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20年度の受賞団体概要
子育て支援活動部門
内閣総理大臣賞
赤ちゃんから高齢者まで世代を超えてふれあい暮せる「まち」をつくりたい
東京都品川区 NPO法人ふれあいの家―おばちゃんち
 「ふれあい広場」「あずかり広場」「きかくの広場」「つながりあい広場」「まなびあい広場」など、12事業と幅広く手がけているなかで、「あずかり広場」である「品川宿おばちゃんち」の一時保育が中核事業。「品川宿おばちゃんち」は、街の活性化に取り組む「NPO法人東海道品川宿」が実施事業者、子育て支援に取り組む「NPO法人ふれあいの家−おばちゃんち」が運営事業者になって、空き店舗で、保育所に預けられない、パートタイムで働く人や短時間子どもを預けたい人のために一時預かり保育を行う。
 「品川宿おばちゃんち」は、空き店舗対策補助事業で、品川区産業振興課が施設整備費と賃借料を助成し、保育課が預かり保育の運営費を助成している。区役所と2つのNPO法人の思いを一つにした協働事業。
 「品川宿おばちゃんち」を活動拠点に、親子ふれあい広場である「みこちゃんち」を毎週月曜日に開いている。
また、月1回、北浜公園こども冒険ひろばで、ふれあい広場「ホット ほっと HOT」を開いているほか、品川区主催の親支援講座「完璧な親なんていない」(7回)でファシリテーターを務め、品川区との共催で「保育サポーター養成講座」(10回)を開いている。
 保育サポーターの登録者は42名。昨年は113件、293名の保育サポーターを派遣した。毎月、保育サポーター研修会を開き、保育サポーターの中に保育士の資格を取得する人もいる。区内の子育て支援グループをつなぐ「子ネット会議」を開催するなど、区内のリーダー的存在。登録会員は233人いる。
 代表の渡辺美惠子さんは、元児童館の職員で、保育士。2002年、退職を機に、赤ちゃんからお年よりまで楽しく過ごせるまちにしようと、仲間を集い始めた。2003年3月、児童センターで毎月1回、親子、若者、おばちゃんがふれあう「ホット ほっと HOT」を始めた。ここでは、若者と赤ちゃんとの出会いを大切にした。
 渡辺さんの人柄に引かれて、多くの人が集まっている。渡辺さんは人のつながりを大事にして活動仲間を広げている。活動を始めて5年になる、こうした「ふれあいの家−おばちゃんち」の活動が、このほど1冊の本「品川に100人のおばちゃん見〜っけ!」(丹羽洋子さん著)になった。
空き店舗を活用して生まれた「品川宿おばちゃんち」。ここを会場に、ふれあい広場「みこちゃんち」も毎週に開かれる パートタイムで働く人や短時間子どもを預けたい人のため一時保育は保育士と保育ボランティアが担う 月1回、北浜公園こども冒険ひろばで開いている、ふれあい広場「ホット ほっと HOT」。ここはドロンコ遊びもOKだ
内閣官房長官賞
小さな気づきが大きな活動に!―いきいきとした子どもたちの世界を守るために―
長野県長野市 NPO法人ながのこどもの城いきいきプロジェクト
 いきいきとした子どもたちの世界を守るために行政や地域社会と連携し、子育てを支えるネットワークとその中心となる場づくりを進め、子どもの健全育成及び子育て環境の充実に寄与することを目的としている。
 平成9年に、創始者である前理事長(小児科医)は、受診する母子の姿に小児科、内科といった疾病治療のスキルでは到底対応できない様々な子育て問題が地域住民の中に存在していることを肌で感じとり、子ども支援、子育て支援は喫緊の課題と捉えた。心理的アプローチやストレス解決には小児科医だけでは不十分と考え、小児科医として外に出て積極的に育児支援、子ども支援の仕事を臨床心理士、教師、養護教諭、保健士、保育士、看護師、助産師、栄養士、歯科医師、保育研究者、幼稚園教諭、専門職者を動員し、一体となって地域の中で使命を果たすことを推進してきた。
