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24年度の受賞団体概要
 独自の発想により全国各地で活発に展開されている地域づくり・くらしづくり・ひとづくりの活動に取り組んでいる地域活動団体等を表彰する、平成24年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(主催・公益財団法人あしたの日本を創る協会、NHK、読売新聞東京本社など)の各賞が以下の通り決定しました。

■内閣総理大臣賞
宮城県 NPO法人フェアトレード東北

■内閣官房長官賞
新潟県 NPO法人十日町市地域おこし実行委員会

■総務大臣賞
宮城県 NPO法人亘理いちごっこ

■主催者賞
埼玉県 みやのかわ商店街振興組合
神奈川県 下和泉住宅ボランティアグループ
神奈川県 なでしこ防災ネット
福井県 劇団「ババーズ」
大阪府 NPO法人長居公園元気ネット
高知県 地域の応援隊 和

また、振興奨励賞には24団体が選ばれました。今年度の応募総数は175編。
 それぞれの活動レポートを収録した「あしたのまち・くらしづくり2012」(定価1000円、送料340円)は11月下旬発行予定。
メール ashita@ashita.or.jp
内閣総理大臣賞
支援は「場所」にするものではなく、「人」にするもの
宮城県 NPO法人フェアトレード東北
 フェアトレード東北は、東日本大震災以前から社会的排除の解決、市場社会で活動する事業型NPO。活動指針として、フェアトレード商品の普及活動とともに、障がい者や高齢者、ひきこもり・ニートなどの社会的弱者を対象に雇用支援を行なってきた。就労の場を与えるソーシャルファーム事業として、生産された商品を「ウェルフェアトレード商品(社会福祉取引商品)」とし、一般企業との協働で販路を開拓。社会的弱者と地域住民が協働するという、地域が地域を支える取り組みを行なってきた。東日本大震災後、主な活動である「巡回型被災高齢者等訪問事業」を主な事業に取り組んでいる。
 震災直後から物資配給や炊き出しと同時に、在宅避災者の生活実態調査を行なったが、どこにも頼るところがなく生活している人が多く、生活困難な状況であるということが分かった。そこで、主に高齢者や生活困難者の孤立・孤独を防止する目的で「巡回型被災高齢者等訪問事業」という形で石巻市の在宅被災者への支援を始めた。ボランティアや学生の協力なども得て、支援物資を在宅被災者に配りながら短時間でコミュニケーションを図り、体調や心理状態を確認する方法で行なった。調査した結果、1万5000件中およそ1200件(平成24年4月時点)が「見守り訪問事業」の対象者となり、状態に応じ1週間に1回などの訪問の頻度を決めた。事業では関連団体の協力を受け、震災による失職や収入の低下による財政困難で、食事が十分でない被災高齢者には食糧支援、震災に関しての法律トラブルには法律相談、震災のPTSDなど臨床心理士による心のケアなど、様々な問題に対応できるようにした。
 この事業の成果が認められ石巻市の委託事業として活動するようになり、現在の対象者のニーズなどを知るために、アンケート調査を実施。「今まで誰も来てくれなかった」「どこに相談していいのか分からなかった」という意見の他、訪問をきっかけに近隣同士の交流も増えたというケースや、この訪問が震災以降初めてのコミュニケーションだったなどの報告があり、活動の意味は大きかった。
 今後の発展に向けて新たに、「ソーシャルファーム」の活動と連携することになった。これは、障がい者などが畑を借りて野菜等を育て、企業に売るというビジネス。在宅高齢世帯、仮設住宅入居の高齢世帯の方々にこの「ソーシャルファーム」の活動を提案した。
