「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

民話や伝説を朗読と演劇で継承
福島県大玉村 おかあさん劇団「シアター・あだたら」
 民話や伝説を語り継ぎふるさとの良さを認識しようとおかあさん劇団「シアター・あだたら」(代表・後藤みづほさん メンバー数20人)が、朗読劇や民話劇の公演活動を続けている。婦人大会が公演の発端となり、村内での公演を繰り返すなかで自主公演に発展させ、障害者との共演するステージもつくりあげている。劇を通じてふるさとづくりに取り組んでいる。
 朗読劇公演のきっかけは、平成4年に安達郡の婦人大会が当番会場となったことからである。最初のだし物は、風土や文化を縦糸に、8百数10年の村人の生活を横糸にし、民話や伝説を題材にした「遠藤ヶ滝縁起物語」であった。これは「ふるさと物語朗読劇3部作」の第1作である。出演者8人はほとんど練習もないままに本番を迎え、300人を越す会場で緊張の中にも何とか無事に幕が下りた。


村内で公演、感動の輪広がる

 2か月後、「1度で終わらせるのはもったいない。高齢者学級のみんなに見せてほしい」という公民館からの依頼で再演となった。観客は、時に涙し、喜んでくれた。無我夢中で演じた私たちにも、この感動が伝わってきた。その後も、村の文化祭や公民館のわんぱく広場、また、小学生と一緒に高齢者施設の訪問。この過程で、おかあさんたちは劇団をつくることを決心し、劇団名をおかあさん劇団「シアター・あだたら」と命名した。
 「3部作」の第2作を「鶴塚」として平成5年に仕上げ、村の文化祭の前夜祭に自主公演することになった。だが、「村人が足を運んでくれるだろうか」という心配もあった。しかし、そんな不安も吹っ飛び大勢の方が詰めかけた。この公演は、「ふるさとづくり」の第1歩であると学び、のちのちまで大きな財産となった。


朗読劇から民話劇にも挑戦

 公演を続ける中で民話の語りにも挑戦し、さらに、思いきり笑える芝居にと、民話劇「屁っこき嫁っこ宝っこ」を上演。芝居となると衣装や大道具、小道具、照明なども自分たちでやらなけれならないが、ここに助っ人が現れた。裁縫の得意な人が衣装係、ある団員のご主人が小道具をつくってくれた。そして、若い団員や男性団員も加わった。
 民話劇「芋ころがし」を仕上げる頃には、村外からも公演依頼が入るようになった。また、平成9年2月の自主公演は、念願の3部作最後の「馬場桜」が完成した。この公演には、北海道から男女9人がかけつけてくれ記念すべき公演となった。
 その後、隣町本宮町の知的障害の授産施設の園生と音楽劇「おむすびころりん」を福島市の県文化センターで披露。障害者と健常者が共に1つの演劇を作りあげた感動のステージとなった。
 劇団は6年目に入り、男性3人を含め20人になるとは誰も想像だにしなかった。