「まち むら」107号掲載 |
ル ポ |
子どもや高齢者、外国人の生活をサポート |
東京都八王子市 唐松町会 |
イベントの参加者が限られている、町会の加入者が少ない、役員の選出に苦労している、新旧住民のギャップ……など、いずれも各地の町会、自治会の共通したウイークポイントして挙げられているものである。 この問題点に積極的に取り組み、かなりの成果を上げている町会のひとつに、東京都多摩地区の西部、八王子市川口町の唐松町会がある。昭和38年に設立。当時の世帯数は58戸。現在の加入世帯数は1048(平成18年度)となった。高度成長期、都内のベッドタウンとして八王子市の人口が増加、唐松町会も新旧住民が共存する町会である。 創立40周年を記念して、平成16年には「からまつ町会のあゆみ」を発行。町会の歴史、活動内容、明治、大正、昭和など当時の聞き語りや回顧録、航空写真、年表、市川房枝の「川口村の想い出」などがまとめられたものである。 この唐松町会は2006年に、NPO法人“からまつ”を設立し、ユニークな活動を行なっている。 「それまで町会で行なってきた学童保育を特定非営利活動法人として運営していく必要にせまられ、NPOからまつを立ち上げました。事業内容も子育て支援、高齢者支援サービス、自然環境事業、地域住民交流事業と活動の幅を広げています」と唐松町会長であり、同法人理事長の田中好雄さん。いろいろなイベントも町会、NPOでと、それぞれが支えあう。 好きな催しに自由に参加できる 毎年恒例の行事は、どんど焼き、グラウンドゴルフ大会、ひな祭り、高齢者ふれあい交流会、町民祭、七夕祭り、流しそうめん大会、健康管理講座、資源回収、運動会、餅つき大会……など。月に2回以上、多い月では毎週のようにイベントを実施。どんど焼きでは世帯数の半数近くの住人が参加しているため、500本のシノダケを準備。その用意に苦心しているそうだ。 「バラエティに富んでいるので、無理をしないで、好きな催しに自由に参加できるのが長続きする秘訣だと思います」と、同町会の老人会明生会の三ツ間弘さん。県人会もあり、島根、和歌山を除く全都道府県がそろっているとのこと。お国自慢の料理、銘酒を持ち寄っての会合のほか、月に1度ウオーキングの会を開催。地域の里山を歩く会で、午前9時ごろ出発し11時半くらいに解散。「9月に150回になりましたが、参加者が10人弱、多いときには40人くらいとばらつきもありますが、気にしないで続けてきたのがよかったと思います」と三ツ間さん。 なるべく町内の多くの人に参加してもらいたいと、抽選会付きの催しで人を集めたり、子どもたちには行事参加カードを配布。「スタンプの数によって地域の売店で使える金券をプレゼントするなど、ひと工夫しています」とこども部の園田洋子さん。 外国人の生活ガイドブックを作成 今年の夏の町民祭では、「地域に住む外国の人たちと交流を」と、八王子市協働推進課、八王子国際協会の協力を得て、国際交流コーナーを設置。英語、韓国語などのチラシを作成して呼び掛けたところ、韓国、台湾、中国、シンガポール、フィリピン、バングラデシュ、インドネシア、インド、アメリカ、ドイツ、スリランカ、ブラジル、ネパールなど14ヵ国、58人が参加。2日間の累計で町民を含め3700人が来場した。 チラシで外国人対象に売店で使える金券を付け、1人でも多くの人に参加してもらおうと工夫したそうだ。ハッピを着て踊りの輪に加わったり、ネパール料理の模擬店の出店など大いににぎわった。 外国人が地域の中で、安全に安心して暮らせるようにと、「外国人のための川口町生活ガイドブック」も作成、配布を行なっている。日常生活の留意点、生活マップ、施設案内、火災・地震の対処方法などを盛り込んでいる。 また、いざというときに地域で助け合おうという意識から、防災倉庫が大小あり、生活安全部が運営。「地域の企業から提供されたポンプ車まであるんですよ。災害に備えて、井戸も16あります。自分の町は自分たちで守ろうと毎週土曜日に1時間くらい防犯パトロールを行なっています」と同部の高橋定之さん。街路灯も毎年2基、3基と増やしているそうである。 学童保育から高齢者支援まで幅広く 健康面でも住民の生活をサポートしていこうと、健康・福祉部では、八王子市の協力を得て、年に1回、健康をテーマにしたセミナーを開催。「“痴呆について”“お年寄りの口腔について”など取り上げるテーマは毎年違いますが、講演の前に、ハーモニカや大正琴の演奏、手作りのお茶菓子を用意したり、気軽に参加してもらえるようにしています」と、同部の佐藤英二さん。 そのほか子どもからお年寄りまで、幅広い交流と支援を目指しており、2校の学童保育をはじめ、週1回高齢者に夕食の宅配も。毎週心待ちにしていて、玄関で待っている利用者もいるそうだ。 「ひな祭りには女性部のメンバーがお年寄り対象につるしびな作りを企画しました。八王子まつりに万灯みこしで参加していますが、黒の半被に人気が集まり、外国の方も着用して、楽しんでみこしをかついでいました」と、女性部の荒畑美千子さん。めんこやお手玉など、昔の遊びをお年寄りが子どもたちに教える交流会も盛んで、顔見知りになり、近所で挨拶するようになったとのこと。 同町会の注目すべき点の一つに、行政レベルに近い組織図。総務部、文化部、健康・福祉部、生活安全部、環境部、体育部…と8つの部に分かれ、その下に、老人会、女性部、子供部、防犯部、リサイクル推進部など15の会から構成されている。 自主的に楽しんでやるのが一番 さぞ、人材確保に苦慮しているかと思いきや、田中会長いわく、「新しく引っ越してきた人にも、その人の個性に合わせて、話をすすめているため、人材は豊富ですよ。押し付け合うのではなく、みんなが自主的に楽しんでやっていくのが一番」とのこと。会長の下に副会長6人、会計、事務局のしっかりしたサポート体制。月に1回の定例会も役員の負担にならないよう1時間と決めている。 昨年ホームページ(http://www.karamatsu-town.org/)を立ち上げたのも、事務局のIT関連に詳しい人によるもの。ホームページを持つ町会も徐々に増えているものの、頻繁に更新しているホームページは少なく、唐松町会では、イベントが終了すると、写真などを含めてすぐ更新しているのが強みだそうだ。 同会のNPO法人からまつの入会案内の指針に、@子育てに支援をA青少年に希望をB障害者に暖かい手をC高齢者に生きがいをD地域に活力とふれあいをと掲げられている。「現在、Bの障害者に暖かい手を≠フ部分がまだ手薄なので、このNPO法人の施設を広げて、障害者の働く場を提供したい」と田中会長。この作業所が実現する日も遠くないだろうと実感しつつ、からまつ町会を後にした。 |