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28年度の受賞団体概要
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独自の発想により全国各地で活発に展開されている地域づくり・くらしづくり・ひとづくりの活動に取り組んでいる地域活動団体等を表彰する、平成28年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(主催・公益財団法人あしたの日本を創る協会、NHK、読売新聞東京本社など)の各賞が以下の通り決定しました。
■内閣総理大臣賞
千葉県 幸町1丁目コミュニティ委員会
■内閣官房長官賞
富山県 八代環境パトロール隊
■総務大臣賞
三重県 野原村元気づくり協議会
■主催者賞
北海道 一般社団法人天売島おらが島活性化会議
青森県 特定非営利活動法人あおもり若者プロジェクト クリエイト
長野県 公益財団法人妻籠を愛する会
京都府 特定非営利活動法人よのなか塾
奈良県 殿川小水力発電研究会
愛媛県 川津南やっちみる会
また、振興奨励賞には25団体が選ばれました。今年度の応募総数は226編。
それぞれの活動レポートを収録した「あしたのまち・くらしづくり2016年度版」(定価1000円、送料340円)は12月上旬頃発行予定。
メール ashita@ashita.or.jp |
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■内閣総理大臣賞
高齢化の町を安心と活力と魅力のある町に |
千葉県 幸町1丁目コミュニティ委員会 |
【活動内容】
美浜区幸町1丁目地区は、マンション等の集合住宅が96%を占め、約3300戸、8000人が暮らす。入居後40年以上経ち高齢化率が40%を超える。自治会の役員の任期(1年)を終えた後、役員時活動に熱心だった人が集まり「幸町1丁目コミュニティ委員会」を立ち上げ、「安心安全の町」「活力と魅力のある町」を目標に精力的に活動を展開し、自治会を支える役割を果たしてきている。
[主な活動]
1 美化活動
一人の小学生の「なんで大人はこんなところに吸い殻を捨てるんだろう」との問いかけをきっかけに、美しい町づくりが始まる。「火消し処」(吸い殻入れ)の設置によりポイ捨てが無くなる。毎週日曜日と水曜日の朝、吸い殻の回収と「火消し処」の掃除を実施。この美化活動が駅周辺にまで及び、駅までの歩道が見違えるようにきれいになり、道行く人から感謝の声が寄せられている。
2 安全で美しい公園の環境づくり
幸町公園のトイレは、暗くて汚い、怖くて誰も利用しなかった。公園の入口に設置するよう千葉市に要請し実現した。週2日の業者の清掃以外は、毎日住民が清掃を行い、利用者の間でこんなにきれいなトイレはないと評判になった。
また、懸案となっていた公園内の安全面についても検討を重ね、千葉市に改善の要望書を提出。要望の全てを満たした公園の再整備を実施。工事後、「幸町公園友の会」を結成し、月2回の公園清掃のほか、安全点検、樹木の管理、花壇の整備を積極的に行っている。今では安心して憩える美しい公園と住民に親しまれ、多くの人が訪れている。
3 高齢者支援活動
@高齢者への生活支援
全住民のアンケートで、日常生活における生活支援(ゴミ出し、電球の交換、買い物代行、医者への付き添いなどの支援)を求める声が多数あったことから、支援のやり方等について検討を重ね、住民同士が助け合うしくみを考え、「安心サポートの会」を立ち上げた。会員は年々増加し、支援の利用者から感謝の声が寄せられている。
Aふれあいサロンを常設
平成27年11月に常設のふれあい交流館をオープン。10時から16時を住民が憩えるふれあいサロンに、16時から18時を子どもが遊んだり勉強したりして過ごせる子どもの居場所にした。住民の居場所として誰でも立ち寄れることから、オープンから1年で1万人の利用があり、連日賑わっている。運営には女性を中心に約90名がボランティアとして参加している。
ふれあい交流館では、そのほか、福祉と介護の相談会とミニ講演会を毎月定例開催。また小学校と連携して、人材バンク「人生万歳」を立ち上げ、高齢者が小学生の学習の支援をする活動を行い、高齢者の大きな生きがいになっている。
このほか、「幸町1丁目コミュニティ委員会」では、常に住民の声に耳を傾けながら、「市(いち)」の開催、防犯、防災、さまざまなイベントなど年間を通じて開催し、年々参加者も増え、地域全体の活性化が図られている。
【評価された点】
高齢化が進む大規模集合団地において、自治会役員OBが集まって団地内のさまざまな問題を行政任せにせず、住民の声に耳を傾けながら解決を図っている。活動も美化活動、高齢者支援、防災、防犯、イベントなど幅広く精力的に行い、地域活性化を達成させている。同様の問題を抱える集合団地の好例となる。
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■内閣官房長官賞
環境保全と地域バスで村づくり |
富山県 八代環境パトロール隊 |
