「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

ほたるの里づくりで地域を活性化
広島県福山市 服部の自然を守る会
 服部の自然を守る会(代表・坂田修乗さん、メンバー153人)は、ほたるを川に取り戻そうと、ほたるの飼育、放流の活動をはじめとした、川の浄化活動を繰り広げるなかで、自然と共生したまちづくりを進めている。
 服部地区は、服部川に沿った人口2,500人の自然に囲まれたところ。しかし、少しづつではあるが、農薬や家庭排水などによる川の汚染などの自然破壊は進行していた。ここを昔のように、再びほたるが飛びかうところにしたい。この願いのもと服部の自然を守る会は、1991年に発足した。一口500円の会費で会員を募ったところ、子どもから大人まで150人の参加が得られた。早速、福山市に働きかけ、かつての公民館を「ほたるの館」としてオープンさせ、ほたるの産卵や飼育を行い、同年には約10,000匹のほたるを放流した。これを皮切りに、放流は毎年続けられている。


ほたるが育つ環境を

 活動は、ほたるが棲息する川についてもっと知ろう、ほたるが育つ環境をつくろうと進んでいく。水質調査やそこに住む生物の棲息調査などを行うなかで、油膜、ヘドロ、空き缶などで、いかに川が汚染されているかを痛感した会は、住民に川を汚さないようにと家庭廃水浄化の研修会の開催、木炭による浄化作戦などを展開していった。
 一方行政には、護岸改修工法変更や農業集落排水事業の実施などを働きかけていった。会の実績に応え、県では、自然肥料を混ぜた土と水辺の草の種を詰めたブロックを使った護岸工事を行う。さらに、農業集落排水モデル事業の対象地域にも指定している。この事業が、実現すれば、川の汚染は軽減され、ほたるの繁殖には画期的な成果が期待できるという。


広がるネットワーク

 活動はさらに広がっていく。この活動を次代につなげるため、「ふるさと塾」の開設をはかり継続的な研修会の開催、地域をあげてのほたる祭の開催、西日本各地のほたる愛好グループとの交流を目指した「まちづくりフォーラムin服部」の開催などである。
 ほたるという小さな生物をきっかけとした、この会の活動は自然との共生を目指したまちづくり運動に発展してきている。