「ふるさとづくり2004」掲載
<企業の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

環境対応型、地域循環型屋台村「みろく横丁」
青森県八戸市 八戸屋台村(有限会社北のグルメ都市)

 「八戸屋台村みろく横丁」は、八戸市中心街の三日町と六日町を結ぶ通りに位置しています。三日町側を「おんで市」、六日町側を「やぁんせ市」と名づけ(おんでやぁんせは八戸弁でいらっしゃいませという意味になる)、昭和30年代風の店づくりをコンセプトとして、通りの両側をバラエティに富んだ26件の店舗が軒を並べ、市内外からのお客様で賑わいを見せています。
 平成13年7月、新幹線八戸駅開業に向け、新幹線八戸駅開業事業実行委員会が発足し、この部会で屋台村構想が取り上げられたことに端を発し、調査研究の後、平成14年11月にオープンしました。また、翌平成15年1月には、14店舗がオープンし、現在の形となっています。
 どの店も「地元食材の利用」、「八戸の伝統料理の提供」などスローフードの概念を基本理念とし、国際組織のスローフード協会(本部イタリア)から承認され、「八戸スローフード協会」に一役を担っています。また、環境に配慮したものづくりにも取り組んでおり、各屋台から排出される生ゴミや割り箸等の廃棄物は全てリサイクルし、完全なゼロエミッションを実践するエコ屋台村としての一面ももっています。この取り組みに対し3R(リデュース・リュース・リサイクル)推進協議会から八戸屋台村を運営する「(有)北のグルメ都市」に対し、3R推進功労者会長賞を授与されるとともに平成16年3月、ISO14001の国内版ともいえる環境マネジメントシステム「KES」の認証を取得しています。
 16年2月には、屋台村の活動を認められ、第16回あおもり活性化大賞、大賞を受賞いたしました。


環境マネジメント「KES」認証取得 平成16年3月9日

 八戸屋台村「みろく横丁」はISO14001の国内版ともいえる環境マネジメントシステムKESの認証を取得致しました。KES認証制度は京都市「京のアジェンダ21フォーラム」が2001年5月から始めました。弘前市で市民や事業者主体の団体、ひろさきパートナーシップ21・青森環境マネジメントシステムフォーラム(代表・鶴見実弘前大教授)が青森県内でKESの普及に努めています。環境を数値で評価するISOは、今後、企業の環境問題には不可欠であると思われますが、中小企業、零細企業では、認証取得費用面でもなかなか難しい面もあり、認証取得費用が、十分の一以下で済み、今後企業の努力次第で、十分プラスになる「KES」認証制度に注目、(有)北のグルメ都市でも、環境問題解決に取り組んでいます。
 開設後1年間(平成15年12月現在)の客数は32万人と予想を4割近く上回り、中心街活性化の起爆剤となっています。
 また、(有)北のグルメ都市の役員は全て無報酬であり、ボランティアとして、屋台村の事業に取り組んでいます。


概要(事業内容など)

 平成9年9月1日、八戸エコ・リサイクル協議会設立。地球環境に貢献することを目的とし、地域往民・企業・行政の三者が協力しあって、環境保全、資源の有効活用の促進、ゴミを資源化して市場に戻す「地域循環型」のリサイクルシステムの構築を目指し、現在まで様々なプロジェクトを組んできました。北のグルメ都市は、この協議会のメンバーによって構想を練り上げたものであり、同協議会の環境に配慮した各種事業の一環として始まったものです。東北新幹線八戸駅開業を見据え、まちづくりや中心市街地の活性化を目指して研究・検討し進める中で「環境対応型屋台村構想」が生まれ、地域に密着したコミュニティ・ビジネスとして検討を開始、現在に至っております。そもそも八戸の中心市街地は新幹線が開業した八戸駅からは直線距離で5キロ程度離れており、JR八戸線の本八戸駅(八戸駅から2駅目)からも徒歩12〜13分程度の位置にあり、新幹線開業の効果を中心市街地において享受するには距離的なハンディがあると言え、その観点からも中心市街地への誘客力の強化が重要な課題となっていました。「みろく横丁」は、中心市街地のメーンストリートである三日町通りと、通り一本隔てた飲食街・歓楽街の六日町通りをつなぐように形成されており、奥行きのある、かぎ型の空間となっています。この2本の通りのどちら側からも通り抜けできることが、通行量と来客の確保に欠かせない重要な要件となっています。さらに、エコ屋台村として、環境に配慮した物づくりを基本理念とし後述のコンセプトに基づき、環境対応型、地域循環型屋台村として八戸屋台村「みろく横丁」をオープン・運営し、中心市街地の新たな回遊空間を作り出し、賑わい創出・活性化に努めています。
コンセプト
●中心市街地の活性化
●全国に誇る八戸の食材や農産物、郷土料理、新名物料理を一堂に集め、紹介したい
●日本初のリサイクルシステムを構築し、地域循環型、「バリアフリー方式」を取り入れた環境対応型屋台とする(建材は再生品、使用済み割り箸は再生しチップに、生ゴミは肥料としてリサイクル、廃棄物を出さない)
●誰もが安心して食べられるオーガニック商品の販売と食材の提供
●若手起業家の育成(屋台村をステップに店舗を持てるよう応援)