【活動内容】
氷見市八代地区は、平成27年現在、人口554名、世帯数254戸の過疎の村。主な産業は、氷見牛の肥育と自然薯の栽培で、水稲栽培は近年少なくなってきた。企業や他の産業も特別なく、生活する人たちは他の市町村のほうに通っている状態。そんな過疎の村を蘇らせ、地域力を発揮し村民に勇気を与えようと活動しているのが「八代環境パトロール隊」だ。
平成12年に学校統合があり小学校、中学校、保育園がなくなり、村の存続を願う者同士が結集した。過疎が進むとまず問題となるのが、空き家と共に不法投棄物の散乱。知らぬ間に自然破壊が進み、住む人々の心に空しさが漂い、生きる活力も失われる。そこで、まず手掛けたのが投棄物の回収。拾っても、拾っても捨てていく人たちに、強い憤りを感じながらも、誰一人として手を止めることなく続けている。また、悪質な訪問販売で高齢者が被害にあうこともある。そこで同会が実行したのが、全家庭の玄関への『悪質セールス追放の家』の看板設置。この啓発活動で県内第1号の「悪質商法追放モデル地区」に指定された。高齢者への活動を重視し、声掛け運動を強化した。
活動継続のためには資金が必要。寄附も考えられるが、「自立する力を持たねば」「自分たちの村は自分たちで守らねば」との思いで、行政から林道整備(草刈り)の委託を受け、資金を稼ぐことにした。暑い7月の草刈りはきつく大変だが、15年間続けている。ただ単に資金稼ぎというだけでなく、山林災害の早期発見、不法投棄の防止も兼ねた活動となっている。
地域内では一部、携帯電話がつながらず不便を感じることが多々あり、助成団体からの助成で、携帯無線機5台が導入された。翌年には別の助成で、活動本部の建物と無線機を導入。隊員は通年車に車載型無線機を搭載し、いかなる状況が発生しても、即対応が可能となった。
さらに課題となったのが村民の足。学校統合とともに、民間のバスが、人口減少と乗車率の悪化を理由に撤退。同会は、スクールバスを活用した地域バスの運営方法を行政に提案。登下校時は生徒優先とし、日中は村民が活用できるようにした。5年間継続したが、バスの老朽化で小型化を提案された。しかし、小型化されると生徒と村民の共有化は難しく、NPO法人なら運営可能であることから、同会を母体としたNPO法人を設立して地域バスの運営を決断した。運営開始から11年、黒字経営を続け、全国から視察が相次いでいる。
自慢は乗車率の高さ。車中は賑やかでまさに動く談話室。現在バスは3台。月〜金は29人乗り、土・日は15人乗りを使う。もう1台は4年前から別の集落を走らせている。来年にはその地区にもNPOのバスを走らせようと指導にあたっている。
結成15年、同会は今やリーダーの養成所的存在となっている。地域で行う自主防災訓練でも、3会場で同時スタートするなど村民の参加しやすさを考える。進行状況など逐次無線機で地域本部に連絡し、本部で集計し市の対策本部に報告している。隊員も3班に分けて全て無線機を使用する。原子力防災訓練も無線機を活用する。3会場の個々の公民館に一度集まり、地域バスで安全なところまで輸送する。バス3台にも全て無線機を搭載し、ドライブレコーダーも取り付け安全対策に努めている。富山県知事の配慮により、氷見市消防本部の基地には同会の無線機が1台配備され、いかなる状況が生じても連絡できるようになっている。過疎地が抱える不安に対し少しでも解消されれば、安全安心な村づくりにつながる。
平成17年から県の事業として、都会の人を地域に呼び込む活動「帰農塾」も開催。前期、後期各3泊(金・土・日)の地域交流体験もやっている。
現在では環境、防犯、防災といった総合的な地域保全活動を展開している。
【評価された点】
過疎地域で不法投棄物の回収や草刈りから活動を始め、無線所やバス運営にまで発展させ、乗車率も高く黒字運営を実現し、他地域へも波及するなど、地域住民の力が評価された。
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■総務大臣賞
「生涯現役!野原村」明るい元気な町づくり |
三重県 野原村元気づくり協議会 |
【活動内容】
平成18年「地元学」による地域資源調査をきっかけに、三重県大紀町野原区(自治会)で地域活性化活動が始まった。平成19年には「地域の魅力づくりフォーラム」を開催、100名以上の地域住民が参加し、地域課題解決のアイデアを話し合い「野原と区民が元気になる活動計画書」をまとめた。平成20年に「野原村元気づくり協議会」が組織され、提案されたアイデアを5つのグループにより取り組んだ。
1.主な活動内容
@野原食のグループ
獣害対策の一環として、地域で鹿・猪肉を食べる仕組みづくりと交流人口の増加を目的に、平成21年7月、廃校となった小学校の給食調理室を活用した特産品開発、販売所「野原工房げんき村」を開業した。工房では、ジビエメニュー、地産地消弁当などの季節商品を販売。地域高齢者の憩いの場として、また、県内外からの来訪者も受け入れた。営業は、土曜日の10時から14時まで、また、地域の野菜を直売する青空市も同時開催し、集客を増やしてきた。
A白岩・奥山川活用グループ
