見ていない夜中には、売っていないに越したことはありませんよ。
地道な活動をする女性に強さを感じたのは、私一人ではないと思いますよ。
この指とまれ
かつて子どもたちは、遊ぶ仲間をさがして大きな声を張りあげたものです。「かくれんぼするもの よっといで」「鬼ごっこするもの この指とまれ」
この指とまれ−−といって集まった子どもたちは、みんな仲間となって、かくれんぼも、鬼ごっこも、縄とびもして遊びました。
子どもの世界では、いつの間にか、この“この指とまれ”という声が聞かれなくなってしまいました。かわって大人の世界に“この指とまれ”という風潮が生まれてきています。
趣味を生かす仲間づくり、ボランティアに生きがいを見つける仲間の募集、スポーツへの誘い、消費者運動に取り組む人びとへの参加呼びかけ…。誰もが“この指とまれ”で集まり、活躍するようになっています。
私たちも呼びかけます。“生活学校するもの この指とまれ”と。
子どもたちがいきいき遊べる社会、お年寄りが安心して暮らせる社会、そして、あなた自身の顔が輝きを増す社会を創ってみませんか。
あなたが日常生活の中で困っていること、こうすればもっと良くなると思うことを、みんなでアイデアを出し合って解決していくとき、遠くにあると思われていた地域社会はいきいきとして私たちのものになります。
豊かな社会の創造−生活学校運動とは−
●「子どもたちが安心して遊べるところがなくて困る」「寝たきり老人を抱えているけれど、ホームヘルパーのサービスがもっと簡単に受けられないか」「灯油の値上がりがひどい」「最近、やたらにごみになるものが増えた」…。私たちの身のまわりには、困ったこと、改善したほうが良いと思われることがたくさんあります。その中には、私たち自身の手によって解決していかなければならないことも、またたくさんあります。
●生活に直接かかわっている女性の手によって、身近な暮らしの中の生活課題・地域課題を、関係する企業や行政、団体との「対話」そして「実践活動」によって解決していく運動、それが生活学校運動です。ひとつの生活学校は、40名程度のメンバーによって構成されています。消費者問題の解決、省資源活動の推進、高齢化社会への対応−−21世紀は、こうした課題を一つひとつ解決していくことによって、明るく住みよい社会が実現されるようになります。
●この運動は、実践活動を通じて、地域社会や生活のあり方を見直し、改善するとともに、新しい生活のしくみの確立、豊かな地域社会の創造をめざします。
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決めるのはあなたです |
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バスに乗って−テーマの話−
よく晴れた日でした。市内のデパートまで買い物に行くことにしました。久しぶりの晴れ間で、同じように買い物に行く人で、バス停は混んでいました。腰の曲がったおばあさんの姿も見えます。
バスが来て、乗り込もうとしたときです。そのおばあさんが手すりにつかまって、ようやく片足をかけたところで、体が大きくゆれて、転びそうになりました。
私がバスのステップが高いのに気がついたのは、このときがはじめてでした。
私にも郷里に母がいます。もう70歳をとっくに越えています。やっぱりあんな風だろうな、と思ったものです。そんな思いがあったからでしょうか、私はそのおばあさんに手をさしのべました。
降りるのでしょうか、おばあさんが立ち上がって、手を伸ばしました。バスが揺れて、なかなか停車ランプには届きません。降りる段になって、今度は料金表の金額に目をこらしていました。
普段、何気なく乗っているバスは、ステップも、停車ボタンも、料金表も、高齢者のことを考えては作られていません。高齢化社会は、もっと高齢者が戸外に出て、活躍できる社会でなければならないはずです。
私は、生活学校の集まりのとき、バスの中で見たことを話してみました。誰も同じような経験を持っています。バスを降りそこなって転んだ人のこと、停車ボタンをかわりに押してあげたことのある人、バスの乗り降りが苦痛だから遠出をしないという話も出ました。高齢者ばかりではありません。子どもの手を取って、しかも買い物袋をもった母親にとって、乗り降りは本当につらいことです。この話がきっかけとなって、バスが地域住民の足として歓迎されるために、もう少し研究してみよう、家族やご近所のお年寄りからも意見を聞いてみよう、ということになりました。
自分たちで決めて、解決へ−テーマとは−
●“野菜の包装にプラスチックトレーは無駄ではないか”“利用しやすいようにバスのダイヤを変更してほしい”“高齢者のために、塩分の少ない惣菜を販売してほしい”そんな疑問や希望は、日常生活の中では誰もが持っています。
●生活学校運動は、日常生活の中で困っていること、疑問に思っていることを、社会に働きかけて解決していく運動です。関係する企業や行政との対話によって、具体的に解決していく課題、それがテーマとなります。
●テーマは、生活学校に参加している主体メンバーの話し合いによって決めていきます。すでにテーマが決められているということはありませんし、誰かに頼まれたから、というものでもありません。テーマを決めるのは、あなたがた自身です。
