「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

ふれあい福祉のネットワーク
熊本県荒尾市 荒尾市新生地区公民館
 地域の一人暮らし老人、障害者や虚弱老人などを把握し、何か事があった場合は近所の協力で公民館や民生委員に連絡するシステムを担当しているのは、福祉推進委員に位置づけられている60人の班長からなるネットワークである。昭和60年7月には、ボランティア新生会を結成。特養ホームでの入浴や食事の介肋、一人暮らし老人への配食活動から会食へ、この会食が契機に平成元年8月に一人暮らしの会「むつみ会」が発足した。自主的な手芸・料理教室などを活発に行う一方、福祉問題懇話会では、地域ドクター制度の確立を果たすなど「住んで良かったと言われる町づくり」をめざしているのが新生地区公民館(館長・平山一二さん)である。


むつみ会の発足と活動

 新生地区は、総数862戸、人口2514人、年金生活者が増え続く新興住宅地である。一人暮らしだが「自分たちで一緒にできることを何かやろう」と生まれた「むつみ会」が最初に取り組んだのが手芸教室で、会員のアイデアによる作品は出来栄えも良く、福祉まつりの会場で販売し活動資金の一部に充当している。続いて始めた料理教室は、当初公民館で行っていたが、特養ホーム園長のはからいで日曜日には、道具が揃った園の調理室を会場に実施し、年1回は市長を招待するなど活気みなぎる「ふれあい」の場となっている。


向こう三軒両隣の協力体制を整え

 ネットワークの拡大強化やふれあいを深める目的で、公民館福祉部が企画する福祉問題懇話会は、公民館、老人会、新生会、むつみ会、身障者の会、子供会育成会の代表で構成され地区の福祉問題を考える最高機関である。数回重ねた懇話会でむつみ会のメンバーより「一人暮らし老人が一番不安なことは、病気になった時」であると多くの意見がだされた。そこで、保健所、市健康管理課、福祉課、医師会事務局の出席を得て協議した結果、地区周辺・6軒の開業医でネットワークをつくり「地域ドクター制度」をスタートさせるという報告を受けたのである。
 その後、代表で懇話会に出席した医師は「問題は往診が必要かどうかの判断と開業医への連絡をだれがするかで」、近くにこの人ならという連絡をしてくれる友達をつくることが大切だと指摘。新生地区では、この制度を有効に活用する、向こう三軒両隣りの住民協力体制を整え、一人暮らし老人も安心して日常生活が送れるようになったのである。