HOME>あしたのまち・くらしづくり活動賞>令和3年度あしたのまち・くらしづくり活動賞発表
|
|
|
|
|
令和3年度あしたのまち・くらしづくり活動賞発表
|
独自の発想により全国各地で活発に展開されている地域づくり・くらしづくり・ひとづくりの活動に取り組んでいる地域活動団体等を表彰する、令和3年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(主催・公益財団法人あしたの日本を創る協会、NHK、読売新聞東京本社など)の各賞が以下の通り決定しました。
■内閣総理大臣賞
千葉県市原市 青葉台町会協議会
■内閣官房長官賞
大阪府豊中市 団欒長屋プロジェクト
■総務大臣賞
青森県八戸市 八戸市中心街 まちぐみ
■主催者賞
岐阜県高山市 特定非営利活動法人飛騨高山わらべうたの会
岡山県総社市 池田地区小道の駅プロジェクト委員会
山口県山口市 特定非営利活動法人ほほえみの郷トイトイ
福岡県八女市 NPO法人まちづくりネット八女
沖縄県那覇市 沖縄尚学高等学校 地域研究部 まちもどし
また、振興奨励賞には20団体が選ばれました。団体名はページの下部をご覧ください。
今年度の応募総数は271編でした。
|
|
■内閣総理大臣賞
新しい価値を創造し続ける団地・青葉台 |
千葉県市原市 青葉台町会協議会 |
【活動内容】
2018年の市主催の「いちはらの未来を考える円卓会議」に出席し、団地の将来に危機感を覚えた。このまま何も手を打たなければ、高齢化率が10年後には55%を超え、空き家が700軒(全世帯の約1/4)以上のゴーストタウンになる可能性を、各町会長で共有したところからスタートした。
2019年町会協議会理事会で、団地再生を目指すプロジェクトの立ち上げを決定し、協議会3,200世帯及び小・中・高校生297名へアンケートを実施した。この結果を6分野28課題に分類した。これをベースに町会員公募25名、中・高校生14名の計39名によるPJを立ち上げ、13回に及ぶワークショップで分野ごと深掘りをし、優先順位を決めた。
分野1:高齢になっても永く住み続けられる街づくり:買い物・外出困難者対応等
分野2:災害や犯罪に強い街づくり:地区防災計画の策定
分野3:美しい街づくり:空家空地の有効活用、ohanaいっぱい活動の推進
分野4:子育てのしやすい街づくり:子供を安心して預けられる場所造り(こどもミライ会議)
分野5:活気ある街づくり:イベントの統廃合(盆踊りの活性化)、商店街の空き店舗活用事業
分野6:10年後も20年後も価値が棄損されない街づくり:HP・アプリの開発、自治会機能の減退防止策の検討
1課題ごとに1チーム対応で、当初の6チームから11チームに増やしてきた。
成果としては、将来に対する危機感を地域で共有し、団地再生への意識の高まりとまちづくりへの機運が徐々に高まり、自分がやろうという「自分事化」が進んできたこと。地元へUターンしてまちづくりに関わりたい人材や地元高校生が発掘されたこと、さらに地元住民の活性化と新たなキーマンの発掘につながったことである。
先人たちから引継いだ仕組み・体制をベースに、「新しい価値を創造し続ける街」を追求するため、協議会―まちづくり委員会―39実行PJの仕組みの中で活動をしている。
@各チームはロードマップを作成し、それに則り自主管理をするのを基本としている。
A青葉台全体の資産価値の最大化と、後継者育成を念頭に、確認・調整をするため事務局がリーダー会議を開催し、プロジェクト全体を把握している。課題が6分野にわたり網羅的で、一つ一つの課題が有機的に絡むので、リーダー会議は不可欠と考えている。
B随意のリーダー会議や、月1回の事務局会議で調整した内容を、まちづくり委員会に報告し承認を受け推進をすることになっており、後は自由に運営をしている。