●テーマは、私たちが商品として買う物品とそのサービス、税金を払って買う公共サービスです。具体的には、物価の問題、食品や家庭電器製品などの商品の品質やサービスの問題、空き缶・空きびんなどのごみや包装容器など資源や環境にかかわる問題、在宅福祉や高齢者医療などの高齢者問題、子どもたちの遊び場など生活環境にかかわる問題などがあります。
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活動しやすくするために |
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解決への道−しくみとは−
●“灯油が一斉に値上げされた−−そんな時、値上げされた見せに苦情を持ちかけて、話がつきますか”“過剰包装は困る−−そんな時、行きつけのスーパーに話したら、その場で回答が得られますか”多分、無理でしょう。
●世の中が複雑になるにつれて、仲間がいなければ、たったひとつのことを解決しようと思っても、なかなかできません。適切な話し相手が見つからなかったり、前もって調べておかなければ、解決の道も見つかりません。
●活動をすすめるにあたって、取り上げたテーマを具体的に、しかも効率的に解決へと導く方策として、生活学校運動があります。生活学校のしくみは、つぎのような特長を持っています。
●まず、解決していくテーマにかかわりを持つ人を、
1.生活学校に参加する女性を主体メンバー 2.テーマにかかわりを持つ企業や行政の代表を専門メンバー 3.テーマについて客観的立場に立ってアドバイスしてくれる人を学識経験者メンバー 4.生活学校にアドバイスしてくれる人を補佐メンバー
と呼んでいます。
●つぎにテーマを解決していく手順として、
1.まずテーマについて研究し、問題点をはっきりとらえる事前活動 2.関係する人たちが集まって、話し合う対話集会 3.集会で約束されたことを実行させるようにする事後処理活動
という活動を、順番にすすめていきます。
●生活学校運動は、こうしたしくみを正しく理解してもらうために、主体メンバーとか、対話集会という言葉を使いました。
しくみは、みなさんの活動が順調に進むことを願ってつくられたものです。
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参加するのはだれ |
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参加する人たち−メンバー構成とは−
●往診、休日・夜間の診療が受けやすくなることを願って、活動をはじめようとします。こういうことを言い出したのは誰ですか。もちろん、生活学校に自主的に参加した人、テーマを決めた人たちです。その人たちを主体メンバーと呼びます。
●いざ話し合いがはじまれば、地元の医師会や行政機関の担当者、そして医療問題の専門家も参加していなければ、話の内容は深まりません。対話集会に出席して主体メンバーと話し合う相手、その人を専門メンバーと呼びます。
●生活学校を自主的に運営するといっても、生活学校の運営のこと、テーマのことなどについて、側面からアドバイスしてくれる人があれば、もっともっと活動は楽しく、活発になるはずです。この役割を担う人を補佐メンバーと呼びます。
●生活学校運動は、主体メンバー、専門メンバー、学識経験者、補佐メンバーの四者によって、メンバーが構成されています。具体的に成果をあげていくためには、これらのメンバーの協力がぜひ必要です。
あるまとめ−主体メンバーの話−
年末になると、誰でも一年間の暮らしぶりや出来事を振り返ります。成し遂げたことや出来なかったことも思い浮かぶでしょう。
生活学校でも、一年のまとめをつくります。活動の内容や反省すべき点が書かれ、活動の成果も、みんなの喜びもきっと書き込まれることになるでしょう。
ここに、ある生活学校の一年間の活動をまとめた記録があります。運営委員長がメンバーのありようを、“ひとこと”として書いた言葉の中に、主体メンバーとしての基本的な考え方を見つけましたので、紹介します。
“ひとこと”
みなさん一年間本当にご苦労さまでした。ひとりでは出来ないことも、みなさんの心強い協力で、今年度の活動も楽しく終わらせていただきました。
開設以来もう17年、それぞれの役割の中で責任ある行動をとっていただき、一つひとつの活動に大きな成果をあげてきました。そうした中にも温かい人間関係の結びつきをしみじみと感じさせられ、楽しく過ごさせていただきました。
生活学校は、単なる個人の知識、教養を高めるだけが目的の集まりではありません。みんなの力で豊かな暮らしを創っていこうとする女性の自主的な運動であることを、確認しあいたいと思います。果たして私たちは、生活学校の主体メンバーとして、自主的に参加していただけたのでしょうか。一人ひとりみんなで今一度これでよかったのか、振り返ってみたいと思います。
めまぐるしい社会変遷の中に、今社会情勢を眺めるとき、生活学校としてあすをめざして取り組まねばならない幾多の問題が山積しています。そうした暮らしの中に、またニューメディア時代を迎え、厳しい時代に対応できる賢さがますます必要となってきます。
