「私たちの生活学校」149号掲載
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町内各種団体に呼びかけ「子育てネットワーク」を立ち上げる
兵庫県・東浦町 仮屋生活学校 幡井政子
 兵庫県では、4年前から子育て支援ネットワーク事業の取り組みを各女性団体に呼びかけていたが、この問題は、専門家でも立ち入れない難しい人権の問題として取り組む団体はなかった。
 そのようなとき、お隣の洲本市で虐待により幼児の死亡事件が発生した。
 「他人ごとでない」。わが町ではどうなのか心配だった。しかし、この運動は1団体でできるものではない。男女ともに地域ぐるみでやらなければならない。「他団体や男性中心の組織を巻き込むには」、「何故、今子育てを支援しなければならないのか」などについて自信を待って説明し、いかに納得させるかが大きな問題。


聞き取り調査を実施して

 そこで、まず調査をすることにした。3小学校区内の保育所の先生、低学年の子どもを待つ母親、国や県から委託されてすでに子ども問題に取り組んでいるグループの代表など80名の方を対象に、不登校、引きこもり、万引き、いじめ、虐待などの行為が身近にあるかどうかを対面の聞き取り調査を行なった。
 結果は、心配していたとおり、例えば、保育士の方から、「あざ」がある子どもがいて、いつ事件が起きても不思議ではない現状にあることがわかった。早速、調査結果を待って行政に、子育てネットワークの必要性を訴えた。
 町は大変理解を示し、事務局は健康福祉課におき、また、専門職として、1人応接させると、力強い協力を約束してくれた。
 次に、現場の生の声を聞くことにした。3校区の保育所の所長、各学校長、民生・児童委員の参加を得て対話集会を行なった。この中では、現場の苦悩と学校教育の限界、また、児童福祉ではお手上げで、地域ぐるみの支援が欲しいとのことがわかった。私は提案をした。「今まではそれぞれが点として取り組んでいたが、点では弱い。他の団体とネットワークを組んで大きな強いネックレスにしよう」と。
 生活学校の名誉にかけてもこれを成功させねばならない。町内会、PTA、小学校、保育所などの町内の30の関係団体による代表者会を開いて、今までの経過を説明し、協力を求めた。


できることからはじめよう

 代表者会では、「現実何をしたら良いのか」、「個人のプライバシーに踏み込むことはできない」、「専
門家でさえできないことを、素人の私たちでは無理ではないか」、「実際に活動してくれる推進委員になってくれる人はいないだろう」等々、様々な意見が続出した。どうなるものかと思ったが、まずは、「子どもたちに道であったら、声をかける、見守るなど、それぞれができることをやろうではないか」と説得して、最後は理解してくれた。心配していた推進委員の選出もわずか1週間で39名の推薦があった。今思えば、大変な苦労だったがやり遂げた満足感は何ものにもかえられない。役員の支えがあったからできたことだ。
 全員ネックレスの玉になることの結論にいたった。行政の押し付けでなく「未来を託す子どもは私たちの宝、その子どもが今危ない」と、子育て支援の必要性を理解し納得して、地域ぐるみで応援していこうと、皆で立ち上げた「東浦子育てネットワーク運動推進会議」である。
 結成から5か月、全体事業として「子どもを見守り声掛けする運動」、各校区では「親と子おにぎりコンクール」「年末の餅つき」「人形劇」等事業も実施している。
 まだ、始まったばかりで、急に成果の見える活動ではないが、地域の子どもたちが健やかに育っていけるように、1人の犠牲者も出ないことを折り、「継続は力なり」の精神で応援していこうと思っている。