C市原市がSDGs認定都市になったことで、今後はさらに行政との連携を追求する場を設ける。
本活動は地域の中学・高校を巻き込み、若いうちから地元に関心を持ち、「新しい街は自分たちで創るんだ」という気持ちで活動する、未来志向の「まちづくり活動」である。まさに今、新しい形の「団地再生計画」に取り組んでいると自負している。現状の課題だけでなく、待ち受ける将来の課題に対しても、想定外を想定内にできるように創意工夫をし、10年後、20年後も「新しい価値を創造し続ける街」を将来の世代につなげていける活動にしたいと同会では考えている。
【評価された点】
高齢化する団地の再生という全国的課題への先進事例になり得る取り組み。地域全体で危機感を共有し、地元の中高生を企画段階から巻き込むことで多くの人が参加する未来志向で主体的なまちづくりにつながっている。行政はあくまで後押し、後方支援という姿勢が相互に信頼感のある公民連携を生み出している。
|
|
■内閣官房長官賞
こどもを中心とした多世代交流の拠点づくり |
大阪府豊中市 団欒長屋プロジェクト |
【活動内容】
乳幼児保育・学童保育・ホームサポーター派遣等、子育て支援に関わる事業をメインに、ひとり親家庭への互助的な取り組みも行う。こども記者が地元のお店や人を取材する多世代交流型ZINE『だんらんしんぶん』の発行や地域イベントへの参加など地域に根付いた活動を行う。こども食堂や学習支援では、地域のシニア世代や学生がそれぞれの「得意」を持ち寄って主体的に関わるなど各人のエンパワメントの場や居場所となっている。
団欒長屋は「こどもを中心とした多世代交流の拠点」を目指して2013年、木造平屋建てを改装して発足。拠点を借りて整備していた頃、近くの民間学童保育が閉鎖されると聞き、そこの利用者や大学生ボランティアをそのまま受け入れ、引き継ぐことにした。その後保育士資格も取得し、ワークショップなどを行う親子広場「だんらんおざしきカフェ」を開催。地域の子育て支援もスタートした。
地域に開かれた子育て拠点となるための新たな課題として、こどもたちにも地域で様々な世代の人と人間関係を築いてもらいたいと思い、できたのが、こども記者が取材から製本まで行う多世代交流型ZINE『だんらんしんぶん』。
2014年創刊。行政の公認があることで地域の方々にも信頼され、快くお店や団体に取材を受けてもらえた。人脈を駆使して取材対象を探すだけでなく、講師を招いてカメラや似顔絵の講座、インタビューに欠かせない傾聴力のお話などを小学生対象に行った。
カメラを持って町歩きする中で、こども記者から「この店を取材してみたい」といった言葉や、「自分のコンテンツを作りたい」など主体性も育まれた。自分たちで製本した冊子を、取材した方はじめ地元のお店などに配って歩き、人々と交流が生まれるのも達成感のひとつ。号を重ねるごとに発行部数は増え、近隣小学校や市内の図書館全館など公共施設にも置いてもらえるようになった。現在13号まで発行されており、2017年にはフリーペーパーオブザイヤー審査員特別賞を受賞した。
収益事業としては2016年に同じシングルマザーの保育士と認可外保育所を設立。翌年には学童保育同様、他の団体から顧客とスタッフをそのまま受け入れる形でホームサポーター(ベビーシッター)派遣事業を引き継ぎした。
同年、こども食堂もスタート。以来一度も休むことなく、毎月違う献立で開催。調理から盛り付け、配膳、最後の片づけまでこどもと一緒に行う全員参加型の地域食堂で、コロナ以前は各国家庭料理や季節に合わせた食育イベントは多くの親子に喜ばれた。
多世代交流イベントも盛んで、キッズバンドを組んだり、『だんらんしんぶん』で都市型農園を取材・収穫をさせてもらい、食材を調理して食すなどの企画も実現してきた。