そのためにも、もっと生活学校を自分のものとして“確かな目”を育ててゆかねばならないと思います。
17年の積み重ねをしっかりふまえ、18年目を生活学校をスタートさせたいと思います。
あなたのことです−主体メンバーとは−
●女性のグループ活動が、どこでも盛んになりました。企画も運営も誰かがセットしたものに、ただ参加すれば良いとか、話を聞くだけのものもあります。しかし生活学校は違います。
●テーマを決めるのは、もちろん自分たち。そのテーマを解決に導いていくために中心となって活動していくのも、自分たちです。会場や受付のこと、連絡や記録、会計、広報などの運営面も、すべて自分たちの手によって分担していきます。
●ひとつの問題を解決していくために、全員が協力し合うこと、メンバー全員が対等の立場に立って、自分たちの意見を積極的に出しあえる仲間となることを願って、生活学校の仲間を主体メンバーと呼びます。
●生活学校にはお客さんはいません。
解決の道をさがすために−専門メンバーと学識経験者−
●“過剰包装を追放したい”というテーマを取り上げようとした時、商品に何らかの問題があって話し合うのであれば、それなりの関係者の参加が必要です。その商品のメーカー、販売業車、さらにはその商品の生産・販売を育成し、指導する立場の行政担当者、そして客観的立場から意見を言う学識経験者がいなければ、核心を突く話し合いはむずかしいでしょう。
●同じように“子どもたちの安全な遊び場を確保したい”というテーマであれば、監督し、指導する行政担当者、客観的立場から意見を言う学識経験者が必要です。
●対話集会を開くときに参加してくれるメーカー、販売業車、行政担当者という人たちを専門メンバーと呼びます。
●また、問題がどこにあるか、解決策がどこにあるか、同じような問題を抱えた他の地域でどのように解決策を見出したか等について、客観的立場から意見を言ってくれる学者・専門家、新聞記者などの学識経験者のメンバーも、ぜひ必要です。
●こうした立場の違う人たちとの話し合いによって、はじめて具体的な解決策が生み出されていきます。
アドバイスはこの人に−補佐メンバーとは−
●びんや缶が無造作に捨てられていて、町が汚れている。びんや缶のリサイクルについて、調査をしてみたい。こうしたとき、一体どのような内容の調査をしたら、話し合いに役立つのでしょうか。事前活動には、何をしたらよいのでしょうか。対話集会には、誰を呼んだらよいのでしょうか。こうしたことを決めるのも、決してやさしいことではありません。各地で生活学校に取り組むメンバーも、活動の仕方について困っているケースも少なくありません。楽しい活動にするための方策、これも工夫が必要です。
●活動が単なる趣味や学習だけに終わらないで、地域まで浸透し、運動が活発になるようにすることも、とくに大切なことです。
●このような事柄について、相談できる人を生活学校でははじめから期待し、お願いするようにしています。生活学校運動に積極的に協力してくれる人、これらの人を補佐メンバーと呼びます。
●補佐メンバーには、おもに市町村の社会教育主事や公民館主事の方々にお願いしていますが、あわせて民間の学識経験者の助力を求めることも必要です。
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活動の道すじ |
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遅かった案内状−すすめ方の話−
運営委員会を終わったときのことです。ひとりのメンバーが言いました。
「最近、連絡の葉書が遅いんじゃない。今日の集まりだって、ようやく三日前に届いたのよ」
「おかしいですね、1週間も前に出したんですが…」
市内のメンバーに同じ日に差し出された葉書でも、届けられる日に相当の開きがあることが分かったのは、雑談の席でした。集まったメンバーは、葉書の配達の状況を調べてみることにしました。
つぎの案内を出すとき、連絡係は葉書にはっきりと投函した日を記入しました。集まりには葉書を受け取った日を書き入れて、持ってきてもらうことになりました。
53枚集まった葉書は、早いもので翌日、遅いものは3日もかかっていました。“これはおかしい”ということが、はじめてはっきりと確認されました。早速、生活学校として取り上げていくことにしました。テーマは『郵便の遅配について』です。
「郵便が届くのが遅いために、困った経験がありましたか」という主旨の調査票を作って、配布しました。
「健康診断が受けられなかった」「友人から音楽会のチケットを送られたけれど、間に合わなかった」そんな回答が、多く寄せられていました。
対話集会をもつにあたって、誰を呼ぶか、証拠になる葉書や調査結果を、どのように展示するかも話し合いました。市内の郵便局長はもちろんのこと、行政監察局からも出席を求めることになりました。集められた葉書は到着までにかかった日毎に並べられ、調査結果は会場の壁に張り出すことになりました。地元の新聞社にも案内を出して、取材してくれるよう依頼しました。