地元の七洞岳などの登山道の整備、子どもが川遊びできる環境づくりなどを手掛けてきた。
B大瀬東作さんグループ
大正時代に義務教育費国庫負担制度の確立に奔走し、地元の偉人「大瀬東作」の功績の伝承活動。桜1万本植林の実現、生家保存、廃校の小学校教室にはミニ資料館も整備した。
C体験交流グループ
野原自然体験の商品化と仕組みづくりの取り組み。川での鮎漁体験、獣害対策、地域食材を生かした体験交流の取り組み。野原へのUターン等、定住策の推進についても取り組んできた。
D旧七一小跡地活用グループ
廃校となった小学校運動場での区民運動会の復活や、教室を利用した交流拠点「喫茶おはつき」では、情報発信コーナーと野原工房で販売したメニューのイートインコーナーとして活用。
2.活動の発展
地元小学校と連携し、地元学を小学校でも実践。環境学習を通したお茶の商品化に取り組んだ。また、キャノンマーケティングジャパン(株)のCSR活動によるお茶づくりや交流も行った。
これらの活動を経験した小学生の有志が中心になって、平成24年には「七保未来塾」を発足。七保の未来と本格的なお茶の販売について検討。未来塾では、お茶販売のために市場調査やイベントヘの出店、三重県庁の記者クラブでのプレスリリースなども実施。現在、高校生となった塾長が中心に中学生・小学生の後輩たちと活動を継続。
【評価された点】
◎地元学実践をきっかけとした元気づくり協議会の組織化から地域資源活用、学校、企業との連携を実現している。
◎地域の特性を活かした活動で、小学校や企業とも連携している。
◎テーマごとにグループに分け、計画的に実践し、確実に成果を挙げている。
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■主催者賞
共感マーケティングによる離島活性化の実践 |
北海道 一般社団法人天売島おらが島活性化会議 |
【活動内容】
天売島は、北海道羽幌町にある日本海側沿岸から西に30キロ離れた場所に位置し、8種類100万羽の海鳥の繁殖地として有名であり、人と鳥が共生する世界でも貴重な島である。最盛期には2000人を超えていた島民の数は、現在では約330人となっている。平成24年、島内の人口減が進み、将来無人島になってしまうことに危機感を持った島内の30代〜40代の異業種メンバーを中心として、離島活性化の先進事例である島根県隠岐諸島海士町への視察を契機に、当法人は設立された。その後、島内の漁業・観光・生活面の雇用創出から島内活性化を目的として、平成26年4月1日に一般社団法人化した。
これまでの具体的な活動としては、@天売産のひる貝や市場に出回らないタコといった、いわゆる未利用資源を活用したレシピ・洋食メニューづくりや新商品開発、Aキャンプ場の開設と管理・運営、Bスキューバダイビングやシーカヤック、星空観察会などのアウトドア観光の新商品開発と人材育成、等を実施している。
「共感」がキーワードとなる共感マーケティングについて情報を得る機会があり、島の価値を高めるためにも、よりよい島の魅力を伝えようと思っていたところ、島の大きな課題に直面した。それは、島の西海岸に位置する「ゴメ岬」という、島の中でも特に景観が美しく、目の前ではアザラシが休憩し、夕陽の美しい地点のゴミの問題だった。ゴメ岬は西海岸ということで漂着ゴミが堆積しやすく、それまで島民はもとより観光に来るお客様にご案内したり見てもらったりできる状況ではなかった。ゴミの処理には多くの費用がかかり、個人レベルでは手を付けることができず、また行政に依頼しても、予算化が難しいことから具体的な清掃活動に取り組むことができなかった。この大きな課題を、まさに「共感」を生み出すことができないかと考えたのが、クラウドファンディングの活用だった。メンバーと話し合いの結果、クラウドファンディング活用によるゴメ岬の清掃活動プロジェクトの実現化を目指す活動を決定した。
平成27年11月より30万円を目標金額に設定してクラウドファンディングの募集を行った。FacebookやTwitterを活用して出資をお願いし、地元紙などでも取り上げてもらった結果、38万5000円(42人の出資)が集まった。特に、島の子どもたちがお小遣いを集めて、清掃活動に使って欲しいと手紙付きで送ってくれたのには多くの大人の共感を集めることとなり、まさに島が一つの方向に向きはじるきっかけとなった。
また、星空体験、ウトウナイトウォッチング、ウニ採り体験、海鮮BBQ、シーカヤック体験など、平成28年の観光シーズンから商品化するメニューについて、事前にPRできたことも大きなメリットだった。
平成28年5月14日、15日にゴメ岬の清掃作業を実施。当日は、クラウドファンディングの運営会社により、札幌からのボランティアツアーも組んでもらい、さらにはFacebookを見て参加してくれた学生、羽幌町からは町職員やロータリークラブの方たち、そして島内からは小学生からお年寄りまでの総勢130名近いメンバーが「ゴメ岬を綺麗にしたい」という共通の思いを持って、各々の役割を達成していった。14日からの作業に先立ち、羽幌から参加してくれたロータリークラブの方たちが、重機とオペレーターを島に持ち込みゴミの引き上げ作業に協力。集められたゴミはすべてフェリーで羽幌へ送り16日に最終処分場へ運び終えたことで、一つの大きな取り組みを終了することができた。
