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27年度の受賞団体概要
 独自の発想により全国各地で活発に展開されている地域づくり・くらしづくり・ひとづくりの活動に取り組んでいる地域活動団体等を表彰する、平成27年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(主催・公益財団法人あしたの日本を創る協会、NHK、読売新聞東京本社など)の各賞が以下の通り決定しました。

■内閣総理大臣賞
山形県 特定非営利活動法人えき・まちネットこまつ

■内閣官房長官賞
東京都 特定非営利活動法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク

■総務大臣賞
埼玉県 芝園団地自治会

■主催者賞
北海道 西神楽エコ農村共生対流推進協議会
福島県 特定非営利活動法人チームふくしま
長野県 nanoda
兵庫県 猪名寺自治会
広島県 青河自治振興会
熊本県 中山間松尾集落


また、振興奨励賞には26団体が選ばれました。今年度の応募総数は225編。
 それぞれの活動レポートを収録した「あしたのまち・くらしづくり2015年度版」(定価1000円、送料340円)は11月下旬頃発行予定。
メール ashita@ashita.or.jp
内閣総理大臣賞
高校生と共に歩む町民駅中心のまちづくり
山形県 特定非営利活動法人えき・まちネットこまつ
【活動内容】
 平成17年、町民駅を管理する「町民駅業務管理組合」の廃止計画を知った地元の置賜農業高校の「えき・まち活性化プロジェクト」のメンバーは、「業務管理組合の廃止は駅の無人化につながる」と考え、有人駅の存続を訴える活動を平成18年4月から開始し、地域住民とともにまちづくりに取り組む。この活動は10年間もの長きにわたり代々受け継がれ現在に至っている。
この10年間の取り組みは、
① 1年目、農業高校の生産物等の直売店を駅前で開催し、住民に対して「有人駅の存続」や「その必要性」を訴える活動を展開。さらに駅周辺の美化活動や駅前通りの花いっぱい運動に取り組む(新聞等マスコミにも取り上げられる)。
② 2年目、毎週土曜日開店の駅前産直は定例化。JR米沢駅の要請でベント列車でのおもてなし等を実施。有人駅の必要性を訴える「えき・まちフォーラム」を開催し、180名もの町民が来場し、有人駅存続の機運が高まり、「町民駅利活用促進検討委員会」が設立した。
③ 3年目、第2回「えき・まちフォーラム」には全国から200名を超える人たちが来場し、これを機に、高校生と住民のまちづくり団体「えき・まちネットこまつ」の設立準備委員会がスタート。まちなか活性化事業(朝市、駅から高校まで花で飾るフラワーロードなど)を住民と一体化した形で実現した。
④ 4年目、「乗車駅としての役割だけでは住民全体の協力は得られない。」という総括から「町民駅を中心としたまちづくり」に取り組む。住民が駅舎内で憩える場所を提供する「和Cafè」を創設。駅舎内で歌声喫茶や囲碁将棋を開催する「憩いの停車場」などコミュニティの拠点活動を展開し、駅の注目度が一気に向上した。
⑤ 5年目は、有人駅の存続が決定。平成22年2月に任意団体「えき・まちネットこまつ」が誕生。駅を起点にまちなかを巡る観光プランが、全国高校生観光プランニングコンテストで最優秀賞グランプリを受賞。
⑥ 5~7年目、高校生が住民とともに歩み始めた「えき・まちネットこまつ」は、「町民駅中心のまちづくり」をテーマに掲げ、駅前通りの活性化に取り組む。空き店舗を利用した高校生と若者のチャレンジショップ&まちなかCafe、まちなか交流プラザを開設。秋には駅前通りの歩行者天国、駅前夕市やサンセットコンサート、冬の駅前イルミネーション、雪まつりなど年間を通したイベントを開催。
⑦ 8~9年目、子どもたちを中心としたペーパーダリヤ、わら・つる細工、絵手紙、昔語り、郷土料理などの講習会を開催し、延べ500名以上の子どもたちが受講した。
⑧ 10年目(平成26年度)、総務省の過疎対策事業として認定を受け、駅前通りに新しい住民拠点として地域生活サポートセンターが完成。地元の宝物を首都圏に紹介し、農村と都会の交流を促進する事業をスタート。同事業がバージョンアップし、27年度も継続される。
 高校生の駅に対する純真な思いからスタートし、高校生と住民が一体となったまちおこしにつながっている。この10年間の取り組みは、高校生が先輩から後輩へと襷をつないできた活動であり、次世代の主役たる若者が地域の課題解決に向けて息長く継続してきた所産でもある。さらに、その若者の気概や取り組みを真摯に受取った大人が、サポートだけでなく共有や協働の取り組みにまで発展させた結果、住民の自治意識醸成や数々の活性化事業への発展実現につながっている。

