「私たちの生活学校」144号掲載
ル ポ

紙芝居を使って子どもたちに環境教育
鳥取県米子市・義方みどり生活学校
 鳥取県米子市の義方(ぎほう)みどり生活学校(代表・上村文乃さん)では、これまでゴミの減量とリサイクルの推進に向けた活動を長年続けてきたが、このほど、リサイクル問題をテーマにした紙芝居「あき子ちゃんのゆめ」(このページ最下部参照)を作成し、小学校や子ども会などで上演し、環境教育に役立てている。


「思いのほか大変だった」

「紙芝居づくりを担当した7人が20回ほど集まり、ワイワイガヤガヤやりながら、やっとできあがりましたよ」と義方みどり生活学校の副代表の難波照代さんは、楽しげに振り返る。
 同校では、昨年5月から11月までのおよそ半年をかけて小学生向けの紙芝居「あき子ちゃんのゆめ」を作成した。この紙芝居は、小学生のあき子ちゃんが、集められた新聞紙、段ボール、牛乳パックなどの紙類が機械を通るとノートやトイレットペーパー、新聞用紙などに生まれ変わってくるという夢を見るという内容。
 このなかで、グリーンマークやエコマークの説明が行なわれ、リサイクルの必要性とゴミをださないようにしようと訴えている。同校では、この紙芝居を持って小学校や子ども会などに出向き、上演活動をしている。


市民の意識改革が必要と痛感する

 昭和50年に発足した同校ではこれまで、資源循環型社会の構築をめざし、ゴミの減量とリサイクルの推進に向けて活動を続けてきた。米子市では、すでに平成7年から、6種13分別を実施し、清掃分野では、県内でも先進地といえるが、その実現に向けて、同校を中心とする米子市生活学校連絡協議会では、度重なる対話集会などを開催していった。その力が少なからずあずかっているといえる。
 同校がこのような活動を続けるなかで痛感していったのは、市民一人ひとりが、この問題に対する意識を持つこと、そして、意識改革のための取り組みの必要性だった。そのため、県連絡会、市連絡会の会長でもある上村さんを先頭に、県段階、市段階、さらに同校単独で、様々な取り組みをしていった。
 その一つが調査活動。市連絡会では、市民およそ700人を対象に、買い物袋の持参状況、再生品の使用状況などについて、平成10年、13年、15年と継続的に調査し、市民の意識と行動の変化をみている。
 このなかで、例えば、再生トイレットペーパーの使用者割合がわずかながらも増えているなどの傾向が見られた。さらに、牛乳パックやトレーの排出方法を尋ねている。これは米子市では、市の資源ゴミの回収品目として扱われているが、あわせて、スーパーマーケットでの店頭回収も実施されている。同連絡会としては、清掃費の削減のために店頭での回収をすすめるために排出方法を尋ねたもの。さらにイベントでは、県、市、地元の義方公民館で開催されるリサイクルフェアなどあらゆる機会を通じて市民の啓発に向けた活動を展開していった。
 例えば、昨年米子市を会場として開催された県主催の「環境フェスタ リサイクルフェア2003」では、上村さんが実行委員長を務めるとともに、同校では、ブースを設け、古傘を利用した買い物袋づくりの実演をしたり、先のアンケート調査結果をパネルにして展示するとともに、シンポジウムに上村さんが登壇し、リサイクルの必要性を訴えた。
 また、大人だけでなく子どもの時から意識改革をと考え、これまでも小学生と一緒に、スーパーに出向き、過剰包装や不必要にトレーが使用されている商品について調査を実施したりもしていた。


大きな助っ人はご主人だった

 そして、今回、子どもたちを通して家庭に環境問題に対する認識を深めてもらおうと考えたのが紙芝居。紙芝居については、以前から作ろうという話が出ていたが、ようやく昨年作成に踏み切った。同校のメンバーうち、7人が紙芝居づくりの担当になった。
 この7人が最初に取りかかったのがシナリオづくり。何を題材にするかで議論になった。資源・環境問題ということは決めていたものの、リサイクルに力点を置いたものにするか、あるいは小学生が毎年清掃工場を見学するので、それを題材にしてはという意見も出された。
 そのなかで、小学生にも身近な再生品ノートを題材にしてリサイクルの大切さを表現することが決められた。そして、子どもに夢を与える、という意味も込めて、いまの現実の姿ではなく、子どもが夢の中で「見聞する」架空のリサイクル工場を想定した。
 細かい気配りもした。主人公の「あき子」ちゃんの名前は、地元の義方小学校の児童名簿で一番多かったのが「あきこ」ちゃんであったことから、この名前が選ばれた。「分別」という言葉は、普段よく使うが、子どもたちにはむずかしいだろうと、「分ける」という言葉に置き換えるなど、言葉づかいにも気を使ったと言う。
 そして作画。残念ながら、メンバーのなかに絵を描ける人はいなかった。そこで、最初、専門家にお願いしたが、金額面で折り合わなかったという。次に、白羽の矢が立ったのは、運営委員長である上村さんのご主人の良民さん。高等学校や高専で物理の先生をされていたご主人は趣味で絵を描いた。幸いとばかりボランティアで依頼したが、快く引き受けてくれた。メンバーがアウトラインを何枚も描き、それをご主人が絵にしていった。そうしてようやく13枚の紙芝居が完成した。
 できあがった紙芝居をメンバー同士で、読み聞かせの練習を行なった。「間」の取り方や、絵の引き抜くタイミングなども、何度も試みながら決めていった。ご自分のお孫さんたちを聴衆にして予行演習を行なったメンバーもいる。このなかには、この紙芝居を見て、はじめて自分の使っているノートが再生品であるということを知った子もいたという。その後、小学校や自治会などで実演を行なっている。
 また、この紙芝居を広く活用してもらうために、市内の26の小学校の校長に対し、紙芝居の出前公演を行なうことを示し、利用してくれるよう文書で依頼もした。


シリーズ化もしたい

 思わぬ反応もあった。自治会の老人クラブで、この紙芝居を上演したときに、お年寄りからは「よくわかった」という反応が寄せられたという。
 現在、さきの依頼文書の効果もあり、次第に上演依頼が増え始めたという。
 同校では、この紙芝居に手応えを感じ、第2弾、第3弾の製作を考えている。今度は「夢ではなく、現実の姿を表わせないかしら」などの意見も出ている。「主人からも、次はどうするんだと催促されています。将来はシリーズ化も考えたい」と、上村さんは抱負を語っている。
 冒頭に紹介した難波さんの言葉が物語っているように、紙芝居づくりは、最初にメンバーが考えていた以上に大変な作業であったようだ。しかし、同会のモットーである「楽しく、和気あいあいと」で、第2弾、第3弾の紙芝居をつくり、子どもたちの環境教育の教材として活用されていくのだろう。
 「楽しく、和気あいあいと」といえば、同校では毎年4月に総会を開催する。この総会は、通常は義方公民館を会場として開かれるが、3年に1回の割りで、メンバーの親睦、慰労をはかる意味で、市内のホテルを会場にして開催する。今年は、そのホテルで開催する年だった。事業計画や予算などの協議をしたあと、料理やお酒を前に懇談が始まった。「みんな結構呑むんですよ」と代表の上村さんが言うように、語らい遅くまで続いたという。もちろんこの費用は会費制だが、その一部には同校が続けている共同購入などで得た収入が当てられた。ここで得た活力をもとに同校のメンバーは、第二の紙芝居づくりへ、さらに新たな取り組みへと挑戦していく。