「ふるさとづくり2005」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
琥珀の邦・神秘とロマンのまちづくり |
岩手県久慈市 くんのこほっぱ愛好会 |
久慈地方は、国内には比類のない琥珀の大産地であり、その推定埋蔵量は約6万トンが見込まれております。また、世界最大の琥珀の大原石塊(19・879キログラム)が現存するとともに、今なお国内唯一の琥珀採掘や宝飾品等の加工生産も盛んに行なわれるようになりました。 琥珀採掘利用の歴史は、縄文時代のお守りや装身具類に始まり、古墳時代の有力者の古墳から勾玉など多くの玉類が出土し、大和政権下にあってすでに琥珀交易の路“アンバールート”(琥珀の道)が存在したと考えられております。 これまで奈良県東大寺山古墳、京都府長池古墳(6世紀)他、多くの出土琥珀が久慈産であることが科学的に産地同定されています。 江戸時代には南部藩の特産品(財源)として江戸や京都方面に大量に輸出され、細工物をはじめ、お香・線香・塗料・医薬品・触媒等に用いられました。また、昭和10年代には軍需物資として膨大な量の琥珀が採掘され、レーダーの絶縁材開発や船舶の塗料などに用いられました。久慈地方では近年まで琥珀を砕き七輪等に入れて焚いて、蚊取り線香の替わりの“蚊いぶし”として用いていたのです。 琥珀にまつわる記録を後世に伝承する 私たちの住む久慈地方では琥珀のことを「くんのこ」と呼びました。これは漢語でいう樹脂質のお香の原料の総称にあたる「薫陸・薫陸香」がくんのこになり原産地である当地方では琥珀の堀場が加わって「くんのこほっぱ」と呼称され、方言化されました。私たちはその由来をとり、会の名称を「くんのこほっぱ愛好会」と命名したものです。 本会は昭和60年(1985年)結成以来、久慈地方の厳しい風土に育まれ無限の可能性を秘め私たちに語りかける類稀なる地下資源「琥珀」の歴史や文化を掘り起こし、琥珀の真価を問い直し「地元学」としてともに学び、「琥珀のまち・久慈」を誇りとしアピールするための地道な活動を継続してまいりました。 発足当時の愛好会の主な活動は、戦後ぷっつりと途絶えていた「くんのこほっぱ」にまつわる貴重な歴史や体験談をできるだけ多くの古老から口伝えに聴き取り、その記録を後世に伝承することでした。「くんのこほっぱ昔語りの会」を定期的に開催し、同時に久慈地方の琥珀の堀場跡の踏査や見学会を行ない、産業遺跡としての「くんのこほっぱ」の分布状況等を把握保全に努めてまいりました。 その後、琥珀の交易にも目を凝らし県内外の主要な遺跡の中から、久慈産琥珀の遺物の出土が報告され、それらを訪ねる「アンバールート」見学会を実施し、久慈地方との関わりを深めるべく胸はずむ思いで琥珀探訪の旅を続けております。 今日、琥珀資源への価値観は年を追ってますます多様化し、それに伴い企業・行政・研究者そして民間団体などの創意と協働により「琥珀のまち」の知名度は飛躍的な広がりを遂げつつあります。 語り部養成講座やビデオを制作 愛好会は発足15周年を迎えた平成12年度、行政の支援もいただきながら、くんのこほっぱにまつわる「風雪に耐え琥珀産業を支えた先人の知られざる知恵や技」そして琥珀の里20年の歩み等を網羅した資料集「くんのこほっぱ昔語り」を発行、あわせて日本及び世界の琥珀交易や琥珀の芸術文化を学び交流するための「琥珀文化国際シンポジウム」を主催し、市民を巻き込んだ文化交流事業をすることができました。 平成13年より、「琥珀のまち風土と文化交流発信事業」をスタートし、平成12年度発行の資料集を活用し、主として小中学生を対象とした「琥珀のまち語り部養成出前講座」を開講、「琥珀の邦」の風土に根ざした価値観を醸成すべく、実験等も加え積極的に開催する。