 核となる活動はこども広場「じゃん・けん・ぽん」。広々としたゆとりの空間であり、遊具や設えもすべて子どものやすらぎと安全確保に配慮されている。この広場を取り囲む小講座室があり、医師による子育て講座が開催される。
 支援事業としては、リフレッシュ講座、学生が参加し支援活動を行なう「もちっ子広場」、保健所と連携し夫婦で参加する休日マタニテイセミナーの実施、また、特筆すべき事業として、活動に取り組む人材育成事業がある。これには、子育てサポーター養成講座、家庭教育支援総合推進事業、中高生子育て理解講座、緊急サポートシステム活動会員養成講座がある。講座修了者は登録制により、病児預かりなどを担う人材として活躍している。人材育成では、子どものアートプログラムの指導者として、造形活動を担える人材を育成している。他にも子育てに関わるシニアアクティブルームがあり、各人材グループはこどもの城が展開する子育て支援に積極的に参加し、それぞれの力を発揮できる循環システムが構築されている様は効果的であり高齢者が子育てに参加するシステムは高齢者の生きがい、まち・くらしの活性にもつながると評価とされた。
 また、利用者の意見を十分に受け止めるために、キャッチボール部隊(臨床心理士)を配置し利用者の意見や意向を聞き、常に子育ての問題点の抽出、貢献できる方策を工夫し運営に努めている。商店街と連携したフェスタもんぷら2008と冬のあそび広場を同時に開催など町の活性化にも寄与している。あそび・体験に関する事業として、長野県日本赤十字病院入院児、退院児を対象にシニアボランテイアによる紙芝居、読み聞かせ、市民協力による農地・グリーファームでの農業体験、ボランテイアの栄養士等による食育連続講座、こどもの心とからだの相談事業を展開している。その他、電話相談チャイルドラインも活用されている。
 地域住民の子育て課題に対し、子育て支援活動を地域住民と心通う連携により、専門職のスキルを活用し、より健やかで安心安全な子育て、より科学的な子育てのために、効果的に機能しており、子育て支援のモデルとして評価された。
専門家無料相談が充実!小児科医による「心と体の相談室」 インターンシップ、ボランティア体験の受け入れ―お姉さんお兄さんと楽しく水遊び 毎年恒例のシニアアクティブルームの皆さんとクリスマス
主催者賞
出会い・触れ合い・学び合いの場創り―虐待予防と脱密室育児―
東京都清瀬市 NPO法人ウイズアイ
平成7年〜 清瀬市から新生児訪問指導員(生後2か月以内の第一子が対象)として委託を受けた、助産師・保健師の専門職を中心に発足。新生児訪問を通して、戸惑いと不安・緊張の中で必死に子育てをしている母親たちにたくさん出会い、育児不安を解消できる場、孤独な密室育児から解放され仲間と共に助け合って子育てしていける場を提供していく必要性を痛感し、ボランティアで活動を開始。最初に取り組んだのは、母親たちの交流の場としての遊ぼう会、母乳育児を希望するママたちの集いの場であるオッパイママの会。
平成11年度〜 生後8〜11か月前後の子を持つ保護者(定員15組)を対象に連続講座(6回コース)を企画。6回のプログラムは、参加者同士の話から発展されていき、子育てについての不安が軽減し、また自分の生き方や人間関係についても振り返るようになっている。連続講座なので、参加者の仲間意識が育ち、終了後はすべて自主グループとなり子育てサークルとしてその後も継続的に活動している。
平成13年度〜 8つの子育てサークルができたので、サークル間の連携を図ることと情報交換を目的にサークル代表者会議を開催し、子育てサークルのネットワーク化を図るために「ママ・ネット」を設立。母親たちの署名活動が展開され、子育て支援への様々な要望を市に提出。サークル活動場所の無料開放を訴えた結果、翌年度には市内2か所の学童保育の部屋が、子育てグループに無料開放されるようになった。
平成15年〜 行政の事業委託を受け活動が拡大。親支援事業・サークル活性化事業・子育て支援者のネットワーク化など、虐待予防の視点で、妊娠から就園までの家庭保育の親子を対象に、各種保育付き講座を展開。子育てサークルも続々産まれ、子育てママたちの活動が活発になる。
