「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

おとなに、子どもに、みんなに子どもごころを贈る
香川県内海町 「子どもごころ美術館」を育てる会
 『夢・希望・優しさ』をテーマに「子どもごころ美術館」を作り続けることを通して、自然のなかで人と人とのふれあいの場を提供しているのが、「子どもごころ美術館」を育てる会(代表・北條カツ昭さん、メンバー数50人)である。
 この施設は大金を投じ、一気に建設するのではなく、より多くの人びとの知恵や力、思いを寄せ集めて、作る過程を大切にしたいと考えている。


牛舎とみかん畑が美術館に

 瀬戸内海に浮かぶ小さな島「小豆島」。今日の社会が抱える様々な問題をゆっくりと確実にときほぐしていく力が、この島にははっきりと息づいている。内海町西村オリーブ公園のすぐ上、海の見える5千坪の高台には4年前に廃園となったミカン畑と草におおわれた牛小屋…、1日中暖かい日差しに包まれているこの地で1994年5月「子どもごころ美術館」づくりが始まった。
 まず、最初に始めたのが草刈り、樹木の間伐、これらの作業に1年間を費やした。そして道を作り、ペンキ塗りや花壇、果物畑の手入れをし、トイレまで子どもたちと手作りした。
 さらに、美術館づくりに必要な建設資材、窓、ドア、テーブルや椅子、棚、冷蔵庫、ベット、布団、浴衣にスリッパ、次から次へと、トラックで何10台分もの品物が集まり、そのための倉庫づくりも必要になった。
 毎月1回「ボランティアの日」を設けた。「小豆島『子どもごごろ美術館』ボランティア募集」という新聞の片隅に掲載された文字にロマンを感じ、多くの人たちが集まってくれた。親子ボランティア、中学生・高校生グループ、各種サークル、お年寄りグループ、幼稚園児・小学生グループ、心にハンディを持った人たちのグループ、ログビルダーグループと多様であった。


もうひとつの学校として

 やがて美術館は、1階は展示・学習・制作の場に、2階は読書もできるし、寝室にも利用できるようになった。広場はキャンプ場へと作りかえられた。そしてさらに作り続けられる。これまで実施した活動は、アートキャンプ(芸術創造プログラム)、エコロジーキャンプ(自然体験プログラム)、ファミリーキャンプ(伝統的生活体験プログラム)、アートキャンプ(油絵制作)などである。また、「森のセミナー」は、道具や木、自然についての楽しい学習の場となっている。
 これらの活動は特に、地域における「子育てネットワーク」の拠点として、高く評価されるようになった。自然のなかでの年齢を越えた様々な取り組みが、子どもたちの健やかな成長と自立に果たす役割はとりわけ大きい。
 こうしてたくさんの人びとの思い、多くの出会いのなかで、夢と希望にむかって一歩一歩、創り続け学び続けている。