一方、さらなる琥珀のまちの紹介と琥珀文化啓発に向けビデオ制作に取り組み、平成14年度は第1作「深きヤマセに琥珀の輝き〜琥珀の道編」を、そして平成14年度は第2作「深きヤマセに琥珀の輝き〜琥珀の技編」をそれぞれ制作することができました。 平成15〜16年度には完成なったビデオの活用を図りながら、琥珀のまち語り部養成出前講座の開講を広範囲にわたり開催する一方、「琥珀の真価を問い直す」アクションプランを企画立案しました。それは「琥珀の邦」からアンバールートを辿る琥珀親善大使を伴った、「琥珀大使ロマンチック街道キャラバン隊」による関東圏及び関西圏への派遣事業でした。 本事業は久慈青年会議所、久慈商工会議所、久慈市観光協会の4団体と実行委員会を結成、公募による琥珀親善大使3名を含むキャラバン隊員により行なわれ、キャラバンはアンバールートを辿りながら拠点交流や一般交流及び観光PRなど、琥珀文化の発信と交流の輪を拡大するとともに、得られた情報は「琥珀の邦」のまちづくりに少なからぬ示唆を与えかつふる里の人々に、琥珀の潜在力を鮮明にアピールするところとなりました。 キャラバンを決行して思うことは、地域を象徴する風土や地域資源の尊厳さについてでした。久慈地域は三陸特有の厳しいヤマセ風土のメッカと呼称される地域であり、その風土に育まれ8500万年の時を経て「深きヤマセに琥珀の輝き」となり、今なお私たちに語りかけるものは、「琥珀はモノ(・・)にあらず、琥珀の邦の風土そして文化そのもの」でありかけがえのない「ふる里の宝モノ」であるというメッセージでした。 久慈地方の「琥珀」の存在価値(価値観)は年を経るに従い、その交易ルートの解明とともに増大し、量や質はもとよりまちづくりへの貢献度など、どれをみても国内で比類のない最高の地位であると実感するところとなり、これら「琥珀の邦」の情報を地域住民がいかに等しく共有するか、それこそが真のオリジナリティをもった「琥珀の邦のまちづくり」推進に結びつくものと強く諭されるところとなりました。 全国的な琥珀の邦の交流発信を目指し 新幹線時代を迎え、久慈広域圏は改めて注目されるエリアになりました。「不思議の国の北リアス」にはその名にたがわぬ特徴的な風土や、地場を象徴する地下資源である「琥珀」をはじめ、豊かな食文化や他にない温かい人情味等、多くの「宝モノ」が埋もれており、これらの情景は「深きヤマセに琥珀の輝き」を典型景観として、私たちを魅了するものがあります。 ともあれ、久慈地方は世界に誇る琥珀の大産出地であり、今後とも足下に眠るかけがえのない琥珀資源の多面的な価値観を見出し、利活用を図るとともに、内外に向け由緒正しい情報の発信に努めます。琥珀の歴史や文化そしてロマンはもとより、土俗的な琥珀の民俗や近代的な科学のことなど、今後とも「琥珀のまち語り部養成講座」や「琥珀の邦」ボランティアガイドの養成に努め進めてまいります。また、「琥珀のまち紹介ビデオ」等資料の利活用を図り、さらなるアンバールートの延伸(山陰地方)と琥珀親善大使の派遣も含め、広域的かつ全国的な「琥珀の邦」の交流発信と、神秘とロマンのまちづくりを目指し、「琥珀に市民権」を合言葉に地域住民の皆さんとともに取り組んでいきたいと考えております。 「琥珀のまち」風土と文化交流発信事業の概要(中期計画)
