「まち むら」134号掲載 |
ル ポ |
福祉文化の創造を切り拓く“若者発 ご近所福祉かるた”へのアクセス |
静岡県静岡市葵区 静岡福祉文化を考える会 |
静岡福祉文化を考える会(代表・平田厚)では、赤い羽根共同募金の助成をいただき、このたび、「若者発 ご近所福祉かるた」を創作いたしました。20年間にわたり、多くの皆様方のご支援とご協力により、身近な地域社会から「福祉を文化にする」「地方発 福祉文化の創造」の試みを「公開型・現場体験型研修会」や「調査研究活動」を実践し、若者と共に「若者の地域デビュー」を議論し合う中で、ここに「若者発 ご近所福祉かるた」が誕生しました。これまでの実践プロセスをご紹介します。 20年間の福祉文化実践活動を基盤にして これまで、静岡福祉文化を考える会では、20年間にわたり、市民一人ひとりがより豊かな生活環境を日々創る努力を「福祉文化の創造」のプロセスと置き換えて、様々な福祉問題を専門分野と世代を超えて市民が、拓かれた地域社会の構築に向けて、理論と実践を融合する実践活動を積み重ねてきました。 特に、平成20年度から平成26年度までの7年間は「長寿者を取り巻く地域社会」をもとに、とりわけ、長寿者が安心して暮らせる身近な地域社会の再構築について、「一人でも安心して暮らせる地域づくり」と置き換え、様々な福祉文化実践活動に取り組んできました。 これまでの7年間の尊い福祉文化実践のプロセスを振り返って見ますと、 *1年目は「長寿者の生きがい」(長寿者の自立)*2年目は「長寿社会への課題」(共生社会実現の道程)*3年目は「生活圏域の支え合いの仕組み」(ご近所福祉)と関連づけて、共生社会の再構築に向けた「福祉文化の創造」について、数々の課題を年度ごとに提起してまいりました。*4年目は「住民一人ひとりの居場所が生活圏の中で存在しているか」単に長寿者だけの問題ではなく、住民一人ひとりが日頃から地域に居場所を持つことの必要性を正してきました。*5年目は「家族・家庭の機能」を長寿者等の孤立・孤独防止につなげ「家庭こそが真の居場所」を議論しました。*6年目は、「長寿者をつなぐ、ホッとするご近所づくり」をテーマに「家族・家庭」と生活圏域の「ご近所の支え合い」を焦点に、その意識と実態を明らかにしました。*7年目は、これまでの「長寿者の自立」「共生社会」「地域社会の支え合いの仕組み」「地域の居場所」「家族・家庭機能見直し」「ご近所福祉」を総括する意味合いから、あらためて長寿者を中心に、いかにして一人一人が生活圏域から孤立しない地域、お互いに支え合える共創社会を創りあげていくかをもとに、 1「大人社会がいかにして、積極的に若者の地域参加の機会を創るか」 2「福祉と教育の融合こそが地域を切り拓く」 3「専門性と市民性の協働を誰がコーディネートするのか」 4「住民主体の共創社会へのプロセス」 の課題解決の柱立てを浮き彫りにしてまいりました。 「若者発 ご近所福祉かるた」の誕生 これまでの20年間の「福祉文化実践活動」と、この7年間の「一人でも安心して暮らせる地域づくり」の様々な活動から、このたび、ここに誕生しました「若者発 ご近所福祉かるた」は、薄れてきた家庭機能をせめて地域社会に託し、対等な立場で、しかも生活圏域で顔の見える関係を以て長く継続した信頼関係を築づいた人的環境のもとで、お互いを認め合う、「おすそわけの世界」こそが「ご近所福祉」とも置き換えて、地域の福祉課題解決につなぐことを期待し、ここに誕生したものです。 これまで、本会では、この5年間は、一貫して「若者発」を重視し、これからの地域づくりには、若者の地域デビューを真剣に考えていくことが重要であることを強調し、「公開型研修会」や「長寿者訪問型研修会(百歳の長寿者宅を5か月間、分散型で152名の若者が訪問し学び合いました)」から、地域づくりを若者の視点で議論してまいりました。 「これからのご近所福祉」を語り合う中で、浮き彫りになりました、現実の生活圏城における地域の状況への思いや、大人集団との意見の交し合いや向き合いから感じたこと、地域の担い手として、今の社会を改善したいという熱い思いなどを「かるた」の読み札に置き換えて、これまでの地域の良さをさらに強調し引き続き実践していく呼び掛けとし、見失った地域力を復活していきたい思いを新たに「読み札」に託し、参加された若者から新しい提案を具現化するなどして、約400の「読み札」が浮かび上がりました。