「まち むら」138号掲載
ル ポ

町のみんなが笑顔になる活動
北海道函館市 高丘町会
■地域防災活動に挑戦して

 災害はいつ発生するか分からない、と申すように、北海道では、昨年8月中旬以降、四つの台風の襲来があり、過去最悪の約2800億円の被害額となりました。
 私どもの高丘町会においては、従前より地域の防災対策に取り組んできましたが、特に平成21年から地域として取り組めるものは、すぐやろう!ということで、皆で挑戦してきました。
 これらのいくつかをご紹介したいと思います。

高齢者社会福祉施設等との防災協定の締結

 高丘町会には現在、6箇所の高齢者社会福祉施設があります。これらは、利用者が災害弱者であったり、夜間、少人数での勤務等いろいろな課題を抱えているのが実態です。そこで、災害が発生した場合に、両者が連携協力することにより、相互に迅速かつ円滑に災害応急活動を行い、人的・物的被害を最小限に抑えることを目的として、平成21年から23年にかけて6施設と「災害時における高丘町会と高齢者社会福祉施設等との相互協力に関する協定書」を締結しております。また、私立幼稚園とも同協定を締結しています。このことにより、双方が避難場所の提供及び避難者の一時受け入れ等に貢献しています。

高丘町地域防災ネットワーク協議会の運営

 東日本大震災の前年である平成22年4月に、地域の防災体制構築の調査研究及び構成機関相互の情報共有等を目的として、地域の教育機関6校、高齢者社会福祉施設6施設、コンビニ1店舗、高丘町在宅福祉委員会、高丘町会の15機関により協議会を設立しました。具体的には、各種災害に係る実態把握と課題についての検討及び地域における避難行動要支援者対策等を協議してきました。なお、このネットワーク協議会の運営等につきましては、北海道防災教育のテキストにもなっています。今後は、この協議会の運営を活発化させ、近隣町会を含めた広域防災ネットワークの構築を目指しております。

高丘町会災害時避難行動要支援者対策の取り組み

 ネットワーク協議会で検討を続け、平成23年、高丘町会がモデル地区として函館市から指定され「高丘町会災害時要援護者支援モデル事業」がスタートしました。その後、函館市は全市の町会を対象に現在、この取り組みを始めました。
 高丘町会の現状は、要支援者が67名(平均年齢80歳)で最高齢の方は96歳です。この方々を助ける支援者は161名おります。ちなみにどのような方が支援者になっているか列挙しますと、防災士、北海道地域防災マスター、消防団員、元警察官、僧侶、看護師、介護士、油類・ガス類・電気関係のスペシャリスト他となっています。この161名の支援者は支援組織図を作り七つの班に所属して、平常時と災害時の役割を明記して対応に当たることとしています。
 また、避難所には市内の医院と「災害時における高丘町会と医療法人との医療連携に関する協定」を締結し、災害時に避難所へ駆けつけて頂くことになっています。

各種防災避難訓練の実施

 防災避難訓練については、各種、手法を変えて毎年実施しています。主な結果は、平成25年には町会をはじめ、幼稚園、小学校、中学校、短期大学、大学、警察署、消防署、市役所の合わせて602名による大規模な訓練を実施しました。参加者よりアンケートを取り、後日、検証委員会を実施しています。この模様も北海道の防災教育のテキストとなっています。
 最近では、昨年7月、函館工業高等専門学校と町会が無線を活用した防災避難訓練について、高齢者社会福祉施設を対象に実施しています。

高丘町地区防災計画の策定

 高丘町会がこれまで取り組んできた各施策を集大成するとともに、住民参加型のきめ細かな活動などの対処策を防災計画として、国の災害対策基本法改訂の前の、平成25年5月に策定しました。今後は、この防災計画については50ページ弱ではありますが内容をより深化していきたいと考えています。
 高丘町会では、平成14年に「高丘町会自主防災会」を設立しました。現在、函館市における各自主防災組織の活性化等を図ることを目的として、高丘町会も発起人の一員として「函館市自主防災組織ネットワーク協議会(会長 高丘町会長武下秀雄)」を平成29年2月13日に55組織により設立しました。今後、高丘町会の活動事例の一部を、このネットワーク協議会の活動に反映すべく努力して参り
たいと考えています。