地域活性化とは何かという原点に立ち返り、行政と協働のスタンスを持ち、当法人のような民間事業者が、地域活性化の主体となり、住みよい地域づくりを行っている。
【評価された点】
地域住民が自ら主体となって「共感」に視点を置き、岬の清掃活動資金をクラウドファンディングで募り、顧客、活動資金を確保し、離島の活性化を図る手法は斬新である。
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■主催者賞
商店主が先生、商店街を学びの舞台に
―高校生と商店主の交流を深め、地域愛着を深める仕掛けづくり― |
青森県 特定非営利活動法人あおもり若者プロジェクト クリエイト |
【活動内容】
「あおもり若者プロジェクト クリエイト」は、青森市内で7年以上に渡り、高校生・大学生が主体となって地域づくり活動を行っている。設立以来、任意団体として活動を行ってきたが、5年の活動を経て、平成26年度にNPO法人に移行した。
地元高校生対象に商店街を学校に見立てた取り組み「クリエイトまち塾」を展開。参加高校生24名を4つのクラスに分けて、各クラスに商店主(担任)と地元大学生(副担任)をそれぞれ配置して、クラスごとに商店街活性化に向けた取り組みを行う。月1回はまちづくりに関する勉強会も行い、まちづくりへの理解を深めている。
この取り組みを通じて、訪日外国人のための「英訳商店街マップ」や若い人に商店街の魅力を伝えるためのSNSでの商店街情報発信プロジェクトなどが生まれている。これらは商店主を含めた商店街の悩みを高校生が解決しようと議論して、提案されたものであり、クリエイトまち塾を通じて商店街の活性化が図られるだけでなく、地域の象徴である商店街の人びとと年間通じて交流・議論することで、地域愛着が生まれている。
「クリエイトまち塾」を運営するのは、大学生と20代の若手社会人、そして商店主である。青森をもっと知りたいという県外出身学生、高校時代にクリエイトの活動に参加し、自分も高校生の支援をしたいという大学生など、その目的意識は多様だが、地元高校生活動支援という大きな目標のために一丸となり取り組んでいる。
「あおもり若者プロジェクト クリエイト」の創立の経緯は平成21年に遡る。県民悲願であった東北新幹線の全線開業まで約2年に迫っているのに、地域の盛り上がりが希薄であることに、当時高校生も含めた、初期メンバーが危機感を覚え、「観光資源がないのではなく隠れた観光資源に気づいていないのではないか。それを我々が掘り起こせばいい、市民の意識が足りないなら自分たちで市民の意識を高めればいい」との想いの下、活動をスタートさせた。
設立2年目からは中心商店街の活性化を見据え、商店主と連携した活動を展開している。年度により活動内容は異なるが、当初は商店街限定のミニFMラジオ放送や、高校生による観光情報サイトの運営を行った。最近は、高校生が運営する喫茶店「高校生カフェ」に取り組んでおり、現在24名の高校生が活動に参加している。
「クリエイトまち塾」は、今年で3年目を迎える通年型のまちづくりプログラムである。「商店街が学校になる」との考えのもと、商店街に少人数の「クラス」を複数設置し、商店街関係者や地元学生の指導のもと、月1回の「講義日」と随時「実践活動」を行っている。講義日は地域づくりに関係する学びの習得を目的として幅広いジャンルの方を毎回講師として招き、講義をしていただく。高校生は講義を聞いた後に20分間の質疑応答、60分のディスカッションを行っている。表面的にとどまらない連携が求められる取り組みであり、商店主は多大な時間と労力をかけて、月1回のホームルーム活動に臨んでいる。このように商店主はじめ商店街の負担は、決して軽くはない。それでも商店街の皆さんは「高校生に青森を知ってほしい」という想いに共感し、活動に参加している。
「クリエイトまち塾」は3年間で延べ80名以上の高校生を受け入れ、商店街と高校生のつながりを構築してきた。とりわけ「あおもり若者プロジェクト クリエイト」の活動フィールドである青森市は高卒者の人口流出が全国最悪である。これを解決するには、雇用対策も重要だが、並行して地域愛着を深め、「いつか青森に帰ろう」と思ってもらうことが必要と考えている。
【評価された点】
地元高校生を対象とした通年型街づくりプログラムは、商店街地域の愛着を深め、人材育成にもなっており、今後の発展性にも期待できる。
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■主催者賞
妻籠宿の景観と文化を次世代に継承したい |
長野県 公益財団法人妻籠を愛する会 |
【活動内容】