実績及び効果

 屋台村は、東北新幹線八戸駅開業を視野に県内外からのお客様に対し、「食」を通じて、八戸地域の情報発信を目指しており、地域の食材を生かした食文化の伝承や伝統の保護育成、新たな食文化の創造とともに、全国の人々と地域の人々との交流の場となっています。
 歴史的にも由緒ある中心商店街において、表通りと裏通りに分断されていた商店街を屋台村によって新たに繋ぐように整備が行なわれ、結果、新たな回遊空間を作り出し、人の流れが生み出され、商店街の魅力を高めていると思われます。また、市の中心部において、各種イベントの場として提供されることによって新たな文化活動の場、あるいは中心街の賑わい創出に繋がり、新たな観光名所として、多数観光客が訪れ地域の活性化に大きく貢献しているとも思われます。
 また、環境対応型、地域循環型の屋台村として、リサイクル素材を利用した施設整備や生ゴミから割り箸、紙ゴミ等、全てをリサイクルし、ゴミを出さない工夫を屋台村全体において実施しており、全国にも例がないことから、環境への取り組みを通しても全国へ八戸を発信しています。リサイクル環境に配慮しながらスローフードの考え方を取り入れた新たな都市型環境スポットとして事業展開しております。


平成16年1月21日、八戸スローフード協会設立

 八戸エコ・リサイクル協議会の下に設けられた6部会の中のひとつ、食文化環境プロジェクト(八戸の食材を生かしたオーガニック商品や八戸のオリジナルメニューの開発の他、施設等食べる環境もトータルに考えるもの)を発端として生まれた八戸屋台村みろく横丁は、最大のテーマである「地産地消にこだわる」というコンセプトのもとに運営してまいりましたが、この運動を、八戸地域全体へ広げるべく、八戸地域の飲食店の方々、地元生産者の方々、消費者の方々ヘご案内を差し上げ、八戸スローフード協会を設立致しました。これは国際組織のスローフード協会(本部イタリア)から承認されたものです。今後の方針としては、郷里の伝統料理を次代に伝える・価値ある農産物や食品を指定、保護する・子どもたちに味覚の教育を行なう等を目標に活動を進めていきたいと考えます。
 地域で生産した食材を地域で消費する「地産地消」を原則とし、地元の生産者(農家・漁師)と連携して、地元の食材を消費していきます。定期的に生産者・販売者・消費者と交流会を実施、支部主催で、定期的に講演会を実施、八戸屋台村を使って、朝市・夕市等のイベントを開催、地元の食材をアピールしていきたいとの計画です。


今後の展望及び課題

 みろく横丁でのイベントや企画、環境などに関するボランティアを市内外から募集して、市民主体の企画によるイベント等によって、さらに中心商店街の活性化を図り、賑わいを創出したいと考えています。


協働的または自主的・主体的取り組みの状況

 地域循環型リサイクルシステムの構築を目指す八戸エコ・リサイクル協議会を中心に地域特性を生かしたまちづくり研究会「環境対応型まちづくり構想プロジェクト」や八戸地域の食材を生かしたオリジナルメニューの開発など「食べる」環境をトータルに考える「食文化の環境プロジェクト」を発足し、行政主導ではなく、市民が自主的に検討する中から地域課題解決型に事業(コミュニティ・ビジネス)として立ち上げられたもので、市民・民間の自主的な取り組みです。


創意工夫がなされている点

 全国にも例のない、環境対応型屋台であり、施設自体から、ゴミ処理まで、リサイクルシステムを構築しています。
 「スローフード」の理念に基づき、地域の食材を生かした郷土料理や創作料理による地域色を生かした運営を行ない、食を通じた地域惰報の発信を行っています。屋台を通じて、人と人とのコミュニケーションが図られ、人が集まることによって新たな活動が生み出される場を目指し、地域の魅力を再発見し、誇りを持ってまちづくりを進めたいとの考えに基づいています。


取り組みの継続状況・発展性

 屋台村を新たな観光の拠点として、中心市街地の活性化へ繋げていきたい。将来は屋台村出身の起業家により、あらたなまちづくりへと繋げていく。


先進性・模範性

 往民・民間主導のプロジェクトから生まれたものであり、環境共生型の屋台村です。
 全国各地から視察の依頼が数多くあり、これまでも弘前市、宇都宮市等のオープンを始め全国で今現在8市町村が屋台村建設の計画を練っておられます。今後全国的に開設の模索が広がっていくものと思われますが、地域に根付いた、まちおこしの屋台村の連携を図りたいとの趣旨により、全国屋台村連絡協議会を設立準備中です。
 「みろく横丁」がさまざまな出会いの場となり、地元の人々同士はもちろんのこと、他県の方々と酒を酌み交わし、この地の食を味わってもらい、交流が盛んになれば地域の活性化(商店街、新たな人材の育成)に繋がり、また多少なりともこの屋台の目指す理念が皆さんの心に届き、少しでも広がっていけば幸いと考えます。