平成17年〜 新興住宅街に、ひろば事業を定期開催。子育て中ではあるが、子どもに関わる職歴がある方や有資格者を掘り起こし、子育て支援者ネットワークを創り、在宅保育ママの拡充や在宅主婦向けのミニ保育園などの開園への足かがりとなる。
平成18年にNPO法人化。
平成19年〜 地域在宅栄養士会の協力を得、食育事業に取り組む。
平成20年3月〜 子育て支援の家「あいあい」をスタート。
 その他にも、新米ママと赤ちゃんの会、新米パパママ講座、アドバンスママの会、双子・年子仲間作りの会、同級生サークル・異年齢サークル交流会、よちよちフォローの会、アトピーっ子ママの会、すくすく親子教室の開催などがある。
 評価された点は、当事者の声に寄り添いながら事業を展開してきたこと、必要な支援サービスを次々生み出してきたこと、親が主体となれる事業展開してきたことなど。また、子育てに必要と思われる事業を年間34事業も手掛けており、行政からの委託事業がある一方、半分以上は独自事業で、運営には苦労もあると思われるが、検証・評価を自ら行ない事業の拡大を常に図っているなどの点が評価された。
遊ぼう会…大きなブロックを積んで パパと遊ぼう…身体を使ってダイナミックに 在宅主婦のためのミニ保育園…さくらルームでの外遊び
まち・くらしづくり活動部門
内閣総理大臣賞
都市と農村との共生型社会づくり
山梨県北杜市 NPO法人えがおつなげて
 活動のフィールドである北杜市須玉町増富地域は、高齢化率62%、耕作放棄率62.3%、農家戸数27戸のいわゆる限界集落となっている。この地域において2003年4月構造改革特区認定のもと、都市と農村の交流による地域活性化の活動を始めた。
@労働交流による遊休農地開墾及び農業経営
 地域に広がる遊休農地の開墾活動に全国から農村ボランティアを募集し、毎年延べ500人が参加。約3年で3haの遊休農地が開墾され農地として復活。さらに、農村ボランティア活動に参加したメンバーが一部地域に定住し、地域農業者や農村ボランティアの協力のもと、この3haのNPO農場を運営している。
A豊かな農村資源を活用した体験交流「グリーンツーリズム」の実施
 よみがえた3haの農場等をフィールドとして多様な都市農村交流の体験プログラムを展開。地域の昔からの農事暦や生活様式をイベント化し、この地域の自然や風土とふれあいながら、また、地域の農林業者を講師に招きながら、農村の生活技術を学べる機会を提供。
B企業との連携による産業交流、それによる農村の仕事づくり
 農村の仕事づくりの活動を都市部の企業との連携によって実施。NPOにおいて企業の畑と呼んでいる制度のもと、協働農場運営にあたっている。また大手商事会社のCSR活動の一環として、社員の遊休農地開墾、開墾した農地での農業体験学習としての大豆の生産から味噌づくりの実施等を行っている。
C大学との連携による自然エネルギー資源の活用研究交流
 東京農工大学との連携により、水資源・森林資源などでエネルギーを地域自給していこうとする交流プログラムの中で小水力発電導入プロジェクトを実施した。
D農村の文化資源を活用した食育活動による交流
 農村の食の文化資源である箱膳による食育活動を実施。
Eその他
 125人の会員中7割が首都圏在住者であり、「えがおファーム」「バイオマス」「山仕事」「箱膳食育ネットワーク」他の委員会活動は都市側からも発案できる。
 また、17人の理事中、13人がコンサル、デザイン、プランニング関連の経営者であり、事業としても自立的である。
 これらの活動を通じて、都市部から開墾ボランティアなど5年で8000名もの交流人口を招きいれ、集落を元気づけるとともに、定住・結婚・出産のスタッフも現れている点や、2008年3月には増富地域再生協議会が結成され、地域一丸となった形で、都市と農村の交流による地域活性化活動が展開されている点などが高く評価された。