妻籠宿は江戸時代、江戸と京都を結ぶ五街道の一つである中山道の宿場として栄えた。しかし、明治に入り国道19号、鉄道が相次いで木曽川沿いに開通した。これらの交通網から全てはずれ、陸の孤島となり寒村への道をたどり始めた。太平洋戦争末期、多くの文化人が妻籠に疎開した。住民は彼らとの交流を通じ、質の高い文化に接していった。昭和39年、小学校長の呼びかけによりPTAの役員を中心にして民俗資料の収集が始まった。このことは、「どんな古いものでも捨てる前にもう一度考えなおす」「古いものは大事にしなければならない」という気持ちを植えつけた。昭和40年「宿場資料保存会」が組織され、妻籠全体の運動へと進んでいった。
行政においては長野県明治百年記念事業の一環として「妻籠宿保存事業」が採択され、妻籠宿再開発が開始された。同時期、妻籠全体の住民組織として「妻籠を愛する会」を発足させ、「売らない、貸さない、壊さない」の三原則を中心とする住民憲章を定めて、外部観光大資本に対抗する手段を講じながら保存の基盤を作った。
昭和51年9月「重要伝統的建造物群保存地区」に全国に先駆けて指定された。その面積は、1245.4ヘクタールで、江戸時代の妻籠村とほぼ同じ面積である。
昭和58年2月、「妻籠宿保存財団」設立、平成2年12月には従来の妻籠を愛する会と保存財団を一体とし、「財団法人妻籠を愛する会」に改組した。その後、平成25年4月より「公益財団法人妻籠を愛する会」に名称変更し、現在に至っている。
発足以降、景観を守りながら、毎年「文化文政風俗絵巻之行列」「妻籠冬期大学講座」等住民が学習しながら活動を続けている。
近年、中山道ウォーキングが盛んになり、隣の馬籠宿と妻籠宿を結ぶ中山道馬籠峠は外国人観光客にも大人気となっている。空き家となっていた一石栃立場茶屋を借り受け、平成21年より無料休憩所として開放。管理人を置き、旅人に湯茶を接待しながら、通行量等の統計調査も行っている。平成27年度のハイカーは4万2000人を超え、そのうち外国人は1万8000人と4割強を占める。ハイカーのために道普請・水普請として下草刈、水きりも定期的に行い、環境整備に努めている。トイレの洋式化、道標の多言語化、妻籠宿〜馬籠宿の荷物の運搬サービス等を行っている。
集落保存の原点は、住民が自ら保存することであり、その技能継承の一環として行っているのが「石置き板葺き屋根」の屋根返し作業である。また、次世代への継承という観点から、景観だけでなく無形文化の継承があり、「さいとろさし」という小鳥を捕える仕草を芸能にしたコミカルな踊りを続けている。妻籠地区の最大行事である11月23日の「文化文政風俗絵巻之行列」では、花嫁行列とともに皆に親しまれている。
新年4日には、新春放談会を開催。地域住民が事務所に集まり新年の決意や自身の思いを語る会である。平成19年からは放談会を開く前にかつての狼煙台跡や高台で狼煙揚げを始め、平成22年から木曽谷全体に呼びかけ一斉に狼煙揚げを行っている。今年は、北は奈良井城跡から南は馬籠峠の頂上まで全26か所で283名が参加し、新年の地区の行事として定着している。
妻籠宿は「集落保存」の先駆者であったが、町並み保存が全国に展開された現在、これからの妻籠宿は「どこよりも徹底した保存をしている所」でなければならないのである。言うまでもなく妻籠宿は、そこに住民が生活する生きた動態保存の宿場である。妻籠宿を形成するのは建造物もその一つではあるが、そこに住む人々が最も重要な要素であり、住民の心は住民自身で維持し、「初心忘るべからず」を妻籠の座右の銘として活動を継続している。
【評価された点】
昭和40年代に古い宿場町の景観を住民主体で保存する活動を始めたことは非常に先駆的である。以来、伝統建造物、美しい景観の保存、伝統芸能の継承に努め、後継者育成にもつとめ、継続的に活動に取り組んでいることは評価に値する。
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■主催者賞
子どもたち若者たちから始まる、地域社会の再構築 |
京都府 特定非営利活動法人よのなか塾 |
【活動内容】
活動のきかっけは、ひとりの高校中退者だった。高校中退を後悔していた女子生徒に対する「高卒程度認定試験」受験のための学習支援が活動のスタートとなった。
学習支援を始めると、様々な理由で学習環境が整わない方々が大勢いることを知り、理由を問わず学びたい意志がある方に対しての学習支援へと発展した。
よのなか塾に通っている人の中で、40代の方がいる。その方は「昔充分に学習する環境になかったためもう一度学び直し、勉強すればわかるようになるという自信を持ちたい」とのことで小中学生に混じって学習。一番苦手な英語で自信をつけようと中学1年生の学習からやり直し、英検5級から資格取得し、さらに上の級を目指している。また、ある方は、「肢体不自由で支援学校に通っていたが自分に合った学習内容ではなかったため、同じ世代が学習している勉強を私も同じようにしたい」との思いから学習。各教科とも中学1年生の学習から行い、この方の場合は「学び直し」ではなく、「初めての勉強」となる。
食事の提供を始めたきっかけは、いつもコンビニで購入したもので食事を済ませていた母子家庭の中学生がいたこと。夕方から食事を作ってみんなで食べてそれから学習に入れば、からだとこころとあたまの健康につながると思い、食事の提供を開始。
