「ふるさとづくり'96」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

“町衆文化”が現代に蘇る
兵庫県姫路市 ひめじ町衆の祭典実行委員会
 町衆文化を現代の商店街に花開かせよう−と活動を続けているのが「ひめじ町衆の祭典実行委員会」(代表・林利昭さん、メンバー17人)。町衆事業のなかで出色なのが「全国陶器市」である。当初は、陶器と無縁のための苦労があった。後世に残る文化イベントとして陶器市は、定着し発展を続けている。20万個の電球で彩るライトアップ、姫路市書写の里・美術工芸館の開館など数々の実績を残し、町衆文化が蘇っている。
 JR姫路駅周辺にある古くからの商店街である。大型店の出店や京阪神地域への顧客の流出などで商店街再生が求められていた。そして「町衆文化」を現在に活かすための活動が始まった。「町衆」は江戸時代に塩や木綿の専売などで力を蓄えていた商人のことである。
 昭和60年頃から、様々なイベントを行い、平成元年に「ひめじ町衆の祭典実行委員会」が誕生。町衆文化を実現する活動が本格化したのである。


後世に残るイベント金国陶器市

 町衆事業の一つに、姫路市と共同で大手前通りのライトアップがある。春と秋の数ヵ月間20万個の電球で彩り華麗な輝きを放つ。町衆委員会が中心になり装飾、撤去を行い、費用の多くを負担していた。この輝きは、姫路市によって引き継がれている。町衆事業のなかで出色なのが「姫路城の歴史文化と陶器の伝統文化との出会い」をテーマとした「全国陶器市」。陶器とは無縁だったことを逆手にとったイベント。日本六大古窯や有名な窯元を誘致し、陶器を廉価で販売して市民に楽しい空間を提供、商店衛の活性化を図る企画。当初は、産地行脚などを繰り返し、やっと最低限の窯元誘致にこぎつけた。その後、発展をとげ24の有名産地や地方の若手作家が、姫路をめざすようになる。陶器市は、後世に残る文化イベントとして町衆委員会の初志が脈々と受け継がれている。


美術工芸館がオープン

 清水公照師(奈良東大寺)は、姫路の出身。師は、書や作陶、絵付けなど多くの作品がある。町衆委員会は、師と姫路市との調整や橋渡しに奔走。師の作品などを展示する「姫路市書写の里・美術工芸館」がオープンの原動力となる。
 町衆の活躍は、新しいふるさとづくりそのものだ。この活動は第1世代から、第2世代に受け継がれ、21世紀に向けたまちづくりへと進んでいる。