「まち むら」91号掲載
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若手が自ら青年部を立ち上げ、自治会活動を活性化
茨城県取手市・新取手自治会青年部
 茨城県取手市の新取手自治会(会長・野澤和江さん)は、青年部を組織し、働き盛りの男性が中心となって地域内の清掃活動や夏祭りなどの交流イベントに取り組んでいる。高齢化が進み、担い手不足に悩む自治会が多い中で、青壮年層が自治会役員や地域住民と連携しながら、フレッシュな発想で生き生きと活動し、地域に新風を吹き込んでいるのが、新取手自治会活動の大きな特徴といえる。
 全国的にもめずらしい自治会青年部の設立経緯と活動の現状をリポートする。


「おやじの会」のノリで発足

 JR取手駅から関東鉄道常総線で三つ目の新取手駅周辺に広がる新取手自治会は、1968(昭和43)年10月に発足した。当初は、同年4月に開業した新取手駅近くの新興住宅地の入居者121世帯でスタートしたが、宅地造成が進むに伴って住宅地は広がり、会員は現在約1700世帯を数える。
 とりわけ90年代以降、若いファミリー世帯の転入が増え、ベッドタウン化か進んだ。青年部立ち上げの仕掛け人となり、現在、青年部部長を務める斎藤正浩さん(45歳)も、94年に30代半ばで東京都足立区から転居してきた。
「越してきた夏に、お祭りで御神輿が出るというので楽しみに行ってみると、小さな子供神輿を大人が無理やり担ぎ、しかも若手は、強制的に参加させられた班長(半年交代で回ってくる当番)らしき人だけでした」と斎藤さんは当時を振り返った。東京の下町で神輿を担いだ経験を持つ斎藤さんは、活気のない御神輿にがっかりしたという。その後、自治会活動などで同世代の飯沼邦夫さん(43歳)と顔見知りになった。「話していくうちに、飯沼さんが足立区の同じ小学校の後輩であることを知りました」。
 意気投合した2人は、小学校時代の思い出とともに自治会活動の現状などについて語り合うようになった。
 「春と秋に地域の大掃除を行ないますが、参加するのは女性や高齢者が中心。公園や空き地の草刈りは重労働で若い力が必要なのに、若手の男性はほとんど顔を出しません。子どもを持つ若い父親を引っ張り出す手はないだろうかと話すようになっていました」と青年部副部長の飯沼さんは話す。
 同じく副部長を務める沖山康人さん(45歳)も、青年部立ち上げに尽力したひとりだ。「子どもの授業参観に行っても、父親は顔見知りがいないのでつまらない。父親の友だちづくりができるといいね、との思いがありました」。
 小学生の子どもを持つ父親に声をかけ、メンバーを集めた。「『おやじの会』のノリでした」と斎藤さんは笑う。
 青年部は、自治会会長などの後押しと会員の承認を得、1999年12月5日に10人のメンバーで活動を開始した。


地域や自治会の行事で力を発揮

 青年部は、「地域社会の次世代を担う者としての研讃をつみ、会員相互の緊密な連携、親睦を図るとともに、地域振興のためにその活力と創造力を発揮し、豊かな地域社会を築くための事業活動への参画・協力を通じ、新取手の発展に寄与すること」を目的とし、@資質の向上のための講演会、研究会などの開催および参加、A青少年の健全育成に関すること、B地域振興、地域づくり、安全確保に関すること、@会員相互の親睦に関すること、Dその他、目的達成に必要な事業、を行なっていく。
 入会資格は、16歳以上50歳以下の新取手自治会会員で、男女は問わない。16歳以上としたのは、高校生にも参加してもらいたいと考えたからだ。
 青年部発足後、手始めに取り組んだのが、小学校6年生を対象にした「自転車安全教室」だった。地域内の子どもたちは小学校卒業後、1キロ以上離れた取手市立永山中学校へ通うことになり、自転車通学が認められている。そこで、自転車の安全な乗り方を習得させる場として企画したもので、地元の市立高井小学校や取手警察署、取手市の協力を得て毎年3月初旬に実施している。
 「子どもを持つ家庭には喜ばれています。警察や小学校などからも実践的な教室と評価され、恒例の行事として定着しています」と斎藤さん。
 開かれた学校づくりの一環として高井小学校が実施している「どんぐりっ子まつり」にも参画。パソコン教室やベーゴマ指南など、会員の特技を生かした企画で子どもたちを楽しませている。
 自治会主催の活動やイベントでも、青年部は大きな力を発揮している。
 春・秋恒例の大掃除では、草刈り機やチェンソーを使って公園等での除草作業に当たり、自治会防犯部が定期的に行なっている夜間パトロールでは、パトロール班が女性だけになった場合のサポート役となり、パトワールに付き添う。
 8月第1週の土曜・日曜日に開催している地元の夏祭りでは、神輿巡行を行なうとともに、青年部の売店を出している。
 「祭りに参加できない高齢者にも御神輿を見てもらおうと特別養護老人ホームまで神輿を運んだり、子どもたちに楽しんでもらうため、売店は採算を度外視し50円を基本にしています」と飯沼さん。
 自治会主催の秋の運動会でも、事前準備から当日の審判、会場整理まで、青年部が大車輪の活躍をみせている。


次世代へのバトンタッチが課題

 青年部には現在、30代から50代(50歳以上は相談役) の男性24人が入会。毎月1回、第3土曜日の夜8時から定例会を開いている。
 「それぞれ仕事を持っているので、活動は週末や休日が中心。青年部会員だからといって、参加を強制するようなことはしていません。年に一度であっても顔を出してくれればいいと思っています」と斎藤さんは話すが、いかに部会員を増やし、行事や活動への若手男性の動員を図っていくかが大きな課題だという。
 「青年部の活動が広がるにつれ、青年部に対する地域住民の期待は高まっています。そのため、青年部の活動は大変だと敬遠されがちですが、部会員が増えれば一人ひとりの負担は軽減します。一歩踏み込んで一緒に汗を流せば、いい仲間になれるのです。定年後もここに住み続けていくのであれば、いまから地域で仲間づくりをしておくことが大切ではないでしょうか」と飯沼さんはアピールする。
 沖山さんも今後の活動の方向性について次のように語る。
「子どもたちに夢を与え、子どもたちが地域のおじさんと友だちになれる自治会にしていくのが目標です。一方で高齢化が進み、独居高齢者も増加しているので、見守りや声かけなど、自治会としてケアしていく必要性も高まっています」。
 青年部を立ち上げた斎藤さんたちも40代半ばに達し、次世代へのバトンタッチが青年部の活性化の大きなカギとなっている。誰もが気軽に参加できる組織にしていきたい――斎藤さんたちは次の展開に意欲をみせている。