「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

郷土の歴史を次の世代に伝える
山口県岩国市 じゃげな会
 岩国市横山地区は、名橋錦帯橋、吉香公園、吉川家墓所、岩国城など数々の名勝、旧跡に恵まれた歴史のまち。四季を通じてたくさんの観光客が訪れる。住民は観光客から質問を受けることもある。しかし観光地に住む者として十分答えられているか。この思いから忘れかけていた地域の歴史と言い伝えを掘り起こし地域を再発見し、子どもたちに伝え残そうと「歴史の散歩道吉川墓所案内記」「駿河の星」などの出版活動をしているのが「じゃげな会」(代表・新庄菊子さんメンバー40人)である。


郷土の歴史を子どもたちへ

 「郷土を深く見つめ、あたためながら次世代に伝えていこう」と呼びかけて、平成3年3月3日、3人の仲間から吉川家墓所の清掃活動が始まった。今では仲間も増えそれぞれの特技を活かしながら活動を進めている。平成8年度には文部省から「女性の社会参加支援特別推進事業」の委嘱を受け、「人の出会いを活かす“小さい輸”“大きい輪”」事業を展開している。
 その1つが出版活動である。吉川家墓所の清掃活動から10年余りが経った頃、墓所が修復公開されることになった。それを機に同会では、歴代藩主の紹介や毛利氏と吉川家の関係などを紹介した「歴史の散歩道吉川墓所案内記」の発行に取り組んだ。この冊子の中には、中学生の遠足体験記「ぼくたち私たちの城下町」などもあり、大人と子どもが歴史を考える場づくりになった。また、同会では「冊子づくりだけに終わらせるな」と地域の学習会や県外の団体との交流会なども開き、郷上の歴史を活かしたふれあいを進めている。


地域間交流にも活かされる

 また「駿河の星」は、岩国吉川家のルーツ静岡県清水市の人たちを史跡案内したことが縁でできあがったもの。駿河吉川家と岩国吉川家の関係がわかりやすく紹介されている。
 新庄さんは「この冊子を見て2つのまちの深いつながりを思い出してほしい。人のつながりがこの冊子をつくった」と言う。冊子の完成を記念した集いでは、清水市の高校生らによる朗読なども行われ、次世代との交流ももつことができた。同冊子の著者の1人であり清水吉川家34代当主吉川うたさんは「歴史が私たちを結びつけてくれた。これからは民間レベルでの交流を深めたい」と語る。「ああじゃげな」「こうじゃげな」と郷土を愛し、歴史に思いを馳せるメンバーたちの手探り歴史研究は、さらに埋もれた“過去”を掘り起こし、“未来”の子どもたちに郷土愛と多くの人とのつながりを残していくだろう。