よのなか塾は利用する方を限定していないため、居場所には子どもから大人まで様々な年齢層の人が集まる。利用を限定すれば、当面の支援にはつながるかもしれないが、「そこに通っているということは、何か特別な事情を抱えているのか」と周囲から思われてしまうかもしれない、という当事者の不安を考えてしまうと活動ができない。周囲の目を気にして結局足が遠のくのであれば、本当にこの活動を必要としている方たちが利用できなくなり、本末転倒になるのではないか、と考える。
子ども食堂の食材を集めるためにフードドライブ(食材の寄付を受け付けるカゴを地域のお店などに置いてもらう活動)を行っている。社会に出ていくことのできない若者たちが、社会と再度つながるきっかけとなるよう、居場所に通っている若者たちが、集まった食材を集めて回っている。自分たちが食材を集めて回りそれが子どもたちへの食事となって提供されていることによって、自分も何かしらの役に立ったという自己肯定感の形成にもつながっている。このように小さなコミュニティが形成される中で、スタッフが何かしらの押し付けの支援をするのではなく、各々の自ら他者にかかわろうとする力を引き出せるよう活動している。
以前、活動などを通じて自信を取り戻し、数年ぶりに就職した若者が毎日のように居場所に来て掃除や物の整理を行っていた。「世話になった場所なので、今後僕のように通ってくる人が気持ちよく過ごせるように掃除と整理をした」と若者は話した。このように、誰かに直接的に恩を返すのではなく、同じような悩みや課題を持っただれかにその恩を返していく、そのような小さなサイクルができてきたように感じている。
現在よのなか塾では、日祝以外の毎日午前9時〜午後9時30分まで、学習支援と居場所の運営、子ども食堂は週3回、月水金に行っている。
よのなか塾の「よのなか」とは、いま生まれつつある小さなサイクルを少しずつよのなかに還元し、ほどよいおせっかいのあるよのなかに戻していきたいという思いを込めている。そのようになれば、この活動の役目は終了し、発展的解散をするというのが、究極の目標である。
【評価された点】
地域に隠れた問題を見出し、支援される人たちの今後の社会とのつながりに配慮しており、子どもの貧困対策や食品ロスにも資する取り組みを地域で自主的に行っている。
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■主催者賞
ピコ発電で過疎地の未来を照らそう! |
奈良県 殿川小水力発電研究会 |
【活動内容】
平成22年の年末から翌年年初にかけて、殿川地区では記録的な大雪となり、3日間停電し、地区の人々にとって忘れられない日となった。地区は標高500メートルの高台にあり、高地に位置する集落。水道や簡易水道がなく、生活用水は井戸水を汲み上げているため、停電時には水が使用できない。平成24年夏、自治会の3人が小水力発電で電気を自給しようと動き出した。
地区は吉野町の東部に位置し、10軒15人が住む。昭和22年に開村した戦後開拓地で、戦災者や海外引揚者が入植し、土地を開墾し家を建て、田畑や果樹畑づくりが行われた。昭和35年度の定着率は51%、49戸が入植し31戸が定着。入植者たちは、自分たちの子どもたちに同じ苦しい思いはさせまいと、村外で働くようにと言って聞かせた結果、若者の流出が続き、現在では急速な過疎高齢化に直面。また、かつて先人らが育てた果樹は伐採され、スギ・ヒノキ林へと転換された。それは、貴重な地域資源を失っただけでなく、戦後開拓地の当初の役割を終えたことを意味している。
殿川多目的集会所は災害発生時の避難場所。その前を流れる排水路の水を使い発電して、夜間足下を照らせるようにすることが決定。「殿川小水力発電研究会」が3人で結成され、電気の知識を学び、参考となる場所を視察して得られた知見を持ち寄り、仕事後の夜間に「実験」を続けた。製作に関して、廉価でかつ手に入りやすいよう、ホームセンターや百円ショップの物、構造は単純で耐久性があり、壊れた時に自分たちで直せることが条件とされた。試作機は平成24年の秋町民まつりで披露され、同年、集会所前に設けられたクリスマスツリーにイルミネーションが灯された。機材の電源には、水車で発電し充電したものを使用した。
研究会のメンバーは試行錯誤する日々が続いた。材料に、水車の直径が大きくなるよう27インチのホイールを選び、水の受け皿はその面積が稼げる四角いアルミトレーを選んだところ、定格の出力すら得られない。議論しながら、回る水車に顔を近づけたときに“風”に気が付く。殿川は山のピークにあるため、水が豊富ではない。水車設置予定場所においては毎秒数百ccという水で水車を回さなくてはならないという制約があるがゆえの問題発生であった。アルミトレーの平面部の面積が大きいということは、空中での空気抵抗も大きい。水車の直径が大きいと回転速度が上がらない。そうした目の前の現象から「理論」を学び、改善を加えた。平成25年初夏、もう1台の水車が完成。直径が1.6メートルある木製水車で、地産地消の観点により地区の山から木を切り出して材料とした。この水車の構想は、発電した電気を平時は自動車用バッテリーに充電し、緊急時にその電気を集会所へ供給すること。この年は、吉野町小水力利用推進協議会の協力もあり、1年間で300人が視察に訪れた。水車によって人が集まり地区は賑やかになった。その中で、「吉野共生プロジェクト」から研究会の活動が評価された。そして、ピコ発電から発展して我が村をどのような村にしていくのか、構想やそれを実現する計画づくり、村づくりの必要性に気づき動き始めたのであった。