【評価された点】
 駅の無人化問題を機に、地元の高校生が中心となり住民とともにまちづくり、地域活性化に取り組み、様々なイベントの開催やコミュニティ活動を展開し、成果を上げている。一過性に終わることなく後輩に引き継がれ、継続している点が高く評価された。
内閣官房長官賞
地域を変える/子どもが変わる/未来を変える
東京都 特定非営利活動法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク
【活動内容】
「全ての子どもがおとなになることにワクワクしてほしい!」そんな思いを込め、平成24年に豊島子どもWAKUWAKUネットワーク設立。きっかけは、平成23年の夏の終わり、代表の栗林さんに、プレーパークで顔見知りだった中学3年生T君がつぶやいた言葉だった。「オレ、高校行けるか分からない…」自称他称おせっかいおばさんこと栗林さんは聞き逃さなかった。
 そして栗林家を開放した無料塾が始まった。夕食も500円以内のコンビニ弁当から、栗林家での夕食に。「だって悪いよ」「だって迷惑でしょ」「だって」が口癖の彼に、どうか自身の自己肯定感が育つようにと全てを肯定し、時間と想いを注いだ。
 10月下旬、T君サポーター(講師)を学生4人に依頼し、学習支援を続けることになった。学生サポーターは、プレーパークで一番子どもの気持ちに寄り添える学生ボランティアたち。学生サポーターも、T君を支える実感に、やりがいと希望を持って関わってくれた。
 その後栗林さんがT君の母親に会い、地域の個人塾にT君を繋げるため、母親に都の助成金を申請して、受験準備の塾代金20万円と高校受験料免除の手続きを勧めた。これには保証人が必要だが、孤立している母子に保証人の当てがない。そこで栗林さんが引き受けた。高校進学すれば償還免除だが、進学しないと返済義務がある。「地域の子どもを、地域で一緒に支えてほしい」と地域の仲間に相談。カンパを募り、1か月間で約100名のサポーターとカンパ11万円が集まった。プライバシー保護と個人情報に配慮しつつ、信頼できる人から人への有機的なつながりで、T君の現状をリアルに伝えたことが、結果的に「子どもの貧困」という見えにくい問題を、地域の方に知ってもらう機会となった。
 シングルマザーのT君の母親は、テレビ取材を受けた際に当時をこう振り返った。「誰かに相談する余裕がなかった。栗林さんはあえてそこを立ち入ってくださった。有難かった」生活にゆとりがなくいっぱいいっぱいになっている人は、自分から助けてということが出来ない。だからこそ、地域のおせっかいが必要だ、と栗林さんは言う。
 平成25年3月には、「要町あさやけ子ども食堂」をオープン。子どもが一人だけでも入れる食堂と銘打ち、第1第3水曜日に夕食を300円で提供する。場所は、店主の山田さんの一軒家。奥さんを亡くし一人暮らしだった山田さん。食材、調理スタッフ、子どもは来るか。心配はあったが、奥さんの残してくれた地域のネットワークのお陰でオープン出来た。
 「あさやけ子ども食堂」には、親の帰りが遅く夕食を一人だけで食べていた子や、不登校だった子、赤ちゃん連れのシングルマザーなどが立ち寄る。みんなで同じご飯を一緒に食べ、幼児から高校生の年代の子までが、一緒に遊ぶ。
 食事は調理スタッフに加え、学生からお年寄りまで老若男女が入りまじり、みんなで作る。ボランティアにとっても、ここが居場所になっているという。
 平成26年11月からは、「夜の児童館」を始めた。お寺を借りて、毎週火曜日16時から20時まで。孤食の子どもたちが対象。大学生のお兄さんお姉さんと宿題をし、遊び、手づくりの夕食をみんなで食べる。家庭的な時間の提供を心がけている。
 学びサポート、暮らしサポート、遊びサポートの3本柱で、豊島子どもWAKUWAKUネットワークは、地域の子どもと家庭を支えるために、これからもさらなる活動を展開させていく。

【評価された点】
 地域にも見えにくい「子どもの貧困」という問題に対し、都市部において様々な居場所づくりとネットワークの構築を進めていることなどが高く評価された。
総務大臣賞
開かれた自治会構想
埼玉県 芝園団地自治会
【活動内容】
 川口市にある芝園団地は1979年に建設された約2500戸のマンモス団地。日本人住民の高齢化と外国人住民の増加により2015年1月には日本人と外国人の住民の割合はほぼ半々となっている。文化差に加えて世代間ギャップも存在する地域コミュニティの質的変化に対して、「開かれた自治会」作りを進めており、次のような活動を実施している。

