「私たちの生活学校」149号掲載
活動北から南から

「女性の子育ての負担を減らしたい」の思いから生まれた「キッズネット・クラス」
青森県・弘前市 弘前生活学校 齋藤サツ子
 それは、ある時期、自分を取り巻く環境の変化に気づいたことから始まった。


子育てメイトに委託されたものの?

 平成7年、青森県県内で1歳の男児が虐待を受け、亡くなるという事件が起きた。この事件をきっかけに、県では虐待を防止し、子どもの安全を図っていくために「子育てメイト」という制度を、平成9年8月に設置した。私は、町会長の推薦を受け、この子育てメイトを引き受けたのだが、どのようにして活動したら良いのか分からなかった。そこで、町会長をはじめ、民生委員、青少年育成委員等の方々に未就学児のいる家庭の存在を尋ねたところ、プライバシーの侵害に当たるので教えることはできないということであった。
 せっかく「子育てメイト」という制度を立ち上げながらも、活動内容の具体的な提示もなく、さらに名簿も見せられないということに矛盾を感じつつも、まずは、子育て中のお母さんの相談相手になろうと、担当地区の家庭を訪問して回った。玄関先の乳母車やおもちゃをたよりに、未就学児のいる家庭を探し出し、声をかけた。最初は「何の権限があるの」と警戒されたり、怒鳴られたりしかこともあった。子育てメイトは県知事の委嘱。その委嘱状をもっていっても、子育てメイトは住民には知られていなかったのだ。時には、苦情や嫌がらせの無言電話もあったりした。
 しかし、そのうち、何人かのお母さん方と話をすることができた。その人たちと何度か話すうちに「子どもと一対一で過ごしていることに頭がしめつけられそうだ」、「どのように子どもと触れ合ったら良いのか、どんな遊び方をしたら良いのか分からない」といった実際に悩んでいるお母さん方の生の声を聞けるようになった。
 そんな話を聞く中で、家に閉じこもり、行き詰まっていく未就学児を持つお母さん方の活動、交流の場を持つことができないか。そんな思いから、再度町会の協力を得ようと相談してみた。しかし、0歳〜18歳までは子どもではあるが、町会としては、青少年の育成活動はあっても、0歳〜6歳の子どもは親の保護のもとで育成されるので、活動はできないということで、私たちの要望は取り上げてもらえなかった。また、市の行政相談にも行ったのだが、やはり、対応してもらえなかった。
 それでも自分なりに工夫して、個別訪問を続けていたが、離婚した夫婦の夫のもとに引き取られた子どもが、その家族に虐待を受けているケースを知り、さっそく、児童相談所や福祉事務所等さまざまな所へ相談に行った。しかし、対応は得られなかった。当時は、法制度も不倫で解決する手立てがなかったと思う。そして、何もできないということに子育てメイトのみでの活動の限界を痛感させられた。


子育て女性の負担を減らしたい

 そこで、「女性への子育て負担を何とか軽減したい」「悩みを打ち明けられる場所づくりをしたい」「親と子が楽しく遊べる場所がほしい」―こんな思いで、生活学校のメンバーや仲間の子育てメイト、保育士、さらに学生ボランティアに呼びかけ、平成10年に「キッズネット・クラス」を立ち上げた。そして、市生涯学習課は会場として学習情報館を提供してくれた。
 「キッズネット・クラス」は、年10回ほど開催。毎回60人以上の親子が集まり、風船を使ったゲーム、牛乳パックのおもちゃづくり、クッキーづくり等々、遊びを通じて、親子、若いお母さん方同士、さらにお母さん方と私たち支援メンバーとの交流をはかっている。
 私たちの役割は、子育てを指導するのではなく、あくまで、お母さん方が子育てをするうえでのお手伝いをするという姿勢を貫きたいと思う。そのなかで、お母さん方が子育ての大切さ、すばらしさをわかってもらえればと思う。
 子育てメイトの活動から8年、キッズネット・クラスの立ち上げから7年を経過した現在、町会も子育てには、支援する方向に変わってきていることを最後に付け加えたい。