「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

いつまでも住みたい地域・心に残るふるさとに
宮崎県日南市 やっちみろかい酒谷
 日南市の西端に位置する酒谷地区は、清流酒谷川のせせらぎや小鳥のさえづりが絶えない自然豊かな山間地だ。しかし、若者達は便利な街に移り住み、約600世帯、1600人の住民の3割が65歳以上という高齢化と過疎が進んでいる。そんな中で若者たちは、平成6年2月に「やっちみろかい酒谷」(代表・日高茂信さん、メンバー30人)を組織し、「いつまでも住みたい地域、心に残るふるさと」づくりを目標に、活動を始めた。


何でも挑戦するのが”やっちゃろうかい”

 「やっちみろかい」とは、日南地方の方言で、「何でも挑戦する」という意味で、会員の提案で決めた。メンバーの職業は農林業や保険業、測量士、会社員、公務員などと様々。
「自分のために、子どもや孫のために、そして地域のために」を基調に、また、(1)若者としての行動を大切にする、(2)知恵を出し合う。金がないとは言わない、(3)マイナスとみられる資源や物事を大切にし、常にプラス思考をする、(4)あらゆる人、あらゆる組織・団体を大切にする、などを活動の基本としている。
最初に取り組んだイベントは、日南ダムの正面に300メートルのワイヤー3本を渡して、400匹の鯉のぼりを揚げた。7年からは、酒谷を桜の里にと、小・中・高校生や住民が国道 222号沿いに桜の苗を植えて、現在までに1000本を植樹した。
山麓に位置する坂本地区には、棚田70枚がある。この棚田にれんげの花を咲かせて、「れんげまつり」も実現した。そのほか、300人からの「せせらぎの里とオカリナ演奏」、小布瀬の滝まつり、神楽保存等々と、活動は実に多彩だ。


研究・交流活動がまた情報発信の契機に

 月1回の定例会の他に、イベントなどが入ると準備もあって会合も増える。また、地区だけでなく、日南市長とのまちづくり座談会や地域リーダー養成集会、県単位の集会では、宮崎県地域づくりネットワーク協議会の交流活動、全国規模では、地域づくり研修交流集会(福井)や地域人材養成塾長サミット(東京)……などに参加して、意欲的に研究・交流活動を展開してきた。県内外のネットワークを通したこれらの研修や交流活動が「自然いっぱいの棚田とれんげ、小鳥とせせらぎの酒谷」を、広く全国に情報発信する機会となっている。
活動は、老若男女を問わず、住民の間に交流が生まれ、ふれあいや潤いのある生活を育み、地域の行事などに積極的に協力したり、参加する住民が増えた。また、活動を通して物を見る目を養い、考える力をつけて、市内外で活躍する人材も育ってきた。郷土に誇りと自信を持つことができたからである。
会が今後の課題にしているのは、現在の活力ある活動をいかに続けていくかで、活動のマンネリ化や会員の意欲の低下を来さないための方策だ。活動の基本はアイデアにあり、そのアイデアを生み出す人材の育成を重視していくことにしている。