 この活動による結果として、「コミュニケーションの機会、場所が出来た」「毎回ソーシャルファームに行くことが楽しみになった」など、震災で自分の居場所を失った方々にとって良い効果を与えていることが明らかになっている。
 震災から1年以上が経過し、在宅被災者の生活が変わる状況下で「訪問事業」も介護サービスの内容を変え、体が不自由で遠出ができない高齢者に対して、小さな範囲での交流の機会、場所を提供、「地域自らがコミュニティ形成」する手助けをする、ということが目標である。
 在宅被災者という排除された人たちへの着眼がよく、支援者も地元の人であり、NPOらしい専門性を持った支援であること、また、巡回訪問で在宅高齢被災者の置かれた状況を掘り起こし、ケアし、従来から取り組むソーシャルファームへとつなげていることが評価された。
内閣官房長官賞
震災復興からの地域おこし、そして中間支援組織として全市の移住促進事業への取り組み
新潟県 NPO法人十日町市地域おこし実行委員会
 中山間地にある池谷・入山集落は6戸の農家が点在する小さな集落。住民は高齢者ばかりで、残った人たちは「もう村をたたむしかない」とあきらめかけていたが、平成16年の中越地震以降、外部の様々な団体や企業、個人からの支援を受け、6年間でのべ2000名を超えるボランティアが集落を訪れる。
 平成17年に、地元住民主体で立ち上げた任意団体「十日町市地域おこし実行委員会」がボランティアの受け入れ団体として震災復興の活動を行なう。ボランティアと交流することで、集落は一変し、住民は元気を出し、震災復興が落ち着いてくると、次は「集落の存続」を目標に、外部からの支援(NPO法人「JEN」など)を受けながら、中山間地での地域おこし(米の直販・エコツーリズムなど)に取り組む。また集落の後継者として移住者の受け入れに踏み切り、後継者の育成・受け入れ環境の整備に取り組む。
 こうした活動を続ける中で、米の直販は順調に販売量を伸ばし、エコツーリズムでの交流人口も順調に増え、平成22年に3名の家族が移住、平成23年には2名の女性が移住するなど、9世帯19人になる。
 今後は、移住してきた後継者候補が池谷集落の農地をスムーズに受け継ぎ、収入を得て長く住み続けることができるような仕組みと、池谷集落の高齢者の安心をサポートするための仕組みを構築して「集落の存続」を実現し、全国の過疎地のモデルになるような地域をつくることを目指している。
 平成24年に「十日町市地域おこし実行委員会」をNPO法人化し、十日町市と連携して、インターンの受け入れ事業を開始、平成25年度からは市の移住促進事業に取り組む計画である。
 外部からの支援を受けながら、意識を変えて、震災復興からの地域おこしに取り組み、全国の消滅の危機にある集落のモデルとなる取り組みが評価された。とくに外部からの人材も後継者として積極的に受け入れていることが評価された。
総務大臣賞
地域コミュニティ創出「コミュニティは大きな家族」
宮城県 NPO法人亘理いちごっこ
 子どもたちの食育に関心を持ち地域で活動を始めていたとき、東日本大震災が襲う。活動を通じた知人、町の震災復興情報ラジオを通じての呼びかけで集まった女性たちが、被災者たちに温かい食事をしてもらおうと活動を始めた。また、自己完結を求められた他地域から来た被災地応援ボランティアにも食事提供を続けた。
 活動を通じ、@被災者への食事提供を継続させるための仕組みづくり、A地震の被害を受けた丘側住民と津波の被害も受けた浜側住民の意識の差を埋め理解しあえる環境づくり、B被災地外からの支援が有効に生きるように地域の被災者・非被災者と支援者の気持ちの一体化を図る、C支援を循環させ、継続可能な支援としていく方策が、これからの地域の課題になっていくことに気付く。