① 防災を通じた住民間の関係作り
 中国人住民との小さな関係作りから始めようと防災講習会を開催。団地内の広場にいる外国人住民の奥さまなどに、防災講習会の開催について一人一人説明しながら、少しずつ顔見知りを増やす活動を行った。
② 近隣の大学生との関係構築
 芝園団地に若い力を呼び込もうと、大学生に地域の自治会活動に協力してもらうことを模索。コミュニティ形成を専門とする大学教授にゼミ生と交渉したい旨をメールし、多文化共生に関連するセミナーなどに参加し、その場の大学生に声を掛けて活動趣旨を説明して協力依頼。結果、5つの大学の学生たちが芝園団地の活動に興味を持ってくれた。
③ 「芝園にぎわいフェスタ」を通じた様々な組織との連携
 芝園団地商店会が開催する国際交流イベント「芝園にぎわいフェスタ」に、自治会も熱心に協力し相互の連携を強めた。イベントでは、UR都市機構、市役所、日中交流協会、埼玉県行政書士会、早稲田大学早田宰研究室などと協働。また、地元の芝園公民館を利用する中国人住民だけで構成されるバトミントンクラブや、地元の幼稚園を利用する中国人住民の奥さまたちにもブースを出店してもらうなど、国籍を超えた人々や、個々の利害を超えた組織の協働も進めることができた。さらに、イベントにボランティアとして協力してくれた東京大学の学生2名から、地域活動を住民と一緒に継続していきたい提案があり、「芝園かけはしプロジェクト」として、地域コミュニティを活性させる活動を立ち上げた。当初2名で開始、現在は10名となっている。
④ 大学生によるアートプロジェクト
 大学生の具体的な活動の第一弾として、平成27年4月に落書き消しプロジェクトを実施。外国人住民に対する心無い落書きのある机を見た大学生は、「日本人として、この落書きを恥ずかしい」と感じ、芝園団地の日中住民を集めて一つのアート作品を創り上げて、日中友好のシンボルに変えたいと考えてくれた。大学生自らが、自治会だけでなく商店会やUR都市機構とも打ち合わせを重ね、“国籍・年齢を問わず誰もが住みやすい街作り”に向けて、様々な組織による協働を実現できた。
⑤ 中国人住民の自治会役員の誕生
 2015年度の自治会年次総会にて、初めて中国人住民の役員が1名誕生。中国人住民の自治会役員との協力を通じて、今後も更なる相互理解を促していきたい。

【評価された点】
・大学生との連携など活動歴の長い郊外団地自治会による多文化主義に向けた殻を破る活動であり、役員に外国人が就任している点。
・都市部の限界集落団地は多いが外国人との共生を目指した点が非常にユニークで、今後の日本を考えると参考になる事業であること。
・大規模な団地自治会における高齢化と国際化に対する開かれた自治会作り。
主催者賞
死ぬまで元気で地域で暮らす!(シャングリラ計画)
北海道 西神楽エコ農村共生対流推進協議会
【活動内容】
 北海道旭川市南西部に位置する西神楽地域は田園地帯である。旭川市の中心市街地に近いため、都市的利便環境と田園環境との両方を享受できる地域である。
 近年、少子高齢化が急速に進み、西神楽の四つの地区(瑞穂・中央・聖和・千代ヶ丘)の人口は平成10年から15年間で1000人も減少し約3500人(平成25年)、高齢化率は43.3%である。人口高齢化に伴う諸課題や、農村に滞在して農作業を体験し安全な食を確保したいなど都市住民の意向に対応すべく、農村住民の冬期集住と都市住民の二地域居住を組み合わせた「新たな地域共同体」のあり方を提案した。
 聖和地区での冬期集住は、一人暮らしの高齢者に対して冬期生活を支援するため、高齢者が4人1組となって、改修した空き家で生活し、食事の宅配サービスを受けるという取り組みである。試行に参加した18名からは「除雪から解放される、共同生活により安心感がある、一人暮らしより便利」などの感想が多く、ほぼ全員が満足という結果となり、この取り組みが当地域の高齢者に大きな安心感をもたらした。また、マスコミの取材により地域に周知され、取り組みが浸透している。これにより、地域内企業からの集住施設の除雪支援や、集住施設の近隣住民からの様々な支援(副食の提供や施設訪問支援)を受けるなど、互助の高まりがあったことは大きな成果であった。さらに、本州在住者を対象とする二地域居住にも取り組んでいる。本州在住者が6月から10月くらいの期間にかけて西神楽地域の空き家を借りて家族で居住し、菜園での作物づくりや周辺農家への援農などを行うことにより、うるおいのある暮らしを体感する取り組みである。これにより得た家賃を冬期集住の経費に活用し、年間通じて空き家を活用するシステムを構築している。
 西神楽の四つの地区の市民委員会・老人会を中心とした住民組織と、地域NPOや各種地域団体と地元企業のCSR活動にて参加協力体制が構築されている。また、旭川市や北海道開発局の河川・道路・農業部門との連携も様々な場面で実施され多くの成果を残してきた。
 小規模高齢農家や大規模農家に向けて、農業支援員制度導入協議会を立ち上げ、都市の若者等が有休時間を活用した農業支援を行うための地域ライセンス取得の研修を実施し、様々な場面で援農支援を試行してきた。また、新たな直売所の創設や販路拡大・朝市・夕市など小規模高齢農家支援に向けた取り組みも各種取り組んでいる。施設農業者向けには、CSR照明導入により生産性の向上で製品出荷量の向上を図り、今後地域ソーラー発電による農業エネルギー自給に向けた取り組みも着手したところである。
 生活環境整備では、通院送迎サービスや買い物支援サービスも利用者が増加してきている。冬期間の除雪は、都市住民の夏場のパークゴルフ場利用者に利用券を提供することで除雪ボランティアが登録され、都市と農村の交流が進んでいる。さらに地域の空き家情報を整備する中で、旭川市とも連携し移住者の体験入居や空き家情報提供を現地案内し、新規就農プログラムで施設農業の促進に向けた様々な情報提供を行っている。
 瑞穂地域のさと川パークゴルフ場は、地域自らが造成し維持管理・運営を行っている。シーズン4万人以上が来場し、売り上げは1800万円近くになり、65歳以上の高齢者14名が雇用され全国でも初めての試みで11年目を迎えた。冬期集住・二地域居住プロジェクトでは、6年目を迎える。さらに、西神楽発の「ウインターサーカス」は、富良野・美瑛・トマムの広域で、NXCO東日本を始め多くの団体や企業・デザイナーが参画し10年目を迎える。

