「まち むら」73号掲載
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高齢者を地域ぐるみで支え合う町
福岡県飯塚市 菰田地区社会福祉協議会
 菰田(こもだ)地区社会福祉協議会(以下は菰田地区社協と記す)のある福岡県飯塚市は、弥生時代の石包丁の生産地である立岩遺跡など数々の遺跡があり、近世は、江戸と長崎を結ぶ筑前六宿の宿駅や遠賀川本流(嘉麻川)と穂波川が合流する水運の要地で、福岡藩の年貢米を収納する蔵屋敷、茶屋、役所等が建ち並ぶ街でした。
 近世・現代には、筑豊炭田の中核都市として発展しましたが、炭鉱閉山後は、地域経済の衰退や生活環境の整備の遅れ、市財政の悪化だけでなく、人口が急激に減少しました。
 さらに、青壮年層の流出や少子化などにより、高齢人口を高くしています。
 菰田地区(昭和通り、中央通り、駅通り、南通り、本花、元宮、五穀神、大新、鶴三緒、忠隈の10町内会で構成。人口は約4800人)の高齢化率は、2000年12月末現在、25.6パーセント、飯塚市平均の19.5パーセントを大きく上回っています。
 菰田地区社協では、住民一人ひとりの生き方を尊重して、信頼できる相談相手であるように努め、要援護状況にある人の生活実態を総合的に把握し、その人にあった支援方策を行うとともに、自治会等も関わった組織化を図り、「菰田ふれあいネットワーク委員会」を設置して事業を推進し、出会いの場、学びあう場、体験の場の提供等、地域ぐるみで支え合う仕組みづくりに取り組んでいます。


独居高齢者らを支援する「菰田地区ふれあいセンター」

 さて今回は、高齢者事業にまとを絞り報告させていただきます。
 1978年に、高齢者の安否確認を兼ねて住民有志が手料理の配食サービスを始めました。
 今ではコスモス、白菊の会、すみれの会、あんずの会等、九つのボランティア団体が「ふれあい会食サービス」に関わって、約2000食を作っています。
 87年に福祉講座「しんてらこや塾」と呼んでいる、ボランティア講座を開講、啓発活動・研修会などを14年間積み重ねてきた中で、ボランティア間の交流が進み、マンパワーの発掘と育成に貢献しています。
 さらに、定例で開催している、「町内巡回懇談会」を2ヵ所から、小地域ごとに8ヵ所に増やしたことが、新たな事業展開を創出する契機となっています。
 92年「菰田地区ふれあいセンター」検討委員会をつくり、基本構想の原案を作成、関係団体などと協議を重ね、事業プログラムを進捗させていきました。
 翌年、飯塚市教育委員会の地区公民館の一室を借りて、毎週火曜と金曜日の午後1時から4時まで、「菰田地区ふれあいセンター」を開いています。「同センター」では、民生児童委員、福祉委員やボランティア等が一人暮らし、虚弱の高齢者世帯を対象に電話での健康や安否確認、相談業務、情報の集約、菰田地区社協の事務を行っています。
 94年、一人暮らし、寝たきりや痴呆性の高齢者、障害者や介護家族を援護する菰田の在宅ケア・システムを実施して、「菰田ふれあいネットワーク委員会」が担当・運営しています。「同委員会」では、要援護者に対して、福祉情報の提供・手続きの代行・各種の支援活動を円滑に行うために、関係機関などとの緊密な連携を推進してきました。


高齢者が元気に集う「菰田地区いきいきサロン」

 96年には、大新、南通の2ヵ所町内で、「菰田地区いきいきサロン」を開設しています。このサロンは、デイサービスに通うほどではないけど、一人暮らしや、家に閉じ込もりがちな高齢者の社会的孤立感の解消と、仲間や健康づくりを地域住民の皆さんと共に見守り、支援することによって、住み慣れた地域の中でいきいきと元気に暮らしてもらうのが目的です。
 高齢者が歩いて行け、皆で手づくりの会食、レクリエーションゲーム・合唱・カラオケ・楽器演奏や保健婦・看護婦による血圧測定や健康に関わる講話や相談、福祉・保健・医療の情報提供、暮らしの相談等、天気のよい日には近くへのハイキング・バスハイクにも行きます。
 サロンに関わる地域ボランティアは、
@地域の社会資源を積極的に活用する。
A運営は全員で分担して取り組む。
B事業のメニューは、当事者が決める。
C事業は何でも無料の企画とせず、最小限の負担をしてもらう。
などのことを心掛けて運営しています。
 その後も、五穀神、鶴三緒、駅通りに開所し、5ヵ所で多彩な内容の取り組みが行われています。
 市内全域では、24ヵ所で「いきいきサロン」を開設しており、福岡県内でも開設数の多さで注目されています。


高齢者の生活を手助けする「菰田ふれあいの会・ひまわり」

 98年2月からは、介護保険制度と小地域ネットワーク活動の推進や生活支援体制づくりの研修会を開催したり、5月「福岡県介護普及センター」との共催で「介護講習会」を開催。8月には、日常生活支援事業の利用についての「アンケート調査」を行いました。
 9月に「菰田地区社協」と「菰田ネットワーク委員会」に菰田在宅ケア生活支援事業計画小委員会の設置も提案しています。10月に第1回生活支援事業計画小委員会を開催して、日常生活支援事業、生活支援食事サービス、移送サービス、情報システム事業、金銭管理事業等を検討し、昨年度末までに、毎月1回のペースで開催してきました。
 この他、5月には、日常生活支援事業のための「サービス活動」のヒアリング、7月には、家事介助サービスに関わる協力会員の研修会も開きました。
 昨年夏には、「菰田地区社協」と「菰田ネットワーク委員会」が支援団体となって、日常生活支援のための組織「菰田ふれあいの会・ひまわり」が発足。「ひまわり会」では、「個人が人としての尊厳をもち、家庭や地域の中で自立した生活が出来るように支え、すべての人が安心して、安全でぬくもりのある地域づくり」を基調にしています。
 現在は、約30人がボランティアとして登録、活動しています。
 この会の活動は、介護保険の認定の有無にかかわらず、1時間を単位に月曜から土曜日の午前9時から午後5時までは600円、それ以外は800円でサービスを提供、日常生活に支障のあるお宅(35人)を、ボランティアが訪問して、食事の支度・洗濯・掃除・買い物・代書手続の代行・外出・通院の介助・話し相手などさまざまなお世話をしています。
 この組織は、住民が住民をサポートする福祉事業はまだ珍しく、注目されています。
 今後も、菰田地区社協では、住民参画、専門的知見、ノウハウの蓄積と人的・組織的連携などを進め、地域資源の有効活用を図ったり、自主的・主体的な福祉型地域社会への取り組みが行われていくことと思います。