「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

地場産業の振興、特産品の開発等による地域活性化の活動
岡山県日生町  日生カキお好み焼き研究会
はじめに

 「日生カキお好み焼き研究会」は、岡山市に通勤する日生町や赤穂市の仲間が、JR赤穂線の中で飲んだり語り合ったりするなかで、「日生を、特産のカキをふんだんに使ったお好み焼きと漁村の町並みと人情を楽しめるまちとして、全国さらには全世界に発信しよう」という冗談のような会話から始まった自主的な研究会です。
 研究会と言っても、難しいことを調べたりするのではなく、いかに日生のカキお好み焼きをおいしく食ベ、かつ日生の町が楽しくなるかを、まじめに味わい・楽しみながら調査研究する物好きな人の集まりです。ですから、カキお好み焼きを食べて、日生の町が面白いと感じた方は、どなたでも研究会の会員になることができます。


なぜカキお好み焼きなのか・・・「カキお好み焼きの五つの秘密」(研究会による分析)

@魔力
 「カキお好み焼き」と聞くと、ほとんどの人が実際に食べたことがないため、初めて聞く「カキ」と「お好み焼き」の取り合わせに驚き、「どんな味がするのだろう、一度食べてみたい」とまるで催眠術にかけられたように強い好奇心を引き出す魔力がある。さらにカキは「冬季限定」であるため、「今、食べなければシーズンが終わってしまう」と焦燥感をあおる魔力もある。
A庶民性
 カキ料理というと「カキ会席」や「カキ鍋」を連想するが、いずれも「高価」「酒席」といったイメージがして敷居が高い。しかし「お好み焼き」はおやつ感覚で楽しめる料理であり、値段も手頃で親しみやすい。若い女性や子どももお年寄りも、みんな一緒に普段着でおいしく楽しめる。
Bスロー性
 お好み焼きはうどんと並んでいわゆるジャパニーズファーストフードの代表である。しかし、カキお好み焼きは生のカキを山盛りに乗せて焼くため、焼き上がるまで最低でも15分はかかる。昔ながらのお好み焼き屋で大きな鉄板を囲んで座り、じっくりとカキお好みが焼ける様子を眺めながら、気さくな女店主(「おねえさん」という)と「日生弁」の会話を楽しむ。このスローな時間の共有が郷愁や旅情をより一層引き立てる。
C産地ならでは
 日生のカキは鉄板の上で焼いてもすぐには縮まない。それは、殻をむいてからすぐに使うので、余分な水分を含んでいないから。そんなカキがお好み焼きの上に山盛りに乗って、「ウソーッ、これだけ入ってこの値段!?」というよそでは真似のできない産地ならではのパフォーマンスが日生では楽しめる。
Dジューシー
 そして、カキお好み焼きを一口食べると口の中にパーッと広がるジューシー感。この一目惚れとも言える「衝撃」に誰もがヤミツキになってしまう。


主な活動経歴

2001年12月 カキお好み焼きとの出会い
2002年1月26日 日生カキお好み焼き食べ歩き調査(第l回)・研究会設立
2002年2月中旬 「日生カキお好み焼きマップ」作成
2002年11月初旬 「日生カキお好み焼きマップ02‐03版」作成
2003年1月1日 日生カキお好み焼きホームページ公開
2003年2月23日 日生カキ祭でカキお好み焼き屋台出店
2003年6月1日 「カキ(夏期)お好み焼きマップ03版」作成
2003年11月1日 カキオコのぼり旗作成
2003年11月24日 カキオコバッジ作成
2003年11月24日 片鉄ロマン街道開通記念イベントにカキお好み焼き屋台出店
2004年2月9日 日生町長とカキオコまちづくり懇談会
2004年2月22日 日生カキ祭でカキお好み焼き屋台出店
2004年3月3日 日生カキお好み焼き研究会活動に関する講演会
2004年6月 「カキ(夏期)お好み焼きマップ04版」作成


