「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

村づくり「やすらぎの里ましが丘」の取り組み
奈良県大淀町 やすらぎの里ましが丘推進委員会
私たちの村の概要

 私たちの村は、奈良盆地の南端から吉野山地への入口に当たり、吉野川(紀ノ川)の上流部に位置する吉野川の二つの支流によりできた扇状地にあり、標高200〜300メートルの丘陵地に囲まれた、戸数約130戸・人口400人余りの小さな村です。
 大昔は狩り場となっていましたが、中世以降は谷間の平地を利用し米作りが、丘陵地では畑が耕されていました。終戦後の食料不足の時代までは、村の90%以上が専業農家で米作りや茶・果樹の栽培が盛んでした。しかし、高度経済成長期になると兼業農家が増え、畑地を中心にしだいに荒廃地・遊休地が増え始めました。その後も若い世代が離村し、少子・高齢化が一層進み、現在の村を支えている世代も50〜60代になり定年を迎える時期になってきました。


私たちの活動の動機と目標

 十数年前、小学校の児童減少問題が出てくる中で、「中増区活性化検討委員会」が結成され、様々な議論が交わされましたが、具体的な方策が見つけられないまま活動が休止してしまいました。
 2001年夏、数人の仲間が集まり「村づくり」について議論をした中で、「議論よりも具体的に何かをやることが、今一番大切ではないか」ということで、ボランティア組織「やすらぎの里ましが丘」を立ち上げました。

 活動のねらいとして、

1.活動をする中で、横の繋がり・世代間の連携を深め交流する中で、ともに村で生きる楽しみの場づくりをしよう。
2.農地の荒廃化が進むのをくい止めるとともに、遊休地を利用して中増(ましが丘)らしさを創り上げていく中で、いきいきした村づくりをしよう。

 具体的な活動目標として、
1.「ましが丘」を知ってもらおう!・・・多くの人たちに「ましが丘」を訪れ、村の良さを知ってもらい、その交流を通して村を生き生きさせよう。
2.遊休地を生かそう!・・・増え続ける荒廃地をくい止め、遊休地を生かすための利用方法について実践的に検証しよう。
3.特技を生かし、連帯感を深めよう!・・・次第に希薄化しつつある横の繋がりを強め、具体的に活動する中でそれぞれの特技を生かし、ともに生きる喜びを創造しよう。
4.伝統食文化の継承しよう!・・・忘れられつつある村の食生活の基本手作りの伝統を継承し、それのよさを多くの人に拡げていこう。

 具体的な組織作りとして、
1.自主・自立の組織・・・既存の組織を頼らず、「ましが丘」の活動のねらいや目標に賛同する中で自発的に参加してもらうことを大切にする。
2.個性を生かす・・・強要や強制ではなく、自分のできることで自由に参加することのできる気楽な組織とする。


活動のあゆみ

 2001年秋、呼びかけに応じて集まった職業も年齢も様々な20名弱のメンバーで、まず2か所の荒廃地(約10アール強)を重機で整地することから始め、その年の冬には耕作可能な土地によみがえらせました。
 議論を重ねるが効果的な利用方法がなかなか見つからず、結局は貸農園と体験農園として利用することになりました。貸農園は、当初予定の8区画の内6区画が利用されましたが、数年で環境整備不足で失敗に終わりました。
 2002年夏には、休耕田約10アールを利用し花ハスの栽培を始めました。同時に村の一つの中心的な農産物である「お茶」を広く知ってもらうために、「茶つみ体験フェスティバル」を開催しました。整備した遊休地には、コンニャク芋を植え付け、栽培したコンニャク芋を利用し、「手作りコンニャクづくり」を呼びかけ開催しました。
 その後も、遊休地・休耕田の利用を徐々に広げながら、現在に至ります。


