「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

流域連携と協働による環境保全活動を通した活力ある流域圏づくり
島根県松江市 特定非営利活動法人斐伊川流域環境ネットワーク
上下流住民の相互理解を深める交流活動

「尾原ダム・花の里づくり事業」
 斐伊川下流域の治水・利水といった公益性に応えるため、上流域の雲南市、奥出雲町に尾原ダムが建設されています。これによって、雲南市、奥出雲町と合わせて111戸の人々が移転を余儀なくされました。この上流域の住民の多大な負担や現状について、水の恩恵を受ける下流域の住民が認識し、上流域の住民に対して支援や協力をする必要があります。
 斐伊川くらぶは、上下流住民の相互理解を深めるため、尾原ダム内用地を上下流交流の拠点として多彩な交流活動を行なっています。毎年行なっている菜の花まつりでは、満開の菜の花に囲まれた会場で、雲南市、奥出雲町の郷土芸能や、地元特産品市等を催しています。今年度は総勢796名の方が菜の花まつりに参加しました。そのほかに笹巻きづくり交流会、地域活性化意見交換会、そば打ち体験交流会などを行なっています。


多様な主体による水環境復元活動

「宍道湖ヨシ再生プロジェクト」
 貴重な地域資源である宍道湖。その悪化しつつある水環境を回復するために、ヨシが持つ水質浄化及び生態系保全機能を活用して、ヨシ植生帯の復元に取り組んでいます。また、ヨシ植生帯を再生するため、流域の資材を活用し、独自に開発したヨシ植栽用竹ポット、護岸形成用木工沈床、消波沈床(粗朶沈床)を使っています
 取り組み主体の中心に次世代を担う児童を置くと同時に、宍道湖にヨシを呼び戻す市民の会(産・官・学・民によるゆるやかな協働組織)のサポートにより、湖岸地域の小学校の総合学習と連携して竹ポット作り、ヨシの植栽を行なっています。
 毎年、約800名近くの小学校児童がヨシの植栽に参加しています。昨年度まで植栽した竹ポット本数の累計は1万1576本、植栽ヨシ苗数は2万3152本になり、ヨシ植生帯が戻りつつあります。
 *ヨシ植栽用竹ポット、護岸形成用木工沈床は平成14年2月に小谷武(斐伊川くらぶ理事長)が特許を取得。


尾原ダム建設地の緑化復元活動

「どんぐりの森づくり事業」
 建設中の尾原ダムの付け替え道路によって削られる山肌の緑を復元するため、どんぐりと竹ポットを使って、付け替え道路の法面に上下流の小学校児童が中心となり、多様な主体が協働して植樹活動を行なっています。上流域の小学校(雲南市、奥出雲町)の児童とダム移転者の方々がどんぐりを拾い、一方、下流域の小学校(松江市、出雲市)の児童は孟宗竹を利用したどんぐり竹ポットを作ります。上下流域の小学校の児童がどんぐりと竹ポットを持って尾原ダム内用地に集まり、竹ポットにどんぐりを植えます。植え込まれた竹ポットは、尾原ダム移転者の会の方々が育苗を行ない、翌年それを付け替え道路の法面に竹ポットごと植樹します。このように、小学校の児童が緑化復元活動を実践する環境教育の場としてこの活動を行なっており、毎年約600名の児童が参加しています。
 *現在、どんぐり竹ポットは小谷武(斐伊川くらぶ理事長)が実用新案申請中です。


住民主導による循環型地域社会づくり

「菜の花プロジェクト」
@斐伊川流域の休耕田に遺伝子組換えのないナタネを植えて、景観作りと農地の有効活用をはかる。A収穫した種から安全な地元産の食用油を作って食べる。
B廃食用油は集めてB.D.F燃料としてリサイクルする。
という地域循環型のプロジェクトです。松江市においてはすでにB.D.F燃料による車が活動しています。地元農業者、地元製油業者、自治体、斐伊川くらぶが連携して、ナタネの栽培や、学習会などに取り組み、住民主導による循環型社会づくりを行なっています。
 *B.D.Fとは、環境負荷の少ない生物起源のディーゼル燃料です。

 これらの活動は、全て次世代を担う子どもたちを主体に置き、多くの流域住民の参加を得ています。これによって、流域の環境保全に対する求心力が高まり、地域力が醸成されつつあります。