「ふるさとづくり'94」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

主婦たちがふるさとをとことんスライドに
富山県・平村 平村郷土学習会
平村郷土学習会とは

 近年、私達の住むこの平村へ訪れる観光客の方は増えました。そのお客様に平村のことをもっと良く知っていただきたい、と思った旅館のおかみさんやタクシーの運転手さん、みやげ物屋の手伝いをする主婦。また、自分のまわりに知らない事がたくさんあると気づいた主婦。これからの平村の子供達に自分のふるさと平村のことをもっと知ってもらいたい、好きになってほしい……と考えている主婦や美容師や保母さん等々。とにかく、自分が自分の住む平村のことを知りたい。まずそこから、この平村郷土学習合が始まりました。それぞれに目的はいろいろありますが、“平和を知ろう”という気持ちの女性(ほとんどが兼業主婦)ばかりが集まってできた会です。昭和63年3月、旅館のおかみさんが発起人で会ができ、1人から2人、3人となり、今は11人の会員が活動しています。


活動の始まり

 平村を知るために、まず平村の歴史を知らなければ、ということになり、それぞれ自分の家に眠っていた「平村史」(昭和59年から60年にかけて完成したもの)を教科書に勉強会を始めました。今まで飾り物でしかなかった村史は身近なものとなり、毎月2回の集まりは、私達の村の再発見の連続です。村史の中の出来事に関連した資料も持ち寄って勉強したりしました。とにかく、まったく自主的な会ですので、先生も資金もなく、全員それぞれが先生で生徒なわけです。
 村史を勉強していくうちに、私達の平村は何て素晴らしい歴史のある村なのだろうと感じないではいられませんでした。そして、古き良き物が姿を消していっていることにも気がつきました。時には、小学生の村内巡りや婦人会の村内研修にもいっしょに参加して、村の中に自分達の知らなかった素晴らしい文化遺産があることも知りました。会を重ねるうちに、村の中に残る古い物や、消えつつあるものをフィルムに残そうということになりました。会員が慣れない手でカメラを持ち、村内のあちらこちらをスライドフィルムに収めました。それらを今度は大きくスクリーンに映し出しました。
 スライドフィルムがたくさん集まったところで、富山県の視聴覚自作教材コンクール出品に目標を置き、今までの学習の成果をスライド作品にしようということになりました。たくさんのフィルムと資料、まったく素人の集まりである郷土学習会が、話し合いを重ね、議論を重ね、やっとひとつの作品が完成したのでした。
 初めてのスライド作品「五箇山ふるさとをたどる」は、幸運にも佳作人選という好スタートを切ったのでした。これが平成2年1月のことでした。


活動を続けて

 平成2年度になると、最初のスライド作品「五箇山ふるさとをたどる」の中の1コマからと、テーマをしぼって学習することにしました。平成2年度は、五勝山に伝わる“五箇山豆腐”。84歳でずっと豆腐を造り続けていらっしゃるおばあさんの所へ何度も足を運び、仕事の様子や、豆腐の出来るまでを写真に収める。また、昔の苦労話などを聴く。もちろん、村史からその時代の様子なども調べる。そして、最後にストーリーを考えて、フィルムを並び変えて、ひとつのスライド作品を作りあげる。締切り間近ともなると、活動は深夜にもおよび、意見はぶつかり合う。ぎりぎりまでかかって完成した作品“おばあちゃんのとうふ”は、なんと平成2年度視聴覚自作教材コンクールの優秀賞に輝き、会員皆の大きな自信となったのでした。
 平成3年度は、五勝山民謡の代表である“こきりこ”に使われる“ささら”をテーマにとりあげました。幸いにも、会員の中に、御主人がささらを造っておられるということで、いろいろな情報を得ることができました。またそのお宅へも何度となく通い、工程をカメラに納める。ささらに関連して、こきりこについても調べ、また、こきりこ祭のことや、子供達の練習の様子なども取材します。3作目「ささら」は佳作に人選。連続入選に会員達も、また新たなるやる気に燃えたのでした。
 4年度は、全員の方で、長年家族で五箇山和紙を漉いておられる宮本友精氏の叙勲のお祝いパーティーに出席し、感動したことを郷土学習会で発表したことから始まります。それでは、宮本友精さん一家にスポットをあて、五箇山和紙をテーマにしようと会員の意見も一致し、学習会は始まりました。現在、昔ながらの工法で于漉和紙を作っておられるのは五箇山では宮本さんの所だけです。幸いに宮本さんの家では、息子さん連が後を継いでいらっしゃるので心配はありませんが、この工程は是非フィルムに残し、語り伝えたい。また、カメラやカセットテープを持って、宮本さんの家や作業場へおじゃまする日々でした。4作目ともなると、ストーリー作りの段階で、それぞれ意見がとびかい、ひとつの作品の完成までには、それは大変なストーリーがあったのでした。4年度もぎりぎりに提出。第4作目「みさらしのあかり」は再度県の優秀賞に輝いたのでした。受賞式の講評の中に、「この作品には、ふるさとへの深い愛情が感じられる」という、お言葉をいただきましたが、まさに、私達郷土学習会は、その“ふるさとへの愛情”を表すために、作品を作り続けてきたのです。


作品を活かして

 私達平村郷土学習会は、今までの作品をいろいろな所で利用していただいています。学校の授業にも、また婦人会の会合の析りにも、老人会の会合にも上映させていただきました。昨年のジャバンエキスポの平の日には、あの大きなスクリーンに、私達の作品が映し出されたのでした。
 私達主婦の作った手づくりの作品は、観光ビデオでは表現できない五箇山(平村)を味わっていただくために、また子供達に自分のふるさとにはこういうことがあるんだよ、と伝えていくために、もっともっと利用していただきたいと思っています。
 これからも、第1作目の「五箇山ふるさとをたどる」の1コマ1コマからテーマを見つけ、息長く学習を続けてゆこうと思います。