研究会は72時間の電力供給という目標を達成するために、平成27年度は風力発電に使われる発電機の流用を試みた。発電量の増加を目指したが発電機の耐久性に難があることが判明し、案は再考を求められた。今年度については、より効率的に発電・充電できるようにとピコ水力発電に取り組む研究者とのプロジェクトを準備し始めている。また、今年度から大阪の大学生5名が活動に取組むため、支援体制を整える。
研究会のモットーは「ない」なら「作る!」。入植した第一世代が持っていた不屈の精神は、今でも住民に受け継がれ、殿川スピリッツと呼ばれている。今後も殿川スピリッツを忘れずに、自分たちの強みを生かした「尖る」集落であり続けられるよう努力していく。
【評価された点】
災害の経験から手作りで安価な小水力発電を開発し、地域の歴史をふまえて前進しようとしている点や発電により地域活性化につなげていこうとする取り組みは非常に先駆的である。
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■主催者賞
元快衆楽 一緒にやらんかな ふるさとづくり |
愛媛県 川津南やっちみる会 |
【活動内容】
同会は西予市の東部、高知県との県境に位置する山村にあり、戸数70余、人口は200余名。過疎化、高齢化が進展し高齢化率は50%に近い。
若者たちが、平成17年に「維新の会」を立ち上げ、平成21年西予市社会福祉推進事業調査が実施され、翌年「生き活き集落づくり事業」が始まり、「維新の会」を土台にして「川津南やっちみる会」を結成。
会員は住民全員、会費は1戸につき1000円、スローガンは「元気で長生き、快適で住み良い、衆民と助け合い、楽しい地域づくり」、つまり「元快衆楽」である。
平成22年度の発足以来、地域環境の整備を進める「住みよい故郷班」、住民同士が楽しく集う場を企画・提供する「楽しく集う故郷班」、高齢者の見守りや避難訓練などの福祉事業を推進する「笑顔で暮らせる故郷班」の3班体制で事業の推進と、班同士の連携を図ることで、川津南地域の活性化を推進してきた。
この5年間の活動は、避難訓練と夏祭り、なつかし写真館、どんど焼き、高齢者や若い母親を支援するワイワイサロン、コンニャク栽培とそのブランド化、ピザ釜の製作とピザ焼き体験、子どもたちとのビオトープ観察会やホタル鑑賞会など。
会の活動がスタートして5年が経過し、地域の現状を把握し直し、10年後の平成38年度を目標年度に計画を作り、以下のような新しい活動も始めることになった。
1.集落アンケートの実施
中学生以上の住民全員を対象に、22の質問項目のアンケートを実施、回答率は62%。活動に参加して、会の活動をある程度は評価しているものの、多くの住民自らが会員であると自覚して主体的に会の活動に参加するまでには至っていないことが伺われた。
2.組織のスリム化と活動のキーワード
「笑顔で住みよい故郷班」と「楽しく集う故郷班」の2班体制とし、人(リーダー)を作ること、大人が地域づくりを楽しむこと、全員参加して熟議することをキーワードとした。
3.西予ジオパークの活動
西予市が平成25年9月に日本ジオパークに認定され、川津南の「穴神洞穴」もジオポイントの1つとなり、来場者は年間300人程度から1300人以上にまで増加。4人の会員がガイド役を担当し、来訪者の対応。穴神洞穴探検とピザ焼き体験を提供し好評。
4.ワイワイサロンの充実
ワイワイサロンは集会所を会場に月2回の活動であったが、これを「和い和いカフェ」と改名し、使われなくなった旧消防詰所を改修して、はた織機も設置した。この旧消防詰所には特産品加工所「穂たる工房」も併設して整備、Iターン女性の責任者がコンニャクを生地に練り込んだ「あげパン」を開発。「大人が地域づくりを楽しむこと」を実践。
5.村の宝物を生かしたい
昭和初期に造られた村四国八十八カ所、明治に造られた325段の階段。この2つの宝を保存し、活用できないか、若い世代の会員たちが検討し始めた。
【評価された点】
◎全員参加、熟議による楽しく無理のない「元快衆楽」づくり。
◎小さな集落の活動だが、地域の特性を活かしながら、少しずつ広がりをみせている。
◎地域の全住民が会員の会を立ち上げ、「大人が地域づくりを楽しむ」原則の下、様々な取り組みを行っていることは特徴的。
◎地域整備、集う場の企画、福祉事業による活性化の推進に加え、全戸を対象としたアンケートを実施した今後の活動方針の検討の取り組みは他の模範となる好例。
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■振興奨励賞 |
北海道 釧路鳥取てらこや 地育―地域全体で子どもを育む― |
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北海道 くしろ高齢者劇団 芝居で「特殊詐欺被害」から高齢者を護る! |
