「ふるさとづくり'93」掲載
<集団の部>

とにかく何でもチャレンジ!!
長野県・開田村青年会
「木曽馬とそばのふるさと」開田村は、長野県の南西部、木曽御嶽の麓に位置する高原の村です。標高が1000メートルを越える県下でも屈指の高冷地で、高原野菜、木曽牛を中心として農・畜産業や最近では観光産業も大きなウエイトを占めるようになって来ました。
 四季の織りなす風情が大変すばらしい自然豊かな村ですが、他の山村地域と同様、若者の流出が続き過疎化は依然として進んでいます。
 このような中で、開田村青年会(上椙敏朗会長、会員約50名)では、人口減少を嘆くだけでなく、自分達の手で楽しい村にしよう、明るい村にしよう――といろいろな分野で奮闘しています。


村がやらなければ自分達で

 標高1,000メートルの高原の村は、夏のシーズンを中心に大勢の観光客や避暑客が訪れます。その入り込みは年間12万人余りに及びますが、村内にはこれといった土産品がありません。あるものといえば絵ハガキくらいのものです。そこで青年会では、「村や観光業者がやらなければ自分達で」と意気込んで土産品づくりをずっと行っています。みんなのアイデアで、他の観光地にはない開田高原だけの個性的なものを作るように心掛けています。
 最初に手掛けたのがTシャツで、御嶽山と木曽馬を自分達でデザインし1着1,500円で販売しています。このTシャツは、みんなもびっくりするほどのヒット商品になり、現在までに1,600着余りを売り上げました。
 このTシャツの資金をもとにして、その後、“木曽馬の里開田高原”の文字を入れて、馬の蹄鉄の形をした「馬蹄栓抜き」を作りました。これも話題性を呼びその人気は高く、村内の旅館、民宿、食堂などで使っていただいておりましたが、ある食堂では宴会をやる度に、この栓抜きがなくなってしまうといううれしくなるような珍現象も生じるほどてした。
 また、御嶽と木曽馬を切り絵にして、そのテレホンカードを作ったり、地元の本工業の方とタイアップして、白樺を輪切りにした郵便ハガキを作るなど、今なおみんなで試行錯誤を繰り返しています。「爆発的なヒット商品」を作るのがみんなの夢です。


天までとどけ太鼓の響き

 村祭りや盆踊り大会、秋の運動会、村のイベント等々、青年会が腰を上げなければ全く盛り上がりません。裏を返せば、これらは青年会で持っているようなものです。
 このようないろいろな催しに参加する中でどうしても威勢のいい音の出る太鼓が欲しくなりました。若い青年たちがバチを握ってドンドン太鼓をたたけば、その祭りも一層盛り上がるというものです。
 そこで村と相談したところ大変なご理解をいただき、宝くじの助成事業で太鼓を購入してくれることに話しがまとまりました。青年会ではさっそく「若駒太鼓保存会」を結成し、数カ月間練習に練習を重ねました。そして、木曽馬が高原を駆けて行くようなテンポの「木曽馬ひづめ太鼓」や「開田ばやし」「飛竜三段返し」など数曲をマスターし、今では村内外のイベントなどに引っぱりだこです。
 村の中では、お祭りを初め、学校の竣工式、温泉保養施設の完成式等々本当に大忙しです。最近ではこの保存会に、中学校の生徒や他町村の青年会員なども加わり一緒に練習をするようになりました。月2回の練習で、青年会員だけでなく幅広い年代の交流ができるようになり、大変好ましいことだと思っています。バチを握る真剣なまなざし、額に流れる汗、力強い太鼓の響き……そういうものに何か明るい村の未来を感じます。「天までとどけ太鼓の響き!」


5年目を迎えたふるさと小包

 昭和62年、自分達のふるさとを見直そうと村特産のそば作りを行いました。この時は予想以上の収穫があり、そのそば粉を使って手打ちそば講習会なども実施しましたが、まだ粉が残っていましたので、これを何とか有効に使いたい――と始めたのがふるさと小包です。
 もうこの頃は、数多くの自治体や民間の業者などが、いろいろなふるさと宅配便などを始めていました。それぞれみんな工夫を凝らしてあり、中にはダルマの形をした発泡スチロールの中に雪を入れ、そこへ山菜やワイン、肉などの特産品を詰めて送るなどという、大変ユニークなものまで登場していました。
 このような中へ後から参画するとなると、やはり何か工夫が必要です。広告宣伝費もありませんので、マスコミに受けるような話題性のあるものにしようとみんなで考え、話し合いました。
 その結果、製麺業者から購入した生そば1袋(14食分)と、自分達が汗水流して収穫したそば粉1袋(200グラム)、木の国“木曽”を代表するヒノキバシ3膳、これらを送料も含め一律2000円で全国へ発送することに決めたのです。役員7名で名古屋方面の新聞社などへPRにも行ぃて来ました。
 その努力のかいがあってマスコミにも大きく取り上げられ、中京方面を中心にあちらこちらからたくさんの注文が舞い込むようになりました。会員が役場へ集まり、みんなでラベル書きを行ったり袋詰めをしたり、1日150ケースを出した時などは、その作業も大変なものでした。
 これらの生そばセットの他に乾そば2袋、干シイタケ一袋、かぶ漬1袋、いわな昆布巻1袋、木曽の酒2級1本(300ml)の5品目セットを行ったり、村特産のかぶ漬(3袋)と野沢菜漬け(2袋)などの漬物セットなども実施しました。また、最近では村営そば工場の生そばセットを行い人気を得ています。翌年が午年にあたる時には、小包の中に赤字覚悟で村の民芸品であるワラ馬を入れるなど、その時々で話題性をつくりPRにも努めて来ました。小包の中には毎回、村のパンフレットやイベント案内なども同封するようにしています。お客様に喜ばれるだけでなく、ダダで村のPRができるなど大きなメリットがたくさんあります。
 今では常連のお客様もでき、お中元やお歳暮などに多くの利用をいただいています。今までにこのふるさと小包8000ケース余りを扱いました。毎年12月には、青年会のふるさと小包のお陰で、村営そば工場もパンク寸前の大忙しになっています。今後12月以外でいかに販売していくのか、生そばやかぶ漬以外で何か新たな特産品開発ができないのか、これらの課題を抱えながら、我が愛するふるさとのために“とにかく何でもチャレンジ”の精神でみんな頑張っています。今、現在住んでいる人が心から本当に満足し、よそへ出ている人が帰って来たくなるような、そんな活気のあるふるさと創造を目指しています。