約3haの「えがおファーム」で採れた作物を東京で直売 都市部から毎年延べ約500人の農村ボランティアが集まり遊休農地を開墾 地域の農業インストラクターの指導による農業体験
内閣官房長官賞
電車へのラブレター―公共交通を舞台にした「点から線へ、線から面へのまちづくり」―
滋賀県大津市 石坂線21駅の顔づくりグループ
 大津市域を縦断して走る京阪石坂線は、一般市民の日常生活の足として重要な交通手段となっている。14.1kmの路線中に20校近くの学校がある沿線の特性を活かし、駅構内や電車を活用した中高大生や住民の様々な美術作品等を日常的に展示。利用者に楽しみを提供し、活動への参加団体も年々広がり、新たな地域電車として再生しつつあり、グループの活動に対して行政・電鉄会社ともに大きな期待を寄せている。
 中でも、乗客の多くを占める学生に焦点を当て、21の駅を個性化し、市民文化を顕在化させて心をつなぐという取り組みは、文化活動を通じ地域づくりやまちの活性化に参画できる、という電車のもつ新たな社会的機能を実証している点や、同様のローカル鉄道を持つ地方都市の活性化のモデルになりうる点として高く評価された。
○活動の概要
・沿線の全21駅に学校や地域住民が自主管理する「掲示板・ギャラリー」を設置し、情報発信と交流の拠点となっている。メンバーには中高大生に加えて地域の社会福祉協議会が参加。掲示板には各学校の各学校の作品展示や授業紹介、社会福祉協議会や老人クラブの作品展示などが常時行われている。設置後は利用団体にカギを預け、メンテナンスや作品入れ替えを行っている。
・2005年度からは、14.1kmの日本で一番細長い美術館「石坂線文化祭」を開催(年1回)。普段、駅の展示活動を行っている人たちの作品を電車に載せて、電車が通常運行する。貸切電車の中で作者としての中高大学生たちが世代を超えて交流する場も設定。
・2006年度からは、「電車と青春+初恋 21文字の青春メッセージ」として電車にまつわる思い出を全国募集、5,000篇(2回、出版)が寄せられる等、“市民にとってのローカル電車”の新たな価値を全国発信している。(年1回)
○自治体・鉄道会社とのパートナーシップ
・「世代間交流拠点」「地域の財産を活かして皆が楽しめるまちづくり」を目的に、利用者でもあるグループと、京阪電車が協働して事業に取り組み、行政がサポートしている。
・平成16年度からは、大津市の主要施策「まちづくりパワーアップ夢実現事業(市民活動支援事業)」がスタートし、その助成を受けて種々の活動を推進している。大津市からは、当活動に対し行政課題への対応、中心市街地の活性化、大津市のPR効果の面で大きな評価と今後への期待を寄せている。
・京阪電鉄からは、鉄道施設の市民による活用(駅構内の市民団体への提供、ホームの市民用掲示板の設置等)、車体へのラッピング、車内の美術館化、特別電車(交流会列車)の運行など、市民側の提案を受けて積極的に具体化している。
「電車と青春+初恋 21文字の青春メッセージ」をまとった京阪電車が街を走り抜ける 沿線21の全駅に「掲示板・ギャラリー」を設置し、学校や地域住民が自主管理する 「石坂線文化祭」では、駅の展示活動を行なっている人たちの作品を電車にのせて運行する年に1回のハレの場だ
主催者賞
地域に密着した共同出資の店「なんでもや」
宮城県丸森町 大張物産センター なんでもや
○共同出資による自分たちの店「なんでもや」を設立
 丸森町大張地区は、戸数約300戸、人口1000人余の中山間地。少子高齢化や市街地への移転など世帯数が減少し、小売店が廃業、農協の購買部も広域合併の影響で撤退するなど、近くに日用品を買うお店がなくなってしまった。そこで、町商工会大張支部の有志は、店舗の開設を検討していたが、郷土研究家の結城登美雄氏から、共同出資で経営し、収益を地元に還元している沖縄県の「奥共同店」の仕組みが紹介され、大きなヒントとなった。