■町会役員の高齢化への対処策―教育機関との各種連携について―

 高丘町は、人口約2800人のうち老年人口が約1100人と高齢化率は約40パーセントとなっています。このことも反映し、町会活動の大きな課題として役員のなり手がなく困っているところです。現在、25名の役員構成(平均年齢67歳)で町会活動を実施しておりますが、後任者がいないため毎年、現有役員が1歳ずつ年をとることです。70歳ですと主力で、我が町会では80歳の方が3人もいて頑張っております。地域住民の各種行事等へのニーズは、多様かつ高いものがあります。
 しかし、これらの対応に当たる役員の高齢化に伴い、期待に応えることがなかなか難しくなってきています。高丘町会は学園地区とも呼ばれ、周辺を含めて7教育機関があります。町会では教育機関と連携して各種行事等を実施していますので、ご紹介いたします。

スマイル・クリーン・ウォーク運動

 当運動は、日々通う道路への感謝の意と、道路を大切に利用する愛護精神を持ち、道路に対し、車道・歩道の間の草取り、側溝蓋の草剥ぎ、側溝に堆積した落ち葉拾い、道路周辺のゴミ集め等を笑顔で楽しくボランティアで実施し、もって、道路沿線の整備を通じて、交通安全を確保する中で、交通事故防止に寄与するとともに、合わせて自分たちが日々通う道路のコンディションの向上を図ることにより、さらに、笑顔をもって利用することを目的とするものです。
 平成21年からボランティアとして、町会と函館大学野球部、函館大学付属有斗高校野球部の学生等と一緒になって、毎年、当運動を進め、特に地域の皆さんから感謝されています。

ハート・トゥ・ハート活動

 当活動は、函館工業高等専門学校の学生と高丘町会とのボランティアにより、夏期は地域の高齢者等宅の草取り、庭木の枝払い等、冬期は、小・中学校等の通学路、高齢者等宅の除雪、砂撒き等を実施し、もって、活動を通して、高齢者等・児童・生徒・学生・町会等地域が優しい気持ちを通い合う、心の交流を図ることを目的とするものです。平成24年から函館工業高等専門学校の学生と町会が一緒になり、夏・冬毎年、ボランティア活動を実施しているものです。特に高齢者等の皆さん、小・中学校から大変喜ばれています。

スマイル・プロジェクト・イン MATURI

 町会の一大行事である「高丘夏まつり」は、暑い8月上旬に踊り舞台の設置、テントの設営、子ども神輿のパレード、夜店の販売、祭りの踊り、後片づけ等作業はたくさんあります。これまで、高齢の役員が全てやってきましたが、祭り(2日間実施)当日は準備の疲れでぐったりです。このようなこともあり祭りを中止する他の町会が出ています。当町会も中止を検討しましたが、子どもさんを持つ若い住民は地域唯一の楽しみということで絶対反対でした。
 このため、町内にある函館短期大学と平成27年から話し合いを続けてきまして、平成28年の夏まつりに参加して頂くことが実現しました。短大からは、延べ107名の参加を得て、今までにない「エアロビクスダンス」「函短がちゃがちや」等の実施など若い学生さんの発想で祭りは大いに盛り上がりました。タイトルのネーミングのとおり、―町のみんなが笑顔になる活動―にさせて頂きました。
 高齢化率は、高丘町会、函館市、北海道どこも、今後は右肩上がりとなっていくことでしょう。このような中にあって、今後の町会運営のあり方は、一工夫も二工夫も考えなければならない喫緊の課題です。
 高丘町会の一例は、教育機関があるというある意味恵まれているかもしれません。他地域にも色々な実施のための素地があるものと思われます。町会存立のための対応を今からやるべきであり、町会がなくなりそうになって慌てないためにも必要なことです。