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青森県 認定特定非営利活動法人斗南どんどこ健康村 ふるさとの歴史や文化を子どもたちに伝えよう |
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岩手県 まんまるママいわて 震災後、産科過疎地域での母子支援活動 |
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宮城県 Social Academy寺子屋 子どもを基軸にすえた復興自立推進事業 |
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宮城県 特定非営利活動法人にじいろクレヨン 石巻上釜地区・のくのくハウスプロジェクト |
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埼玉県 柳瀬川をきれいにする会 柳瀬川における清掃や放流等の自然愛護活動 |
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千葉県 岩瀬自治会 新しい自治会イメージ創造 |
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千葉県 NPO法人もりのこびとたち わらべうたを通した親子の居場所・心のよりどころづくり |
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東京都 西原自然公園を育成する会 生活文化遺産 武蔵野の雑木林を若返らせる活動 |
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神奈川県 NPO法人ミニシティ・プラス 子ども・青少年の社会参画 |
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新潟県 特定非営利活動法人中越防災フロンティア 除雪ボランティアの育成と地域活性化 |
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新潟県 宇津尾集落 過疎集落を維持、まもる活動 |
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福井県 北中山まちづくり委員会 北中山まちづくり委員会の活動 |
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山梨県 認定特定非営利活動法人フードバンク山梨 食品ロス削減と困窮者支援で地域の縁を再生 |
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岐阜県 岐阜県立大垣養老高等学校 瓢箪倶楽部秀吉 食用ヒョウタンで地域を救え!―瓢箪倶楽部秀吉の挑戦― |
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静岡県 認定NPO法人丸子まちづくり協議会 自助、共助で立ち上がる、丸子のまちづくり |
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愛知県 下町自主防災会 自立した自分たちの地域防災活動をめざして |
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愛知県 岡田ゆめみたい まちづくり、まちの活性化 |
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兵庫県 「ぐるっと生瀬」運行協議会 コミバスで人をつなぎ、まちを豊かに |
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奈良県 やまと郡山環境を良くする市民の会 環境が良くなったと言われる街づくり |
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広島県 高美台生活学校坂道 三世代大きな輪になって―人の輪 話の輪 心の輪― |
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山口県 楢原ゆうあい会 危機がバネ、花咲ジジ、ババ物語 |
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熊本県 美里フットパス協会 地域を歩き、交流し、地域の元気を生む |
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大分県 NPO法人岡原花咲かそう会 花と緑で活力ある地域づくり |
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