活動の成果

○日生町の現状と特性
・岡山県日生町は、岡山県の東南端(東隣は兵庫県赤穂市、西隣は備前市)に位置し、古来から漁師町として栄てきましたが、長引く景気低迷の影響で主要産業である耐火レンガや海運業等の業績が落ち込み、現在では過疎化、少子高齢化が著しく、かつて賑わいのあった商店街も衰退しています。
・ここ数年は、魚介類の水揚げ量が減少するものの、カキの生産量は非常に高く、全国で第3位を占める岡山県の中でも半分以上が日生産となっています。しかし、「岡山のカキ」または「日生のカキ」は、全国的にまだあまり知られていないのが現状です。
・カキの本場は広島、お好み焼きは大阪と広島が知名度は高いのですが、小さな漁師町日生では地域の特色としてお好み焼き店が数多くあります。
○研究会の活動(01、02年度)
・日生カキお好み焼き研究会は、01年12月に隣町の赤穂市に住む研究会メンバーの1人が偶然日生の新鮮なカキをふんだんに使った「カキお好み焼き」を食べたことがきっかけで、日生在住の通勤仲間や他の地域の仲間に呼びかけて一度食べ歩きをしようということになり、02年1月に「食べ歩き調査」を行ないました。
・調査をしてみると、日生のカキお好み焼きは他の地域では真似ができない数々の魅力(前述「カキお好み焼きの秘密」参照)があることが分かりました。また、冬場にカキ入りのお好み焼きを出す店が歩いて回れる狭い範囲に8軒(地域全体では10余軒)もあることも分かりました。
・研究会では、02年2月にカキお好み焼きの特徴、店情報、町並みや、日生弁などを盛り込んで「日生カキお好み焼きマップ」を作成しました。
・このマップがきっかけとなり、翌02‐03冬に「日生カキお好み焼き」が岡山県内のマスコミに広く取り上げられ、「カキお好み焼き」は日生の新名物としてブームが起こりました。県内を中心に数多くの「カキお好み焼き客」が日生を訪れ、1〜2月には土日のたびに「行列」ができる店まで出現し、さびれた商店街にも人通りが戻りました。
・研究会では、11月末カキオコ(「カキお好み焼き」の略)シーズン中は、マスコミ取材対応や知人を案内してのお好み焼き店食べ歩きを何度も行ないました。また、2月の日生カキ祭には、お好み焼き店の協力を得てカキお好み屋台を出店し、500名以上の方々にカキお好み焼きを味わってもらいました。
・02年度の新聞・雑誌への掲載16件、テレビ放送2件
(03年度)
・研究会では、6月にお好み焼き店と協力し「夏場の新商品」として「かき氷+地元エビのお好み焼き」に着目し、「夏期(カキ)お好み焼きマップ03版」を作成しました。
・お好み焼き店との意見交換から、11月のカキオコシーズン到来に合わせて、カキオコPRと店の場所をわかりやすくするための「カキオコのぼり旗」を地産地消推進の助成金を受けて作成しました。
・のぼり旗作成時に、研究会メンバーである小学校3年生の女子の描いた「カキオ」と「カキコ」のイメージキャラクターが誕生しました。このキャラクターを使って、「バッジを付けてカキお好み焼きを注文するとカキ2個サービス」という特典付きの「カキオコバッジ」を作成し、11月下旬から1個200円で販売しました。
・本格的なカキのシーズンを迎えた12月にはテレビ取材が殺到しました。
・11月の片鉄ロマン街道(備前・柵原大規模自転車道)開通記念イベントヘのカキオコ屋台出店で約800名、翌年2月の日生カキ祭の屋台出店でも約800名の方々にカキお好み焼きを味わってもらいました。
・カキオコブーム2年目のこの年、12月頃からカキオコ客が増え始め、1〜2月の土日にはカキオコマップを手にした数名のグループが町のあちこちに見られるようになりました。また、テレビや新聞の一部が関西方面や中国四国地方にも報道されたため、遠方からもわざわざ日生へカキお好み焼きを食べに来る客も増え始めました。
・研究会では、カキオコブームをこれからの日生のまちづくりに結びつけていくには、役場との連携協力が必要であることから西岡憲康日生町長にカキオコまちづくり懇談会を申し入れ、2月9日に実現しました。西岡町長は、新聞に「カキオコのまちづくりをする」と公言するほどのカキオコ推進派であり、研究会から組織づくり、まちづくり構想、研究開発、普及PR、観光対策等など約20項目の提案を行ない、1時間半にもわたって懇談をしました。
・3月には、岡山県議会の議会質問の壇上で、某議員が研究会の活動を「成功モデルの一事例」として取り上げて、石井岡山県知事に「ほてりきうまいカキオコをいっぺん食べてみなはれ」と発言し、これに対し、石井知事が「日生のカキお好みですが、私も早い時期に食べてみたがとてもおいしかった。これはイケると思った」と応える一幕もありました。
・03年度の新聞・雑誌への掲載12件、テレビ放送10件
(カキお好み焼き効果と課題)
・研究会では、03‐04冬のカキお好み焼き客の入り込み客と経済効果を試算しました。少なく見積もっても2万人以上の人が来所し、2800万円以上の消費をもたらしています。この他、数々のマスコミに明るい話題として取りあげられることにより、小さな漁師町日生に活気を呼び戻す成果をもたらしました。
(入り込み客数試算)
(土日平均50人×2+平日平均20人×4)×11店×12週=2万3760人
(経済効果試算)
お好み焼き消費 2万3760人×700円=1663万2000円
おみやげ消費  2万3760人×500円=1188万円
計 2851万2000円
・一方で、多数のカキオコ客を迎え入れる側として様々な課題もあげられます。
・観光客の受け皿がない(問い合わせ先等)・駐車場が少ない・案内所がわかりにくい・研究会の限界(資金、広報力、マンパワー)・ブームの存続性(いつまで続くのか)・町民の理解


今後の展望

・04年度は、マップ、カキオコバッジを作成するほか、カキオコソング作成や韓国のカキ入りチジミとの競演などの構想もあります。
・上記の課題についても、役場・観光協会との連携を図り、できるだけ問題が解消されるように研究会として取り組みます。
・今後の目標は、「日生カキお好み焼き」を全国に向けて広く発信すること、また、地元日生の皆さんに郷土の「新名物」として広く認知されたいと考えています。
 夢は「全国ブランド」、そして「『どっちの料理ショー』で明石焼きと勝負して勝つこと」デス。