「ふるさとづくり'94」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

活力あるゆたかな故郷づくり
佐賀県・小城町 フォーラム小城
 佐賀県小城町は人ロ16,000人の歴史と自然に恵まれた、のどかな肥前の小京都です。古くから関東の豪族千葉氏や鍋島氏の城下町として町づくりが行なわれ、地域の中心として活力あるモノづくり、人づくりが行なわれてきました。
 しかし、農業の変革や高遠道の通過などにより次第に地域の拠点性を失い、昨今の住宅地としての人口増加により、一見、活性化されているようでありながら実態は中心商店街の空洞化などの問題が進行しています。
 経済面のみならず、小京都に伝えられてきた文化も往年の光を失い、新たな地域文化の構築が求められるところとなってきています。
 町には「名水百選」「桜の名所百選」「ふるさと生きものの里百選」「農村景観百選」にそれぞれ指定された豊かな自然があり、同時に小京都あるいは「九州の鎌倉」と称されるほどの歴史の宝庫であることは私たちに与えられた大きな財産です。これらの価値を再評価し、新しい活力ある生活空間、生活文化を創造することにより、活力あるゆたかな故郷づくりが今求められているとの認識に立ち「フォーラム小城」は1987年10月、7人(現在12人)の会員により発足しました。まず会の理念と目標を定めましたが、このことは後に取り組む運動のバックボーンとなりました。
 会員は小城町に居住する30代から50代のさまざまな分野から集い、ふるさと小城の活性化を願っての思いがぶつかりあう熱気あふれるミーティングを続けています。
 そしてこの集いの場を生かすべく、さまざまな地域おこしの運動を展開しています。この運動には多くの町内外の方々の協力をいただき、会員自体の奉仕も含めその輪は次第に大きく広がっています。


ゆたかな故郷づくりを目ざして

 ゆたかな故郷づくりのために、まず私たち会員が勉強し、さらに町民と一体になった活性化のためのさまざまな集いを続けてきました。
 (1)会員の勉強会
 1987年10月発足以来、全国各地より数多くの講師を招聘し、また大分県湯布院町など地域活性化の先進地へ会員自らが出かけて多くの情報をえながら、会員相互の情報交換も行ない、運動のあり方を模索しています。
 (2)町民を交えての勉強会及びシンポジウム
@【小城ふるさとシンポジウム】
 1990年3月に小城町に伝承されている史跡の中で最も責重なものとされる小城鍋島家の菩提寺、祥光山星厳寺を中心とした歴史文化に関わるシンポジウムを開催しました。会場には小城中央公民館開館以来の多数の町民参加があり、以来町の「羅漢の道構想」や「羅漢まつり」祥光山星厳寺の「文化財保存運動」につながり、県内外にこのことがいく度も紹介されています。
A小城の【水】研究会
 1992年7月より「名水百道の地」小城の【水】に関する勉強会を「小城の自然を育てる会」「小城源氏螢保存会」の会員その他の町民の方々に呼びかけ、それぞれ専門の講師にお願いし、5回開催しました。「小城の自然を育てる会」ではこの事に共鳴し、再度【水】について独自の勉強会を行なうなど、この企画は町内外に数々の影響を及ぼしました。特に名水百選清水川の浄化対策、晴気川水系の勝川の推量調整事業などがその後推進されるところとなっています。
B町おこし講演会
 中心商店街の空洞化、観光客の停滞などの問題についてタイムリーに講演会を町民の方々にもよびかけて開いています。遠隔地の商店街、観光などについてのモデル例の紹介により町民の意識がさまざまに変容してきており、本町商店街などの改革運動なども次第に検討され気運が盛り上がっています。
C商店街勉強会
 中心商店街について専門的な見地からの勉強会を1993年3月より始め、多くの方々の参加を得て具体的な手順までが検討される段階に入っています。特に下町商店街では1991年に計画された再開発構想を具体化する活動が始まっています。


