「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり奨励賞 主催者賞

ふるさとのぬくもりを求めて民話を語る
大分県豊後高田市 仏の里の民話を語る会
 私たちのふるさと豊後高田市は、国宝富貴寺や真木大堂、熊野磨崖仏、川中不動様などで有名な仏の里であります。仏の里はまさしく仏たちの心の里であり、美しい自然とともに遠い昔から語り継がれ、歌い継がれてきた民話や、民謡、わらべうたの里、方言の里でもあります。


49周年を迎える「どんぐり座」

 ふるさとの良さやぬくもりを、ふるさとの民話や伝説を語り聞かせる活動を通じて、子どもたちに感じとってもらおうという願いを込めて、昭和50年(1975年)豊後高田市、西国東郡の小・中学校の教職員により「西高国語サークル」が結成され、民話の採話と再話活動に取り組みました。
 そして昭和52年から、西高国語サークルが再話した「ほとけの里の民話」を今年49周年を迎えた「どんぐり座」が、人形劇や口演童話で、郡市内の子どもたちに見せ、語る活動を、夏季巡回公演の形で始めました。そしてこの年に、両サークルは一緒になって「仏の里の民話を語る会」(代表・宮本茂登一さん)を結成しました。


仏の里の民話説明板を設置

 昭和58年(1983年)西高国語サークルは、再話した民話を一冊の本にまとめ「ほとけの里の民話」として、発刊しました。この本が発刊されてから10年余りたった平成6年に、仏の里に伝わる豊富な民話を紹介し、観光宣伝や地域のイメージづくり、心豊かなふるさとづくりなどに役立てようと、県西高地方振興局と県高田土木事務所が西高国語サークルと協力し、「仏の里の民話説明板」47基を豊後高田市・西国東郡に設置しました。
 さらに、この民話説明板の案内をしながら「仏の里の民話」の口演活動を一段と進めていきたいと考え、西高国語サークルとどんぐり座を中心に結成されていた「仏の里の民話を語る会」に、親子民話教室、ふるさとの民話教室、アカデミアの会の3つのサークルが入会しました。もともと、「仏の里の民話」と強くかかわってきている団体です。その歴史に長い短いはありますが、めざす目標は一つです。「ふるさとのぬくもりを求めて民話を語る」を共通の目標として、それぞれの活動を一層強力に推進することを申し合わせました。


各サークルの実践活動

(1)西高国語サークル
 西高国語サークルは、昭和50年(1975年)豊後高田市・西国東郡の小・中学校の教師により結成され、翌年から「ふるさとを思う気持ちの薄れがちな子どもたちに、ふるさとの良さやぬくもりを感じとってもらう」ことを願い、民話研究に取り組みました。昭和52〜53年は、民話の採話と再話活動を続け、54年には民話を教材にした授業を実践しました。55年西高の民話集を発刊、57年「仏の里の民話をたずねて」を大分合同新聞に連載しています。
 58年には「仏の里の民話」を発刊します。そして平成6年県高田土木事務所が、民話説明板を設立することに協力したり、「仏の里の民話」集改訂版を発刊。現在も、民話の掘り起こし活動を続けています。
(2)どんぐり座
 どんぐり座は、昭和23年(1948年)戦後の混乱期に、「子どもたちに夢と希望を!」を目標に教師集団によって結成された人形劇団で、結成以来48年の歴史を持っていて、この間幾多の試練と嵐を乗り越え、絶えることのない公演活動を続けています。
 昭和52年からは「仏の里の民話」を素材にしたキツネと小坊主、かっぱとひょうたん、木こりとんべえ、高松池の竜等の民話を題材にした人形劇をつぎつぎと新作し、平成7年までの18年間に10作の出し物を持って、豊後高田市7校、西国東郡の小学校8校で巡回公演をしています。巡回公演は、年次ごとに市内と郡内を交互に、各年次1日2校4日間の日程です。
(3)親子民話教室
 親子民話教室は、ふるさとの民話を、民話の里や民話説明板めぐり等を行いながら、語り聞かせることにより、子どもたちの豊かな心を養い、ふるさとへの親しみや愛着を持たせること、親子のふれあいを深めることを目標に活動しています。
 平成5年度は、毎月1回(年10回)仏の里の民話を中心にした歌や腹話術、手品等を取り入れた民話教室を開催しました。また、小野瀬のおさんキツネ・千部山の万代石・鬼がこしらえた99の石段(熊野)を訪ねたり、民話説明板をめぐるバスの旅を行いました。
 翌6年度にも、市内にある民話説明板めぐり(7回)と、民話の生まれた里を訪ねるバスの旅を行い、民話説明板の所在地を確認する民話地図の作成、民話の生まれた里では、その土地の古老に民話を語ってもらうなどの活動です。7年度は前年度に準じた活動に、新しく「お話と映画の会」を設け仏の里の民話を語っています。
(4)ふるさとの民話教室
 ふるさとの民話教室は、ふるさとの民話を「語りべ」として子どもたちに、話ができるよう力を養うことを目標に、公民館で開いている教室です。
 平成7年度は、民話説明板の設置してある豊後高田市17基、大田村10基、真玉町10基、香々地町10基の場所を調べると共に、豊後高田市の仏の里の民話を中心に、民話の里や民話説明板めぐりを行い、民話の語りの学習や民話の基礎的な学習を年10回実施し、親子民話教室などの会に出演し、民話を語る活動を実践しました。
(5)アカデミアの会
 アカデミアの会は、大分県のニューライフアカデミアの高年大学、婦人大学、マスターズコースの卒業生で結成している会で、平成7年10周年を迎え7,500人の会員がいます。会員は、それぞれの地域で「継続は力なり・友情の輪をひろげよう・地域のリーダーになろう」を合言葉に、活力ある地域づくり、人づくりに励んでいます。そして、語りべを育てる「ふるさとの民話教室」に参加している会員もいて、子どもフェステバルが9月に、日出のハーモニーランドで開かれた際、仏の里の民話「青宇田の三太郎やぶす」等を語りました。
 さらに、お話会やクリスマス子ども会等の子どもたちを主体とする会合や老人保健施設、特別養護老人ホーム、敬老会等、高齢者の集いや諸会合にも進んで参加し民話を語ります。


出前公演

 出前公演は、語りべの仲間たちと共に、郡市内の幼稚園、保育園、小学校や老人施設などに、仏の里の民話、民謡、伝統芸能や踊りをセットにした公演活動です。
 平成7年度は、幼稚園、保育園各5回、高齢者大学3回、老人クラブ3回、その他、玖珠町の童話祭、野津町の吉四六祭、敬老の日福祉大会、老人施設訪問等での公演です。残念ながら、フルセットを組んでの公演活動は、数回しか出来ませんでしたが、民話の語りは欠かすことなく続けることができたのです。いつでも集まれる同好の士を増やし、活発な公演活動を続けて行きたいと思っています。


先輩の切り開いた道を大切にしながら

 昭和23年「どんぐり座」が結成され、その仲間たちも参加して昭和50年に「西高国語サークル」が生まれました。それから、西高国語サークルが掘り起こした仏の里の民話を、どんぐり座が人形劇やお話に書き直し、巡回公演も20年間も継続して来ました。そして、人形劇は全市町村の民話を取り上げるまでの活動に発展しました。
 民話説明板が設置されたのも、また、公民館活動として「親子民話教室」や「ふるさとの民話教室」が開設され今日に至っていることも、すべて先輩が切り開いた道があったからです。私たちは、「ふるさとのぬくもりを求めて民話を語る」、この道を大切にしながら守り歩き続けて行く決意でいます。