「ふるさとづくり'99」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

共に生きる優しい町づくり
長崎県 琴海町
 平成2年、精神障害者家族会「こすもす会」が、保健所と町の呼びかけで誕生した。それから、町は精神ディケアの開始、精神障害者共同作業所「パラダイスハウス」を開所した。
 共同作業所では、生ごみ処理剤「ボカシ」の製造販売を行っていて、この作業を通じ地域住民との交流も深まり、理解協力も強くなってきた。このように、琴海町は、ハンディを持つ人と地域住民一体の、共に生きる優しい町づくりを進めている。


精神障害者家族会「こすもす会」が発足

 これまで、地域住民から精神障害者は「大声を出して怖い」家族は「精神障害の病気を人に言えず、相談する人もいない」「仕事が続かず困っている」などの相談が、町の保健婦に寄せられていた。当時、町当局も精神障害者に対する偏見は、まだまだ強いものがあった。
 「20年間苦しみぬきました」と言う家族の言葉に、保健所と町が呼びかけ、家族2人と保健所保健婦、町保健婦で小さな集まりを始めた。それから、回を重ねる毎に参加者は増え、平成2年、精神障害者家族会「こすもす会」が発足した。
 こすもす会の活動は、先ず、同じ悩みを持つ家族の立場からの話し合いであった。そして、「悩んでいたのは自分だけではない」「子どもたちも辛かったのだ」と認識を新たに、家族と当事者が外出し、町の健康まつりでは「自分たちは精神障害者とその家族だ」とアピールする等、進んで地域に出るようになった。平成4年、町は精神ディケアを開始した。


共同作業所「パラダイスハウス」を開所

 そして、自分たちの作業所が欲しいとの要望に、土地を無償で貸与する住民があり、町は、雲仙普賢岳の仮設住宅の払い下げを購入、建設地区の自治会、医師や当事者、家族、行政が話し合いを重ねた。この時、自治会の代表は「ハンディを持つ人やその家族に学びながら、共に生きていかなければ」と貴重な言葉を述べられた。こうして、地域の理解も深まり、平成7年3月、共同作業所「パラダイスハウス」は完成した。
 作業の一つは、生ごみ処理剤「ボカシ」の製造販売で、製造には、材料のもみ殻などは地域住民が提供、役場職員が指導に当たり、販売は、農協や市場が無料で請け負っている。それに作業所で直接購入する人からは、暖かな声援がある。それから農産物の栽培や販売、一人暮らし老人や公共施設の草刈り等では住民、ヘルパーや訪問看護婦が協力し作業を行っている。
 精神障害者と家族は、作業所のある鴨池団地の子ども会で、クリスマスを楽しんだり、町の交流会では、住民と共にカレーを作ったり、ドッチボールの試合を行う等集える場も増えた。
 また、県の精神障害者通院リハビリテーション事業を受け入れ、6か所で障害者の社会参加訓練を進めている。それに昨年町は、家族会へ住宅を貸与し、障害者の家を設けた。作業所は障害者や家族が、地域に溶け込む大きな役割を果たしている。