ふるさとを見つめて

 ゆたかなふるさとづくりのためにはまず自らの地域を知ることが大事との会員の共通認識により、【ふるさと読本】を企画し出版しました。
@ビデオテープ【ふるさと再発見】の制作と地元への贈呈
 ふるさと小城の歴史、史跡について私たちが調査し、自ら点検して手づくりによるビデオテープ【ふるさと再発見】(60分)を制作しました。
 このビデオテープは1989年3月の発表と同時に、地元の小中高校、公民館、その他諸団体に寄贈し、教育関係機関をはじめとして町内外での高い評価を受け、県内外からも多くの反響が寄せられました。小城町では毎年1月の「成人式」の折、このテープを新成人全員に記念品として配布し、学校や町内各機関においても、ふるさと小城の歴史をよく知る上での教材として活用されています。
A【ふるさと読本、小城歴史物語」の出版とその贈呈
 ビデオテープに続いて、ふるさとを知るための【ふるさと読本、小城歴史物語】を1992年4月に出版しました。【ふるさと読本】の趣旨に沿って、小学校高学年以上の町民に読んでもらうため、読みやすい漫画の形式となりました。出版に当っては広く地元の方々や諸団体、及び町当局からも協力をいただき全世帯(約4500)へ念願の無料配布も行なうことができました。佐賀新聞のコラムには「この漫画は一連の流れを明快に理解させてくれ、まさに“目から鱗(うろこ)が落ちる”思い」との評もいただきました。
 町内の晴田、三里両小学校では高学年生徒の教材として歴史探訪を現地で行ない、町内外各地からも大きな反響が寄せられました。県内外の公共機関その他の町づくり運動に関わる諸団体、個人の方々より数多くの希望があり配布しました。


ふるさとの文化づくり

 鍋島藩主菩提寺祥光山星厳寺はさまざまな文化財のある寺として内外から注目され、遠くドイツのテレビに紹介されるほどでありますが、永らく放置されたままでありました。ふるさと第1級の文化財である星厳寺、とりわけ石造五百羅漢については会員自らが新しい羅漢づくりを行ない、この保存についての町民意識を高めようと、羅漢づくり運動を行いました。
 @「平成の羅漢」づくり……星厳寺の200体足らずに減ってしまった五百羅漢を私たちの手で復活すべく、石材と工具を会員が購入し伊万里青年会議所の指導を受け、新しい羅漢づくりに取り組みました。この平成の羅漢は会員により12体ができ上がり、星厳寺に奉納し、文化財保護に取り組む姿勢が町内外に知られるところとなりました。
 このことに刺激された地域の人々により、新しい平成の羅漢は数多く奉納され現在53体となっています。この運動を受けて小城町主催の【羅漢まつり】が1989年より始まり、羅漢彫り、スケッチ大会、写真コンテストなどに数百人の人々が集い、1990年には寺ゆかりの普茶料理が近隣の婦人団体を中心とした「羅漢の里普茶の会」の奉仕により復活し、【羅漢まつり】に参加する人々の大きな楽しみとなり、年々その参加者は増加しています。
 A「羅漢の里づくり」、「羅漢の遠」構想……会員の運動をきっかけに、多くの住民を巻き込むようになった羅漢彫り運動は町当局をも動かし五百羅漢の文化財指定、日蓮宗九州総本山松尾出光勝寺と星厳寺を結ぶ羅漢の道づくりの構想へと発展しています。会員はこれに協力しさまざまな意見を具申し、その結果小城町の基本計画にも編入されました。羅漢の道、羅漢ロードは小城町により実現の運びとなっています。
 B螢の里茶会の開催…会員の発案により、平成元年より毎年5月に小城の茶道文化の再興をはかるために螢の里茶会が開催され、町内外から千人前後の参加者をあつめ小城町における鍛大の文化行事のひとつとなっています。


活力ある故郷を目ざして

 私たちのふるさと小城の豊かな歴史と自然を生かして、さらなる目標は拠点づくりにあります。
 @中世肥前の鍛大都市小城【歴史博物館】開設
 A水と食に恵まれたふるさとの【食品研究所、食品大学】設置
 B文化財保護の基金づくりと文化財保護活動
 この目標にむかってグループ発足以来6年間、私たちはいろいろな運動を展関してきましたが、さらに町民や行政にアピールしながら各地の方々とのネットワークづくりに努め、活力あるゆたかな故郷づくりの実現を目ざしていきます。