「まち むら」104号掲載
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市民の応援をもとに活動資金を支援
大分県大分市 あなたが支える市民活動応援事業
 2008年度、大分市は「あなたが支える市民活動応援事業」をスタートした。事業は、地道に活動しているボランティア団体、多様なテーマを掲げて先駆的な取り組みをしているNPO法人、生きがいづくり、健康づくりの普及活動に努める生涯学習指導者団体など、市内で活動する市民団体への補助制度。市民が、応援したい団体を選んで市に届け出ると、市は個人市民税の1%相当額を、その団体の活動補助金として支出する。
 市が掲げる「市民協働のまちづくり」を推進するため、市民活動と税金の使い道の両方について、市民に関心を持ってもらうことを目的としている。税金の使い道は、市民の代表である市議会で決まるものの、最終的には通常、市長が判断している。市民のオープンな判断が直接、税金の使い道を決めるという仕組みは、全国の自治体では千葉県市川市に次いで2番目、大分市では初の試み。珍しい取り組みに、ほかの自治体からの問い合わせが相次いでいる。


市民の応援が補助金額に反映

 応援を受けたい団体は、「大分市人材バンク」(様々な分野で活動している個人や団体の人材情報を、市民に提供するシステム)に登録し、応援を受けたい事業を市に申請する。市は、その事業が市民に応援してもらうのにふさわしいかどうかを審査。ふさわしいと判断した事業を市民に公表する。市民は、その中から応援したい事業を一つ選び、市に届け出る。
 届け出ができるのは、20歳以上の大分市民か、20歳未満の個人市民税納税者。届け出時点で市税の滞納がある場合は受け付けない。市民一人当たりの持ち分は、納めた個人市民税の1%か平均額(約600円:前年度の個人市民税総額の1%を、市の20歳以上の人口で割った金額)。どちらかを選ぶことができ、補助金はその合計で決まる。
 届け出には市民税・県民税の納税通知書番号、特別徴収税額の通知書の指定番号・個人番号が必要だが、番号が分からない人も、運転免許証など本人確認ができる証明書があれば届け出ができる。市川市にはない「大分方式」の特徴として、より多くの市民に市民活動に関心を持ってもらうため、非課税者にも、平均額を持ち分として応援したい団体を届け出る権利を与えた。
 団体が受け取る補助金額は対象事業費の2分の1で、上限30万円。講演会に呼ぶ講師への謝礼や広告料、印刷費、備品購入費など、対象事業の実施に必要な経費として使うことができる。


大分市生活学校連絡協議会もレジ袋削減で申請

 2008年5月、応援の対象となる全54団体・事業が決定。その一つに、大分市生活学校連絡協議会(小野ひさえ会長、350人)の事業「広げよう!レジ袋削減の輪」が選ばれた。
 協議会は1965年に発足。身近な生活課題として、食の安全や環境保全活動に取り組んでいる。5年前から力を入れているのが、レジ袋の削減活動。「レジ袋を1枚燃やすと9グラムの二酸化炭素が発生する。地球温暖化の要因とされる二酸化炭素の排出量を減らし、持続可能な地球環境を子孫に残したい」という小野会長。消費者に、買い物時はマイバッグを持参してレジ袋をもらわないように訴えると同時に、スーパーやデパート側にも働き掛けて、レジに啓発チラシを張り、3か月ごとに削減枚数を報告するよう要望。「一番効果があるのは有料化」として、行政や企業と交渉を続けるなど、様々な活動を展開してきた。
 その活動の一つとして、対話集会の開催、啓発キャンペーン用のチラシ作成、意識調査の実施などを盛り込んだ「広げよう!レジ袋削減の輪」を計画。事業費総額10万円のうち、応援希望額を5万円に設定して市に申請した。


110人の支持を受けて希望額を確保

 申請後は、自分たちの事業を応援してもらおうと積極的にPRに取り組んだ。家族や親せきはもちろん、「こういう活動をしているから、私たちの団体に“1票”入れて」と周囲の人に声を掛け、口コミで応援の輪を広げた。
 7月には、市中心部にある商店街であった公開プレゼンテーションに参加。どうすれば自分たちの事業を応援する気になってもらえるかと知恵を絞り、寸劇を企画した。そろいの青いTシャツを着たメンバーが特設ステージに立ち、買い物時にレジ袋をもらった人、マイバッグを持参した人に分かれ、ユーモアを交えながら熱演。事業への応援とともにマイバッグ持参を呼び掛け、立ち寄った買い物客らの注目を集めた。
 8月に締め切られた届け出の結果、協議会は最終的に110人から総額9万3600円の支持を受け、応援希望額の5万円が補助金として支給されることが決まった。
 協議会は、2008年1月から12月までの1年間で、スーパーなどが報告した削減枚数の合計によると、325万1588枚のレジ袋削減を達成した。地道な活動が実を結び、大分県内のほとんどのスーパーで、6月からレジ袋が有料になる。市民の意思で決まった補助金が、これらの活動の一助となっている。


予想を上回る市民の応援

 応援事業全体では、6819人(そのうち有効6508人)、総額747万6977円の届け出があった。事業の対象となった20歳以上の市民約37万人のうち、1%の参加を目標にしていた市にとって、予想を上回る反響といえる。市民一人当たりの平均応援金額は1149円と平均額を上回っており、実際に働いて納税している人の参加が多かったことが伺える。
 届け出額が応援希望額を上回った場合は希望額を上限に交付するので、実際の交付額は497万113円となった。市民の応援が応援希望額を下回ったなど、事業実施が困難となり、補助金の申請を取り下げた団体もあったが、52団体は補助金を生かして、活発に活動している。
 2009年度も応援事業を実施する予定。「市民の関心は高い。広報の仕方を工夫するなどしながら、事業を面白がってもらう雰囲気をつくり、さらに参加の輪を広げたい」と市市民協働推進課。