「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

モリアオガエルが宿る「美土里」の里づくり
千葉県天津小湊町 四方木町内会
 千葉県天津小湊町の四方木地区は、自然豊かな山里。なかでも「モリアオガエルの産卵」は、いまでも初夏を告げる風物詩である。四方木町内会(代表・神作裕逸さん、メンバー50人)は、約6年前から「地域づくりは自らの手で」を合言葉に、手づくり公園「つつじの里」造り、ふるさと産品「ミニ炭俵」の開発と販売、「不動滝観察園」の建設等、つぎつぎと豊かな自然を生かした地域づくりを進めている。


手づくりのつつじの里「美土里」が完成

 近年、約50世帯の小さな山村は、若者の流出と高齢化等で過疎化が進んで暗雲が漂い始めていた。「自分たちで何とかしなければ」と言いつつその気があっても他力本願的な意見が多く、身近に出来る妙案が出てこなかった。そんな時、地区の青年たち約10数人が集会場で活発に話し合った。平成2年春の夜遅くのことであった。暗雲を「納涼まつりでぶっ飛ばせ」、この山里の小さなイベントは地域を元気づける大きな引き金となった。
 これをキッカケにして若者たちは「いいからやってんべえ」と次からつぎへ活動を始めた。「ちいせえ店作ってみんなの家庭のものを売ってみっか」と、平成3年には特産物販売センターを建設した(有志25戸が共同実施)。自分たちで作った四季の野菜や果実類は、素朴な味と接客で人気を呼び、お客が日増しに目立つようになっていった。
 つぎには古くから自生していた「つつじ」を蘇らせ、花におおわれた『美土里』(美しい土の香りたつ里)づくりが開始された。道路に面した小高い山の傾斜につつじを植栽、四方木町内会の全家庭が植木を持ち寄り、木には名札を取りつけた。緑の中で咲くムラサキ色のつつじはいま見事な景観となっている。山の中腹には手づくりのテーブルやイス、歩道が整備され、山頂にはミニ広場を設けて四方木全域を見渡すことが出来る。つつじの里は平成5年に地域住民の汗とパワーで完成した。


「不動滝自然観察園」を整備

 四方木地区には小さな滝がある。滝は雄滝と雌滝に分かれ、落差約18メートル、幅10メートルで四季折々の風情と旅情が楽しめる。同町内会では地区民の誇りである滝や緑と鳥のさえずりを気軽に楽しんでもらおうと、手づくりで歩道を整備し、展望台を設置した。
 また、ひと昔前までは生活の糧としていた木炭生産の技術を生かし「手造りミニ炭俵」を商品化し、炭焼き窯をも築きあげた。こうして50世帯の山里は、約5年余で大きく変わっていった。悲観論がなくなり、自信と誇りが生まれ、地域が一体となって「美土里」を求めて着実に歩み出し始めている。