「ふるさとづくり2004」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

地域の中における子どもの居場所づくり
石川県 根上町
プレーパーク開催までのプロローグ

 1989年(平成元年)、根上町の保健相談センターに地域の子育て真っ最中の母親たちが集まり、わが子の食事や遊び等についての悩みを話し合う機会をもつようになりました。そして彼女たちが中心となり「子育てサークルアタッククラブ」が発足。最初は、育児の悩みを話し合っていたのですが、いつしか子どもの食生活、睡眠、そして外遊びが関連しあって、子どものからだの成長はもちろん、心の成長まで影響することの学習を重ねていくようになりました。
 成長ホルモン「メラトニン」の分泌を支える生活習慣の確立、糖分が子どものからだに与える影響、車社会の中で「歩くこと」がいかに重要か等。それらの学習を重ねながら、平成8年には、浜小学校のPTA役員(高塚巳紀雄会長、中野京子副会長、石川朝子学級委員長)が中心となり、地区懇談会でそれらを話し合うまでになりました。
 その年、根上町教育委員会の家庭教育推進委員会(根上町子どもを育てる推進委員会の前身)が「家庭教育に関するアンケート調査」を実施。委員会のメンバーの中には、前述したPTA役員はもちろん、予育てサークルを支えた保健師やサークルメンバー、教師などがいました。アンケート集計の結果、子どもたちが「外遊び」を好まなくなっている姿が明確となりました。ちなみに、その他の結果からみえてきた課題として、父親の子育て参加の支援、外遊びの場の設定、地域の教育力の回復、子育て支援の4点が当時浮かび上がり、その課題をどう地域が担っていくかが論議されていました。
 それと前後して、アタッククラブのメンバーが、「親の目この目」というTV番組で、東京都世田谷区にある冒険遊び場羽根木プレーパークを知り、平成9年に発足した「根上町子どもを育てる推進委員会」の中で紹介しました。プレーパークの資料を検討しながら、外遊びが日本各地で減少していること、そして単なる遊び場だけではないプレーパークの姿が徐々に分かってきました。しかし、根上町には自然がまだまだたくさんあることからプレーパークの必要性を論ずるまでにはいかず、「根上町子どもを育てる推進委員会」では家庭教育地域教育の重要性について、大きなカテゴリーの中での論議だけが相変わらずされていました。
 平成12年2月「根上町子どもを育てる推進妻員会」(森田正二委員長)は、次年度への具体的な方針として、その活動のテーマを「子どもの遊び」に決定しました。外遊びが子どもの食生活や生活習慣の確立を左右し、五感を働かせ、創造性を養い、やる気を起こさせることをこれまでの研修から学んでいたからです。
 平成12月4月、偶然石川県も「子どもスクスクプラン」の中で「冒険遊び場プレーパーク」の開催を提唱していましたが、根上町子どもを育てる推進委員会はこれまでの健康教育等の学習の蓄積から、試験的に1日プレーパークを開催することを4月から進め、平成12年8月21日、根上町で、いいえ石川県で初めての冒険遊び場プレーパークが開かれることとなったのです。


単なる遊び場だけではない『冒険遊び場プレーパーク』

 子育て中の親たちにとって、子どもがのびのびと遊ぶことができる環境づくりは切実な問題です。現在、自由に多くの仲間と野外で遊ぶことが難しくなっています。遊べる環境はあるのですが、飽きさせないゲームソフトや塾や習いごとによる自由な時間の減少等が、子どもを遊びから遠ざけているのかもしれません。実際、昔、私たちが遊んだような木登り・穴掘り・どろんこ遊びは、できなくなっているのが現状です。異年齢で群れて遊ぶ姿は、今はあまり見られませんし、群れて遊びながら育っていく人間性(自己実現・思いやり・社会性)や創造性の発達が少しずつ疎外されているのも事実です。
 また、キレるという表現の中で行き場を失っている子どもたち、事件を起こす子どもたちのことを聞くにつけ、子どもが仲間を見つけ一緒に遊ぶためのパイプ役となるようなプレーリーダーがおり、しかも単なる遊び場だけではないそれぞれの人たちの心の居場所となるプレーパークの存在の必要性を強く感じています。
 そして、子どもが自然にふれあうことが少なくなってきている中で、身近な自然の保全や回復、活用も大切だと考えています。自然の面白さや素晴らしさ、つきあい方を子どもたちと一緒に楽しみ、発見しながら活動を続けていくことの意義を強く感じています。


プレーパークって何だ!?

