「まち むら」83号掲載
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子どもたちを地域活動に巻き込む
静岡県・沼津市 大岡コミュニティ推進委員会
 沼津駅からJR御殿場線でひと駅目の大岡駅を中心に、南北に細長いエリアを持ち、約7千世帯で構成される沼津市大岡地区。ここには17の単位自治会で「大岡連合自治会」が組織されているが、自主防災活動や住民交流事業などは、1983年に発足した「大岡コミュニティ推進委員会」が行なっている。
 働き盛りの30代、40代が中心的役割を損っているほか、中学・高校生などの参加も促し、幅広い世代が一体となって活動を展開しているのが特徴だ。


中学生が競技役員として活躍

 9月7日、大岡小学校グラウンドで恒例の「大岡校区祭」が開催された。2,000人を超える地域住民が参加し、徒競走やスプーンリレー、玉入れなどの競技が行なわれ、自治会対抗の多世代にわたるリレーでは熱い戦いが繰り広げられた。
 今年で46回目を迎えた伝統行事でひと際目についたのは、選手としてだけではなく、競技審判やスターター、用具係、記録係などスタッフとして忙しく動き回る中学生たちだった。
「大岡コミュニティ推進委員会が発足した2年後の85年から競技役員として参加してもらっています。大岡中学校にお願いし募集していますが、小学校高学年になると、中学生になったら競技役員を務めるのだという自覚を自然と持つみたいですね。中学生抜きでは当日の大会運営は考えられません」と大岡連合自治会
会長で大岡コミュニティ推進委員会会長の渡邉孝一さんと同委員会会長代行の田村浩祥さんは、目をそろえて話す。
 大人に混じって、約60人の中学生が競技役員として大会の運営を支えた。
「コミュニティ活動への参加意欲が幅広い世代で強く、地域の教育力は高いですね」と大岡小学校の金子亨弘校長もコミュニティの活動を高く評価する。
「いろいろな大人の人たちと話ができておもしろい」「自分たちが必要とされていると思うと、やりがいを感じる」と参加した中学生は感想を話してくれた。


青少年健全育成がきっかけ

 大岡コミュニティ推進委員会が子どもたちも巻き込んだ活動を展開しているのは、青少年の健全育成活動が同委員会発足のきっかけだったことによる。
 大岡地区は、81年に沼津市から社会教育モデル地区に指定され「生涯学習促進運動」をスタートさせた。同時に、沼津市の「青少年健全育成都市宣言」を受け、連合自治会、学校関係団体などで「大岡地区青少年を健やかに育てる会」を発足。地域ぐるみで補導や青少年の健全育成に取り組む活動を開始した。
「大岡地区でも中学・高校が荒れており、地域が一体となって取り組んでいく必要がありました。しかし、地域住民が集まって相談しようにも場所がなかったのです。そこで、活動拠点をつくろうとの気運が高まり、様々な団体を網羅したコミュニティ組織を立ち上げることになりました」と田村さんは当時を振り返る。
 沼津市では中学校区ごとに連合自治会を組織している。大岡連合自治会は大岡中学校区をエリアとしているが、昭和19年に沼津市に合併するまでは大岡村だった歴史を持つ。旧大岡村役場が出張所として使われていたが、施設更新時期を迎えていたことから、地区センターとして整備することを市に働きかけ、83年
に大岡地区センターを開設。同時に大岡コミュニティ推進委員会を正式に発足し、「いきいきと子どもが育つ明るい大岡」をスローガンに活動を開始した。
 当初は、総務部、社会福祉部、体育振興部、教育文化部、生活環境部、消防防災部の6部(現在は10部2委員会)でスタート。非行防止キャンペーン、夜間パトロール、家庭訪問などの青少年健全育成活動とともに、自主防災活動や環境美化活動、教養講座の開講、住民交流のための行事などを進めていった。
 その中から、中学生を主役にした活動も誕生した。「大岡子どもりリーダースクラブ(OKLC)」である。


リーダー育成に寄与するOKLC

 OKLCは、中学生有志で84年に発足したが、その後試行錯誤を重ね、95年頃から本格的な活動を開始した。
「地域の子どもたちの活動を子どもたち自身の手で行なってもらうのがねらい。子どもたちのリーダーとして、行事等を自主企画したり、地域活動に参加しています」と常任委員長の杉山厚さんは説明する。
 毎年、新会員を募集し、現在、5人の中学生、12人の高校生が参加。高校2年生が会長を務めている。
 毎週金曜日の午後5時に地区センターに集まり、リーダー研修でリーダーとしての心構えや知識を学んだり、行事や活動の検討などを行ない、大岡コミュニティが開催している様々な行事や活動にも参加している。
 OKLCの最大のイベントとなっているのが「OKLCサマーキャンプ」だ。小学校3〜6年の参加を募り、8月に1泊2日で沼津市市民の森で開催するが、プログラムづくりから準備、運営などはOKLCのメンバーが行なっている。
「校区祭や夏祭りでは、祭りにきた子どもたちをいかに楽しませるか、アイデアを出し合って祭りを盛り上げてくれます。OKLCの中から大岡コミュニティの活動をリードする人材が輩出することを期待しています」と杉山さん。
 大岡コミュニティでは、年間を通して活発な活動、行事を開催しているが、その中心は30代、40代が担っている。そのため、次代の人材育成は大きな課題となっており、OKLCに寄せる地域の期待は大きいといえる。


地域行事のときは部活動は中止

 学校の完全週5日制に伴い、地域での受け皿づくりが課題となったが、大岡コミュニティでは、小学高学年対象の「英会話教室」や小中学生対象の「自習室」を開設。総合的な学習の時間でも、コミュニティ教養講座の地元講師が伝統文化の体験教室で子どもたちを指導するなど、学校と地域の連携がしっかりと図られている。
「ここまでには様々なハードルがあったのも事実。例えば、子どもたちを地区の一斉清掃や防災訓練に参加させようとしても、塾や部活動が忙しくて参加できないという問題がありました。しかし、現在は学校側の理解を得て、コミュニティの行事のときには部活動を中止してもらっています」と田村さんは話す。
 大岡コミュニティでは、学校やPTAも巻き込んで、活発な活動が展開されているが、今後の課題と抱負について渡邉会長は、次のように話してくれた。
「常に新たなニーズに対応し、活動がマンネリ化していかないようにしていきたい。また、大型マンションの建設に伴い、若い住民が増えているので、いかに地域の活動に取り込んでいくか、知恵を絞っていく必要があります」。
 その意味で、子どもたちが地域の活動に参加する意義は決して小さくない。