「一日で着く葉書があるとしたら、同じ市内なら当然すべての葉書が一日で届いていいんじゃないですか」
「二日あれば必ず届くと思って出したのに、届かないのであれば、別の方法を考えなければ…」
「局長さん、この結果をどのようにご覧になりますか」
話し合いは、2時間近くかかりました。郵便局の事情も聞きました。行政監察局の役割についても、話が及びました。最終的に配達時間を短縮していくことを、郵便局長が約束しました。
集会が終わって、“郵便の配達時間が短縮されます”“郵便に関する苦情窓口ができました”“誤配を防ぐために、各家庭のポストには家族全員の名前を書きましょう”という主旨のチラシを作って、各戸に配りました。詩の広報にも載せてもらうよう働きかけました。
今はもう配達時間が短縮されています。それでも、ときにはメンバーへの案内状を集会の時に回収して、遅配があるかどうか調べています。
手順を踏んで−すすめ方とは−
●“郵便の遅配”というテーマを解決していくためには、すじ道だった手順を踏んでいくことが大切です。
●メンバーに出される案内状を使って、配達に必要な日数についての調査活動、集会にどのような機関・団体から出席してもらったらよいかを検討した活動−−これらの活動を「事前活動」と呼んでいます。
●いくら遅配の実態が分かっても、それだけではどうにもなりません。管轄の郵便局や行政監察局、あるいは郵便事情に詳しい専門家、そして主体メンバーが話し合って、はじめて解決の糸口が見つかります。そのための活動−−それを「対話集会」と呼んでいます。
●話し合いの結果、“郵便の遅配をなくします”と約束してくれたとしても、それですべてが終わったわけではありません。一般住民にも深くかかわっている問題ですから、住民に対して結果を報告すること、再び遅配が起こらないように監視していくことも、また必要です。そのための活動−−それを「事後処理活動」と呼んでいます。
●事前活動、対話集会、事後処理活動という順に活動していくことが、面倒なようでもっとも解決の早道になります。
生きた調査が示す説得力−事前活動の話−
住宅地が造成されて、25年が経ったまちがあります。はじめは交通の便も悪いところから、移り住む住民も多くありませんでした。今は人口が3,000のまちになっていますが、市の中心部へは、バスがたった一日一往復のままです。
「バスの便はずっと一往復のままじゃ、住民なら誰だって不便を感じているはずだ」。そんな疑問がもとになって、生活学校で調査に取りかかりました。
500人を対象にした調査では、8割の人が不便さを強く訴えていました。「隣の地区にある公民館の文化祭を見たくても、見られない」「大きな病院に行きたくても、一日仕事になってしまう」。調査では、バスの運行回数、運行時間の希望も聞いたのですが、これについても、意外なほど多くの意見が寄せられました。
調査が終わったところで、バス会社との話し合いをもつ日取りも決めました。調査結果は、要約して、対話集会の会場の壁に張り出すことになりました。
集まってもらう人は、バス会社の責任者のほか、市の助役、住民代表として五つの町内会長にも出席を要請しました。集会には、もちろん、地元の新聞社にも声をかけて、取材をお願いしました。
集会は大成功でした。
「町内会が再三にわたって陳情しても、実現できなかったのに…」「きっと調査がよかったのね」。集会の後、反省会が開かれ、成果をめぐって話がはずみました。メンバーの誰もが、調査結果をもとにした質問に、説得力があったことを驚いています。
問題をはっきりさせる−事前活動とは−
●公共交通機関としてバスしかない地域で、しかも一日わずかの便数しかないのは困ると、バス会社と対話集会を開いたとします。その席に、住民が切実に困っていることを示す調査結果があったら、訴える力が生まれます。長いタクシーまちの行列の写真があったら、やはり説得力が大きくなります。反対に誰かが「うちは自家用車があるから、問題はありません」という発言をしたら、どうなるでしょうか。
●一つの問題を解決しようとするとき、果たして問題はどこにあるのか、一般住民はどのような考え方を持っているのかが分からなければ、話し合いははじまりません。
●専門家から意見を聞いたり、地域の実態を把握するために調査をしたり、問題点を浮き彫りにするために写真を撮ったり、地域住民の意見をまとめることは、話し合いを具体化します。説得力を持たせます。
●対話集会の相手として、誰を選んだらよいのか。企業、行政の代表となる専門メンバーは、学識経験者は…。人選をして、それぞれ出席を求めます。
●自分たちの主張をはっきり伝えるために、司会者や進行の手順を決めたり、要望事項をまとめることも大切です。
●対話集会の場で、生活学校の主張が十分できるようにすること、それを事前活動と呼んでいます。
有料駐輪場ができます−対話集会の話−
新しい住宅地が生まれました。駅からはどうしても遠くなります。当然のように、通勤や通学に自転車が使われます。明け方まで広々とした駅前の道が、ラッシュアワーともなれば、自転車でいっぱいになってしまいます。バスが自転車をよけながら、やっとの思いで通っていきます。買い物の時間ともなると、自転車はますます増えて、駅前の道がさらに狭まります。子どもの手を引きながら、自転車と自動車の間をすり抜けて歩く母親のイライラが伝わってくるようです。
