「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

町づくり実働隊
広島県福山市 福山市「鞆を愛する会」
 瀬戸内海の中央に位置し古くから主要航路として発展してきた町も、近年の産業不況の続く中で沈潜していた。そんな町を「何とかしよう!」と、若者たちが「鞘を愛する会」(代表・大井幹雄さん、メンバー70人)をつくったのが昭和62年。メンバーに勇気を与えてくれたのが、『出逢いの海、鞘ノ浦』という1人のコピーライターの描いた漫画だった。触発されたメンバーらは、「海は陸の鏡」と、海からの町づくりを展開している。


沈没船「いろは丸」の確認と遺品の引き上げ

 ふるさとの豊かな歴史遺産を、分かり易く教えてくれたのが『出逢いの海、鞘ノ浦』であった。中でも、維新の英雄、坂本龍馬の「いろは丸事件」のドラマは、空前の夢とロマンをかきたてた。こうして、地元漁師や古老への聞き取り調査を開始し、それが限界に来ると水中考古学者に本格的な調査を依頼した。時間と労力、金のかかる活動だったが、全国の龍馬ファンの激励に応えようと頑張ってきた。その間、第3次調査まで延べ1ヵ月間の調査の状況は、NHKや各種情報メディアで連日のように取り上げられた。
 ‘94海と島の博覧会鞘ノ浦会場では、夏の炎天下の中で会員が大活躍。いろは丸調査によって引き上げられた遺品は、鞘港の一番美しい場所にある米蔵で聞かれたのである。こうして高知や東京、長崎を結ぶ龍馬研究者や龍馬ファンの情報交換、交流の場となり、管理、運営も継続されている。


ママさんガイドが町をアピール

 うれしいことに、行政も重い腰を上げ、活動に助成金をつけてくれることになった。女性の「ママさんガイド」も誕生。また、町並保存伝建地区として、残り少なくなった町家の保全や修復に努める町並保存推進協議会も設立された。江戸時代の朝鮮通信使宿舘として国内唯一現存し、老朽化の激しかった「対潮楼」の再建修復計画も、平成3年に実現させたが、とくに韓国関係者の親身な協力に感激したのである。
 会員たちは、急速に消失しつつある文化遺産を1点でも多く残せたらの思いから、日曜日ごとに家々を歩き収集活動を続けてきた。そんな5年間の実績は5000点にも及び、数年前建設された「鞘ノ浦歴史民族資料館」で紹介されている。そして今、「鞘港埋め立て架橋問題」がうわさされる中で、日本にたった1つだけ残る円形港湾を自然の姿で後世に伝えていきたいと、“海からの町づり”にこだわり、模索しているのである。