【評価された点】
 高齢化による地域の活力低下を避けるために、新たな居住形態を踏まえた農村整備、集住の仕組みづくり、多様な団体と連携している点等、総合的コミュニティ・ディベロップメントとして他の参考となる点が評価された。
主催者賞
福島ひまわり里親プロジェクト
福島県 特定非営利活動法人チームふくしま
【活動内容】
 福島ひまわり里親プロジェクトは、2011年5月にスタートし、今年で5年目を迎えた。日本全国と福島をひまわりで結び、全国で累計10万人以上が参加し、参加教育団体数は累計1500校を超える。
 震災の影響を受けた福島県二本松市の知的障がい者通所施設の特定非営利活動法人和(なごみ)に、ひまわりの種のパック詰めを依頼。全国で、その種を購入し、育て、花を咲かせてもらい、採れた種を福島に送り返す「里親」を募集。これまで全国から送られた5トン以上の種は、福島県内に無料配布し、2012年9000袋、2013年16000袋、2014年20000袋、2015年25000袋以上にのぼる。福島県内の市有地、小中高、大学、教育委員会などの教育機関、観光地で、全国から送られた種が育てられ、復興のシンボルとしてひまわりを咲かせることで、修学旅行の誘致、観光振興をはかる。また、福島県内で花を咲かせ、福島で採れた種は、郡山市の福祉作業所にんじん舎で搾油、二本松市福祉作業所菊の里にて油からバイオエネルギーにし、最終的にはバスのエネルギーの一部として活用されている。
 福島ひまわり里親プロジェクトは、雇用対策、観光対策、教育対策の3つの目標を掲げる。
 雇用対策としては、東日本大震災後、仕事が激減した状況から、ひまわりをきっかけに仕事をうみだし、被災地での障がい者の自立支援をめざしている。
 観光対策としては、誘客の手段として、ひまわりを活用し、福島県内の観光地などに全国からの想いのつまったひまわりを咲かせ、観光名所を作ると共に、ひまわり見学ツアーや交流イベントを開催、観光振興をはかる。
 教育対策としては、里親を継続して募集し、日本全国で福島の復興を願うひまわりが咲き誇ることにより、震災教育・防災教育の糸口となっている。ひまわりの種を通じて全国と福島の学校同士の交流や、学校と地域、親子の交流が生まれ、中学校公民教科書副読本、福島県教育委員会発行の道徳教育教材で、このプロジェクトのことが掲載された。
 遠隔地でも種を購入し育てることで、被災地の支援が可能となり、被災地に赴くことが難しい主婦、高齢者、障がい者、子どもなど、老若男女問わず復興支援を継続的に行うことができる。
 産官学、ボランティア団体、海外、全国のひまわりのネットワーク、町内会と社会福祉協議会、福島県内の旅館組合、まちづくり団体、学校、福島交通、福祉施設などの新しいネットワークが構築され、京都宇治市の企業の事例では、ひまわりの種取りを地域の福祉作業施設に依頼し、仕事と交流をうみだした。
 また、過疎化の進む福島県田村市大越町でのひまわり結婚式の開催や、福島県福島市曽根田駅での全国から届いた応援メッセージの展示と駅周辺の地域での住民によるひまわりの栽培など、地域おこし活動にもつながっている。
 ひまわりを通じて生まれた物語を発表する「ひまわり甲子園」の地方大会を今年度は5地区で開催。それぞれの地域でプロジェクトに取り組む学校、企業、個人などが集まることで、地域の繋がりが深まるとともに、東日本大震災の風化対策、防災・道徳教育につながる場となっている。全国的に東日本大震災の風化が進んでおり、福島の子どもが福島の現状や震災での気づきを自分の言葉で講話することで、同世代の子どもたちにより伝わりやすいことが期待される。

