「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

城下町にふさわしい町並みづくり
宮崎県日向市 本町商人通り振興会
 本町商人通り振興会の「本町通り町並み研究会」(代表・安藤英雄さん、メンバー98人)は、城下町にふさわしい町並み保存や町並みづくりに取り組んでいる。同研究会は、「家は日本風に」「ケバケバしい色を避ける」など5つの申し合わせ事項をつくり、この浸透により、商家などの和風造りや電線などの地下埋設などが実現した。また、高校生による旧町並みの版画づくりなどが進められ、町並みの完成にともない、祭りを復活させている。


徹底した話し合いで風致保存

 飫肥には、城下町の町形態が残っている。この町並みは専門家の調査で賞賛を受け、「歴史的文化遺産」として、保存の機運が盛り上がっていった。
 飫肥城が、昭和53年に復元完成し、“城下町にふさわしい町並みを”を合言葉に「本町通り町並み研究会」が発足し、町並み研究活動が始まった。最初に、建築設計士や高校の美術の先生などに町並みに関する意見を求め、統一された風致保存のための論議を重ね、分かりやすい申し合わせ事項をつくった。それは@家は日本風に統一しましょう、A家は溝から1メートルさげましょう、B軒は溝までだしましょう、C軒の高さを決めましょう、Dケバケバしい色を避けましょう――の5項目。


郷土芸能館は住民活動の拠点

 しかし、昔の町並みは、少しずつ姿を消していくなか、取り壊される前の町並みを何かに残そうと、高校生が先生の指導のもとで版画制作に取り組み、旧町並みの版画は、100メートルにも及び、貴重なものとなった。
 申し合わせ事項が、地区民に浸透し、薬屋さんや床屋さん、酒屋さんなど和風造りの設計の街づくりが広がっている。とくに、飫肥郵便局は、郵政当局に陳情した結果、白と黒を基調にした和風局舎が実現した。さらに、電線や電話線、街灯、街路樹などは、関係当局にお願いし、歴史的な町並みに合った景観づくりに一段と拍車がかけられた。また“この家だけは残そう”と古い商家の保存活動も始まり、取り壊し間際の商家が、市への陳情が実り、所有者の寄贈により市有地に移転、商家資料館として生まれ変わることになった。さらに、住民待望の“寄り合いの場”が飫肥郷土芸能館として実現。これからの活動拠点もできた。町並みの完成とともに若人が中心となって“飫肥城下まつり”や“十五夜大綱引き”等の祭りを復活させ、新しい趣向を加えたイベントをくり広げている。