「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

都会にほたるの里をつくる
福岡県北九州市 南丘コミュニティ委員会
 生活排水で汚れ果ててしまった川を清流に戻そう。もう1度ほたるの飛び交う川にしようと、地域に流れる川を通じてまちづくりに取り組んでいるのは、南丘コミュニティ委員会(代表・上野博郷さん・会員220人)。人口100万人を越す大都市において、ほたるの里づくりや環境を整備していく活動は、30年の年月を重ねている。福祉や防災などコミュニティ活動が着実に展開されている。


まちの中にほたるが飛ぶ

 昭和30年代の高度経済成長期に、南丘校区は大規模に宅地造成された。しかし、宅地造成等規制法の制定以前だったため、その開発は“乱開発”というに等しく、環境破壊が著しかった。その上、多数の業者による開発は、業者ごとに道路も側溝も食い違い、一雨降るごとに道は濁流と化し、がけ崩れや家屋浸水が続発した。このような状況で各地から集まった新住民は、手を取り合って問題解決に取り組まざるを得なかった。
 こうして南丘コミュニティ委員会が発足。水道、道路、公園、集会所などの場所や規模、内容等が、すべて住民主導の活動によって実現された。そして旧住民と連携して、ドブ川となり果てた小熊野川の清掃活動も開始された。この活動は昭和47年以来今日まで、自治連合会、町内会、老人クラブ、小学生などの住民諸組織で毎週行われている。
 川は徐々にきれいになっていった。下水道が敷設されると、試みに放流したほたるの幼虫が翌年羽化して飛んだ。昭和55年のことである。これを機会に住民のまちづくり運動に拍車がかかった。「ほたるの里」をつくろうという声が高まり、勉強会とほたるの飼育が始まった。昭和56年には、第1回ほたる祭りを実施。「まちの中にほたるが飛ぶ」と、1万人を越す人たちが集まった。以来毎年、このほたる祭りは1〜3万人の人手でにぎわっている。


着実に福祉のまちづくりへ

 こうした活動から結束を固めていった住民たちは、地域の高齢化に備えて福祉ボランティアを募集し、組織づくりに取り組んでいる。現在130人がボランティアとして登録し、福祉マップづくり、訪問活動などを行っている。また、阪神淡路大震災の教訓に学び、町内会単位で自主防災組織をつくることも始めた。
 このような30年にも及ぶ息の長い活動は、黙々と川や公園の掃除を続ける人、ほたるの飼育に取り組む人たちによって支えられてきた。今後も焦らず、着実に、住民が安心して住めるまちづくりに取り組んでいきたいとしている。