【評価された点】
 ひまわりの種を通じて、震災復興支援として全国からの支援を可能にした仕組み作り。福島を起点に全国の多くの方々と一緒に地域づくりを行い、この取り組みを中心に教育や福祉作業所の雇用にもつなげている点が評価された。
主催者賞
空き家から始まる商店街の賑わい創出プロジェクト nanoda(なのだ)
長野県 nanoda
【活動内容】
 2011年から「50年後の塩尻市が豊かであるために」を主要テーマに、市役所職員は何をするべきか、持続可能な自治体経営をするために何が必要かを考え、対話し、行動に移すことを目的に、毎月、勉強会「しおラボ」を開催。「ワールドカフェ」というワークショップの手法を用い、各回とも勉強会の最後に、明日から自らが取り組む課題を、参加者全員の前で宣言する(「プロミスカード」)。nanodaのアイデアは、2012年に行われた勉強会で「魅力ある商店街を考える」をテーマに話し合いが行われた際に誕生。「まずは自分たちが商店街に身を置こう、住んだことも商いをしたこともないのでは課題を解決できない」と考え、「商店街で空き家を借ります」と宣言し、そこから活動がスタートした。
 大門商店街の空き家を借り受け、当初は、塩尻市役所職員の有志を中心としたメンバーが1人月1000円払うという方法で共同運営を始めた。このスペースの名前をnanodaと名づけ、商店街の賑わいを創出すべく、テーマごとに「○○なのだ」と銘うち、様々なイベントを実施。メインとなるイベントは「朝食なのだ」、「ワインなのだ」、「空き家をお掃除なのだ」等。「朝食なのだ」では、週末の朝に、nanodaに集まり、みんなで朝食を食べそれぞれの仕事に出勤。「ワインなのだ」では日本ソムリエ協会が定めた毎月20日の「ワインの日」にnanodaに集まり、塩尻ワインの振興を目的とし、塩尻の名産品である塩尻ワインを飲む機会を設け、7月で36回目の開催となり、3周年を迎えた。「空き家をお掃除なのだ」では商店街の空き家をメンバーで掃除をし、建物の所有者と一緒に食事会を行い、昔の商店街の様子や抱えている課題などの話を聞く。
 若手職員自身が地域の人々と出会い、学びながら、商店街の賑わいづくりに携わり、商店街の現状・課題を知る活動を実施。nanodaは、地域住民や地域外の若者など興味・関心に惹かれた多様な人が集まる場となり、イベントが生まれ、プロジェクトが生まれ、ビジネスが生まれている。商店街の空き家再生から移住者にもつながる展開もなされている。
 行政職員のボランティア活動として、職員個人が個人の裁量で活動が行われることは多くあるが、若手職員の育成という視点を持って、業務外で取り組まれている行政職員主体の活動は全国でも珍しく、このような職員の活動は市役所からも応援され、塩尻市の将来像を考える市民対話型ワークショップ企画「塩尻未来会議」の運営・ファシリテーターもつとめている。

