「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

都市景観や地域の自然環境の保全と創造を!
兵庫県芦屋市 芦屋川に魚を増やそう会
 水質も良く、景観に恵まれている芦屋川だが、魚がほとんどいない寂しい川だった。そこに、魚の好きな者が集まって「芦屋川に魚を増やそう会」(代表・種継慶二さん)が、昭和54年に発足。以来、水系の自然を守り育てて、自然繁殖可能な魚種を増やしてきた。現在会員は、大人から子供まで85人。かつて小学生だった子供会員の中には、その後、数人が環境に関する仕事を職業に選び、良き環境アドバイザーに育った者までいるのである。


清流で育つアマゴの稚魚を放流

 活動の基本は、@生き物の代弁者となる、A芦屋川を市のシンボルとし、市民の誇りとする、B絶滅の恐れのある魚を守り、増やしていく、C行政とは誠意を尽くし、理解し合う、D政治的に利用されない、E自然保護を掲げる他の会と交流していく、というもの。
 川の水質を守るために、当初始めた石鹸の共同購入活動は大きな反響を呼び、全国に販売するほどになった。無添加石鹸でアトピー性皮膚炎が快方に向かうという事実も会員にとっては驚きで、「自然保護は人間保護」であることを、しっかり確認したのである。
 芦屋川の生態系を考慮した上で、上流に放流したアマゴは順調に育ち、自然繁殖を始めており、降海型のアマゴの研究にも一役買っている。また、川には天然のアユが遡上してくるが、堰堤に遮られて上流に上がれないアユを、保育所や幼稚園児と一緒に汲み上げて上流に送る作業を行っている。こうして川の自然度向上に努めた結果、昭和40年代から絶滅に瀕していたゲンジボタルが復活し、カジカガエルも数を増やしている。しかも、都市河川で、カワセミが何時でもみられるという素晴らしい環境と景観が保たれているのである。


大切な自然との共生

 また、市民の目を芦屋川に向けてもらうために、棲息している魚や鳥などの自然をアピールするよう行政に要望。市と県が連名で『芦屋川の主役は私たちです』の看板を建てた。こうして思惑通り、多くの市民は芦屋川の自然の豊かさに目をみはるのである。
 いま、芦屋市民の一番好きな景観は、芦屋川であることが、平成5年の市の調査で明らかになり、会員一同、長年の努力が報われる思いを噛み締めている。芦屋川の清掃に、今では多くの団体が積極的に協力するようになり、会の活動の知名度も上がって、人々から「いつも芦屋川のために活動して下さってありがとう」と言われるまでになった。持続可能な社会を目指して、『自然との共生』を図る活動はいよいよ必要度を増しているのである。