2019年から60食のお弁当テイクアウトとひとり親家庭へのフードパントリーに切り替えて実施。お弁当受け渡しの際に複数のシングルマザーからこどもの不登校や収入減などコロナ禍での困りごとを聞き、2020年に夕飯付き無料学習支援事業を開始した。
団体設立から8年。代表ひとりの困りごとから始まった団欒長屋は、今や利用者だったお母さんたちやシングルマザー仲間、地元のシニア世代、大学生など支援者が増え、多世代・多国籍の方々が活躍できる居場所となっている。
【評価された点】
子育て苦労した経験を原点として、乳幼児保育、学童保育、ホームサポーター派遣。多世代交流型ZINE『だんらんしんぶん』、子ども食堂、学習支援と活動を発展させてきた。子供を中心に据えつつもそれにとどまらず、大学生、シニア世代、外国人と、交流の幅を広げている。
|
|
■総務大臣賞
“なんか楽しそう”をつくり出す |
青森県八戸市 八戸市中心街 まちぐみ |
【活動内容】
八戸市中心街“まちぐみ”は、八戸市の施設“八戸ポータルミュージアム はっち”( 以後はっちとする)の事業として2014年発足。アーティスト山本耕一郎氏が市から委託を受け組長を務め、市民が主役になって発案した「なんか楽しそう」をまちなかに作り出す活動をしている。組員数は520人(2021年6月現在)。
自分の得意なことで参加する市民集団で、ペンキ塗りや裁縫に料理、アイデア出しなど、無理なくできることをお互いが補い合いながら、「自分たちのまちは自分たちでよくしていこう」という風土づくりの場であり、意識変革の場、自分発見の場にもなっている。
地域づくりとは、“一人ひとりが自分の個性を生かして地域や社会に貢献しイキイキと生きること”だと考えている。それを実践するため、「既存の組織を使わず、小さなお金で大きく動かす」というやり方を用い、物事を素早く立ち上げ、いち早く成果を出す秘訣として、まちぐみの常套手段になっている。
また、その軸になる考え方が2つある。1つ目は、まちや社会の現況を感じ、まちの問題・課題を見つけ、そのために自分たち市民には何ができるか、今何をすべきなのかを考え動く「問題解決型」。2つ目は、これをしたらもっと楽しいまちになる、自分はこんなコトを実現させたいなど、夢や妄想から出発する「未来志向型」だ。この考え方をもとにして「高校生とつくる南部せんべいカフェ」や「はっちのイスに南部ひしざし」といった事業が行われている。
地元高校生との活動「高校生とつくる南部せんべいカフェ」(以後、せカフェ)は活動を始めてから今年で5年目になる。廃れ始めている地域の伝統食「南部せんべい」の文化の復興と高校生の発想が南部せんべいの未来を作るきっかけになるものとして実施した。また、県外に若者が出て行ってしまう前に、地域に暮らす普通の大人たちと関係をつくり、その後もつながり続けることによって、帰省した時などに会いに行ける人、会いに行ける場所の役割としても機能している。「はっちのイスに南部ひしざし」も5年目となる活動で、はっちの備品の椅子に通りがかりの市民や観光客がバトンタッチしながら南部菱刺しの模様を直接施すもの。完成した椅子はその後もはっちで使用され、多くの人に南部菱刺しの魅力を発信し続けている。同時に、作業に参加した市民にとって、「自分が関わった椅子があるはっち」が“自分ごと”になるという効果も狙っている。
これまでの受賞歴は、青森県「第8回ふるさとあおもり景観賞」まちづくり活動部門最優秀賞を2016年に獲得。2019年には、共同通信社「第9回地域再生大賞」ブロック賞を受賞し、全国規模で認知されはじめ、全国のまちづくり関連の組織や大学期間、雑誌、ラジオ、テレビなどからの問い合わせも多い。また、中心街で目に見える形で活動していたり、成果物を残しているため、「小学生の時からまちぐみを見ていた」「その頃から興味があって高校生になった期に加入しました」というような地域市民からの声が届いている。
【評価された点】