 プレーパークというのは、「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーとした遊び場です。そこではいろんなことができるし、いろんなことが起こります。そこに行けば誰かがいて、何かして遊んでいます。おしゃべりもしています。何もしていなくてもそれがその子なんだ、その子なりの表現なんだということが伝わってきます。友だちじゃなかったのに、いつの間にか友だちになっていたり、年上の仲間や地域のおじさんやおばさんに声をかけられただけで、あるいはちょっと何かを聞いただけで、物事が広がったり・・・もちろん、けんかもあります。とにかく子どもも大人も心とからだで思いっきり自分自身を表現しています。何でもありの場所、それがプレーパークです。


プレーリーダーって?

 プレーリーダーとは、昔の遊びを「教える」とか、のこぎりの安全な使い方をしっかりと「教え込む」とか、ロープの結び方を「教えてもらう」とか、いわゆる遊びの指導者と考えてしまいがちですが、そうではありません。どろんこになる、木登りをする。穴を掘る、あるいは目をそむける遊び、考えられないような遊びなどの中で、プレーリーダーは、子どもたちがこれらをできるように、周りの大人に理解を求めたり、大けがをしないように助けたり(遊びの助っ人と私たちは呼んでいます)するのです。常に「子どもの目線」で遊んだりする人と言われますが、それは意識してできるものではありません。子どもたちと普段からおしゃべりをしたり、遊んだりしてコミュニケーションを図っています。面白い遊びを知っていたり、道具を作ったり、ケガの応急手当をしたり、子どもたちの背景にあるもの(学校や家庭での事情や友だちとの関係)を理解して相談にのったりと、いろんな役割があります。


地域づくり・まちづくりにつながるプレーパーク

 プレーパークには子どもたちを見守り、子どもたち大好きな大人たちが集ってきます。世代やそれぞれの立場をこえて、子どもたちのことや自分自身のことを話しています。子育てにおける悩みや経験談、昨今の教育事情や国際事情にまで話題は広がります。かと思えば、昨晩の煮物がうまくいかなかったとか、梅酒や梅干しの作り方とか実に多岐にわたります。そんなふうに、昨日今日会った人と、あるいは昔の幼なじみと、おしゃべりする中で、子どもの未来を考え、まちの将来を考え、人にやさしい、自然豊かな地域づくり・まちづくりの土台が生まれています。
 まちで会ったら、子どもも大人も声をかけあいます。車を運転していても、子どもたちは気がつくと手を振ってくれます。プレーパークがあるからこそ、世代をこえて、地域をこえて出会えた人たち。プレーパークは、地域づくり・まちづくりの一つの拠点であります。


活動報告

@「自分の責任で自由に遊ぶ冒険遊び場プレーパーク」の開催
プレーパークとは?
・子どもたちの好奇心や欲求を大切にして、やりたいことができるかぎり実現される遊び場づくり
・禁止事項を設けず「自分の責任で自由に遊ぶ」ことをモットーとした遊び場
・大人と子どもの間に立てるプレーリーダーが常にいること
・素材(火・木・土・水)やそれを扱う道具が準備され、子どもたちが自分の手でさまざまなものを作ることができる遊び場
毎月1回開催
8月は10日間連続開催
・事故とその対応、けがの種類と応急処置の学習会、プレーパークの現場となる高坂公園からの「魅力・危険・やりたい遊び」大発見と題して大人たちでワークショップ
・廃材やロープを利用して手作り遊具を子どもたちと制作
・小刀、包丁等を使ってカレーづくり
・どろんこ遊び等
 以上、大学生や地域のボランティア参加協力のもと開催。
 平成15年4月からは「ねあがり子どもと遊ぼっさの会」が主体となって開催。