そんなことがきっかけで、放置自転車をめぐる対話集会が開かれました。
「放置自転車の問題は、一昨年、住民の方々から、ぜひ生活学校で取り上げてほしいという希望がありまして、検討してきた問題です。これまでの2回の対話集会では、1回目に有料駐輪場の設置を提案しました。また2回目には設置場所についての提案をしてきたわけです。残念ながら、これまで私たちの提案については、具体化されておりません。そこで、今回3回目の対話集会となりました」
「一昨年の調査では450台だった放置自転車が、今年の調査では60台も増えています。バイクは140台だったものが240台と100台も増えています」
「スライドを見て下さい。この線路沿いの道は、半分以上を自転車が占領しています。この写真では、駅からの出口が自転車でこんなに狭くなっています。こちらの写真では、通学の子どもたちがこんな歩き方をしなければならないような状況です」
「最近できた住宅街のその奥に、また住宅街ができようとしています。そうなると、もっと自転車もバイクも増えるのではありませんか」
「子どもたちが安心して通学できるようにお願いしたい」
「置けるのは、駅から遠い人に限ってはどうですか」
「前回の対話集会で、有料の駐輪場を設けてはと提案したことについて、何か前進がありましたか」
「設置場所について提案したことは、どのようになりましたか」
3年以上にわたる活動の実績をもとに、主体メンバーが自分たちの主張を繰り返し述べました。私鉄も、警察も自らの立場や役割を主張したのは、もちろんです。学識経験者として出席した新聞記者が、各地の駐輪場をめぐる活動の成功例、失敗例を紹介しました。それが、改めて自らの役割を考える機会にもなりました。
こうしたやりとりの中から、私鉄が有料の駐輪場を設置することを約束しました。
それから1年がたちました。この駅から仕事や学校に通う市民はますます増えています。自転車を利用する人たちも多くなっています。それでも有料の駐輪場ができて、この駅前から放置自転車が目立って少なくなりました。道路は、バスがゆったり走れるようになりました。
利害関係者を呼んで−対話集会とは−
●ひとつの問題を解決していこうとする場合、話し合いにはいつも相手が必要です。散乱している空き缶から町の美感を守るための話し合いなら、ビールやジュースのメーカー、販売している商店、清掃業務に携わっている清掃事務所、そしてごみ問題に詳しい学識経験者が参加して、はじめて話が具体化します。
●前もって調査した結果、拾い集めた缶の数々、空き缶が散乱している町の様子を写した写真やビデオ、そうしたものをもとにして話し合います。具体的事実がもとになって、関係する人たちと話し合うとき、話に説得力が出ます。問題を解決していくきっかけとなります。
●この話し合いは、お互いのに自分たちの主張を述べるだけの場ではありません。誰かが話をして、他の人がそれを聞く講演会でもありません。お互いに主張しあい、そこからお互いに合意できる事柄を見つけていく場です。その中にこそ問題を具体的に解決していく道がある、と考えています。こうした一連の活動を対話集会と呼んでいます。
●テーマに関係するメーカーや行政担当者等の専門メンバーや、学識経験者が出席していない対話集会はありません。
“売れないものは置けないよ”−事後処理活動の話−
「みなさん、今日お見えの三人のスーパーマーケットの代表の方々が、独り暮らしの高齢者のために、惣菜の少量販売を約束してくれました。どうぞ盛大な拍手で感謝の意を表しましょう」
その時です。代表の一人が手を挙げました。
「ちょっと待って下さい。確かに私も約束しました。しかし、私たちも商売です。売れないようであれば、中止させていただきます。念のために一言…」
確かにその通りです。どぎつい色の着色剤を使ったたらこやソーセージが出回ったとき、私たちの先輩も無着色のものをつくってほしいと要望したばかりです。その時も業者の代表は、生活学校の希望を聞き入れてくれました。住民に尋ねた調査でも、安心して食べられる無着色の加工食品がほしい、という要望が多くありました。
ところが、いつの間にか、また色鮮やかなたらこやたくあんが出回っています。その時も、業者は“売れないものは置けないよ”と、同じことを言っていました。
“私たちも商売です。売れないようであれば、中止させていただきます”−−せっかく約束してもらったことも、売れないと言われてしまえば、その通りです。
私たちは対応策を協議しました。
まず、今日の成果を住民に知らせることにして、チラシを作って消費センターに置いてもらうこと、市の広報誌に紹介してもらうこと、ふだんから生活学校に関心を寄せている新聞記者に話してみることにしました。
スーパーにも出かけていって、きちんと売られているかどうか調べる班を作りました。“片隅に置かれていたのでは、誰も気がつかない”という意見を入れて、置く場所についても調べることになりました。
一月が過ぎて、スーパーをのぞくと、少量販売のコーナーが設けられています。老人の姿も見えます。ダイエット中なのかもしれませんが、結構、独身OLも買っています。