「なんか楽しそう」を街中に作り出すという明確なコンセプトの下で、地域資源・伝統を活かした独創的な取り組みを継続して行っている点に魅力を感じた。参加する方々も見る側も、共にワクワクするようなまちづくりに取り組み、見事にそれを実現されているようだ。
|
|
■主催者賞
「誰も取り残さない!」日本一広い市だからこそ地域ぐるみで子育て支援 |
岐阜県高山市 特定非営利活動法人飛騨高山わらべうたの会 |
【活動内容】
東京23区より広い、日本一の面積を有する高山市は、90%以上が森林という地域の中に、集落が点在している。昨年のコロナ禍、また、夏に飛騨地方を襲った豪雨災害では、多くの子育て家庭が孤立した。同会は、自身も子育て当事者であるため、この広い高山市の子育て支援の課題を痛感し、「誰も孤立しない子育て支援環境」を作ることが急務であると感じた。
高山市の課題としては、
@「ちょっと子どもを預かってほしい」というニーズに対応する託児サービスがない。
A各地域には、まちづくり協議会(自治組織)はあるが、乳幼児親子を対象とする部会がない。
B川の氾濫や土砂災害によりすぐに集落が孤立してしまいNPO等が支援に入れない。
また、同会が抱える課題としては、
@スタッフが皆、子育て真っ最中の母親であるため、夕方や夜間はなかなか動きにくい。
A広い高山市では、NPOが単独で支援活動を行うには限度があり、各地域の組織や人と連携をとって、きめ細やかな事業を行うことが必要。
ということが挙げられる。
そこで、コロナ禍をきっかけに「誰一人取り残さない」をキーワードに以下の事業を展開。
@飲料店と連携して牛乳加工飲料の宅配
ひとり親家庭、困窮家庭、子どもたちだけで留守番をしている家庭などへ、バナナスムージーを届けて、相談に応じたり、様子を伺う。224杯のスムージーをお届けした。
AJAひだと連携して飛騨に帰省できない学生への農産物配送
コロナにより飛騨に帰省できない学生向けに、飛騨の農産物や木を使った文房具等を配送。約400件お届けし、売上115万円全額を豪雨災害で打撃を受けた農家の支援に充てた。
B木工業者、イベント業者と連携してミニミニサマーフェスティバル実施
夏祭りが全て中止となる中、大人数を集めるイベントではなく、20組限定のサマーフェスティバルを14回実施。母親一人一人、子ども一人一人に寄り添う機会を作った。
C助産師さんと連携してインスタライブ「なおくみチャンネル」配信
検診や赤ちゃん教室の休止中、妊婦さん、子育てママに向けて悩み相談に応じるインスタライブを配信した。視聴回数は延べ3000回を超えた。
DNPO法人と連携して困窮家庭に制服を届ける「めぐる制服プロジェクト」実施
コロナによる収入減により、高校や中学の制服購入が困難な家庭に向けて、寄付の制服を届ける事業を実施。200枚を超える制服を困窮家庭にお届けした。
E中間支援のNPO、行政、まちづくり協議会と連携して各地域の子育て支援人材を発掘し、託児事業を開始
かねてからの大きな課題だった、託児サービスを始めた。各地域で、子育て支援に動いてくれる人(元保育士や元助産師など)を発掘し、託児の希望があった時は、その地域の支援員が対応できるように、ネットワークを作ることを目的としている。
子育て家庭がその地域の支援員と顔なじみになり、つながりが生まれれば、非常時にも手助けしてもらえる。今年度はこの事業に特に力を入れている。登録支援員は現在約40人。4月から始まった託児事業では1か月20件を超える依頼があり、サポーターがほぼ毎日出動している。
【評価された点】
現代の社会的課題でもある「孤立しない子育て環境」の実現に向け、様々な団体と協働している先進事例である。また、子育ての終わったシニア女性の活躍の場ともなっている。
|
|
■主催者賞
地域おこしで直売店を開設…池田小道の駅 |