○地域住民から出資金により自分たちのお店を自分たちで設立。内装工事等は地元の大工さんや電気工事店などの協力で修理。日用雑貨品、食料品のほか、冷蔵庫などの電気製品、草刈機から車までできるものはなんでも取り揃えていることを基本理念としている。また、車を持たない高齢者の世帯には、電話1本でなんでも配達もしている。また、産直部会の開設し、自家用のみとして栽培していた新鮮野菜を産直で販売もしている。
○先進事例に学びながらも、店舗が消滅するという中山間地に共通して見られる事象に対し、約300世帯のうち200世帯が出資に協力するという幅広い支持を得てスタートし、それこそ「自動車から牛乳1本まで何でも買える店」を開店した活動は評価された。
○さらに、行政の支援がないなか、店舗は住民の職業を活かして改装する、週1〜2回、移動販売車で巡回することで、車のない高齢者に喜ばれるとともに、一人暮らしのお年寄りの健康状態を把握することにもつながっていること。さらに高齢者が野菜の直売、趣味の手工芸品の販売など、小額だがお年寄りの収入につながっているなどの多面的なしくみをつくりだしていることが評価された。
開業2年目から、軽自動車の保冷車を購入し、宅配も始めた 43平方メートルの店内には菓子、雑貨、惣菜、野菜など「なんでも」おいてある 宅配の時の語らいは、お年寄りには大きな楽しみ
主催者賞
高校生が町をつくる、文化をつくる
兵庫県たつの市 兵庫県立龍野実業高等学校デザイン科
茶髪をやめ、ファッションショーを
@校内文化祭で、デザイン科の生徒から、授業で学ぶことをいかし、ファッションショーを開きたいという声が上がった。当時、茶髪、化粧、ミニスカートという生徒が大半であったが、提案を受けた教師からは、ファッションショーでは、高校生がしないような化粧をしてステージに立つのだから、普段の学校生活で茶髪や化粧するという生徒はファッションショーには参加させないという条件をだし、生徒も受け入れ、平成8年からファッションショーが始まった。
校内から地域に飛び出し
A授業科目ではない服づくりや舞台でのウオーキングなど、見よう見まねで始め、自ら工夫したり、地域の服装学院の協力を求めながら、実施してきた。さらに、平成14年に、自分たちの努力を地域の人にも見てもらいたいと、地域の空き家を借りて、舞台づくりも生徒が行い実施したショーには、これまで実業の生徒を特別の目で見ていた地域の人たちも参加、成功を収めた。この活動を通じ、デザイン科の生徒と地域の住民、地域の活性化事業に関わる地域のまちづくり協議会などと、交流の機会が生れた。
高校生もまち活性化の仲間として
Bこの他にも、学校内の授業を飛び出し、城下町の商店と共催、旧城下町を美術館に見立て、空き家などを利用しての「町じゅう美術館」(全生徒が2月中旬の金土日3日間で実施)、また、地域商店のアーケード街で住民と協働で実施する公開野外展覧会「わくわくアート」(2年生が7月下旬の土日に実施)を実施するなど、地域が高校をまちを活性化させる大事な仲間という認識が生まれてきた。
事前にまちづくりの手法を学ぶ
C一方、ファッションショー始め各事業については、教師は側面の援助はするが、ファッショーの材料を得るための皮加工業者、空き家を借りるための商店街との交渉については、多くは生徒が主体的に行うようになってきた。こうした活動により、地域との交渉をはじめとするまちづくりのノウハウを自然に学んだ生徒達が地域に残り、まちづくりの次の担い手として、育ち始めている。
合併後も地域への思いは受け継がれ
D同校は来年には、県立龍野北高等学校として生まれ変わるが、生徒の地域に対する思い、地域と生徒の結びつきは、合併後も受け継がれていく。
ファッションショーで大好評の地元幼稚園モデル 町ぢゅう美術館で生徒による紙芝居イベント開催中 わくわくアートでは会場の遊具も作品の一部
企業の地域社会貢献活動部門
内閣総理大臣賞
地域に根ざした活動
東京都港区 本田技研工業株式会社