 この課題を解決するため、地域の主婦を中心とした支援者により、町内の集会所を借りコミュニティ・カフェレストラン「亘埋いちごっこ」を立ち上げ、罹災証明書持参者には完全無償で食事の提供を行なった。ヨガ教室など笑顔で集まれる場、コンサート等も開かれ憩いの場、被災者の再会の場となる。12月からは完全無償を改め200円による食事提供とした。平成24年6月、新プレハブいちごっこがオープン。それを機に、誰でも食事をすることが出来るコミュニティ・カフェスペースを作り上げた。現在は、「コミュニティ・カフェレストランいちごっこ」のほか「いちごっこお話聞き隊」「寺子屋いちごっこ」が活動の3本柱。「いちごっこお話聞き隊」は、カフェに出向くことが出来ない被災者の話こそ聞かなければと立ち上げ、カウンセリングの研修会を開き、仮設住宅・みなし仮設・被災家屋に暮らす被災者を回り、支援物資やお知らせを持参しお話を聞いて歩いている。
 震災で子どもたちも大きなダメージを受けた。避難所はプライベートを保つこともできず、仮設住宅は狭く、学習環境を整えることが急務だった。そこで震災直後から「寺子屋いちごっこ」を立ち上げ、カフェレストランの余暇活動スペース、また12月からは仮設住宅集会所で、講師、学生講師の協力を得て実施している。
 その他、ここには心理的な不安を抱え睡眠薬を服用する人なども集まる。一人になっても何か楽しいことを考えてほしい、そんな思いでカフェの中で作り物を始めた。その作り物を全国に発信して、作り手に多少なりとも製作料を支払い、また笑顔が広がっている。
 今年に入り、経済的にも被災者の悩みはまた変わってきた。これからの安心安定した生活の確保は最重要課題。亘理いちごっこでは、コミュニティの場の提供だけではなく、地域経済活性化のため「ありがとうチケットの発行」「地場産品の全国への発信」も柱にした。地域内外の応援に感謝の意を表すため500円分の「ありがとうチケット」を発行、チケットはいちごっこだけでなく、地元商店でも使えるよう協賛店を募っている。また、いちごっこブランドを発信してほしいという全国の支援者の声に応え、商品をアピールし、被災地という冠が取れた時も地域経済が活性化されていく仕組みづくりを目指している。
 時間とともに変化する被災者の悩みやニーズに合わせて活動を発展させていること、被災地のこれからの新しいコミュニティを創るための場づくりを住民の立場から進めていることが評価された。
主催者賞
高齢者の生きがいつくり、共助、日常生活のサポート
埼玉県 みやのかわ商店街振興組合
 地域で日常の買い物をしたり、生活に必要なサービスを受けたりするのに困難を感じる「買い物弱者」が増えている。そんな秩父市で、アイデアで不便を便利に変え、高齢者を支える新たな取り組みを行ない、「空き店舗ゼロ」の商店街となっているのが「みやのかわ商店街」である。
 注目されているのが有償ボランティア派遣事業「ボランティアバンクおたすけ隊」だ。埼玉県及び秩父市と連携し平成19年から取り組んでいる。団塊の世代など元気な高齢者を中心とするボランティアが、援助の必要な高齢者、障がい者、子育て中の人などの買い物代行や掃除、庭の手入れなどを行ない、他人の支援をしたボランティア時間を貯蓄して、自分自身や家族のために利用することができ、また、秩父市共通商品券「和同開珎」(1時間500円相当)で受け取ることもできる。支援の受け手が利用する時の利用料金は、1時間単位800円のチケットを購入したうえで支払う。@援助の必要な高齢者の日常生活が支えられ、安心確保につながる、A援助する元気な高齢者の健康増進と社会とのつながりを保て生きがいを得られる、B商店街は地域商品券を使ってもらうことで活性化が図れるという、高齢者も、商店街も、地元住民も「得をする」システムである。