岡山県総社市 池田地区小道の駅プロジェクト委員会 |
【活動内容】
1.はじめに
総社市の最北端にある池田地区に唯一あった食料品店が閉店。一番近いスーパーには車で15分以上かかるので日常の買い物にも困る状況となった。住民の中には他地区の道の駅や、農産物直売所に出荷している人もいて、「地区内でも販売したらどうか?」という意見が多々あった。
そこで、総社市が実施する「市民提案型事業」に応募し、50万円の補助金を使い、有志による手作りでプレハブを改造して店舗を作り「小道の駅」と名付けた。活動の目的は、地元の野菜を中心に色々なものを販売し、地産地消による経済の循環と地域の活性化、そして生きがいのある地域社会を作ることとした。
2.開店・営業形態
平成29年5月21日(日)に新装開店セールを実施。当日は大盛況で売上金は14万円になった。現在は火曜を休業日として、販売員は地元の主婦19人が、午前と午後の時間帯に分け、2人ずつで店番。売上金の10%を販売員手当として支給。特に女性の販売員はお客様に気さくに話しかけ、リピーターを生んでいる。
3.経営方針
販売商品は地元の野菜を中心に、果物、米、木炭、木工品、手芸品などあらゆる物を委託販売。売上金の15%を店の運営経費(販売員手当+維持費)として頂き、残りの85%を出荷者に還元。
商品の出荷者は家庭菜園の人も多く、自分が作った野菜がお金に替わる喜びを初めて知った人も多い。さらに良い野菜を作ろうと人を活性化させ、小道の駅に関わる人の顔は輝いている。
開店1年目に、1周年記念の大売出しを実施。当日の売上金は18万円と大きな成果を上げた。毎年5月と12月に大売出しを続けることで、地区内の存在感がグンと上がった。
4.経営拡大(弁当販売)
令和2年7月にキッチンクラブを立ち上げて、手作り弁当の製造・販売を開始。空き家を活用して台所を調理場にリメイクし、保健所の許可を取るなどの手続きをして、弁当作りを開始できた。販売員が主体で調理をしており、当面は土曜日だけの製造販売をしている。
8月以降は毎月10万円を超えるほど売上げた。手作り弁当の種類は山菜おこわや、鮭弁当、いなり寿司、唐揚げ弁当など15種類に及ぶ。60〜70%が予約のため、ほとんど売れ残りはない。令和2年度中(9ケ月間)の弁当の売上総額は100万円を突破した。
5.経営拡大(売り場面積アップ)
キッチンクラブの弁当販売が加わり、小道の駅全体の売上げ額も前年度比35%増加。
令和3年度の市民提案型事業の補助金を活用し、倉庫部分を改修して店舗面積を50%拡張。調理場も床面積を50%拡張し、生産性を向上させた。今後の数量増加や販売日の増に対応できる体制が整った。
6.今後の課題と展望
総社市の市民提案型事業の補助金を当てにしない経営体質とする必要がある。年間1千万円近くに売り上げを伸ばしていきたい。今後は弁当の製造販売日を増やし、独居老人宅への弁当宅配サービスなどの事業を加えて発展させていきたい。
【評価された点】
地域の高齢化、食料品店の閉店という状況から、手作りで直売店を立上げ、育ててこられた取り組み。経営拡大も順調に進み、独居老人宅へ弁当宅配を含めた今後の事業展開にも期待。
|
|
■主催者賞
地域の絆でつくる笑顔と安心の故郷づくり |
山口県山口市 特定非営利活動法人ほほえみの郷トイトイ |
【活動内容】
山口市阿東地域は、山口県の北東部島根県との県境に位置する。約290平方キロメートルの面積を有し、山あいに囲まれた自然豊かな地域。人口は約5000人、近年人口減少が進む中、高齢化率は50%を超えており、高齢者の一人暮らしや高齢者夫婦世帯の割合も高くなっている。この地域の中ほどに位置する地福地域では、地域交流拠点ほほえみの郷トイトイを中心に、住民主体による地域課題解決の取り組みが行われており、人口減少に対応した地域の仕組みづくりを進めている。