 社会貢献活動は1964年からの長い活動歴と実績を持つ。1998年に社会活動理念を制定、社会活動推進室を設置し、全社的に展開。2006年にグローバル活動方針を策定、世界各地で推進する体制を整えた。会社の重要な基本方針となっており、本社の社会活動推進室で共通活動指針を示し、各製作所の社会活動担当部署が地域にあわせた活動を展開。販売会社、関連会社、海外拠点も同様に行う。
1.子ども達の育成支援活動
 「ドリームハンズ」は、Hondaオリジナルのダンボールクラフトを使った気軽に楽しみながら体験できるモノづくりの入門プログラム。従業員やOBがサポート役となり、事業所のある地域の小学校や公民館で行っている。「環境わごん」は、ワゴン車に海や山の自然素材を積み込んで、事業所のある地域の小学校や公民館などに出かけて行く出前型の環境学習プログラム。
そのほか、未来に“あったらいいな”と思うモノのアイデアを画用紙に描いて応募する「子どもアイディアコンテスト」を開催する。
2.地球環境を守る活動
 「ビーチクリーン活動」は、「素足で歩ける砂浜を次世代に残したい」という思いから始めた。独自開発された「牽引式ビーチクリーナー」を使い、従業員とOBで編成したキャラバン隊が地域社会と協力して全国の砂浜を清掃している。
また、事業所が立地する地域が恩恵を受ける水源の森の保全活動に取り組む。
3.交通安全の教育・普及活動
 「交通安全キャラバン」は、未就学児を対象に、事業所のある地域の幼稚園や保育園を訪問して行う。2007年度は641園で76492人の子ども達が体験した。
4.地域に根ざす活動(上記以外の)
 「タッチ・ザ・ワールド」と「大使館訪問」がある。「タッチ・ザ・ワールド」は本社周辺の各国大使館の協力で開催する国際交流イベント。子ども達が特製パスポートを手に各国ブースをまわって、その国の文化に触れながら楽しむ。
 「大使館訪問」は、子ども達にさらに世界の国々への関心や好奇心を深めてもらうための、子ども達が大使館を訪問する夏休み特別企画。「タッチ・ザ・ワールド」の参加大使館の協力で、子ども達は実際の大使館に入り、大使館員からその国のことや大使館の仕事について話を聞く。調べたことや取材したことをまとめレポートを作る。
 そのほか、「港区国際フットサル大会」「東京ベイ・クリーンアップ大作戦」「みどりの感謝祭」「青山一丁目クリーンキャンペーン」などに協力している。
 各事業所でも、地域の「クリーン作戦」、献血活動、年賀状の賞品の寄付、工場見学の受け入れなどを行っている。
OBボランティアが様々な自然素材を持ち込み、環境の大切さを感じながらクラフト作りなどを楽しむ「環境ワゴン」 自治体や森林組合などと協力し、従業員ボランティアが水源の森の保全活動に取り組む 地域内に大使館が多いことから、地域住民が様々な国との交流の機会を設けるためにタッチザワールドなどのイベントも行なっている
内閣官房長官賞
イトーヨーカドー マタニティ・育児相談
東京都千代田区 株式会社イトーヨーカ堂
○イトーヨーカ堂では、134店舗で「マタニティ・育児相談室」を設置している。1975年から「マタニティ・育児相談室」を各店舗に開設し(一部店舗は未実施)、妊娠・出産・育児について「専門性の高い相談員(保健師、助産師)」が毎月2回〜9回無料で相談を行なうとともに、各相談室では育児をテーマにしたイベントも開催している。
ちなみに昨年(2007年3月から2008年2月)の実績は以下のとおり。
・実施店舗数 134店舗
・相談員数 91人(保健師40名、助産師43名、保健師かつ助産師8名)
・利用者数 10万人
・相談件数 31万件
・イベント 876回(参加6700家族)
イベントの内容―おむつはずれ、事故予防、タッチケア/ふれあい体操、虫歯予防、離乳食/幼児食、マタニティ、赤ちゃん体操、スキンケア等
○ここでは、身長計や体重計を使っての基本的な測定だけでなく、オリジナルのリーフレットなども使い、適切なアドバイスを行なう。さらに、行政の「子育て窓口」とも連携をして情報交換を行なっている。