半年が過ぎて、A店では、いつの間にか、少量販売コーナーの看板がなくなってしまいました。それから一月、コーナーそのものもなくなりました。
もう一度集まって、Aスーパーとの話し合いがはじまりました。売れることを条件に、再び少量販売コーナーが設けられることで約束ができました。
“せっかく、苦労して開設してもらえたんだから、今度こそいつまでも続くように努力しよう”−−少量販売コーナーを見学しながら、メンバーは誓い合いました。
ある芝居−PRの話−
ある町では文化祭が開かれることになり、各種団体にも参加を促す書類が回ってきました。子ども会育成会も、婦人会も、一部の自治会も参加を決めました。日頃からお堅い活動集団と見られていた生活学校にも、誘いがあり、早速、運営委員が集まって、協議に入りました。
「ねえ、せっかく私たちも活動しているんだから、何かやってみない」
「展示もいいけど、どこでもやっているみたいだし…」
「生活学校の活動の模様をドラマにしたら、きっと私たちのことがもっと理解されると思うんだけど…」
話は、その後とんとんと進みました。ちょうど、この生活学校では休日・夜間の当番医制に取り組み、成果をあげたところです。当然、芝居も休日・夜間の当番医制を取り上げることになりました。
“腕もいい、しかも親切”と評判のお医者さんがいました。うわさを聞いて、遠くからやってくる患者もいました。休みの日でも、夜中でもよく診てくれる人でしたが、過労がたたって、このお医者さんが病気で倒れてしまいました。
その後、休日や夜間に病気になっても、診てくれる医院がめっきり少なくなってしまいました。そんなとき、急病人がいくつか病院をたらい回しされるケースが報道され、住民の不安・いらだちが高まりました。そんな悩みを解決するために、生活学校が活動をはじめました。
舞台は対話集会の場面からはじまりました。
「私だって主人が開業医だったら、夜はゆっくり休めるようにしてあげた−−だけど、病気はいつ起きるか分からないし…」
「子どもがぜん息を起こしたときなんか、申し訳ないとは思うけど、やっぱりお医者さんが診てくれれば安心だし…」
「みなさん、夜中に仕事で起こされることが、一年に何回ありますか。私たちはしょっちゅうです。ほんのちょっと熱が出ても、起こされる。もう若くないし…」
母親としての悩みが、そのままセリフとなりました。お医者さんの立場の苦しみも、その家族の悩みもセリフとなって、観客に強く訴えかけました。
フィナーレは、対話集会が成功して、“休日・夜間の当番医制度を住民は守って”と訴えるプラカードを、出演者が一人ひとり持って並んだところで終わりました。
芝居が終わる頃、客席で手を合わせるおばあさんがいました。何年か前、息子さんが病院をたらい回しにされたことのある人だったということです。
文化祭の日、舞台を見つめて、誰もが笑い、しんみりとしました。翌日地元の新聞には生活学校の劇の模様が写真入りで紹介されたのは、もちろんです。
守り、守らせること−事後処理活動とは−
●「高齢者のための地域医療システムづくりについて、医師会との間で約束ができた」「スーパーマーケットがお惣菜の少量販売を確約してくれた」「空き缶のミニデポジットに協力が得られなかった」どのような結果でも、対話集会が終われば、ひとつの活動が終わったのでしょうか。
●対話集会によって約束されたことがあっても、それで終わったことにはなりません。主体メンバーにとっても、専門メンバーにとっても、果たすべき役割が残されています。約束されたことが実行されるようにするために、行政機関に陳情したり、実行されているか否か確認することも大切です。お互いに約束したことを守り、守らせていくこと、そのための活動があります。
●当然ながら、対話集会によって解決されないこともあるはずです。これまでの活動を振り返ってみて、調査をしたり、問題点を検討し直したりして、もう一度とり組み直していくこと、そのための活動もあります。
●生活学校で取り組んだテーマは、決して生活学校のメンバーだけのものではありません。いつでも、一般住民にかかわりがあります。成果をあげたことでも、残念ながら失敗したことでも、一般住民に深い関係のあるものばかりです。活動の模様をチラシや市の広報を利用させてもらい、PRすることも大切です。
●対話集会の終わりは、新しい活動のはじまりです。このような活動を、事後処理活動と呼んでいます。
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一人ひとりが役割をもって−生活学校の運営−
●豊かな時代になって、高学歴の女性が増えています。多用な趣味を持った女性も増えてきています。個性豊かな女性は、どこでも張り切っています。地域活動に関心を持っている女性も少なくありません。
●ひとつの集団がいきいきとした活動ができるのは、メンバーの一人ひとりがそれぞれに役割をもち、民主的な運営によって、ひとつの目的に向かって進むときです。生活学校は、そうした運営をめざします。メンバーを主体メンバーと呼ぶのも、主体的に活躍されることを願うためです。