この取り組みは、平成22年に地域内唯一のスーパーが撤退したことをきっかけに、高齢者を中心に買い物環境への不安が高まったことからスタート。平成23年12月「地域の絆でつくる笑顔あふれる安心の故郷づくり」をキャッチフレーズにした地域の将来構想「地福ほほえみの郷構想」を提案し、地域拠点を核とした住民主体の地域課題解決の仕組みづくりを推進するため、NPO法人ほほえみの郷トイトイの前身である地福ほほえみの郷運営協議会を設立。
平成24年1月から2月にかけて、撤退したスーパーの建物を活用して地域拠点を開設するため地域に出向き趣旨を説明。また、スーパーの撤退した空き店舗を活用し地域拠点として再生するために、地元の中学生から高齢者まで多くの方がボランティアで作業に協力。これらのプロセスを通じて、地域住民の多くが地域拠点の立ち上げにかかわったことが住民の意識改革につながり、そして平成24年3月31日、ミニスーパーと交流スペースを併設した地域拠点ほほえみの郷トイトイは生まれた。
地域の中にコミュニティをつなぐ拠点ができたことで、地域ニーズや課題を集約する仕組みがつくられ、それをもとに活動を展開してきた。主な取り組みとして、見守りとしての役割もある地域に安心をお届けする移動販売事業、地元女性が主体的に立ち上げた惣菜加工グループ「トイトイ工房」、産直野菜の出荷のしくみづくり、健康に年を重ねるための介護予防事業、高齢者と子どもたちの笑顔がつながる地域食堂の開設などがあるが、全ての取り組みは「地域に笑顔を増やす」という理念のもとに実施されている。
特に山間部に点在する高齢者と小さな拠点であるほほえみの郷トイトイをつなぐことを目的に、平成25年から運行している移動販売車は買い物の機会を提供するだけでなく、地域ニーズを丁寧に聴きとる重要な役割を果たしている。一般的に農村地域での移動販売事業は、ニーズは高いが採算性が低く事業として成り立ちにくいといわれているが、ほほえみの郷トイトイでは総菜の販売などで移動販売事業の黒字化を実現。また、移動販売事業は単なる買い物支援ではなく、小さな拠点と地域の人々をつなぐツールとしてとらえ2年前からスタッフを2人態勢にし、コミュニケーションを重視し商品を売りに行くのではなく、地域の人に会いに行くというスタイルを徹底したことで持続可能なソーシャルビジネスとして確立している。さらに移動販売事業には売上による利益だけではなく、地域の声を聴くという役割がある。小さな拠点を核とした地域課題解決を事業として展開する上で重要なマーケティングとなっている。
ほほえみの郷トイトイという小さな拠点は、地域内の人、資源、想いをつなぐとともに地域が守り育ててきた伝統・歴史とこれから描かれる地域の未来をつないでいき、地域の核となって地域の未来に新たな可能性と希望をもたらしてくれる存在として、地域とともに人口減少に対応した持続可能なコミュニティづくりに取り組んでいる。
【評価された点】
地域ニーズを発見し、課題と対応を整理、迅速に対応することが、ふるさとづくりの基底にあることを示す事例。IC活用など新しい手法を取りいれながら、「都市部に追随」せず、違いと関りを明確にするという考え方には共感するところが多い。
|
|
■主催者賞
暮らしを継承する八女福島の町家再生と地域活性化 |
福岡県八女市 特定非営利活動法人まちづくりネット八女 |
【活動内容】
1.まちづくりの中心フィールドの状況と活動の背景
八女市の中心市街地の福島地区(=八女福島)は、近世初期に整備された福島城の城下町としての構成を残しつつ、江戸から明治期に物産の集散地として栄えた商家町である。度重なる大火を経験して江戸後期に完成した、防火構造の「居蔵(いぐら)」と呼ばれる入母屋妻入土蔵造の重厚な町家を中心に、江戸後期から昭和初期に建築された歴史的建築物が、街道である豊後別路(旧往還道)沿いに連続して残っている。