 「ボランティアバンクおたすけ隊」のきっかけになった取り組みが、出張商店街「楽楽屋」である。同商店街が市内の買い物弱者である福祉施設に出張し、その場に商品を並べて、買い物を楽しんでもらうことを目的に始めた事業。福祉施設の入居者には「商品を自分の目で見て選んで買えるのが嬉しい。買い物をする喜びを久しぶりに味わった」と好評だ。また、一人暮らしの高齢者などの買い物代行「御用聞き」も行なっている。困っているお客様に心から喜んでもらえる、その笑顔をヒントに“奇跡のシステム”は生まれた。「ボランティアバンクおたすけ隊」の「共助」の仕組みは、埼玉県内で広がり現在32の市町で実施されている。
 こうした事業の出発点は、食品スーパーや大型店が次々に郊外出店することに危機感を覚えた同商店街若手が将来の商店街づくりを見据えた研究会を立ち上げ、自分たちの理想を描いた「みやのかわ商店街構想図」を作成したことから。そのビジョンに基づき始まったのは、「ボランティアバンクおたすけ隊」のほか、秩父夜祭のように何とか商店街に人を集めたいという熱い想いで始めたナイトバザール。昭和62年から、来街者を飽きさせないように毎年、アイデアを絞り違う企画で実施、全国のナイトバザールの発祥の地として知られている。その他にも、数々のアイデアでソフト事業を重ねる一方、ガス灯風の街路灯をはじめ、歩道の整備、電線の地中化、統一看板、シャッターの美装化、ほっとすぽっと秩父館の設置などのハード事業も手掛けている。商店街のみならず地域の活性化にも尽力している。
 商店街が住民ニーズに応えて、ソフト、ハード事業に取り組むのは珍しく、元気な高齢者が主体となった有償ボランティア活動で、援助の必要な方の支援だけでなく、健康づくりや商店街活性化に繋がる仕組みにつながっていることが評価された。
主催者賞
下和泉住宅のまちづくり 難問を地域の力で解決
神奈川県 下和泉住宅ボランティアグループ
 下和泉住宅は造成後45年、高齢化が進み、過疎化の傾向が出てきた。さらに路線バスは廃止路線あり減本ありで、不便さが増している住宅地となったが、平成11年、まちの活性化について議論が始まり、自治会内に役員以外の各層からの委員による特別対策委員会を設置。議題を知り実行に至るまでを第1ステップ(知ること)、第2(考えること)、第3(つなげること)、第4(動くこと)、第5(拡げること)を課題解決の基本とし、まず、全戸へのアンケートをもとに問題点を抽出、その問題点を共有化し必要なものに優先順位を決めて実行してきた。
@平成13年、災害が発生した時の災害弱者に対して物資供給を行なうためCoopかながわ和泉店と「生活物資協定」を締結。同年、「自衛防災隊」を発足し、避難誘導・救護班体制を確立した。さらに同年、高齢者・障がい者等の外出支援として、自家用車による送迎活動「あやめ会」が発足。
A平成14年、交通不便解消のため下和泉地区交通対策委員会(Eバス委員会)を設置、自主運営によるミニバス「Eバス」を運行開始。
B平成16年、「さんさん倶楽部」が誕生し花いっぱい運動が始まり、さらに、日常生活支援団体「福祉の会」(地区社協が運営)が誕生し、庭の手入れ、介護送迎等の生活支援活動が始まる。
C平成17年、自治会館が建て替えられ「まちづくり塾」と命名され、高齢者の利用が盛んになる。
D平成23年、認知症を知り、防ぎ、病気になっても安心して募らせるまちづくり「ひばり会」が誕生。
 こうした各事業の企画・検討は自治会が担うが、事業は任意団体を設立してボランティアを募り、自主運営・事業展開と、任務を分け、協力し合い活動してきた。
@あやめ会は、当初は任意団体、19年にNPO法人化。年末年始以外は毎日8時から18時まで12名が運転活動し、6名がコーディネーターをしている。利用者は要介護者以上の人たち100名程が登録。1日の利用者は16名から20名。