具体的な活動

(1)茶つみ体験フェスティバル
 2001年夏に開催された奈良県の「魅惑体験フェスティバル」の一環として催された「茶つみ体験」を継承し、より多くの人たちに「ましが丘」のお茶を知ってもらうとともに、伝統的な食文化を広げていく場として位置づけ現在まで毎年開催し、多くの人たちの参加を得ています。また、他地域との人々との交流を深め「ましが丘」のよさを理解してもらうための取り組みでもあります。
(2)花ハス栽培
 2002年夏から休耕田に栽培を始めた花ハスを利用し、休耕田の有効利用としての実験的な取り組みですが、これまで訪れることもなかった他地域からの人たちが観賞にこられたり、切り花として毎年1000本以上が販売されるようになりました。このハスを利用し鉢植え栽培で販売も開始し、また、ほかの花とセットにしてお盆用の供花としても販売しました。今年も栽培面積と栽培種を増やし、より美しい景観と販路拡大を計画中です。
 このように花ハスの栽培が、環境保全・換金作物としての目途も立ち始めてきています。今後、花ハスを使ってのイベントも可能になりつつあります。
(3)コンニャク芋の栽培と手作りコンニャク作り
 荒廃地を減らすために整地をした畑地にコンニャク芋を栽培し、手作りの里として「生いもコンニャク作り」と他の食づくり体験をセットにして「ましが丘」を訪れてもらおうと計画したものです。しかし、コンニャクの栽培には様々な栽培条件があり、栽培そのものは悪戦苦闘中(葉枯れ病等の発生)ではありますが、「手作りコンニャク作り」は大変好評で多くの方が参加してくれます。また、手作りそのものが時代にマッチしたのかコンニャクそのものが好評です。今年から町の商工会とタイアップして、生芋コンニャク「はい、できたて」ということで、商品化していくことが決まっています。
 ただ、芋の栽培については、村の方に委託栽培をしてもらうという方向で取り組んでいっています。
(4)いもほり体験農園
 近隣町村の保育所・幼稚園・小学校の子どもたちを対象に、ジャガイモ掘りとサツマイモの苗さし・さつま芋掘りのための農園を約10アールで実施し、子どもたちに土と親しむ場を提供しています。現在は年間延べ800名程度が参加しています。
(5)その他の活動
 月平均1回程度の会員による農園の保全整備や施設充実のための活動の実施。
 婦人部による、伝統食の伝承のため講習会の実施。
 先進地視察や同様の活動をしている地域の方との交流会の開催。


現状の評価

(1)活動の広がり
 当初20名程度のメンバー数が、現在では46名とほぼ倍増し、年代的にも30〜70代までの広がりを持ち、職業的にも多様であり、様々な発想が出され、取り組みに生かされつつります。一方、「ましが丘」の会員も3年間で約200名になり、毎年来村していただける方も増え、活動そのものにも周辺から一定の評価を受けることが多くなってきています。
(2)老後の生き甲斐づくりと生産意欲の拡大
 食文化の伝承の部分でお年寄りから多くのことを学ばしてもらえることが多くなり、また、定年後私たちの活動に進んで参加してくれる人も増えてきています。直接栽培から委託栽培へと方向転換したことにより、生産意欲が増えてきつつあり、今までの荒廃地を整備し、畑地に戻すところもでてきました。
(3)環境を守る活動への広がり
 私たちの活動スタイルが基本的にボランティアであり、地域を生かすことを最大のねらいとしていることが理解されはじめ、村内の環境保全・美化活動へと発展してきており、河川・道路の美化活動等にもボランティアで参加してくれる人が増えるなどの波及効果も現れ始めています。


今後の方向と課題

 活動開始以来まだ4年目に入ったところであり1歩前進2歩後退の繰り返しではありますが、当初の予定通り10年かけての基礎作りという点では着実に歩んでいるのではないかと考えられますが、道のりはまだまだ遠く今後、内には協力者の拡大・外には知名度の増大を目指す取り組みを進めなくてはなりません。と同時に横の連携・生き甲斐づくり・自主自立・伝統等の精神的な側面を大切にしながらも、経済的にも実績を残していける方向で積極的な取り組みを進めていくことが重要であると考えています。