●会を円滑に運営していくためには、運営委員会が必要です。運営委員は、運営委員長のほかに企画、調査、広報、連絡、会計などの各班の代表がなります。各班の役割を考えてみましょう。
<企 画>
テーマは主体メンバーの提案によって選ばれますが、主体メンバーの提案というだけではテーマになり得ません。生活学校として取り上げていくべきものなのか、問題点がどこにあるのか、どのような立場から取り組んでいくべきか。企画とは、そうしたことを研究していくところです。その結論をもとに主体メンバーの合意によって、はじめてテーマが決まります。
テーマが決まれば、運営委員会にはかって、調査、広報、連絡等の各班が役割分担に従って活動をはじめます。
<調 査>
生活学校は、具体的事実をもとにして話し合いをします。そのためには、調査活動が大きなウエイトを占めます。住民がどのような考え方をしているのか、実態がどうなっているのか、写真を撮ったり、問題のある現物を集めたりします。こうした活動によって、問題はさらに掘り下げられます。この結果についてグループで話し合うとき、より一層自分たちの考え方がはっきりします。
<連 絡>
主体メンバーに対する連絡、専門メンバーやマスコミへの連絡にあたります。対話集会を開く日時だけでなく、どのような立場で臨んでいくのか、さらに各人が考えをまとめてくることを促すものでありたいと願っています。同じような活そうをする生活学校は、すぐ近くにもあるはずです。こうした仲間との情報交換は、お互いの運動の展開を円滑にすることになるでしょう。
<広 報>
生活学校の活動内容は、地域住民と密接な関係があります。対話集会で約束されたことが実現されるためには、一般住民の協力が欠かせません。機関誌を作ってメンバーの間に配るだけでなく、一般住民へのPRも大切です。また、活動の記録をまとめた記録集やメンバーの意見を収録したものを作ることは、自分たちの足跡をたどってみたり、お互いの親睦にも役立つでしょう。マスコミへの紹介も考えてみて下さい。
<会 計>
生活学校を運営していくには、それなりの経費が必要です。自分たちが出した会費、この他に、県の協議会から入ってくるお金、市町村からはいってくるお金など、かなりな金額になることもあります。
ひとたび活動をはじめると、何かとお金が出ていきます。例えば、調査をすれば印刷費、専門メンバーに来てもらえば謝金や旅費も必要です。主体メンバーに連絡するために郵便代もかかります。
活動に必要なお金は、メンバー全員のものです。帳簿を備え、明確に記帳しましょう。
●生活学校は、自主的に参加したメンバーによって作られた集団です。メンバーからは、必ず会費を集めて自主的に運営できる体制をとっておきましょう。委託金をはじめ、助成金や補助金がどこからも入らなくなっても、自分たちの会費で運営できるようにしたいものです。
●生活学校を永続させていくためには、生活学校の主旨に賛同して入ってきた主体メンバーの目的が達成されることはいうまでもありませんが、人間関係が上手くいくことこそ大切です。時にはレクリエーションなどを取り入れていくことも考えてみて下さい。
つねに時代を先取りして−生活学校運動の歴史−
●昭和39年、「これこそ私たちの運動だ」と、目を輝かせて議論をしている主婦の集まりがありました。まだまだ生まれたばかりで形も整っていないのに、生活学校を時代にマッチした運動ととらえていたのでしょう。それから30年以上がたちました。
●初期の生活学校運動は、有害な食品添加物をなくしたり、食品衛生監視員を増員させたり、危険な商品の追放、上水道の設置、集会所づくり、バスダイヤの改正など、商品・サービスを中心に取り組んできました。
●石油パニックに前後する頃から、行き過ぎた商品の包装・使い捨ての傾向に警鐘を鳴らしてきました。過剰包装追放運動、風呂敷運動、ビン・カンの回収運動、不用品交換会などが代表的な運動です。自治体にとっては、ごみの減量などに大きな成果をあげております。
●わが国は、急激な勢いで高齢化社会を迎えています。しかし、まだまだ高齢者のための社会とはなっていません。塩分の多い惣菜など消費生活上の問題、バスステップや歩道橋などの公共施設、ホームヘルパー、老人ホーム、老人病院など、高齢者にとって生活しやすい社会づくりが必要です。
●25年を振り返って、生活学校運動は、次のような輝かしい足跡を残してきたといえるでしょう。
そのひとつは、商品に関連する有害な食品や過剰包装の追放を、また行政に関連する環境、医療、教育、ごみ問題を通じて、具体的に生活課題・地域課題を解決していく方策を開拓したこと。
そのふたつは、自主性をもとにしたこうした活動を通じて、新しい女性の活動を開拓したこと。
そして、もうひとつは、商品や公共サービス、資源問題や高齢化社会に対する対応に見られるように、つねに時代を先取りする活動に取り組んできたことです。
仲間は全国に−生活学校運動の広がり−
●全国には、仲間がいっぱいいます。北のくにのメンバーが南のくにに旅行したとき、南のくにの対話集会に参加したという話を耳にします。