AEバスは、一般貸切りバスを使用しての運行で、会員制として会員証を提示して乗車する。ボランティアが乗車し、会員の確認と安全確認を行なう。バス停の設置や時刻表の掲示はせず直接会員に知らせている。運行本数は朝夕18便、1日の乗客は約200人。
Bひばり会は、要支援・介護者、認知症の人などが、安心して暮らせるまちづくりを目指すのが目的。老人会・民生委員・自治会役員などから委員を選び運営している。講座は身近な自治会館を拠点に、年6〜7回、専門医や地域ケアプラザから講師を派遣してもらう。
 15年間、地域の努力で難問を解決し「住んでいて良かった」「若者がふるさとに帰って来た」「自宅に閉じこもることなく会館で趣味を楽しむ」「自治会への協力度が増した」という声が聞かれるようになった。「遠い親戚より近くの自治会」を合言葉にこれからも力を合せて頑張っていこうとしている。
 950世帯の自治会が抱える課題を自らが地道に解決していること、Eバスは地域の熟慮の賜物であり、過疎化する大規模団地にとって参考となる取り組みであることが評価された。
主催者賞
災害被害を少なくする防災知識と日頃の備え―女性の視点とネットワークを活かした防災対策の普及・啓発活動で災害に強いまちづくり―
神奈川県 なでしこ防災ネット
 避難所で女性はトイレや授乳、プライバシー面で苦痛を強いられ、日中に被災した場合は家庭にいる女性が対応しなければならない。日頃の備えに女性のきめ細かな配慮や知恵が不可欠であるが、防災に女性の視点が欠けており、防災対策に反映される必要があることから、平成17年に、女性の防災士たちが中心になって立ち上げ、女性の視点と幅広いネットワーク(中学生、行政、市民団体など)を活かした防災対策の普及・啓発を行なう。家庭における災害の備え、災害時の非常食や生活用水、トイレの確保など、家庭の主婦、女性の視点から家庭や地域での防災対策を分かりやすく提案、楽しく実践している。
 これまでの活動は次のようなもの。
@体験型イベント「サバイバルDayキャンプ」(年3回、7年間実施)
・緊急搬送訓練、炊き出し訓練、避難所設営訓練、非常食作り
・三角巾を使用した応急手当、ロープワーク、トイレづくり
・かまど作り、親子あるもの持ち寄りカレー作り
・ペットボトルで浄水器を作ろう、ほのぼの灯り作り
Aリーフレット「女性の視点からの防災対策」作成(平成20年度)
・女性の視点で日頃の災害への備えと工夫をまとめたもの
・点字による資料や手話通訳DVDなど、4種類の防災教材を作成
B災害時のMyオリジナルレシピ集「もしもの時の非常食」作成(平成21年度)
C湧水・井戸水調査「もしもの時の災害時協力井戸・湧水MAP」作成(平成22年度)
D「災害時協力井戸の家」の看板設置112件(平成23年度)
Eその他、災害図上訓練、防災コミュニティサロン、防災講演会、実験教室(断層、耐震)、家庭菜園の推奨、東日本大震災災害遺児施設への義援金、仮設住宅に救援物資を届けるプロジェクトなど
 女性が防災を引っ張るという着想や、中身の濃い啓発活動、井戸調査から地図・看板作りへと発展させる行動力、地域への取り組みの浸透力、が評価された。
主催者賞
お笑いと元気を届けた充実の10年間
福井県 劇団「ババーズ」
 教員生活を定年退職した代表が、町社会福祉協議会実施の、「ふれあいサロン」の講師になり、民話を話したり、ナツメロを歌ったり、数年間続いたが、もっとお婆ちゃんたちを積極的・主体的にしたいという思いがあって、芝居をやってみようと誘いかけた。恥ずかしいとか、セリフが覚えられないとしり込みをしたが、地元の地名をもとに脚本を書き、稽古を続けた。お寺を会場に、成果を披露、当日は、観客も大笑い。拍手も一杯あって、劇の内容に満足した。翌日の新聞も写真入りで大きく報道してくれた。
