「まち むら」131号掲載
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「自分たちの街は自分たちで守る」 地域に密着した減災活動を目指して
愛知県半田市 半田災害支援ボランティアコーディネーターの会
 平成7年(1995年)1月に兵庫県南部地震(阪神・淡路大地震)が発生し多くのボランティアが被災地に駆け付けた。
 後にこの年をボランティア元年と呼ぶようになった。
 この時の経験から災害時には、ボランティアと被災者のニーズを繋ぐコーディネーターの存在が復興に欠かせないことが認識された。
 愛知県では、翌年の平成8年度より「防災ボランティアコーディネーター養成講座」を実施し、平成16年までに千名余のコーディネーターを養成した。
 初回の講座に参加した半田南ロータリークラブ社会奉仕委員会のメンバーが「防災ボランティアコーディネーター」を半田市内でも養成することの重要性を説き平成10年6月に第1回「半田災害ボランティアコーディネーター研修会」を開講した。
 平成13年に愛知県の養成講座を修了した者、20名余が集い「半田災害支援ボランティアコーディネーターの会」(以下、半田VCの会)を発足させた。
 同時に半田南ロータリークラブが行ってきた研修会事業を受け継ぎ、コーディネーターの養成と会員の勉強会や視察研修会、フォローアップ研修会等、防災活動を始めた。 

地域に密着した活動のきっかけ

 平成17年に愛知県が公募した「持続的な防災まちづくり企画提案事業」に「高校生との協働による防災学習プログラムの実践と防災啓発の拠点づくり」のテーマで応募し、JR半田駅前にあった空き店舗を借り受けて「半田防災活動センター」を6か月間開設した。
 半田VCの会は、このセンターを活動拠点とし、活動の中で知り合った企業、団体、学校、個人と協働できたことに加え、半田商工会議所、半田市社会福祉協議会からの協力が、後に半田VCの会の主要な活動となる家具転倒防止器具取付事業や簡易トイレ製作・販売事業、学校等への出前防災教室事業、地域の自主防災会との連携へと発展し、半田市内で防災ネットワークを築く重要なポイントになった。

災害ボランティアコーディネーター養成事業

 災害ボランティアコーディネーターの養成事業は、設立以来毎年開催され、平成27年3月末現在で796名が受講した。
 半田市と半田市社会福祉協議会は、平成20年に「半田市災害ボランティア支援本部・支援支部設置・運営マニュアル」を作成した。
 この中で、ボランティア支援本部の設営は半田市と半田市社会福祉協議会が行い運営は半田VCの会が担うことが定められ、公設・民営型の仕組みが誕生した。
 これに合わせ毎年実施する災害ボランティアコーディネーター養成講座は、このマニュアルに基づいて、災害時に使用する施設を使って災害ボランティア支援本部の立上訓練を行っている。
                
家具転倒防止器具取付事業

 平成19年、半田市との間に「家具転倒防止器具取付工事に関する協定」を締結し「家具転倒防止器具取付事業」を半田市から受託した。
 この制度は、市内に在住する高齢者世帯、障がい者世帯、遺児養育世帯で自ら家具転倒防止器具の取付が困難な世帯に対して、半田市が無料で器具の取付を支援する制度だ。
 半田VCの会では、防災センター内にいろいろな家具に転倒防止器具を取り付け、展示体験コーナーを設けていた経験を生かし、器具取付に必要な専門的な知識・技能を建築士会や地元の建設会社(且オ番組)から直接指導を受けて取付依頼者に対応する一方、進捗管理や記載資料の電子化を図る等、受け入れ態勢を整えた。
 また、半田南ロータリークラブ、且オ番組からは、半田VCの会の活動費の支援も受け、現在も支えられている。
 家具転倒防止器具取付実績は、平成27年3月までに454軒の住宅に取り付けた。
 依頼者に高齢者が多いことから、取り付け作業中に昔の思い出話や、子どもや孫の話、時には愚痴や不満を聞かされる場面に直面した。
 このことは、高齢者の孤独の表れであり、傾聴ボランティアの必要性も考え、取り付け作業は3名で行うことを基本にし、そのうち1名は、作業補助と聞き役を兼ねて女性会員に同行してもらうことにしている。

簡易トイレ製作・販売事業

 平成17年に開設した防災センターに隣町で防災のボランティアをしている細川氏が自作した簡易トイレを展示用に持ってきてくれた。
 兵庫県南部地震の被災者アンケートで、震災で一番困ったことの1位がトイレの問題だったことから、このトイレを参考に市内のボランティアグループ、おもちゃ図書館「つみき」の修理工房に切削加工の協力を仰ぎ、改良を加えてセット一体型の簡易トイレを製作した。
 トイレの容器は、半田商工会議所の協力を得て会員企業と半田VCの会の関係先から使用済みのペール缶を貰い受け活用した。便座のデザインは4回の改良、変更を経て現在に至っている。
 防災イベントでは、製作体験や展示販売コーナーを設け、災害時におけるトイレの重要性について啓蒙活動をしつつ、活動資金の確保に努めている。(販売価格1セット1500円)

出前防災・減災教室事業

 防災・減災知識は、幼少期から身に付けることの必要性が、東北地方太平洋沖地震の時、釜石の避難行動事例で実証された。
 今まで幼稚園から高等学校、介護事業所等で行ってきた防災・減災教室の内容を半田市生涯学習課の職員(教員)の協力を得て「たのしく学べる防災カリキュラム集」にまとめた。
 現在は、幼稚園・保育園5園、小学校6校、中学校3校、高校2校、特別支援学校1校、介護事業所2事業所で毎年開催している。なかでも市立宮池小学校では、1年生から6年生まで習熟度と継続性を配慮し開催している。

活動の評価と課題

 地域社会での活動が評価され、国際ロータリーから日本で29番目の「ロータリー地域社会共同隊」として認証を受けた。
 また、愛知県知事から表彰状を、愛知県知事、中日新聞社、半田消防署、半田市社会福祉協議会、半田南ロータリークラブから感謝状を受けた。
 現在の会員数は70名で市内を中学校区(5地区)に分け、それぞれの地域性に合わせた活動をしている。
 組織運営の担い手が当初の会員から新しい会員へシフトする過程にあり、クリエイティブな発想を引き継ぎ、さらなる活動の活性化が望まれる。