●生活学校は、それぞれ自主的に決めたテーマで活動しています。しかし、共通の願いをもって作られた生活学校同士の間には、共通する夢や同じテーマ、そして同じような悩みがあります。こうした問題に対して、交流したり、情報を交換することによって、勇気を与えられたり、慰められたりします。全国に仲間が大勢いることは力強いことです。
●交流や情報の交換を、もっと積極的に、との願いから、地区連絡会が生まれ、県連絡会が誕生し、全国連絡会もできました。連絡会は、次のような活動をしています。
1.研究集会などを開いて、生活学校の運営方法などを研究しています。
2.交流の機会をつくって、どこかの生活学校のあげた成果を他の生活学校が活用できるようにしています。
3.マスコミへ情報を提供して、一般社会へのPRに努めています。
4.新しく開設された生活学校に対する手助けをします。
5.共通テーマを設けて、活動を展開したり、日頃の活動の成果を集約して、県大会を開きます。
ほんの一例ですが−活動テーマ−
“テーマには何を選んだらよいのでしょうか”“何がテーマになりますか”…。すでに説明してきたことから、ある程度おわかりと思います。しかし、テーマを決めるのに困っている生活学校も少なくありません。そこで生活学校の主なテーマの、ほんの一部を紹介しますが、要は自分たちで問題を発見することです。
項 目 |
テ ー マ |
高齢者福祉及び
高齢者医療 |
<在宅福祉の充実>
ホームヘルパー、デイケアサービス、ショートステイサービス、給食サービス、独居老人緊急通報システム
<高齢者医療等の充実>
訪問医療・訪問看護、往診、休日・夜間診療老人病院
<施設サービスの充実>
ケア付き住宅、特別養護老人ホーム、老人保健施設
<高齢者の消費生活>
食品の少量販売、表示制度、耐久消費財の取扱い、介護商品の品質 |
省資源・省エネルギー |
<リサイクルシステムの確立>
ビン・カン、古紙、紙パックの回収
<過剰包装・容器の廃止>
トレイ・パック、商品包装の適正化
<地球環境の保全>
生産・流通・消費システムの見直し、省資源・省エネルギー型製品の開発 |
消費生活 |
<食品>
品質、価格、安全性、表示、検査
<食品以外>
品質、性能、価格、安全性、表示、検査
<サービス産業>
被害、苦情処理、訪問販売、通信販売
<流通・物価>
<消費生活> |
子どもの問題 |
食生活、玩具、文房具、衣類
<施設>
遊び場、保育所
<教育>
学童保育、教育費、教育内容 |
交流の場−関連事業紹介−
●ある生活学校が空きカンのリサイクルシステムで成果をあげました。成果は、この生活学校だけのものでしょうか。
●生活学校運動で取り上げるテーマは、どこの地域にも、多かれ少なかれ、共通するところがあります。全く同じ方法でどこでも同じ成果があがるとは限りませんが、全国で生活学校運動を展開している仲間にとって、情報は貴重です。全国の仲間が、工夫をこらし、個性を生かしながら、活動を展開していくためには、情報交換、交流の場、研究の場、社会へのアピールの場が必要です。そのために、つぎのような事業が組まれています。
研究集会
*都道府県研究集会=各都道府県内の生活学校が集まって、基本的な考え方、具体的なすすめ方などを中心とした研修をしたり、運営のしかた、テーマ等の情報交換によって、さらに一歩進んだ活動方法を研究しています。
*ブロック研究集会=全国を7ブロックに分けて、各県の生活学校代表が集まり、運営のしかた、テーマ等の情報交換、さらに一歩進んだ活動方法を研究しています。
大 会
*都道府県大会=各地の地道な活動の成果を持ち寄り、情報交換をしたり、全県的な解決を図るための対話集会を開いています。
*あしたのまち・くらしづくり全国フォーラム=全国各地で取り組んできた活動の成果をもとに、対話集会を開きます。各地の生活学校の情報交換、各省庁担当者との対話によって、問題点をはっきりさせ、今後の行動に示唆が得られるようにしています。もちろん、具体的に成果が上がることもあります。
地域医療、資源・環境、高齢化社会の問題は、複雑な問題です。生活学校で取り組もうとしても、とらえにくいこともあります。全国大会では、生活や地域社会にとって今後ますます大きな問題となるような事柄をとらえ、研究分科会によって、その問題点、取り組み方などを研究します。時代を先取りした活動はここからも生まれてきます。
県連絡会調査活動
*大部分の都道府県には、生活学校連絡協議会があります。大会や研究集会の運営にも、大きな役割を果たしていますが、もうひとつの仕事として、調査活動があげられます。県内の生活学校の意見を集約して、生活学校の共通課題を決めていきます。その共通課題を具体的な形でとらえていくために、調査が実施されます。この調査によって、それぞれの生活学校が活動しやすくなるのはもちろんですが、県大会、全国大会でも大きな力を発揮します。
最近では、高齢者問題、省資源問題での取り組みが多くなっています。
広報活動
*私たちの生活学校=ごみ・リサイクル、子育て支援、高齢者問題など、生活・地域課題を専門家の解説や活動事例等を紹介。生活学校運動の機関誌です。【年6回発行 A4判16ページ 1部200円、年間購読料1200円(送料込)】
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