 平成14年の結成後、80代〜60代の団員16名で、爆笑喜劇の演目を毎年、地元のみならず県内各地、近県からも招待され、今後の予定も含め230回以上の公演数となっている。素人劇団であり、小道具舞台装置はなく、手作りの小道具ばかり。舞台道具などの運搬も、県内のほとんどは2台のワゴン車と軽トラの3台でのどさ廻り。県外や嶺南地方はバスに迎えに来てもらう。公演日は孫守りを兼ねている団員がいるので、土・日・祝日に限られる。劇団は営業活動をしないので、総て要請きれた公演のみの出演。そのため昼食を頂くことは多いが、出演料は主催者の気持ち次第。テレビ取材を受けることも多く、中国・上海のテレビ局が来たこともある。
 人気の秘密として、劇団では@老人劇団は全国的に見ても数が少ないこと、A高齢化社会の中にあって、高齢者を如何に活動させるかは各自治体の課題であり、劇団ババーズは高齢化社会の生き方のモデル的存在であること、B演目の内容が民話劇で温かく、毎回爆笑喜劇でわかりやすいこと、C福井豪雨で壊滅的な被害を受けながら、どん底から立ち上がって、公演を続けていること、D福井県の西川知事が提唱している「健康長寿」という運動と合致し、それを実践していること、Eテレビ・新聞・ラジオ等マスコミに何回も取り上げられたこと、F小道具・衣装等総て手作りであり、方言丸出しの、いかにも素人らしく、下手な芝居がかえっていいということ、G出演料が格安であること、等々。
 10年を経過して、様々な影響が劇団内外に生まれてきた。団員には「劇団ババーズ元気溌刺医者要らず」で高齢にもかかわらず、病気を克服する人も増えてきた。また、200人くらいの観客なら、マイクなしで公演できるくらい声が大きくなった。記憶力が高まり、しかも、観客の拍手や笑いが多いと、どの役者もどんどんアドリブが出るようになっている。また、この2、3年、劇団「ババーズ」の影響で県内に老人劇団が出来始めた。こうしたことから市行政に、高齢者の活動として認め、定期的に保養施設や、老人ホーム等で公演できるよう支援依頼をしている。福井市老人劇団フェスティバルを開催しようと各劇団で話し合いたいとしている。
 劇団の高齢者に生きがいを与え、「病気が治った」「記憶力が良くなった」と元気になっていく、年をとっても自ら頑張ることの大切さを教えてくれていること。さらに、観客にも元気を与えてきた活動を10年間も継続してきたこと、が評価された。
主催者賞
ぐるっと元気にしなやかに! 世代を超えて役割と居場所を
大阪府 NPO法人長居公園元気ネット
 長居公園元気ネットがコーディネートするフリースペース・オシテルヤでは、地域社会の空洞化による社会課題に対し、社会的セーフティネットを補完する全国的な先駆けとなる活動をしているが、この中心になっているのが野宿生活を経験した高齢者の自助グループ「さつまいも農業倶楽部」と、不登校児童のスクーリングを軸に子どもと大人の学び合い、育ちあいをテーマに活動する「ohana」である。
 さつまいも農業倶楽部は野宿生活者のピア・サポートグループとして平成15年に発足。当時、長居公園では約20名がブルーシートテントで生活していた。みんなが仕事を求めていたが、再就職は困難で出口のない迷路のような状況。多くはアルミ缶を拾い集めて換金し、生計を立てていた。さつまいも農業倶楽部が野菜作りに関わるきっかけは、藤井寺市の農地が耕作放棄地で周囲にも迷惑をかけており、テント村の仲間5〜6人で雑草の刈り取りを手伝い、その農地にさつまいもを植えたことから。以後、藤井寺農園として近隣農家の協力も得て様々な野菜を無農薬で作り、収穫した野菜は公園のテント村の前で野菜市として販売した。無農薬の安全安心な野菜ということで、テント村の前に足を止めて野菜を手に取る人の数は、目に見えて増えてきた。藤井寺での農作業に参加したいという申し出も数多くなった。