【評価された点】
 市役所職員自らが地域の一員として、活動を実践して、多くの人を巻き込んでいる。もっとも地域に近い市役所職員が自ら地域に飛び込んでいる取り組みが評価された。
主催者賞
住んでみたい、行ってみたいと憧れるまち 猪名寺をめざして
兵庫県 猪名寺自治会
【活動内容】
 毎年、確実に少子高齢化は進み、地域の活力が失われつつあった猪名寺の現状を打破するため、猪名寺自治会は、平成21年の定期総会でまちの夢・目標を「住んでみたい、行ってみたいとあこがれるまち猪名寺」「誇りをもって、楽しく、生き生きとくらせるまち猪名寺」とする、「猪名寺まちづくりステップ計画」(平成21~28年度)を採択した。
 また、夢・目標への地域住民の想いを共有し、住民自身の夢・目標とするため、平成21年に地域住民へのアンケート調査を実施した。アンケート結果(回収672世帯、回収率88%)は、1位 バリアフリーのまちづくり(232人)、2位 住環境の整備(227人)、3位 地元農産物など地産地消(151人)、4位 佐璞丘公園の整備(135人)。猪名寺の地域課題が浮き彫りにされた。
 平成21年には、自治会が中心になり、猪名寺10年の悲願、JR猪名寺駅EV(エレベータ)設置活動に取り組んだ。地域の各団体に緊急に「EV設置一万人署名」行動を提案。企業や地縁団体の協力もあり、約1か月で1万1350名の署名を達成した。平成23年3月に4基のEVが総額6億円かけて完成した。
 この活動の中で、要請行動だけでなく、自分たち自身がもっと協働して地域を良くしようという意識が住民の中に芽生え、その後も、車椅子も含めた道路・歩道の障害物、段差、街路灯、公園など地域一斉点検行動を実施し、地域で話し合い課題を洗い出し、行政と協働して24項目のバリアフリーを実現した。
 猪名寺佐璞丘にある約2万平方メートルの森は、エノキ・ムクノキが蘇生する貴重な河畔林。万葉時代には「猪名の笹原」として、百人一首にも詠まれた景勝地で、古代には法隆寺式伽藍の寺院が建立された歴史的な森でもある。
 しかし、何年も手入れがされておらず、ゴミの不法投棄の場となり、シュロなどの外来樹が覆いカラスが群れる暗い森で、地域でも敬遠される場所となっていた。
 そこで平成22年9月に、歴史ある森として、価値を再発見し、地域の子どもたちの環境・歴史教育の場、子どもからお年寄りまでが憩える明るい森に再生しようと、「万葉の森・佐璞丘再生プロジェクト」を設立。シュロ伐採(560本)、散策道の整備、森の管理作業を継続的に実施。その他、子ども、大学生なども参加する佐璞丘再生ワークショップや佐璞丘万葉コンサートの開催など、今では明るい森、憩いの森として、世代間の地域コミュニティの場となっている。
 安全な地元農産物の提供は、丹波篠山の雲部地区との都市と農村交流で実現している。尼崎市内での地産地消は難しく、尼崎に近い「くもべまちづくり協議会」と出会い、それを契機に、雲部から来る2ヶ月に一度の軽トラ野菜市や、年に一度の丹波黒豆の特産市を開催している。
 また、猪名寺は人気アニメ「忍たま乱太郎」の聖地でもあり、主人公「猪名寺乱太郎」の姓はこの地名から来ていることもあり、万葉の森・佐璞丘で、猪名寺忍者学校を開設している。子どもたちが忍者となり、猪名寺の自然や歴史を体験・学習することで、地域への誇りと愛着を持ってもらうことが目的。全員忍者の衣装に身を包み、手裏剣・剣術、木登り、綱渡り、まと当て、樹木を使った犯人捜し、暗号伝達などを修業し、卒業試験も行う。
 忍たま乱太郎の影響もあり、猪名寺にはここ数年、歴史探訪と合わせ猪名寺を訪れる人が増え、ファミリー層の転入者も増え、自治会にも積極的に加入してくれている。
 猪名寺自洽会がめざす「住んでみたい、行ってみたいとあこがれるまち猪名寺」「誇りをもって、楽しく生き生きとくらせるまち猪名寺」の夢は、そこまで来ている。

