「私たちの生活学校」136号掲載 |
ル ポ |
資金調達にひと工夫、活動に幅広がる |
愛媛県・新居浜市 生活学校 グループ・エコーひまわり |
多くの生活学校にとって活動をする上で、活動費を捻出するのは悩みの種。愛媛県新居浜市の「生活学校 グループ・エコーひまわり」(代表・原綾子さん)では、新聞社をはじめ各種団体から助成金などを仰ぎ、一般市民を対象にした学習会の開催や、高校生と協力した活動を展開している。 会費だけによる活動に限界を感じた 10万円(愛媛新聞社)、20万円(新居浜市)、10万円(えひめ女性財団)、5万1500円(金融広報中央委員会)、6万6000円(省エネルギーセンター)など合わせて53万5500円。これは、昨年度、愛媛県新居浜市にある「生活学校 グループ・エコーひまわり」が受けた助成金などの合計額である。ちなみに平成13年度に受けた助成金の合計は、約80万円であった。 この助成金により、同校は高校生に環境に関心をもってもらう取り組みや一般市民向けの環境学習会の開催、ジェンダーなどの活動を展開している。同校がこのように助成金を得ようとした背景について原さんは「自分たちの会費だけによる活動に限界を感じた」と言う。 同校では、昭和46年の発足以来、手作り石けんの普及・販売や、合成洗剤や農薬に関する学習会の開催、エコクッキングなどの市の出前講座の講師、リフォーム・リサイクル品の展示と推進活動など、主に環境問題について取り組んできた。 そんな中、「エコクッキング」の出前講座の講師に出かける際に、いつもメンバーが感じていたことがあった。それは、受講生が思いのほか、水や洗剤を無造作に大量に使っていることであった。気がつけば、以前から同校が石けんを配っていた公民館や幼稚園でも、いつのまにか合成洗剤が置かれていた。 新居浜市は、西日本随一の高さを誇る石鎚山が間近に迫り、質、量ともに優れた水が湧き出す恵まれた環境にある。しかし、このように市民が合成洗剤を大量に使っていては、いつかこの新居浜の水環境も悪化してしまうのではないかと、メンバーたちは危機感をつのらせていった。 一般市民向けの環境学習会を開催 そこで、どうしたら合成洗剤の使用を抑えて、新居浜の水環境の大切さを市民に理解してもらえるだろうかと考え、水問題についての学習会を開くことを模索しはじめた。 そんな折り、愛媛新聞社から、愛媛県内の企業や団体からの寄付をもとに、ボランティアやNPO団体の活動に対して支援する「愛・ウェーブ助成金」募集の話が持ち込まれた。もともと、愛媛新聞社とは、代表の原さんが、投稿を通じて繋がりがあったことから、平成14年度に新しく創設されるこの助成金にぜひ応募してみたら、という話が舞い込んだのだ。早速、この学習会の開催を助成金に仰ぐことにし、申請したところ、見事に助成金を得ることができた。この助成金を得た団体は10団体あったが、うち9団体は、福祉関係のグループで、環境問題に取り組んでいるのは、同校だけであった。 「水・洗剤・環境学習会」と銘打ったこの学習会は、講義形式が4回と、シンポジウム1回の計5回を開催。講師には、「毎日の実践に役立つ話をしてくれる人を呼びたい」と大阪から洗剤に詳しい学識者や石けん会社の担当者を招いた。また、シンポジウムについては、市からの助成金もあわせて受けることができた。 学習会の参加者は、25名、52名、70名、80名と回を追うごとに増えていった。さらに、シンポジウムでは120名の一般市民が参加。石けん販売についての問い合わせも増加するなど、確実な手応えが感じられた。また、学習会の報告書を作成し、学校や公民館、図書館などに手作り石けんと一緒に配布して回った。 自己負担が増えてしまったが… このように、助成金を受けることで、より幅広い活動ができるようになったのだが、当初思い描いていた以上に、同校の負担も増えてしまうという面もあった。学習会では、前述のように愛媛新聞と市から計30万円の助成金を仰いだのだが、講師への謝礼と報告書などの印刷代だけで、助成金の額を超えてしまった。報告書では、単に学習会の記録だけでなく、これまで同校が活動してきた資料なども盛り込んだため、思いのほか分厚いものになり、経費がかさんだためだ。この助成金を超える分の費用については、各メンバーの負担になった。たとえば、メンバーの一人、越智さんは、個人的に開いている「リサイクル編物教室」の収入の一部を拠出した。このようにメンバーの熱意に支えられている面も大きい。 高校生との協力関係も生まれた また同校の活動には、大人たちだけでなく、高校生との協力関係が新たに生まれている。 原さんは、NACS(社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会)の「消費生活問題の専門家による、学校教育への派遣講師事業」の登録講師として、新居浜市内の高校で環境問題について話していた。これをきっかけに同校では、高校生にアプローチしていくことにした。 メンバーが作り方を教えて、高校生が自作したマイバッグを持参して、スーパーや生協で買い物をするデモンストレーションを行なったり、同校が主催した「ひまわり環境展」では、テーブルクロスや浴衣をリフォームしてワンピースなどをつくり、「リフォームショー」を開催するなど、高校生ならではの若さに溢れた楽しい企画を盛り込むことができた。 また、新居浜市とお隣の西条市の三つの高校の生徒258名の協力を得て、環境に関わるライフスタイルの実態を調査したりしている。これらの活動についてまとめた報告書「高校生とパートナーシップ―持続可能な社会をめざして―」作成には、県と市からあわせて6万円の助成金を受けている。 さらには、「マイバッグシンポジウム」を13年度に開催。マイバッグの使用経験のある高校生2人をパネリストに招き、レジ袋の有料化などを討論した。このシンポジウムは省エネルギーセンターからの助成で行なったものだ。 実を言えば、高校生は、先生やメンバーにうながされて、活動へ参加するというのが現実のようだが、「若い時に普段とちょっと違うことをしたことって、いつまでも覚えてるものだからね、それが将来いきてくるのでは」と原さんたちは、高校生の活動に期待を寄せている。 高校生からは「『レジ袋はいりません』と毎回言うことで、自分の未来を大切にしていきたい」などの声も聞かれるようになり、「日常生活の中で、環境について行動をしてほしい」とのメンバーの願いは、着実に芽吹きつつあるようだ。 このように各方面からの助成金を得ての活動を「自分たちの活動が他団体からも評価されていることの証しで、活動の大きな励みになる」と、原さんは話す。 |