「くんのこほっぱ愛好会」の歩み 久慈地方に古くから産出し、幾多の歴史的な変遷を経て、今また私たちの前に忽然と現れぬくもりのある輝きと限りないロマンをもって私たちを魅了する不思議な石『琥珀』。 このかけがいのない郷土の宝を守り育て、より価値のあるものとして未来へ継承するためにも、正しく継承していく担い手となるべく「くんのこほっぱ昔語りの会」を昭和60年2月11日発足する。 ◇第1回「くんのこほっぱ昔語りの会」が、琥珀を愛する15名で発足し初代会長には田村栄一郎氏を選出する。 設立に先立ち、かつて琥珀堀に携わった2人の古老を訪ね聞き取り調査を行なう。 ◇第2回は枝成沢・碁石地区の「くんのこほっぱ昔語りの会」を碁石宗一郎宅にて開催(昭和60年11月) ◇第3回鳥谷子供会館で、夏井地区「櫛桁善兵衛の琥珀御殿」等、「くんのこほっぱ昔語り」と琥珀の採掘現場を視察。(昭和62年1月) ◇第4回は和野部落伝承館にて、宇部地区の「くんのこほっぱ昔語り」と採掘地の視察。(昭和63年3月) ◇第5回は日吉公民館で、小久慈・赤川地区の「くんのこほっぱ昔語り」を開催。(平成元年3月) ◇第6回は会長の田村栄一郎氏の講演をビストロくんのこで開催。(平成2年7月) ◇平成3年4月28日琥珀の里10年の歩みと題して、国内の琥珀研究者5名による「'91アンバーロードフォーラム」を、久慈カルチャーステーションと共催で開催。 ・久慈琥珀資料館が新築され、4月27日落成祝賀会が行なわれる。 ◇第7回「くんのこほっぱ昔語りの会」は、会長の田村栄一郎氏が栃木に移住することとなり記念講演会を行なう。役員の改選を行ない2代目会長に佐々木康勝氏が就任する。(平成4年5月) ◇第8回「くんのこほっぱ昔語りの会」枝成沢地区の採掘跡地を視察。昔語りの会からスタートしたが、もっと広く会員を募りたいとの願いから会の名称を「くんのこほっぱの会」と改称する。(平成4年11月) ◇第9回「くんのこほっぱの会」は種市町海岸巡り・琥珀産出露頭観察会を行なう。(平成6年10月) ◇第10回「くんのこほっぱの会」は日吉公民館で小久慈町堀内地区採掘現場、赤川採掘地跡の視察。(平成8年8月) ◇平成9年7月、久慈市主催の琥珀の祭典を機に、国内の学識経験者と本会役員とによる「21世紀の琥珀を語る会」を開催。 ◇第11回「くんのこほっぱの会」総会にて名称を「くんのこほっぱ愛好会」と改称する。3代目会長に黒沼忠雄氏が就任。「琥珀に関する情報交換や研究活動の推進はじめ、琥珀文化の情勢と普及を図る」ことを目的に、研修会及び見学会、琥珀に関わる情報誌の発行、会員相互の親睦や他団体との交流等を事業に掲げ、活動の輪を広げる方向を目指す。(平成10年4月29日) ※7月開催の千葉県銚子市・琥珀産出地見学交流ツアーと日本琥珀研究会発起人会に、黒沼会長以下3名出席。(平成10年) ※12月「遺跡から出土した琥珀などの見学会」を久慈市埋蔵文化財調査室にて開催。 ◇第12回「くんのこほっぱ愛好会」 平成11年10月に三内丸山遺跡視察と琥珀交易ルートの旅を実施。会員以外の参加者が14名あり、愛好会と名称変更して最初の事業で拡大の確かな手ごたえを確認できた。 ・10月31日奈良市の元興寺文化財研究所で開催された日本琥珀研究会第1回総会に、黒沼・桑畑・佐々木の3名が出席。 ◇第13回「くんのこほっぱ愛好会」 平成12年6月、一戸町にある国指定「御所野遺跡」と「開山千百五十年を迎える平泉の中尊寺」の視察見学会と総会を開催。 ※10月には、アンバーホールにて開催された久慈二戸の祭典で「琥珀文化国際シンポジウム」を主催し「琥珀の魅力と国際交流」をテーマとして基調講演並びに「先人の歩んだ琥珀の道・交流と連携」と題したパネルディスカッションを実施。 同時に「日本と世界の琥珀展」を開催。 ◇平成13年3月岩手県並びに久慈市の助成を受け、琥珀の里久慈「くんのこ山にまつわる人・技」記録集『くんのこほっぱ昔語り』を編集、500部発刊。 ◇平成14年3月、琥珀のまち紹介ビデオ「琥珀の道」編制作、上映活動。 ◇平成15年3月、琥珀のまち紹介ビデオ「琥珀のまち 人・技」編制作、上映活動。 ◇平成15〜16年、岩手久慈発「琥珀大使ロマンチック街道キャラバン隊」を関東及び関西圏へ派遣、文化交流と観光PRを実施。 |