「まち むら」140号掲載
ル ポ

竹を活かした待ちづくりを目指して
京都府木津川市 NPO法人加茂女
ニュータウンに集まった女性たちで発足

 「特定非営利活動法人加茂女」は、今から35年前に加茂町(現在の木津川市)の南の端、奈良市との県境に新しくできたニュータウン(南加茂台)に引っ越ししてきた女性たちが集まって、子育ての悩みを相談したり、生活の知恵を教え合う公民館サークルとして発足したのが始まりです。
 集まって活動する中で「何か地域に役立つことをしよう」と、アルミ缶回収を行い、その売却益を社会福祉協議会に寄付し出しました。

風光明媚な竹林が荒れだして

 当時、住宅地の周辺は、山城筍の主生産地でしたので風光明媚な竹林風景が広がっていました。しかし、筍の値段の上で中国産筍に負けたことや竹の需要そのものが減ったことから、竹林が荒れだしました。そこにゴミの不法投棄が始まり、とうとう産業廃棄物の埋め立て地ができるという問題が起こるに至りました。環境問題に取り組むグループとして署名運動をしたり議会に請願を出したりして反対運動に関わりましたが、結局私たちの住む周辺地に大きな産業廃棄物の埋め立て地ができてしまいました。
 荒れた竹林を放置することからゴミを不法投棄され、大きな環境破壊問題に発展するという苦い経験をしたことで、森や竹林を荒らさないことが重要だと考えるようになりました。そこで、自分たちで竹林整備をしてみようと話し合い、京都府の地域力再生交付金事業に応募して、ノコやナタやチェーンソーなどを揃え、放置竹林整備を始めました。すると定年退職した男性たちも参加してくださるようになり、活動は一気に進みました。

竹の活用法を考案 「竹を食べて減らそう」

 竹を切るだけではもったいないと、竹の利用方法として竹の工作品なども手がけましたが、その程度では一向に竹は減らせません。
 切っても切っても生えてくる竹に業を煮やし、誰が言うともなく「竹を食べて減らそう」と、竹や筍の食品開発に取り組み出すことになりました。たまたま新聞で見て応募した「山城地区ふるさと加工食品コンクール」で「筍お焼き(かぐや姫のおやつ)」が、最優秀賞を頂きました。この「筍お焼き(かぐや姫のおやつ)」は、生地に竹の粉(静岡県の淡竹屋さんが開発した特許製品)を入れ、具材に筍と豚肉を入れた物で(今は椎茸や小豆、豚コショウなど4種類の味があります)、竹をイメージした細長い形で蒸し焼きにしています。「京都のお焼きは細長い。ほそーく・ながーい、お付き合いを!」というのをキャッチフレーズにしています。
 賞をいただいて元気になった女性たちがイベントなどに売りに行くようになりました。

法人格取得でステップアップ

 法人格を取ったのは平成22年10月で、食品販売を始めるために、食品製造業の保健所の許可を個人ではなく法人として取得したいと思ったからです。
 紆余曲折のうち、許可を得るため手に入れた厨房は一戸建てで広いので、ランニングコストを確保するために貸し事務所や教室にしたり、竹の器を使ってのカフェやランチ提供なども始めました。
 かつては、自分たちでお金を出し合ってのボランティア活動団体でしたが、法人になって初めて食品部門で人件費を支払えるようになりました。
 地域住民の高齢化と商店街のシャッター通り化が進む古くなってしまった住宅街にあって、高齢女性が集まっての食品づくりは、ささやかな給金でもやり甲斐があって励みになり、雇用の場の提供や居場所づくりとして意義があると考えています。

次世代に引き継げるように

 また、地域のコミュニティの拠点になる努力と合わせ、木津川市の美しい竹林風景を再認識して頂き、内外にアピールしていきたいと「竹と梅の魅力発信活動の拠点」としてのアンテナカフェを目指しています。
 平成27年4月には、認定NPO法人格も取得しました。
 今に続くアルミ缶回収活動を始め、その売上金報告とリサイクル啓発活動を中心にした月1回のミニコミ誌の発行。竹林整備活動とそれに付随する筍食品開発と製造販売や町おこしのためのイベント参加など、スタッフ一同は日々の活動に追われています。
 今後の課題は、地域の竹林を本当に守るためには、私たちが竹や筍で採算が合う事業展開をして見本になり、次世代に引き継げるような方法にチャレンジする団体に育っていくことだと思っています。
 今年度新たに取り組んでいる事業に「竹のチップ化」と「開放窯で作った竹炭」の活用があります。竹のチップは消臭効果がありますので、室内に置いてトイレに使っても匂いません。高齢者用の室内トイレに入れたり、災害時のトイレに活用できると思っています。何よりも使用後のチップを畑に入れて肥料にできる点です。このリサイクルを考えれば新たな竹の利用ができると考えています。また、チップをペレット化して猫用のトイレとしても売り出したいと考えています。竹炭そのものは、土壌改良剤として有効です。これは会員が1年間実証実験して、サツマイモの採れなかった畑から竹炭を入れただけで肥料なしでもホコホコのサツマイモが採れたことです。私は、それぞれの地域での地産地消で竹の活用ができることが大事だと考えています。竹が有効でお金になることが実証できればどこの地域でも取り組んでいただけ、日本中の竹林が綺麗になると信じて挑戦しているのです。
 皆様方に支えられながら、これからも「特定非営利活動法人加茂女」は継続を合言葉に、さらなる竹と筍の活用を考えての町づくりを進めて参ります。