「まち むら」70号掲載
ル ポ

市民のための新しい図書館づくり活動
愛知県日進市 私たちの図書館にしよう会
日本一の人口増加率を誇る町

 日進市は、名古屋市の東に隣接し、面積は34.9平方キロメートル(東西8.9キロメートル、南北6.8キロメートルと東西に伸びた形)で、人口は2000年3月1日現在67121人、世帯数は24164で男女がほぼ同数いる。1994年10月1日に市制が施行され、5周年を迎えたばかりである。日本一の人口増加率を誇り、老年人口指数・老年化指数が低く、若い活力ある市である。市内には、山林や田畑が残っており、三つの川が流れている。
 日進市立図書館の建物は3階建で、1階に開架閲覧室、2階に学習室、3階に視聴覚室がある。建築面積は757平方メートルと小さな建物である。また、移動図書館が1台ある。職員は8名、司書有資格者は4名、図書館長は司書無資格者である。蔵書冊数は15万5475冊で、収容能力の15万冊を超えている。市民には比較的良く使われていると思われる。それは、市民1人当たりの貸出冊数も、人口同規模の自治体と比較して低いものではなく、利用状況を観察しても、それが言える。


「私たちの図書館にしよう会」結成の経緯

 現在の図書館が旧町役場の後に建てられたもので、狭く使い勝手が悪いので新図書館を建てようとの計画が行政の中から持ち上がり、1997年4月に建設担当者が図書館に配置され、その5月に、図書館建設担当者から図書館を利用しているグループに「新図書館に対する意見を聞きたいから集まって欲しい」と呼びかけがあった。
 呼びかけに応じた人たちにより「新しい図書館への要望」「各グループよりの要望」「図書館が考える新しい図書館像」のテーマで3回の会合が持たれた。続いて、塩見昇氏(大阪教育大学教授)を迎えて図書館主催の第1回「市民とともに図書館づくり」講演会が開催され、その後に市の広報誌『にっしん』で、「ひろく図書館に思いのある人たちの話し合いの場をつくろう」と市民に呼びかけがあり、「新図書館を考える会(仮称)」が結成され8名で事務局が設置された。事務局には建設担当者にも入っていただいた。
 「新図書館を考える会(仮称)」は、「新しい図書館について」、「どう進める新しい図書館づくり」、「スライドで見る各地の図書館」をテーマに3回開催し、第3回目に会の名称を「私たちの図書館にしよう会」(以下「しよう会」と略す)と投票で決めた。
 この名称には、新図書館完成までの活動に終わらせるのではなく、新館ができた後も活動を続け、図書館運営に携わり、日進市立図書館を真に市民のための図書館にしていこうという心意気が含まれている。


「しよう会」のこれまでの活動

*『日進市図書館基本計画』(以下、『基本計画』と略す)策定に関与
 「しよう会」の第2回目の例会は、「まちづくりの中での図書館」というテーマで、職員組合の政策グループによる「情報の発信・各種活動の拠点としての複合施設ゾーン」という提案について考えた。ここでは、単独施設がよいのか、複合施設がよいのかが問題になった。
 1997年10月2日に湖東町立図書館の視察に9名の市民が同行した。図書館主催の菅原峻氏(図書館計画施設研究所所長)の講演会「市民とともに図書館づくり」(第2回:1997年11月22日)は、「しよう会」の活動を励ますものとなり、活気づいた。
 「しよう会」はその後、テーマを利用者別に、年代や女性、障害者に分けて開催し、その内容を小冊子『あったらいいね…こんな図書館』にまとめ、1998年8月に発行した。300部作成したが、簡易版を作成するほど評判がよかった。文が物語風に書かれ、読みやすくなっていて、図書館に対するイメージが広がるものだった。
 1998年5月には日進市図書館基本計画策定委員会(以下、策定委員会と略す)が設置され、その構成メンバーに「しよう会」の代表が1名、学識経験者として1名、図書館協議会委員として2名の計4名が「しよう会」の事務局から加わった。
 『基本計画』ができるまでは、策定委員会における審議内容について報告し、その内容について検討した。検討は充分できたとはいえないが、検討したお蔭で、『基本計画』に「しよう会」の主張が大いに反映され、『基本計画』の内容が充実したものになったと自負している。
 『基本計画』策定後、予算が不足しているので、補助金が得られる複合施設にしたいという行政の動きがでてきた。例会でこの課題を検討したが、単独館が望ましいという意見が圧倒的で、「新図書館建設における複合施設・併設館の検討についての要望書」を市長に提出した。他にも「日進市図書館の新図書館長に司書有資格者を充てて下さい」と「福祉会館及び児童館建設に図書館の地域館を含めて下さい」(『基本計画』に地域館が必要な地域として記載されている)という要望書と「小中学校の司書教諭の専任化と専任の学校司書の配置を提案する」という提案書を提出している。どんどんと市に対して要望あるいは提案していくことが市民参加の道を太くしていくものと思って活動をしている。
*市の広報誌の編集
 図書館として、市の広報誌『にっしん』の特集記事8頁分で『基本計画』を市民に周知する計画があることを知り、「しよう会」で4頁分を編集した。『基本計画』を読んだ市民と策定委員の感想と、「しよう会」活動内容を紹介する座談会を掲載した。こうしたことが行政への市民参加を拡大していくものと確信している。
*図書館まつりを共催
 昨年まで1日だけの図書館まつりを1年かけて検討した結果、図書館まつり交流会(「しよう会」も構成メンバー)と図書館との共催による15日間の図書館まつりが、初めて実現した。「しよう会」は、活動内容を紹介する『基本計画』、会報、小冊子、これまで見学してきた図書館の写真と日本図書館協会自由委員会の「図書館の自由パネル」を展示した。図書館との共催により図書館まつりの内容が広がったと思っている。


今後の予定

 新日進市立図書館の計画は、2000年に建築計画、基本設計、用地買収、2001年に実施設計、2002年から建築、2004年開館の予定になっている。今後は、例会への参加者を増やし、市民の新図書館への関心を高める広報活動をしなければいけないだろうと考えている。