「私たちの生活学校」135号掲載
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商店街の活性化で市民として提案
岐阜県・土岐市 土岐市生活学校
 名古屋駅からJR中央線に乗り換えて岐阜県の土岐市駅に着く。電車からホームに一歩降りるとき、電車とホームとの間に段差が少ないのに気づいた。そして、改札に行くには高架を渡らなければならないが、ここにはエスカレーターが付いている。さらに、改札を出ると改札フロアーから歩道までのスロープが作られている。
 このように土岐市駅はバリアフリー化が進んでいる。長年、駅のバリアフリー化を働きかけてきた土岐市生活学校(代表・金山富士子さん、メンバー数40人)の活動の成果を実感することができる。


対話集会がきっかけに

 土岐市生活学校が駅前商店街の活性化に関わるようになったのは、平成12年2月に行政や商店街の関係者を招いて開いた対話集会が一つのきっかけになった。対話集会では「環境問題とまちづくり」をテーマに話し合った。環境問題ではレジ袋の削減を商店街に求めた。まちづくりでは、駅のバリアフリー化、駅を車椅子で利用できるようにスロープの設置、歩道の段差の解消などを要望した。前述のように土岐市駅のバリアフリー化は平成14年の春に実現した。
 その対話集会の席上、衰退した駅前商店街の活性化についての意見も出た。メンバーから、空き店舗を市民に開放して、市民参画で街の賑わいを取り戻すことを考えてはどうかと提案した。具体的に生活学校としてはフリーマーケットの開催やリサイクル品の展示などで協力できると、市民から「シャッター通り」「幽霊通り」と言われるようになった商店街に人が集まる企画を持ち掛けた。
 当時、土岐商工会議所でも空き店舗活用のマスタープランが練られ、商店街関係者にプランの中のできることから事業化しようという機運が盛り上がり、平成13年11月に商店街の空き地を利用した「青空市」と、空き店舗を利用した休憩所「はいって小屋」がオープンした。
 「青空市」は約20店舗が出店して、毎週土曜日に午前8時から午後1時頃まで開かれる。毎週利用する人が多く、新鮮で安い野菜が手に入ると、近所の住民に好評だ。


生活者の視点から提案

 平成14年に土岐商工会議所で中心市街地商業活性化推進事業検討会が設置されることになり、対話集会が縁で生活学校も市民団体として検討会委員の一員に加わることになった。そして同検討会のワーキング部会の部会長を金山さんが務めるほか、三つあるワーキング部会にもそれぞれに生活学校のメンバーが参加して活性化の議論に加わった。
 平成14年11月に「青空市」と「はいって小屋」の1周年記念イベントが行なわれることになり、生活学校にも協力の声がかかった。記念イベントに姉妹都市である静岡県焼津市から「おでん探検隊」が来ることから、生活学校も地元の素材を使った「おりべおでん」の屋台を出して対抗することにした。「おでん探検隊」対「おりべおでん」のおでんバトルは盛況を呈し、用意したおでんは45分でなくなった。
 ワーキング部会でメンバーは生活者の視点から数々の提案をした。「駅前通りを段差のない安全な道路にしてほしい」「商店街に、市役所まで行かなくても日常生活に必要な手続きなどができる機関を設けてはどうか。3市1町の合併で行政サービスが受けにくくならないようにするためにも身近なところに窓口が必要だ」「商店街を安全で安心して楽しく過ごせるまちにしてほしい。商店街を歩くと意外に疲れるから所々に休めるベンチがあるといい。高齢者が休憩できる場所があれば、市民ボランティアがお茶のサービスもでき、話し相手にもなれる。困っている人がいれば助っ人にもなれる。こうした場所が発展して宅老所や託児所になれば、空き店舗対策にもなる」と、高齢者になっても商店街に行けば仲間と会え、行政上の手続きもできるなど生活に必要な機能を備えたまちにしてほしいと提案した。


まちづくりは市民が主役

 土岐商工会議所が平成15年2月に開いた市民フォーラムにおいても金山さんがパネリストとなり「住み良いまち、弱者に優しいまち、安全で安心して楽しく過ごせるまちがこれからのまちづくりに必要ではないか」「クルマのない生活に少し目を向けてみてはどうか」「これからのまちづくりは市民が主役だ。その主役に1人でも多くの市民がなることだ。現役を退いても元気な人は世の中のために働けるから、商店街に活動できる場があるといい」と市民参加で街の賑わいを取り戻そうと話した。参加者からも賛同の意見が寄せられた。
 検討委員会の報告書(案)を見ると、こうした生活学校の提案が各所に生かされている。例えば「歩きやすい歩行者空間の整備」「空き店舗に託児所やデイサービス施設を誘致する」「店や住宅の軒先に間伐材を活用した小さな椅子や縁台を設置する」「青空市広場を利用して市民参加型のフリーマーケットやリサイクルバザー等を定期的に開催する」「はいって小屋をイベントショップやチャレンジショップとして市民に開放する。また来訪者のための休憩と飲茶サービスを実施する」「イベントの開催時に、高齢者や障害者等が会場・店舗と駐車場・バス停・駅までの間を移動する際に荷物の託送や介助のボランティアサービスを提供する」などとバリアフリーのまちづくりに、市民参加型の事業や市民との協働事業が盛り込まれている。
 土岐商工会議所の近藤さんは「これからの商店街は市民、女性、シニア世代がどうかかわるかにかかっている。商店街を市民参画の舞台にしたい」と言う。生活学校への期待は大きく、生活学校の活躍する舞台はますます増えそうだ。