○また、全国に散らばる相談員が一堂に会しての研修会の開催や相談員向けの情報誌(月1回)発行などにより情報共有をはかっている。相談員は年契約だが、長期に契約を継続している者も多く、30年を超える相談員の方もいる。
○また、相談室で応じきれない内容については無理をせず、地域の保健センターなど専門機関との連携により対応し、高い専門性は持っているものの、同相談室は、子育て中の母親などが気軽に相談できる窓口としての水先案内役となることを心がけている。
○このように30年を超える長きにわたり、人件費と研修費をかけて社会貢献活動を継続しているケースは稀であり、また、社会貢献活動として、社会への責任の覚悟と踏み込み限度のわきまえ方についてよく考慮された活動の理念と方針をもって運営されていることが評価された。
1978年から店内に子ども図書館を設置。現在9店舗で運営。お買い物のついでに本を借りる子、その場で本を読む子どもたちで終日いっぱい。貸し出しを含め全てのサービスが無料 相談員の講習も毎年開かれ、新しい子育ての情報の収集やお互いの情報交換を行なっている 小学生から大学生までの「研修の受け入れ」も大きな活動。大阪府堺市のアリオ鳳店では、地元の小学校の4年生88名を迎え、環境とユニバーサルデザインをテーマに「体験学習会」を実施
主催者賞
「安全」と「環境」を届ける
東京都江東区 佐川急便株式会社
1.「さがわきゅうびん交通安全教室」
 営業店で、長年、地元の教育機関やPTA、警察等の依頼を受けて、各地域で個別に子供達への交通安全指導を行ってきたが、2003年2月、幼稚園からの開催依頼がきっかけとなって、全国統一の指導マニュアルを作成し、横断幕・看板・標識・信号機・パンフレットなどを用意して、「未来ある子供達の生命を悲惨な事故から守る」をテーマに「さがわきゅうびん交通安全教室」の全国展開がスタートした。
 対象は保育園児、幼稚園児、小学校低学年児童が中心。子供達に、どうやって事故の危険性や交通ルールを伝えていけばよいのか。社員が試行錯誤しながら取り組んだ。進行役は「交通安全お姉さん」となった女性社員。日頃ハンドルを握るドライバーも犬や猿などの動物達や、「ひきゃく君」マスコットの着ぐるみを着て、子供達と一緒に横断歩道を渡り、会場にトラックを持ち込み、トラックの死角を体感するための「車両かくれんぼ」や、交通安全クイズで楽しみながら交通ルールを学んでもらう。
子供達に説明や実演をすることで、教える側も安全意識を再確認し、「この子供達を絶対に交通事故に遭わせてはならない」と、ハンドルを握るときの心構えにつながっている。2007年度は全国で769回、121,660名の子供達を対象に開催。高齢者対象の交通安全教室も始めた。
2.「クリーンアップデー」
 1997年京都で開催されたCOP3をきっかけに、京都に本社を置く地元企業として、天然ガス自動車導入をはじめとした環境保全活動に本格的に取り組む。2003年に環境行動指針を策定。グループ全従業員参加型で、毎月環境保全活動を行っている。その一つとして、営業店周辺の清掃活動「クリーンアップデー」(年4回)を行う。営業店のみでなく、地域の自治体やNPO団体、近隣企業と共同で実施し、2007年度はのべ31,508名の従業員が参加、自治体や企業等との共同実施は83件行う。
3.「高尾100年の森プロジェクト」
 東京都八王子市高尾に所有する森林(約50ha)を活用して「高尾100年の森プロジェクト」を実施、「市民・大学・企業等の協働」による森林管理を行う。整備・調査が済んだ里山を環境教育の場として提供し、地域の小・中学生を対象に環境イベント「ラブ・高尾の森」を開催した。
交通ルールを身に付けてもらうために、ドライバーも子どもたちと一緒に横断歩道を渡る 従業員による環境保全活動として行っている「クリーンアップデー」。地域の自治体や団体、事業所と実施するようにしている 高尾の森は整備も進み、散策を楽しむことができるまでになった