「ふるさとづくり'95」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

人形劇を通してのまちづくり
長野県 飯田市
 長野県飯田市は伝統的人形浄瑠璃のまちであったが、さらに新たな地域文化の土壌を育てるために、「人形劇カーニバル」をとり入れたまちづくりが始まっている。それは単に子どものための文化事業の興隆だけでなく、国際交流の促進や産業経済への波及等、これまでになかったイメージを飯田にもたらしている。


みんなでつくる祭りのすばらしさ

 飯田市はこれまで「りんご並木」がまちのシンボルとして知られてきた。同市に人形劇ひとみ座などの関係者が訪れ、前市長との話し合いで国際児童年の1979年に「子どもたちに豊かな文化を与える」ことを目的に「人形劇カーニバル飯田」が始まった。飯田には、かつて伝統的人形浄瑠璃の座等が存在していた。こうした風土の上に、新たな人形劇カーニバルの歴史がかさなって、新たな伝統が生まれることになった。
 このカーニバル開催にあたっては、人形劇関係者と市民が実行委員会を構成、みんなの夢を出し合って企画、運営し、行政も側面から援助、条件整備をしている。会場についても市内全域に上演会場を設け、各所で同時多発的に公演するスタイルをとった。参加者も700円のワッペンを買い、つけていれば特別鑑賞劇以外はどの会場にも自由に出入り出来るようにしてある。こうしたシステムのなかで、みんなでつくる祭り、参加するすばらしさといった意識がみんなのなかに急激に育っていった。


国際色豊かな人形劇カーニバルに発展

 これまで16回を数えたが、外国劇団の参加、地元劇団の創作劇上演、地元商店のウィンドー人形展、パブ、レストラン等での大人向けの公演等、さまざまな企画が生まれてきている。また、専門人形劇場が出来たり、世界人形連盟のあるフランスのシャルルビル・メジュールと友好都市提携調印など明るい話題も生まれたのである。
 活動を通じ、子どもたちに人形劇に触れ創造性や感受性を育てる機会を与えただけでなく、人形劇サークルの誕生を促すなど市民にも地元の人形劇の伝統の大きさを認識させた。同時に世界各国から人形劇関係者が訪れるようになったことから、市民と自然な形の国際交流が生まれてきた。こうして、現在では「人形劇のまち」といわれるようになり、積極的に育てていこうという機運が市民の中に出てきており、行政との構成で「人形劇のまち」プロジェクトも発足、今後のあるべき姿を模索している。