「ふるさとづくり'96」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

歴史を活かしイベントによるまちづくり
岡山県新見市 備中国新見庄ロマンの里づくり委員会
 イベントでまちが変わるだろうか?果たしてまちづくりができるだろうか?ここに、イベントを最大限利用して、まちづくりをしている集団がある。備中国新見庄ロマンの里づくり委員会(代表・田原茂穂さん、150人)である。


2万人以上の参加を得て備中国新見庄まつりを開催

 岡山県新見市は、中世、京都の東寺の荘園として栄えたところ。東寺に残された「百合文書」には、土地台帳を始め当時の新見庄の模様を記した古文書約2千点が残されている。そしてこの地には、それを裏付ける史跡、地名などが数多く現存し、中世史を研究するには欠かせない地である。また、たまがきという女性が東寺にあてた手紙も残されており、中世の農村女性が書いた文書としては、唯一現存するものではないかといわれている。
 こんな歴史的遺産を活かしたイベントによるまちづくりができないかという発想のもと、平成3年に発足したのが、備中国新見庄ロマンの里づくり委員会だ。同年11月、委員会は、地元の科理店が文献を調べ、作った科理を食べる「中世の食体験会」、女子高校生による中世ファッションショーや仮装コンテスト、さらに史跡めぐりなどの企画を盛り込んだ「第1回備中国新見庄まつり」を開催した。
 当日は約2万人の参加者でにぎわった。以後祭りは恒例となり、毎年、規模も大きくなり開催されている。さらに、東寺の荘園だった市町村との「東寺領荘園サミット」の開催も提案し、現在関係市町村のもちまわりで開催している。「ふるさと新見庄」という解説書もつくり、学校の副読本として使われている。これらの活動を通して、対外的には新見庄も知られ、市民にも、新見の大切さが理解されてきた。


イベントは、まちづくりの有効な手段

 しかし不安もあった。「イベントをして、何になるのだろう?まちづくりに本当につながるのだろうか、単に自己満足に終わってはいないだろうか」と。しかし、新見庄のイベントは、みんなの生活を充実させていった。イベントの企画から後始末までを経験するなかで、行動力が養われ、そして人と人、地域と地域のつながりが培われていった。それが人々に新しい生き方を生み出していった。ほんとうのまちづくり、「人口増加や産業振興ではなく」たとえ人口が減っても、そこに住む人が充実した暮らしができる町、そうにすることが真のまちづくりではないか。そう考えた時、イベントというのは、大変有効な手段であった。
 人を育み、まちを変えるために、新見庄のイベントによるまちづくりは続いていくだろう。