| (1)少子高齢化社会に向けて
 生活学校の運動はこれまで、地域におけるさまざまの問題をテーマにして、活動をすすめてきました。よりよい暮らしとその基盤となる住みやすい地域の実現・維持を目的に、女性たちの意見と力を生かすのが、生活学校の活動の趣旨です。
 
 その肝心の地域が、これまでとは大きく変ってきています。その実態の一つは、人口構成の変化です。全国的には子どもの人口(14歳以下)が14.7%。高齢者人口が17.1%(総務庁推計)と子どもが少数派になっています。子どもの出生数も激減するという、今までにない少子高齢化社会となっています。都道府県別に見ると(図1-5)、さらに高齢化が顕著なところも少なくありません。
 
 地域の生活環境もかなり変ってしまいました。右肩上がりの高度成長経済、バプル、そして景気低迷と経済社会が移り動くうちに、地域の自然も、道路も、商店街の状況もすっかり変化しました。国際化、高度情報化社会といわれる反面、日常の暮らしや子育ての場が、理想とはほど遠いものになっているのが現実です。
 
 一見、衣食住が足りて、便利な世の中になっているように見えて、たまらなく不安で不満な時代ともいえるかもしれません。それが、児童虐待、不登校、いじめ、理解しかねる少年犯罪など、子どもをめぐる問題となって現れていることは否定できません。
 
 しかも、21世紀の高齢社会を担っていくのは、今の子どもたちです。いわゆる経済活動はもちろん、地域の医療や介護を財政的に担う働き手となるわけです(図1-6)。それを考えれば、こうした地域の変化は重大な問題です。子どもたちの健やかな成長がなければ、地域の活性化の持続も約束されないといえます。だからこそ、子どもの置かれた現状を見つめ、地域を再点検する必要に迫られているといって過言ではないでしょう。
 
 図1-5 都道府県別高齢化率の推移
 
  
 出典:「平成12年度 厚生白書」
 
 図1-6 20〜64歳人口及び65歳以上人口の推移
 
   (注)2000年以降の値は「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所、平成9年1月推計)による。
 
 
 
  
    
      |  | 1975 | 1995 | 2000 | 2025 | 2050 |  
      | 出生率(人) | 1.91 | 1.42 | 1.38 | 1.61 | 1.61 |  
      | 平均寿命(年)男 | 71.7 | 76.4 | 77.4 | 78.8 | 79.4 |  
      | 平均寿命(年)女 | 76.9 | 82.8 | 84.1 | 85.8 | 86.5 |  (注)出生率:15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した値で、その年の年齢別出生率が今後とも変わらないと仮定した場合に、1人の女性が一生の間に生む平均子ども数(合計特殊出生例)
 
 (2)遊び場から空間づくりへ
 
 いろいろの問題を抱える地域の再点検項目として、まず、子どもの居場所、もっと広くとらえて、子どもの「空間」を真剣に考えることが火急のテーマといえます。子どもには、単に公園のような遊び場があれば事足りる、という状況ではなくなっていることはこれまでの記述で認識できたことと思います。
 
 遊ぶ道具や設備、場所はもちろん、まわりとのコミュニケーション、雰囲気も含めた、「空間」というものを重視していくことが必要になっているのです。子どもの心の休憩所といったものが、必要になってきていると表現した方が適切かもしれません。それには、地域の子どもたちを一面からだけではなく、丸ごと観察し、理解していく姿勢で取り組まなければ、解決できない課題ともいえます。
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