住民団体と市は、この貴重な市民財産を後世に伝え残すため協動のまちづくりを展開している。1993年より「街なみ環境整備事業」の導入(国土交通省所管)、さらに2002年5月に旧往還道沿いの約20ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けた。
一方で少子高齢化が深刻化し、空き家の増加とともにコミュニティの維持が難しくなっている。また、地域の歴史的建築物の修理事業を担う大工・左官など職人が減少している。歴史的町並みの保存・継承のためには、空き家の再生・活用及び職人の確保・育成等が喫緊の課題である。これらを解決すべく日々努力が重ねられている。
2.空き家再生活用を実践するまちづくり活動
これまでは家主自身が事業主体となり、NPO法人が改修事業をサポートして空き家を再生した後、移住等希望者のストックの中から家主とのマッチングをサポートという手順で空き家を活用していた。基本的なパターンで実績を上げ、地域コミュニティの担い手を確保してきた。
しかし、最近は空き家の家主が資金を含めて何らかの事情で空き家の改修事業等ができないケースが増えてきている。何もしなければ、建物の老朽化が深刻になり、そのまま放置されてしまう。これらの困難な課題について、八女福島では、家主に代わり建物の改修から活用までを代行する仕組みをケースバイケースで実践し、着実に一棟一棟を再生活用してノウハウを蓄積してきた。1993年から今日まで、約66軒の空き家が再生され、飲食店や雑貨店等の店舗、工房兼住宅、町家ホテル、専用住宅など様々な形態で活用が進んでいる。また、移住者は30世帯に及んだ。地域コミュニティの維持に積極的に貢献している若い新住民の姿も見られるようになった。また、修理現場見学ツアーや地元小学生の土壁塗り体験学習等の活動も行っている。
3.伝統建築技術を継承するまちづくり活動
昔から伝わっている職人の匠の技術は、全国一様のプレハブ住宅などの普及によって、需要が小さくなり途絶えようとしている。そこで、八女福島では市内の建築士と施工業者・大工等の職人で構成された建築集団を発足させた。地域住民からの建物修理等の相談に対応しつつ、伝統建築技術を研鑽して修理事業を持続的に担っている。修理事業を地元の建築集団が担うことで、公共事業の資金が地域経済に貢献するという効果もある。
1995年の街なみ環境整備事業開始から2002年の重要伝統的建築物群保存地区選定を経て2019年までに、約162棟の歴史的建築物の修理・修景事業の実績を上げている。
【評価された点】
国指定の重要伝統的建造物群保存地区を保存・継承するため、空き家再生・代行リノベーションというノウハウを蓄積し、コミュニティ維持に貢献している。また、子どもたちの修復作業体験や職人の確保・育成など人材を重要視した取り組みを行っている。
|
|
■主催者賞
まちぐゎーに活気を! |
沖縄県那覇市 沖縄尚学高等学校 地域研究部 まちもどし |
【活動内容】
沖縄尚学高等学校地域研究部「まちもどし」は、「まちぐゎー」を以前のように活性化させることを目的とし、沖映通り・市場本通り・公設市場・パラソル通り・むつみ橋通り・平和通りの6つの通りを中心に活動している部活である。
「まちぐゎー」とは、沖縄の国際通りにつながる裏道であり、沖縄の方言では「市場・商店街」を意味する。表にある国際通りは観光客だけでなく地元客にも人気であるのに対して、「まちぐゎー」には以前のような活気が見られず、閉店が相次いでいる。「まちぐゎー」を通学路として使っている高校生も、そこで買い物をすることは少ない。このように地元客が少ないことから、観光客に依存している状況である。
「まちもどし」は、観光客に依存せずに「まちぐゎー」を発展させるための取り組みを行っている。その取り組みの1つに、小学生を対象にした「まちぐゎー」探検型のツアーがある。