 以後10年。当時テント村で暮らした人々はアパートで暮らすようになってきた。長居公園内のテントは一軒もなくなり、野宿者支援の活動も公園の近所で運営されているフリースペースに拠点を移した。しかし、さつまいも農業倶楽部の活動は続いている。いま、新たなパートナーは、「ニート」の若者たち。オシテルヤの利用グループにニートの若者の就労を支援するグループがあり、その就労体験や社会参加の活動の現場として、さつまいも農業倶楽部の藤井寺農園を活用できないかという案が持ち上がった。仕事や生活について様々な悩みを持った若者が、支援者に伴われて畑にやって来た。発達障害や精神疾患を持つ若者も何人もいたし、生活保護予備軍、野宿者予備軍と言えるような生活困窮状態にある若者も何人かいたが、農業倶楽部で年配の労働者たちに叱咤されながら、自分の役割と居場所を見出している。
 さらに、不登校の子どもたちのホームスクーリングに取り組んでいるグループ「オハナ」は、「おとなもこどももともに遊び、学び合う」を合言葉に活動しているが、オハナからも、藤井寺農場をホームスクーリングの舞台として活用したいとの依頼があった。いま子どもたちは、畑仕事の手伝いをしながら体を動かすことで体力作りをし、作物の生育観察を楽しみ、畑でお鍋やバーベキューをして収穫の喜びを味わっている。そしてさつまいも農業倶楽部の高齢者やニートの若者に会い、世代を超えた交流と学びの機会を得ている。
 こうした活動をもとに、オシテルヤの活動を持続的に展開していくために、活動の一部を事業化させ、平成23年7月に訪問介護の事業を、平成24年10月には放課後デイサービスの事業を開始する予定。
 交流拠点オシテルヤに関係する地域の機能集団を連携していく役割を明らかにし、社会的排除の課題を抱える人たちの居場所づくりとともに、複数世代を結びつける活動を着々と進めていることが評価された。
主催者賞
“困ったときはお互いさま”のまちづくり
高知県 地域の応援隊 和
 津野町は、何度か町外からの民間事業者が参入したが細くて長い山道の先に数件の家がある谷合の地区の集まりであるため採算が合わず、すぐに撤退しており、在宅介護の主体は町の社会福祉協議会となっていた。これまでの介護体制が十分ではないと感じた代表が、高齢者等の自立支援、予防的観点を持った在宅支援を目指し、「地域の応援隊 和」を立ち上げたのが平成19年。町のサービスになく、あったらいいと思うもの、これなら自分たちでできるサービスを手作りのパンフレットに載せ、賛同者を募ると約50人が集まった。団体の活動で、大切にしているのは、@町全体がみんな幸せになればいいという考え方、A会員同士が助け合う“お互いさま”の仕組みにすること、B良い所を見てより多くの方に関わってもらうこと、C住民の意見を汲み、その時代、その時に合わせて団体に柔軟性を持たせること、D使いやすいサービス、E有償ボランティア(提供者には責任感を持たせ利用者には頼みやすさが出る)、F何より継続性を持たせることである。
 年会費を払うと誰でも会員になれる。登録時に得意分野を記入してもらい、困りごとの相談があれば会員の得意分野でコーディネートする。口コミで広がり、平均250名以上が毎年支えてくれる。サービス毎に料金が決められ、サービス料のうち一部を団体運営費に充て、残りを提供会員に支払う仕組み。支援活動の内容は、家事援助、介助、草刈り、草引き、剪定、お墓掃除、買い物や金融機関・役所等への代行、ゴミ出し、農作業の手伝い、犬の散歩、不燃物の廃棄代行等、多種多様。3年程前からは「弁当でなく、おかずだけでも届けてくれれば」との要望と、スタッフの賃金確保のため、一品配食サービスも始めた。配食サービスの希望者は事前に登録し、週3回、調理スタッフが作るおかずを配達員が15品以上持って来るので、食べたいものを何品でも選ぶシステム。配食の際は、日用品等の配達も町内の商店から預かって同時に行なう。残ったおかずは町内の協力商店が利益を取らずに置いてくれ、仕事帰りの主婦や近隣の方々が購入することにより、スタッフヘの賃金も確保できるようになっている。現在は利用者としては、高齢世帯のほか、病人・病後の人、町外の利用者もいる。