「静岡発 福祉文化の創造」をめざして、多くの若者の意見をもとに取り組んできたプロセスから、「若者発」をキーワードにした「ご近所福祉かるた」の創作が具体化しました。 「共創社会実現研究会」「若者発“居場所”あり方研究会」と共に 平成26年度に設置した「共創社会実現研究会」は、主に、地域の現状把握をもとに、これからの「地域社会の仕組み」をいかにして創りあげていくかを議論してまいりました。改めて、平成27年度は、広く一般市民の自主的参画を呼び掛け、継続的に取り組むとともに、新たに「若者発“居場所”あり方研究会」を立ち上げ、二つの研究会を連動しつつ「協働」により、「読み札」の選定にあたり議論を深め、ここに46枚の「読み札」を取りまとめました。「絵札」については、本会の活動にご理解をいただいています 漫画家 法月理栄様との協議を積み重ねながら「若者発 ご近所福祉かるた」の創作に取り組んでまいりました。 漫画家法月理栄様のご協力をもとに 46枚の「絵札」は、コミュニティの現状や、福祉社会を取り巻く実社会等を、法月理栄様と意見交換しながら「若者発 ご近所福祉かるた」の創作が実現できました。 また、この「若者発 ご近所福祉かるた」のモデル地域設定は、2000世帯ほどのコミュニティを想定し、「絵札」には、長寿者の方々の姿に接し、また、児童、青年や障がい者の皆様方、子育て中の方、自治会・町内会の役員さん、民生委員児童委員さん、福祉関係者の皆様に登場していただき、思いを込めて、ご近所同士の支え合いやふれ合い交流などをストーリー化し、描いていただきました。 あらためて「ご近所福祉」を考える時代を迎えて 「ご近所ってなに?・:」、よく町内会や自治会の集まりの中で、こんな話が飛び交っています。生活圏域における人々のお付き合いは、複雑多様な福祉課題が生じている今日、なかなか親しく声を掛け合う機会すら薄れてきました。また、地域環境も大きく変化し、暮らし合う環境や若い世代間では地城離れも加わり、近隣世帯間の交流、付き合いも希薄化しつつあります。 こうした状況は、高齢者世帯、単身世帯ともなると、さらに深刻化し、身近な生活圏城での出来事や話題も知る機会すらなくなり、地域から孤立化の傾向がますます強くなっています。あの時代、何キロ離れても、そこには、つながりを持ったご近所関係ができていました。 これだけ、情報文化が発展してきた今日にあっては、これまで以上に、人々の信頼関係は深まっていいはずなのに、むしろ深刻な社会問題すら生じつつある今を迎えているように感じます。ここに誕生しました「若者発 ご近所福祉かるた」が、生活圏域において、世代を超えた「地域総合型学習」の場で、それぞれの地域性を活かし、有効に活用され、地域福祉の推進に役立つことを期待します。 「若者発 ご近所福祉かるた」には40の「キーワード」があります 1おすそわけ 2情報伝達 3趣味・特技を地域活動に活かす 4地域ぐるみの福祉教育 5子どもの見守り 6家庭力 7感謝の心 8若者の地域参加 9他者との関係づくり 10子どもの居場所 11防災意識強化は家庭から 12いつでもどこでもボランティアチャンス 13防犯(安全) 14健康 15子育て支援 16仲間づくり 17さりげない声かけ 18地域づくり 19世代間交流 20地域福祉 21専門性と市民性の融合 22環境美化 23コミュニティリーダー 24共生社会 25支え合い 26居るだけのボランティア 27集まる地域の居場所 28長寿者の社会参加 29コミュニケーション 30さりげない見守り 31おせっかい屋さん(世話やきさん復活) 32地域文化 33ふれあい 34地域課題の把握 35コミュニティ 36小さな親切 37ご近所福祉 38生きがい 39地域行事 40相互理解 ご近所福祉推進にむけて 本会では、平成28年度の重点活動項目を「ご近所福祉の推進」とし、「若者発 ご近所福祉かるた」による世代を超えた「地域総合学習」を展開し、これからの福祉のまちづくりにむけた提言をしてまいります。 (読み札から) おせっかいと 思われようとも 世話をやく 根付いてる 地域の隅も 助け合い ご近所を 福祉でつなぐ かるた会 (「福祉文化の創造を切り拓く“若者発 ご近所福祉かるた”へのアクセス」より抜粋) 発行 平成28年2月6日 企画・製作静岡福祉文化を考える会 作画 漫画家 法月理栄 協力 共創社会実現研究会/若者発“居場所”あり方研究会/常葉大学学生有志 |