【評価された点】
住民の要望をアンケートにより調査し、ステップ計画策定。それを着実に実現している点が評価された。
主催者賞
地域再生は地域が主体となって行うもの
広島県 青河自治振興会
【活動内容】
 三次市は19自治組織で構成され、その一つの青河町は人口500人弱で最も小さい町。この町全てを統括する組織として「青河自治振興会」を結成し、町内で活動する個人・企業・団体・集合体など全てが参加。青河自治振興会では合併後、地域の方向性を定める「青河ビジョン」を策定して、地域が主体となって地域再生に取り組んでいる。
①地域おこし会社「有限会社ブルーリバー」
 地区の小学校は児童数が近年では50人を下回るまで減少しており、廃校になった場合に地域が寂れる懸念から、小学校を守る活動に賛同した地域住民9人が出資金を出して、地域おこし会社「有限会社ブルーリバー」を立ち上げた。
 地域の価値観を高める、児童数の確保、人口減少に歯止めをかけることを目的に事業を行い、出資金は一人100万円、会社を脱退しても出資金は返さない、配当金や給料は出さない仕組みとした。しかしながら、資本金900万円では事業資金には不足するので、不足分は地元信用金庫とJA三次からの借り入れで賄った。
 大勢の誘致を目指すのではなく、人口500人弱の地域に見合った人口誘致を図った。住宅の建設場所を選定し、コスト削減の為、宅地の整理や造成は住民が自力で行った。建物はオール電化で合併処理施設をつけ、我々自身が住みたいと思える住宅にした。入居者は、小学生以下の子どもがいる家庭、地域行事には積極的に参加すること、必ず青河小学校へ通学することを条件とし、平成15年3月に2棟の住宅が完成し、即座に入居が決まった。
 こうして現在、ブルーリバーで管理する住宅は新築6棟、空家改装5棟に、10家族42人を受け入れている。その他、お試し住宅として入居や三次市の空き家バンクをきっかけに移住した家族を合わせると、計14家族63人が新たな青河の住民となった。
 低価格の賃貸事業でも経営の安定化を図るため。平成25年5月から太陽光発電を設置し、売電による収益で住宅経営を安定させることとした。
 移住者の就労場所について、ブルーリバーでは独自に地元の養鶏場と手を組みパートではあるが働ける場所の用意をしている。
②暮らしサポート事業
 地域の実情に即した社会福祉を求めて独自の創意工夫をしている「暮らしサポート事業」。輸送部門は法規制が厳しいため、様々な事業を組み合わせている。財源は、住民の理解を得て、各戸から利用の有無に関係なく平等に負担してもらっている。
・「お頼み事業者紹介」住民が自宅の修繕などで困ったとき事業者を紹介(実費)
・「代行サポート」委任状をもらって金融機関や行政庁への代行(無料)
・「知識・情報サポート」広報誌の作成や各種情報の提供相談(無料)
・「輸送サポート」買い物や通院など移動手段に困っている方を支援(無料)
・「その他お楽しみサポート」地域が関係する様々なイベント企画や支援(無料)
③朝市「よりんさい屋」
 青河の住民グループで始めた朝市「よりんさい屋」は、平成25年5月から開始した任意団体、自家消費用に作った野菜の余剰部分が販売でき、高齢者の交流の場となっている。高齢女性が主体的に活動しているが、店舗を運営するスタッフは1万円の出資が必要。出荷は町民が誰でもできるが、手数料として売上の10%を支払う。店番は無償ボランティアでスタッフが担う。開設初年度は185万円の売上から26年度は255万円に増大し高齢者の活力になっている。

【評価された点】
 「地域に見合った人口誘致」という考え方、増える空き家対策を民間主体で実現している点、消滅不可能自治体・自治会へのアイデアなど、他の地域の参考になるシステムである点などが評価された。
主催者賞
子どもたちの笑い声が響きあう集落づくり
熊本県 中山間松尾集落
【活動内容】
 松尾集落は、戦後の昭和29年須恵村の次三男対策で国有林が払い下げられ松尾開拓団として開拓入植したことから始まった。開拓団の入植者戸数は8戸、平均2ヘクタールの耕作地と薪炭林が財産である。平成11年に農林水産省所管である中山間地域等直接支払い事業が開始されこの事業の交付に係る集落協定の認定がなされた。これを契機として活動の基礎となる中山間松尾集落の組織作りが行われた。現在集落内の4戸と集落内に農地を持つ隣接地区の2戸を併せた6戸により第4次の中山間松尾集落として約17ヘクタールを維持管理している。
 構成員は、男性6名女性2名で活動している。
1.共同作業による耕作放棄地の解消
 労働人口が不足しているため中山間松尾集落の共同取組活動として、草刈りなどの耕作地管理及び作業道管理を行っている。
2.遠山桜祭りの開催
 集落の中にある一本桜を遠山桜と名付け桜祭りを開催し、山菜や漬物を販売することにした。3年前からは、歩行者の安全と自然環境を保護するために無償のシャトルバスを行政と共に運行している。地元高校の馬術部や催事販売店舗、地元商店などに声をかけて祭りの規模を拡大している。
3.ワラビ狩り・栗狩りツアー体験の実施
 ワラビ狩りやあさぎりグリーンツーリズム研究会とタイアップした栗狩りツアーを実施している。松尾集落内の共同取組活動栗園を開放してツアー客に収穫体験をしてもらう。農家民泊や栗料理体験等他で味わうことのできない郷土料理でおもてなしをしている。共同取組活動栗園は、地元小学校と提携しており栗ひろいに招待して将来の消費者を育てている。
4.古民家をリフォームして集える場所に
 築60年、離農したブロック家をリフォームして集落民や来客者の休憩所を作った。この休憩所は、さくら庵と名付け中山間活動のベースとなっている。
5.学生たちと地域活性化の提言
 あさぎり町は熊本県立大学と地域提言プログラムで包括提携を結んでおり「KUMAJECT」プログラムを4年間継続開催している。限界集落からの脱却の方法や活性化の手だて等若い発想と行動力に期待している。さくら庵をベースに年間4回のアクションプログラムを実施し最終報告会を行政や議会を交えて開催した。
6.ワラビの酢漬けで6次産業化を
 周辺に豊富にあるワラビの活用方法について住民で話し合い特産物(わらびの酢漬け)を生産している。共同作業によるワラビの摘み取り、加工、販売と6次産業化を目指すことで高齢者の生き甲斐創りと小銭稼ぎを行っている。
7.有害鳥獣対柵の先進地として
 周囲を山々に囲まれた中山間地域は鳥獣害の被害に悩まされてきた。急傾斜地で栽培する栗は収穫が減る一方だが、住民で獣害対策について勉強会を重ね獣害に強い集落づくりを実践してきた。団地化した防止柵の延長は6.0kmに及ぶ。単に防止柵を設置するだけでなく、獣害に強い設置の方法等についても実践し現在では有害鳥獣の対策先進地として研修者の受け入れも行っている。