 活動は福祉だけでなくまちづくりという総合的な観点でという考えで、子育て支援や文化教育活動、地域活性化活動も含まれる。また、子どもの頃から“お互いさま”の心を育てようという目的もあり、毎年夏休み子ども教室を行なっている。また、小学生が地域の高齢者に昔の民話を聞き、授業で地域住民や父母と共に紙芝居に仕上げ、地域のサロンや高齢者施設で発表する世代間交流の活動も続けてきた。その他、活動に必要な研修会を地域住民対象に行ない、また、最近は町内外の団体などから相談も受けるようになっている。
 代表が社会福祉協議会職員としての専門性を持ちながらそこにとどまらず、地域福祉の組織者となり、各戸を回り地域へ根付かせていること、高齢化する山村地域で民間企業で担いきれない支えあいの仕組みを無理のない形でつくり、地域や若い世代も巻き込みながら、お互いさまの精神を大切にしながら発展させていることが評価された。
振興奨励賞
北海道 NPO法人救命のリレー普及会  一次救命(BLS)の普及活動と広域自主パトロールとのコラボ
岩手県 江釣子6区自治会  アイデアと協力し合いでやさしい地域をめざす
福島県 NPO法人まごころサービス福島センター内子育て支援部門こども緊急 サポートネットワークふくしま
  子育て支援とネットワークづくり
栃木県 緑が丘ふれあい交流会実行委員会  地域・学校・公民館の交流をすすめることにより子どもたちを守り育てるまちをつくる活動
栃木県 いどばたカフェ・好縁  みんなの居場所づくり
東京都 宇津貫みどりの会  宇津貫緑地の自然環境の保全と里山伝統文化の継承
東京都 防災まちづくりの会・東久留米  防災・福祉を核として地域コミュニティの再構築を
東京都 Colabo  宮城県女川高等学校生徒会、大沼製菓(石巻市)と行なう支援金付菓子の開発と、「女川町から元気を発信する」をテーマに女川校生と行なう地域活性活動のコーディネート
神奈川県 NPO法人お互いさまねっと公田町団地  見守り活動と生活支援
新潟県 NPO法人ユー&ミーの会  食の循環によるまちづくり―捨てればゴミ、ひと手まかけて資源―
富山県 立山山麓生活学校  地域の特産品開発の立山おやきをつくる
石川県 NPO法人阿羅漢
  早寝早起き朝ご飯「薪炊き、朝がゆの会」活動―山代小・中学校・山代ファミリーサポートセンター施設交流事業―
静岡県 掛川市西山口地区福祉協議会  「一人の百歩より百人の一歩」―つなげよう福祉・深めよう絆―
静岡県 NPO法人伊東里山クラブ  放置竹林対策・里山再生事業による自然資源の有効活用と山間地域の活力づくり
滋賀県 農事組合法人白王町集落営農組合  楽しい農業を展開しよう!―水郷を活かした農の里づくり―
兵庫県 NPO法人棚田LOVER’s  棚田を愛し、棚田を育む 未来の子どもたちのために
兵庫県 稲荘農場まちづくりの会  健やか長寿まちづくり
兵庫県 復興支援ネットワーク淡路島  復興支援から学んだこと
島根県 NPO法人ほっと大東  心安らぐサービスを目指して
岡山県 倉掛自治連合会  地区のオピニオンリーダーとしての自覚を持ち、課題解決とまちづくりの実践を推進
徳島県 徳島活性化委員会  地域課題解決活動と震災復興
熊本県 次世代のためにがんばろう会  世代間・地域間でつながる環境保全活動が町おこしへ
熊本県 上天草市中央公民館  高齢者生きがいづくり支援事業「地域力を活かしたふるさとの再生」
熊本県 NPO法人武蔵ケ丘ご近所クラブ
  高齢者のサークル活動や日常生活のサポートを通じて行政や団体と連携した地域活性化