「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

筆神社建立と筆まつりによる地域おこし
宮城県丸森町 ひっぽ筆まつり実行委員会
 丸森町筆甫(ひっぽ)は、かって林業で栄え活力のみなぎった村であったが、昭和29年の町村合併で丸森町の一地区となった。合併当時の人口2600人年々減少し、現在は1000人そこそことなり、深刻な過疎・高齢化が進んでいる。
 集会の都度「何かしなければ」と、様々な提案が出された中で、平成8年2月、地名を生かし地域にシンボルを建て、それを核にまつりをしようと、4月「ひっぽ筆まつり実行委員会」(代表・目黒啓治さん、メンバー30人)が発足、筆神社を建立し、筆まつりを実現、地域に誇りを蘇らせている。


地場産品の販売などで資金を確保

 実行委員には、農林業、会社員、工員、主婦など働き盛りの 面々が集まり、地区内の有志と地区外からの協力者で構成できた。メンバーは一様に「いま、しなければ、地域は何も変わらない」と異口同音。しかし、新しく「筆神社」を建てる資金をどのようにして確保するかが問題となった。
 筆甫地区は、地理的条件から交通も不便で、経済的に余裕のある家庭は多くない。地域おこしと言えども最初から寄付金を割り当てることは出来なかった。そこで、町のイベント等に出店し、地場産品を販売しながらPRをすると共に、募金による協力を呼びかける活動を行った。
 幸いにも、地区の振興につながるなら是非にと住民からの寄付金もあり、総額で200万円確保することができた。不足の分はアイディアと手弁当で補うことにし、手づくりで建てることに取り組んだのである。


筆まつりから国際交流へ

 新しい「筆神社」は、広さ3坪、高さ4.5メートル、形はエンピツ型「合格」と懸けて5角形、けやきの大木を御神体に安置、旧筆甫村の村社境内に建て完成した。
 筆神社の誕生を祝い、遷宮祭を執り行ったのは、平成9年3月23日、新神社建立に、マスコミ各社も事前から大きく報道されたこともあって、早春の山里に大勢の参拝者が訪れた。
 祭りは、筆神社の披露、新筆の奉納、上達祈願、筆供養、模範揮毫の実践、地元に伝わる神楽の奉納であった。とくに、筆供養では、「机の中で眠っている文具は供養し、海外でもう1度活用してもらおう」「鉛じゃなくて、縁筆(えんぴつ)を贈ろう」との呼びかけには、全国から大きな反響を呼んだ。
 また、例大祭は、毎年11月23日(勤労感謝の日)とし、 この日を「いいふみの日」と呼び定め、初の例大祭を行った。収穫の時期を終え、地区住民の協力のもとに、春の遷宮祭にも増して大勢の参拝者が、終日祭りを楽しんだのである。
 そして、筆供養に集まった文具の贈り先は、現地邦人が教育庁と橋渡しがあり、ブータン王国に決定、国際交流など縁のなかった地域が、児童の絵画交換などまでに発展し、この夏には王国歌舞団と実行委員会との交流会が実現する。