【評価された点】
 限界集落における来客者の確保をしている点、古民家を利用した「小さな拠点」の中で、住民の集いの場である「カフェ」を構築し、集いの場と同時に活動の拠点としても活用している点など、わずか9人という集落でも、地域の活性化に取り組むことで成果を得ていることが評価された。
振興奨励賞
岩手県 煤孫1区自治会 「古館神社展望公園」景観整備を通じた地域づくり
宮城県 放課後こどもクラブBremen 放課後こどもクラブBremenから広がる地域の輪「はじめの一歩」
宮城県 特定非営利活動法人ベビースマイル石巻 妊婦~未就園児親子の子育て支援活動
宮城県 気仙沼あそびーばーの会 東日本大震災後の子どもの居場所づくり
宮城県 底上げYouth 地域も高校生も底上げする取り組み
群馬県 2015年の公共交通をつくる会 公共交通を生かしたまちづくりを目指して
東京都 NPO法人コドモ・ワカモノまちing 都会っ子の居場所づくり&子縁コミュニティ育成―人・自然・文化・地域のご縁を育む―
神奈川県 特定非営利活動法人さくら茶屋にししば 街の活性化を目指し空き店舗にカフェを開設
神奈川県 特定非営利活動法人森ノオト 地域をエコで編集! 生活メディア森ノオト
神奈川県 高山自治会 若い女性が主体の輪番制役員での自治会活動
福井県 特定非営利活動法人きちづくり福井 福井駅前でつどう・つながる・たのしむ
静岡県 特定非営利活動法人富士川っ子の会  「命の大切さ」を学び、自ら考えて行動する「富士川っ子(子どもと大人)」を育む。
愛知県 特定非営利活動法人犬山市民活動支援センターの会 少子化社会へ向かっている中での「子どもの健全育成の充実」
愛知県 特定非営利活動法人てほへ 奥三河の再生―和太鼓集団「志多ら」とともに―
三重県 特定非営利活動法人どんぐりの会 地域企業と連携した子育てと仕事を両立できる安心安全な街づくり
京都府 ミンナソラノシタ 京都発♡ママ達による福島こども応援プロジェクト
大阪府 特定非営利活動法人寝屋川あいの会 元気高齢者による生活支援活動の充実・進化
島根県 淞北台いきいきライフを推進する会 住民組織で取り組む高齢者自立生活支援活動
広島県 ぐるぐる海友舎プロジェクト ぐるぐる×ワクワク×コツコツ
山口県 特定非営利活動法人ゆうゆうグリーン俵山 誇りを持って住み続けたいと思える地域に
愛媛県 多田エコグループたんぽぽ生活学校 多田地区の豊かな自然を守ろう
愛媛県 特定非営利活動法人八幡浜元気プロジェクト 人とまちを“魅せる”私たちの挑戦
福岡県 特定非営利活動法人北九州タウンツーリズム 地域資源の活用で、北九州を元気なまちへ
福岡県 おおにし農業小学校 社会教育における都市農村交流の意義についての一考察―おおにし農業小学校への取り組みを通して―
長崎県 「みんなにやさしいトイレ会議」実行委員会 みんなに安心・安全でやさしいトイレを提言
鹿児島県 NPO法人頴娃おこそ会 観光と農業の連携による地域総力戦のまちおこし