「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

人形浄瑠璃の継承と国際交流
滋賀県びわ町 冨田人形保存愛好会
 びわ町北冨田に160年前から伝わる冨田人形浄瑠璃は、20年前までは盛んに興行を行っていた。しかし、兼業協会の増大や人形使いの高齢化などによって伝統の火は消えかかっていた。そこでサラリーマンや農業者、女性が立ち上がり、昭和52年、冨田人形保存愛好会(代表・阿部秀彦さん、メンバー18人)を設立し復活を図り、いまでは年間10回程の公演をしている。平成3年には、人形の保管や専用の稽古場である人形会館も竣工し、復興に弾みがついた。一方、米留学生らが日本の伝統文化を体験するに良い機会ということで人形浄瑠璃に挑戦した。その特訓の成果を披露するなどとあって、同会は国際交流の一役も果たしている。


人形が地域のきずなを強め

 冨田人形は、天保年間に、巡業にやって来た「阿波の人形浄瑠璃の一座が雪に開じ込められて、帰りの路銀に困り、借金の代わりに置いていった」のだという風説。残された人形を先祖がこよなく愛好し、保存し続け昭和32年には、滋賀県無形民俗文化財に指定されている。
 人形芝居は、浄瑠璃と三味線にのって、重さ10数キロある一体の人形を主遣い、左遣い、足遣いの3人で操る。土曜の夜など稽古日には、3人が一体の人形を囲んで、この場面ではこう遣おう、いやこうした方がいい…など芸の工夫をする。こうした話し合いは芸のみに限らず、人々の心が触れあい連帯感や絆も強まっている。人形を操るメンバーは、素人であるが、先祖から受け継いだ土の香りが漂う技芸を冨田風に築きあげた「文化」を伝承しようと努力を続けている。また、人形は操らないが、舞台装置、小道具作りや修繕、衣装の繕い、ポスターの写真撮影や解説書作りは、地域住民が得意の分野で協力し、浄瑠璃の語りや三味線弾きもメンバー以外の愛好家が演じるなどで、地域のコミュニケーションを深めている。


外国留学生との合同公演

 平成5年9月から、日本の伝統文化に興味を示す、滋賀県と友好関係の米ミシガン州からの留学生に週2回人形教室を開設、4月帰国前に「留学生さよなら公演」をこれまで3回行ってきた。メンバーが留学生に人形芝居を伝えるために、人形の歴史や操作の知識を再習得し指導に当たった、片言の英語とボディアクションで、汗まみれで悪戦苦闘の連続であった。子どもとともに語学力を身につけようとホームステイを引き受け交流を深めたメンバーもいる。また、文通や電子メール交換で国際交流の輪が広まっていった。
 一方、1回目の公演を体験した留学生が、帰国後大学で「文楽研究クラブ」を作り研究を進めたり、外国語指導助手として再来日し稽古に挑戦する青年もいるなど、異国でも根づき人形を通じ世界に友だちが増えることは、まちの財産となると考え活動を展開している。