子どもたちにとって「まちぐゎー」が親しみのある存在となることや、子どもたちの家族が「まちぐゎー」に足を運ぶきっかけを作ることを目的としたツアーの資金集めのため、「まちぐゎー」にある店と連携し、竹あかり祭りでちんすこうアイスを販売。販売だけでなく竹にあかりを灯す作業等も行い、地域に貢献した。
また、地方局のラジオに出演し、「まちもどし」の活動内容の周知を図った。
昨年度は、新型コロナウイルスの蔓延によりダイレクトな活動は行えなくなってしまったが、密を避けて行える活動に切り替えて実施した。探検型ツアーの代わりになるものとして、小学生に動画を届けた。実際に触れ合いながらの探検ができないので、クイズを入れたり等工夫を施して、小学生が途中で飽きてしまわないように努めた。遠足や社会見学ができない中、地域学習のきっかけになってほしいとの思いを込めた。その動画が一般の人や市役所に評価され、てんぶす前(国際通りにある琉球伝統文化を発信する商業施設)の電光掲示板に動画を映し出す企画が持ち上がった。その企画を実行するため、現在新しい動画の作成を行っている。
今後は、同世代や親子に対しての活動を増やしていき、SNSも積極的に活用して「まちぐゎー」の魅力を広める活動を続ける。若い世代がこのような取り組みをすることに大きな意義があると考えている。
【評価された点】
高校生が自らの問題意識で行動を起こしている事例である。観光に依存せず自分たちの手で沖縄の商店街を活性化させようとしており、将来に希望がつながる活動である。
|
|
■振興奨励賞 |
北海道苫小牧市 拓勇東町内会 集まれないけど心はつながる―ハイブリット町内行事 |
|
宮城県気仙沼市 大谷地区振興会連絡協議会・大谷里海(まち)づくり検討委員会
故郷の象徴である大谷海岸の砂浜の再生 |
|
宮城県柴田町 しばた100選活用チーム 住民が興味を持ち、守り伝える町の宝もの。 |
|
埼玉県三郷市 特定非営利活動法人MiKOねっと
地域の子どもとつながる「おじいちゃんおばあちゃんの生きがい講座」MiKO・マルシェ |
|
千葉県流山市 流山防災まちづくりプロジェクト 男女共同参画の視点からの防災 |
|
東京都台東区 アール・エフ・エー 空き家等の地域資源を活用したまちの活性化 |
|
東京都町田市 一般社団法人つるかわ子どもこもんず つるかわ無料塾 結い
中高生の支援を通じ地域とゆるやかにつながる恩送りの場 |
|
福井県大野市 和泉自治会 ここに生き続けられるために |
|
静岡県静岡市清水区 清水岡地区堂林自治会 コロナ禍対策として取り組んだ自治会活動のIT化 |
|
静岡県沼津市 門池コミュニティ推進委員会 今できること、すべきことを考え行動しよう |
|
静岡県伊豆の国市 千代田区見守り隊 笑顔の食材市 元気な千代田 |
|
静岡県伊豆の国市 伊豆の国市建設業協会 笑顔の花を咲かせよう ベンチプロジェクト |
|
愛知県東郷町 特定非営利活動法人 ノーマCafe 新しい縁による笑顔と生きがいがある町 東郷 |
|
京都府京丹後市 特定非営利活動法人 気張る!ふるさと丹後町 デジタル配車・決済の住民が支える公共交通 |
|
兵庫県淡路市 淡路東浦ため池・里海交流保全協議会 農漁業協力し豊かな里山・里海づくり |
|
和歌山県和歌山市 特定非営利活動法人ホッピング 地域社会とママ達をつなぐ活動 |
|
岡山県岡山市北区 津島生活学校 すべての人が心豊かに暮らせる人・まちづくり |
|
岡山県浅口市 くにとうの御船を守る会 防災・空き家対策・里山保全でチーム作り |
|
福岡県北九州市小倉北区 一般社団法人城野ひとまちネット 持続可能な新しい自治組織の挑戦事例 |
|
福岡県田川市 福岡県立大学と共に歩む会 人口5万人の町に県立大学がある奇跡 を大切に… |
|
|
|