「ふるさとづくり'96」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

人間とメダカの共生を目指して
群馬県前橋市 野メダカを育てる会
 メダカは昔、どの小川にもいたが今でははとんど見られなくなってしまった。全国で100ヵ所程の地域でしか棲息していないという報告もある。群馬県内でもごくわずかの小川や池沼にかろうじて生息しているにすぎない。メダカを絶滅させてはならない。人間とメダカがいつまでも共生できる社会を、子どものころに体験したメダカすくいの楽しさを、今の子どもたちや次の世代にも体験させてやりたい。野ノダカを育てる会(代表・阿久津勍さん、メンバー240人)はこうした想いで平成5年5月に発足した。


「メダカの学校」の建設と保護

 同会は、群馬県前橋市の市児童文化センター内に事務局を置き、メダカの保護活動に関心を持つ小学生や大人がメンバーの組織であるが、最近は家族単位や子どもの入会が増えているので、環境に関する体験を重視した活動を続けている。
 今まで、メダカの放流は市内の大室神社の堀を第1号に、赤城村赤城自然園内の人口沼に第2号と、「メダカの学校」を建設した。現在「生徒」数を調べているが、将来は、意地悪な友達とも言えるモツゴ魚やタガメ、ミズカマキリなども学校の一員として参加させ、大勢の生徒が集まって活気のある楽しいメダカの学校にしたいと励んでいる。
 現在メダカの学校第3号を児童文化センターの敷地内に建設中で、79メートル程の小川に昭和30年代に前橋で生息していたナマズや水生昆虫、水草等を入れ、メダカ中心の生態系を現す、教材園でもある。子どもたちはメダカすくいができ、そのメダカを家族で観察学習し里親として増やしてもらい、元の小川に返してもらう、そんな小川づくりを考えている。


全国メダカ保護団体のネットワークを図る

 日本に棲息するメダカは、南日本集団と北日本集団の2種類に大別され、その遺伝的距離の差は約10%でこれは人間とチンパンジー程の連いがあるという。人間とチンパンジーが一緒に生活できないことを考えると、新潟のメダカを捕獲し、群馬に放流することはできないし、野生メダカを保護する上でこの地域性を考えることは重要なことである。
 メダカは、小川の生態系の中の一つの生き物にすぎない。メダカを保護することが他の生態系を壊すものであってはならず、生態系全体の保護に繋がらなければならない。今後は全国のメダカ保護団体との情報交換や学習会等横のつながりを図り、「メダカのいるふる里づくり」実現のために生き物が棲息できる河川づくりを関係諸機関に働きかけていきたい。